古代ローマの街に欠かせないものといえば、パン屋もその1つです。
「パンとサーカス」という言葉があるように、古代ローマ帝国が安定した統治を行うために、
安定した食料の供給と、刺激的な闘技場での見世物は不可欠だったそうです。
イタリアといえば、パスタを連想する人も多いと思いますが、
今のようなパスタがイタリア中に広まったのは中世以降。それまでは素朴なパンが主食だったのです。
ポンペイにも数多くのパン屋がありました。その様子は、まるでナポリのピッツェリアのようです。
パン焼窯の形もピザ焼窯とよく似た姿をしています。
こうして居酒屋やパン屋の様子を見ると、2000年も前に生活していた古代ローマ人に、
親しみのようなものを感じることができます。
ちなみに一部の富裕層を除くと、ポンペイの人たちは、インスラと呼ばれる高層住宅に住んでいたそうです。
ますます今のナポリの街の様子とダブって見えてきますね。
アッボンダンツァ通りを東に向かって歩くと、通りの右手に、こんな場所が残っています。
ここは、当時の居酒屋の跡で、
カウンターらしき場所に開いている穴にワインや食べ物の入った壺を入れていたそうです。
例によって、復元予想図を見てみましょう。
ここはプラチドゥスという人物の経営していた居酒屋で、
おそらく「プラチドゥスの店」と呼ばれていたのでしょう。
壁に掛けられた絵の中には、ディオニソスの姿も見られます。
ポンペイでは、このほかにもあちらこちらで下の写真のような居酒屋の跡を見ることができます。
当時は、何十軒(百件近いという説もあります)という居酒屋があったそうです。
古代ローマ人の一般的な生活では、仕事は午前中のみ。
午後は公共浴場で過ごしたり、このような居酒屋でワインや食事を楽しんでいたそうです。
ちょっとうらやましいですね。ポンペイの人々の暮らしもやはりそうだったのでしょうか。
ポンペイの市街を東西に貫いているメインストリートが、このアッボンダンツァ通りです。
この通りの両側に、公共浴場や居酒屋、商店や有力者の住居など、さまざまな建物が並んでいました。
この通りを歩くと、古代ローマ時代の人々の生活のかなりの部分を見ることができます。
通りの途中にはみ出すように作られているのは水くみ場(噴水?)で、
自宅に水道をひけない一般庶民は、ここで水をくんでいたようです。
さて、復元予想図も見てみましょう。
立ち並ぶ店々の外壁がこんなに色あざやかだったのかはともかく、
それなりににぎわった通りであることは間違いないようです。
通りは、馬車道と歩道に別れていて、段差が設けられています。
馬車道を横切っている飛び石のようなものは、歩行者の横断歩道です。
フォロに近いあたりの通りの南側は、店のつくりがわかるほど保存状態もよく、
復元図がなくても、当時の様子がなんとなく想像できます。
脇道との交差点にも、もちろん横断歩道があります。
脇道の歩道は、さすがに狭く、片側のみか、両側にあっても人ひとりが歩けるほどの幅です。
馬車のわだちの跡が残っていました。
こんなに深くわだちが刻まれるのですから、かなりの交通量だったのでしょう。
それにしても、この場所で馬車が転んだりしなかったんでしょうか。
通りは、街のはずれまで、えんえんと続いています。
フォロから離れるにしたがって、住居の割合が高くなってくるようです。
Porta Marinaをくぐると、そこにはまさに1つの「街」が広がっていました。
果てしなく続く大通りの両脇にいくつもの建物が立ち並んでいます。
この門の近くはおそらく政治・経済の中心だったのでしょう。
フォロを中心にして神殿などの重要な建築物が配置されている様子は、
まるでローマのフォロ・ロマーノのようです。
最初に目につくのが、道の右手にある「バシリカ」と呼ばれる建物です。
今では「聖堂(教会)」と訳されることの多い「バシリカ」ですが、
この時代には裁判所のような場所だったようです。今では列柱の根元の部分しか残っていませんが、
かなり大きな建物だったことがわかります。
復元予想図です。(遺跡内のブックショップで買ったカレンダーを撮影)
こちらはアポロ神殿。信仰上、非常に重要な場所だったと考えられています。
回廊部分と思われる場所にアポロのブロンズ像(レプリカ)が置かれています。
ポンペイの遺跡にはいくつかの入り口がありますが、駅からもっとも近いのがPorta Marinaです。
Scaviの駅を降りて、右手に200mも歩けば、立派な入り口があります。
遺跡に入場する前に、入り口の向かいにあるバール?で水分補給。
暑い日はグラニータなんかもいいかもしれませんね。
オーディオガイドコーナーにはなんと8ヶ国語ぶんのガイドが用意されていました。
さあ、それではいよいよ遺跡の中を回ってみることにしましょう。
古代ローマを知る事典 | |
長谷川 岳男,樋脇 博敏 | |
東京堂出版 |