日本の青年へ
端緒
数年前、ことさら畏まった日ではなかったが九段の杜で刻を過ごしていた。この域は別段の想いを懐く処でもあるが、騒がしい世情から脱した時空を思い描き、時の経過を自省するには謂うに言われぬ潤いを感じさせるところである。また昂揚するも、それが還って鎮まりを請来させるような雰囲気を漂わせるまさに鎮護の杜の佇まいである。
その参道の門前にテーブルを並べて書籍を販売する一団が在る。掛けられた襷には英霊の会と墨記され、見受けると老齢ではあるがかくしゃくとした健児のように眼を輝かしている。
一冊の本が目に留まった。〔パール博士の日本無罪論〕、アジア人らしき人物の写真が表紙を飾っている。靖国のそれらしき本かとベージを捲ると、裁判の判決文や著者の考察があり、終章には思わず引き寄せられる稿があった。
「日本の青年へ」として男子、女子に向けた生き方と、浮俗に蔓延している欲望喚起するものへの自制への警鐘だった。
さらに参考欄に、あの箱根のある建物の説明が書かれていた。施設名は、パル・下中記念館、はじめて目にする下中と併記された名があった。
果たしてパル博士とはどのような人だったのか、また併記されている下中という日本人についても興味が湧いた。
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