goo blog サービス終了のお知らせ 

銀河鉄道拾遺

SF、かふぇ及びギター

振り返れば(don't look back)

2020-09-09 19:20:21 | ライヴ見物
 なんで最近、シューベルトの絃楽四重奏に凝ってるのか、話そうか?

 大学に入って学生オケに入部したオレは、毎日ヴィオラの練習に明け暮れた。飲みに行く以外は楽器に触ってたな。だけど周囲は、幼少の頃からヴァイオリンを習ってたやつとか、ブラスバンドで鍛えた猛者だとか。そんなのが上や横を固めてたので、コンプレックスはまあ、半端なかった。オレは精々ロックのケツを齧ってやってきた人間だったから。

 それで、どういう機会だったか忘れたが、まだよちよちのビギナーも含めて、アンサンブルを披露する機会がやって来たのだ。その時、オレに四重奏をやらないか?と打診してきたのが、音大生崩れのNだった。ヴァイオリンの腕はかなり達者で、初心者のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロを同学年内から搔き集め、絃楽クワルテットをやろうと云うわけだ。その選曲が(後から考えればだが)凄まじい、シューベルトのD 804「ロザムンデ」の第二楽章、そしてベートーベンの13番 変ロ長調 の第四楽章(その冒頭が下の写真)。譜読みも覚束かずようやく弓が使えるか使えないかという初心者を騙すとは、何と云う仕打ちであろう。

 まあ結果は推して知るべしなのであるが、今以って悔やんでるのは其の時全力でこれに取り組めなかった、自分である。あの時Nは、技術的な部分は全く度外視して我々の音楽(この場合は特に室内楽)に対する眼を開かせてくれようとしてたのが、今だからこそ痛いほど判る、様な気がするのだ。

 もう少し‘判る’ようになった時期の自分なら、スコア(総譜)で全体を把握したり、文献で楽曲分析を読んだり、アンサンブルで他人のパートに口を出したり、と突っ込むポイントはそれこそ幾らでもあるのだ。だが結局その時、何をやったのかと云えば、何もやらなかったのである。それが習いとなってオレはその後段々蝕まれて行くのだ。

 ところがNは此れに懲りず、その後もオファーを出し続けた。二挺の独奏ヴィオラが活躍するJ.S.バッハのブランデンブルク協奏曲6番、ベートーベンの七重奏曲、etc. 結局、オレがアンサンブルの面白さに開眼するのはずっと後のことで、ところが一旦そうなったからには其れがこの世の至上原理であるかのように振舞って現在に至る、この為体(ていたらく、ですよー)
 ただ技術がテッテイ的に不足しており、その一方で全てを好き嫌いで判断してしまう(これは今でもそうだが)性格が仇となって練習を怠り、結果として機会ある毎にNの温情を裏切り続けた事実は、いまも心にわだかまっているのだった。(Nが湘南の生れだって判りました?w)

 それでも別れ際に(それって何時の事だったんだ?)Nは、‘アメリカ’(ドボルザークの絃楽四重奏曲12番ヘ長調、新世界の旋律が随所に織り込まれている)の2ndヴァイオリンだったら、かなり付けられるぜ(他パートのいろんなバックアップが出来る、の意)とオレに云ったのだ。この期に及んでも奴は未だ、誘っているのである、この弾けないオレを。

 ま、この辺りで心を入れ替え、きちんと基礎固めしてまっとおなヴィオラ弾きを目指せば良かったものを、この後オレは古楽奏法と云うモノに惹かれ、あろうことか楽器を改造し通常のアンサンブルが難しい状況に入り込んで行ってしまうのである。so it goes.

 それはまた別の話として、シューベルトのイ短調四重奏曲、とりわけその2楽章を聞くと、心が疼くのだ。ヴィオラにもよい出番のある、あの優し気な緩徐楽章、あれはほんとうは一体、どんな心持ちのする響きだったのか、と。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シューベルトの絃楽四重奏曲

2020-09-07 07:56:59 | 音源など


 ハイメラン氏とアウリッヒ氏の共著「クワルテットのたのしみ」はアマチュア絃楽四重奏団のバイブルである。しかしフランツ・シューベルトの項はイマイチはっきりしない。15曲とされる作品の2/3しか記載がなく、現代の定説であるドイッチュ氏が付した年代順作品番号(いわゆるドイッチュ番号)が引用されていないのだ。(モーツァルトの項はケッヘル番号を付記)
 そこで、市立図書館でCD全集を借りたのを機に、電脳百科の助力を得て表にまとめた。並びを飽くまで制作年順とするとドイッチュ番号にも後の修正があった事が判る。(表の網掛けを参照)



 そもそもD 94の番号を持つニ長調絃楽四重奏が元凶だったのだ。「~のたのしみ」には『フィンガルの洞窟』(メンデルスゾーンの書いた演奏会用序曲)に似たテーマを使っており・・・と紹介されているが、何度聞いても現れてこない。おっかしいなーと長年思っていたが、それも其の筈、同じニ長調でもD 94をわたしはD 74だと勘違いしていたのだ!オマケにそのD 94が、実は最も初期の作品だったことも今回確認した。
 こうして長年のナゾは解明されたのであった、ちなみに私のオススメは変ロ長調 D 112 である。機会があったら聞いて下さい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

黄金列車と其の周辺

2020-09-02 16:33:31 | SF本
  黄金列車 / 佐藤亜紀(2019 角川書店)

 デビュー作『バルタザールの遍歴』、『スウィングしなけりゃ意味がない』と来て三冊目。ファンタジー(そういう賞だったので)、JAZZと来て鉄道、と人の趣味を刺し捲るラインナップである。
 とつぜん話変わるが、雑誌『太陽』は '68年6月号に特集「世界の蒸気機関車」を組んだ。‘汽車は演技する’ と題された5頁は鉄道物の名画を年代順に紹介した記事だが、その中の二篇、バート・ランカスター主演の「大列車作戦」と、フランク・シナトラ主演の「脱走特急」(両方、1964年公開)。どちらもTVで観たけど、普段ダイヤに則って運行される列車が戦争と云う特殊状況下、己が意志があるかの如く国境を越えて走り抜ける様が子供心に印象的だった。そんな朧げな記憶がこのたび紙面に蘇る。p.51の描写など迫真である、此処には書き抜かないけど。
 本書のストーリィや含意は優れた書評家さん達があちこちに書かれてるので、そちらをどうぞ。全編をシリアスな重い雰囲気が覆うなか、染之助・染太郎然とした脇役が僅かに笑いを誘う。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする