A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

倒錯の国?フランス最人気の歌姫~ミレーヌ・ファルメール

2012年04月20日 00時29分02秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


私の勤める会社は外資系で親会社はフランスにある。今月一ヶ月間本社から監査のためにフランス人が滞日中。彼らと世間話をしていてフランスで今一番人気のある歌手は誰?と尋ねると「ミレーヌ・ファルメールかなぁ」と言われ、久々に聞いた名前に感動した。

1961年カナダ生まれのミレーヌは、80年代半ば卒業旅行で訪れたパリのテレビでプロモ・ビデオを観てあまりに印象的で一発でファンになってしまった。そのビデオは10分近い長さの映画の予告編かと思う程凝った作りで最初はてっきり女優だと思い込んでいた。その美貌も恐ろしい程でパリで買ってきたポートレートは額に入れて未だに自室に飾ってある。当然ながら全曲フランス語なので何を唄っているのかは勿論、曲名の意味も分からなかったが、80年代らしいエレ・ポップ・サウンドの上に漂うように儚げに流れるミレーヌのウィスパー・ヴォイスが溜まらなく魅惑的だった。

80年代末に日本盤が発売されたときは狂喜乱舞した。当時の日本はワールドミュージック・ブームで英米以外のポップスが色々紹介された時代だった。ベルギーのヴィクター・ラズロ、アイルランドのエンヤ、フランスのヴァネッサ・パラディなど魅力的な女性歌手が各国から登場した。ミレーヌもフランスで100万枚のセールスを記録したというセカンド・アルバム『Ainsi soit je...(邦題「ミレーヌ・ファルメール」)』が日本発売された。そのジャケットがまた素晴らしい写真でフランス盤LPも購入して飾っていた。サウンドはデビュー作以上にポップでヴォーカルはさらに魅力的だったが、解説書に掲載された歌詞の翻訳にはかなり驚いた。ドメスティック・ヴァイオレンスや性倒錯、背徳の美、死体愛、SMなど挑発的なテーマに満ちたショッキングな世界が歌われていたのだ。

それは1991年のサード・アルバム『L'Autre...(邦題「二重人格」)』でますますエスカレートする。世界崩壊を歌ったシングルの『Desenchantee(邦題「夢から醒めて…」)』はフランスでは100万枚のシングル売り上げ最高記録となり9週連続チャートNo1、フランス以外でもベルギー、オランダ、ドイツ、オーストリア、カナダなどでヒット・チャートに入ったという。アルバムも200万枚という記録的な大ヒットになったが、描かれた世界は絶望や死や鬱などのテーマが顕著なサイコ・ホラー的ニュアンスの作品だった。今改めてamazonなどで検索してみると「存在感はマドンナと同等だが、音楽的にはケイト・ブッシュと比較すべき歌手」と書かれていて、なるほどと納得した。こんなパラノイアックな作品が大ヒットするのがサドやサルトルやボーヴォワールを生み"自殺ソング"の「暗い日曜日」がスタンダード・ナンバーとして人気を博すフランスならではである。

その後はあまりミレーヌを追いかけることは無かったが本国では順調に活動を続け、デビューから30年近く経った現在でも人気No.1歌手として活躍しているというから感慨深い。wikipediaによると「フランス語圏では絶大な人気を誇り、フランス最大の音楽賞であるNRJ Music Awardsの最優秀女性アーティスト賞を4度、最優秀アルバム賞を3度も受賞するなどフランスを代表する女性歌手である」と書かれている。

残念ながらその魅力はフランス語圏以外にはなかなか伝わりにくい。特にH.R.ギーガーのアート等による大掛かりなセットを駆使して展開される儀式風のコンサートは現地で経験しなければ分からないだろう。日本にもプロモーションで来たことはあるがコンサートは行われていない。

▼最大のヒット曲「夢から醒めて...」の10分を超える長編ビデオ。ミレーヌの魅力を感じていただければ幸いである。
Mylène Farmer - Désenchantée


ミレーヌに
惚れた私も
歳を取り

無理に日本のアーティストに例えるとすれば、ドリカムが筋少の曲を小室哲哉のアレンジで唄ってるという感じだろうか(違うか 汗)。
コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 純日本的幻想音響~J・A・シ... | トップ | 追悼。米国音楽の良心、レヴ... »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
フランス人はジャンヌ・ダルクが好き…? (金丸 能博)
2012-04-20 01:21:36
このPVを見ながら頭に浮かんだことーー浮かんでは消え、浮かんでは消え残り。

◯冒頭
なんか、ロジャー・ウォーターズのPVに肌触りが似てる。画面のざらつきとか、カット割りの感じとか・・・。こういう好みがフランスのピンク・フロイド人気のベースにあるのだろうか。
◯展開を見ながら
主役の女性がどん底の少年たちと心を通わせ、奴隷状態の人たちの中に紛れ込み、怒りをためていく。やがて、怒りを爆発させ、みんなの先頭にたって「牢獄」を破壊する。その先には、なんの約束もない。しかし、不当な拘束もない。立ち止まるも、歩き出すも自由・・・。
このイメージは、ジャンヌ・ダルクそのもの。フランス人は、悲劇的ー-ある種、倒錯した彼女のイメージが好きなんだろうなあ。
◯最後のシーン。ならんだ人々の列をバー・コード・リーダーで読み取ると、秘密の言葉が・・・(笑)

歌のポップな感じと映像ーー多分、歌詞が描く世界とのギャップがこの人の魅力なのだろうと思う。この声があってこその離れ業、じゃないかな。


返信する
PV (miro)
2012-04-20 02:09:17
金丸さん
詳細な分析ありがとうございました。さすがフロイド王だけありとても参考になります。別のところにも書きましたが英語圏以外のアーティストは多かれ少なかれ言葉の壁以上に文化的な障壁にぶちあたり、それを乗り越えてグローバル化するか自国またはその文化圏の中での活動に専念するかの選択を迫られる時代だと思います。ネットが発達して伝達手段は容易に手に入りますが、文化の違いは厳然としてあるわけです。その差をなくそうというグローバリズムは机上の空論ですし違いがあるからこそ世界は面白い訳で。
考えて行くと袋小路に突き当たりますので、とりあえず自分はミレーヌ・ファルメールが好きだ、という確認をしたまでです。
今後ともよろしくお願いします。
返信する
ミレーヌ (OZ)
2012-04-20 05:35:48
ブログ主様

ミレーヌが取り上げられていて朝からビックリしました。確かに日本と本国の人気の差がかなりありますね。

お人形さんのような美しさとうらはらのダークな雰囲気のプロモも結構好きでした。名前、失念しましたが、作曲家だかプロデューサーの音作りも良かったです。

秘蔵っ子のアイドル=アリゼーもフランスらしいコケティッシュにあふれ、音もプロモもライブも結婚するまでは、よかったのですが。

今では動画サイトで、結構チェックできるので、時代は変わったなと思います。




返信する
ロラン・ブトナ (miro)
2012-04-20 10:08:48
OZさん
ミレーヌがお好きだとは思っていませんでした。
パートナーの作曲家/プロデューサー/映像ディレクターはロラン・ブトナです。
ミレーヌも50歳を過ぎ熟女世代ですが未だに現役で高い人気というのは嬉しいですね。
返信する

コメントを投稿

ガールズ・アーティストの華麗な世界」カテゴリの最新記事