A Challenge To Fate

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【私の地下ジャズ愛好癖】現代亜米利加ジャズ二態『クリス・ピッツィオコス/殺鼠剤』『レント・ロムス/生命の血合奏団』

2017年12月27日 08時31分27秒 | 素晴らしき変態音楽


ウェブマガジン「JazzTokyo』の新年号で恒例の年間ベスト・アルバム&ライヴ企画が発表される。今年筆者が選んだのはアメリカの二人のサックス奏者。どちらもネットのおススメ機能で出会ったので、恋愛に譬えれば出会い系サイトがきっかけで本気の恋が芽生えたようなもの。年も押し迫った師走に届いた2枚のレコードが、燃えるガチ恋に火を灯した。それにしても『Rodenticide(殺鼠剤)』と『Life′s Blood(生命の血)』とは好対照な2作である。生と死の間の三角関係に陥った愛好家の歓びをクリスマス翌日、雨が雪へと変わるであろう夜更け過ぎにヴォリュームに気をつけながら噛み締めるのも悪くない。

●Rodenticide『RODENTICIDE』(2017 Self Sbotage Records - no number)


Samantha Riott (vo)
Richard Lenz (g),
Isaiah Richardson Jr. (winds),
Chris Pitsiokos (ds)

NYのサックス奏者クリス・ピッツィオコスがドラムを担当する即興ノイズバンド。殺鼠剤という意味のバンド名から想像が着く通り、攻撃的で喧しく姦しく五月蝿いジャンクロックを聴かせる。サマンサ・ライオットのヴォイスは歌でもラップでもなく、よく言えばポエトリーリーディング、一般的には罵声の羅列。レコードの内袋に歌詞が掲載されいるが、詩というより短編小説。ドラムとサックスとギターがフレーズもリズムも何もかも無視して怒濤のように絶え間なく騒音を出し続ける中、息継ぎする間も惜しんで喋りまくる状態が45回転AB面合わせて30分間続く。NO WAVEの歌姫リディア・ランチに通じるが、パフォーマンス的な演出がほとんどなく、本能のママに暴れ回るステージを彷彿させる21世紀New Yorkらしい作品である。ジャケット写真のNYのアパートメントの中で何かヤバいことが起こってるのではないか、と不安な気持ちに駆られてしまう。来日時にピッツィオコスは身の危険を感じてこのバンドから脱退することにしたと語っていた。極限状態ポエトリーシャウティングは人の耳に傷跡を残したまま記憶の海に漕ぎ出していく沈没船をイメージした。

Rodenticide - at St Vitus, Brooklyn - April 28 2017

Rodenticide bandcamp



ギターのリチャード・レンツはピッツィオコスがコロンビア大学在学中にやっていた即興トリオ「Bob Crusoe ボブ・クルーソー」のメンバーだった。そのトリオの2012年のライヴアルバム『Live 2012: Faint Praise』もbandcampでDLリリースされている。
Bob Crusoe bandcamp


●Rent Romus′ Life′s Blood Ensemble『Rising Colossus』(2016 Edgetone Records - EDT4169)


Timothy Orr- drums, percussion
Rent Romus - alto saxophone, flute
Joshua Marshall - tenor saxophone
Heikki "Mike" Kosikinen - e-trumpet, tenor recorder
Mark Clifford - vibes
Safa Shokrai - double bass
Max Judelson - double bass

一方サンフランシスコのベイエリアを拠点に活動するレント・ロムスの『Life′s Blood Ensemble(生命の血合奏団)』は『Lords of Outland(辺境の君主)』と並ぶレギュラー・プロジェクト。Lords〜がジャンルの垣根を壊して即興/前衛/実験音楽を拡大するのに対して、LBEはジャズの伝統とロムス自身のフィンランドのルーツをアコースティックな編成で継承する地に足の着いたグループである。2015年にレコーディングされた本作『Rising Colossus(立ち上がる巨人)』は、ロムスやサンフランシスコの作曲家、さらにジョン・チカイ「Cherry Vanilla」、アンソニー・ブラクストン「Composition 23J」を含む6曲を収録。そのうち2曲はLP片面すべてを使った組曲である。オーネット・コールマンの『チャパカ組曲』を思わせるコンセプトには、西海岸の即興シーンの首領であるロムスの企画力・組織力・発想力が凝縮されている。掟破りを生き甲斐に都会に出てきた異端の魂の苦悩は、広いアメリカの大地と比べてみれば何と小さい悩みなのだろう。この空すべてを愛で満たしたい、それが唯一の生命の証。そんな物言いが通用する世界ではないけれど、生命の血の歌声には、じわじわ盛り上がる希望の萌芽が見える。

Red Poppy Art House - Emotism Rent Romus Lifes Blood Ensemble

Rising Colossus bandcamp

縁結び
殺鼠剤と
生命の血

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