
好きなドラマーは?と聞かれたらキース・ムーンと答えるが、ムーン以外のドラマーを然程意識したことは無い。音楽を聴くとき、当然リズムを創り出すドラムの音を聴いているのは確かだが、ギターやヴォーカルのように個性が歴然と分かる訳でもなく、タイトさやヘヴィさや手数で判断する場合もあるが、何よりも叩き方のカッコ良さが筆者にとっては重要に思えた。しかしバンドに於ける花形はやはりヴォーカルやギターであり、ドラムが目立つ為にはキース・ムーンのようにドラムを粉砕してみせるしか無いと思っていた。とりわけドラムソロは得意ではない。特にレコードやCDだと、演奏する様子も分からないので、あまり長いと眠くなる。実際レッド・ツェッペリンやディープ・パープルのライヴ盤ではLP面の大部分を占めるドラムソロは飛ばして聴くのが常だった。
大学時代にフリージャズを聴くようになって、徐々にドラムの個性の置き所や衝動的パッションの表出に惹かれるようになった。サニー・マレイ、ミルフォード・グレイヴス、ハン・ベニンク、豊住芳三郎など、リズム楽器を超えて豊かな表現を発揮する打楽器演奏に心踊らせることもあった。80年代地下音楽にも魅惑的なドラム/パカッション演奏家が居たし、90年代〜ゼロ年代〜テン年代とドラムに自らを投入する音楽家も少なくない。そんな世界の片隅に蠢く地下ドラマーの世界を紐解いてみた。
●のなか悟空『辻説法』1983

野蛮ギャルドドラマー野中みつひろこそ日本が世界に誇れる地下ドラマーと言えるだろう。世界各国ドラムを担いで叩き回り、言葉を超えたコミュニケーションツールとなる。
VETNUM DANAN drum nonakagoku / ベトナムで炎上じゃ! のなか悟空
⇒【私の地下ジャズ愛好癖】のなか悟空『辻説法』/V.A.『GOODMAN LIVE & GREAT-DEATH』
●風巻隆『風を歩く』1982

ドラムというよりパーカッションの風巻は首から下げたトーキングドラムで屋内野外を飛び回り、風のようなフットワークで地下音楽界を攪乱した。現在は現代音楽の世界で海外を含め広く活動している。
KAZAMAKI Takashi SOLO PERCUSSION 2013 Steps Gallery
⇒【私の地下ジャズ愛好癖】即興のパカッショニスト風巻隆の地下音楽三部作『風を歩く』『円盤』『ATOMOSPHERE』
●灰野敬二『この気配 封じられてる 創まりに』2005

パーカッション&ダンスに定評のある灰野だが、ドラム演奏に於いては異なる一面を見せる。パーカッションは空間に広がる外向きのパワーを発散するが、ドラムは呼吸のタイミングと同期して、内面的な波動を確かめるようなインナーワールドミュージックを形作る。
Haino Keiji Percussion Dance@Adachi Wholesale Market(2012.11.3)
⇒灰野さんのドラムソロアルバム
●Ryosuke Kiyasu『China Tour 2016』2016

グラインドコア・ユニットSete Star Sept、ノイズジャズバンドKiyasu Orchestraを率い、灰野敬二の不失者のメンバーとして活動するKiyasuは、スネア・ドラムだけのパフォーマンスで海外公演を行っている。中国の地下道で戯れる姿はまるで子猫が猫じゃらしではしゃぐよう。
February 21,2016 Ryosuke Kiyasu live on the street in Beijing,China
●藤田亮『HITO.RI.GOTO』2017

大阪をベースに活動するドラマー藤田は元ハードコアパンクの経歴に相応しいストイックなドラム・ソロを聴かせる。ドラムセットから発する音世界は、何でもありのカラフルさではなく、鮮やかなイエローが内面から滲み出る集中力に聴き手の感性が試される。
2015.12.9 藤田亮 ドラム即興演奏@難波ベアーズ
ドラミング
地下音楽の
ドラ息子
ドラえもんが叩くX JAPAN『紅』が話題に!YOSHIKIさんにリツイートされる
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