A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

くじら/EP-4 unit3/ニウバイル/すきすきスウィッチ@青山CAY 2013.2.3 (sun)

2013年02月05日 00時25分45秒 | 素晴らしき変態音楽


CASE OF TELEGRAPH 2013
出演
くじら (杉林恭雄vo.g.、楠均ds.、 近藤達郎ky.、 中原信雄b.)
すきすきスウィッチ (佐藤幸雄v.g.、 鈴木惣一朗ds.g.、 POP鈴木ds.ky.)
ニウバイル(田波健v.b.、内山園壬v.b.、関根隆ky.、金子智子ds.per.、金子俊幸ds.、五十嵐義秀g.)
EP-4 unit3 (佐藤薫、家口成樹ky.、千住宗臣ds.、ROKAPENIS/斉藤洋平VJ )

2010年にレーベルとして再始動したテレグラフ・レコード。80年代のカタログのリマスター復刻に続き2011年4月2日にライヴイベント「Case Of Telegraph」も復活。第1回は震災のため2Daysの予定を1日にして「Case Of Telegraph extra」として高円寺HIGHで開催された。出演はコンクリーツ/モモヨ/蔦木俊二/オート・モッド/アリスセイラー/くじら+佐藤薫/恒松政敏グループ。震災直後多くのライヴ/イベントが中止になっていたの開催されただけで感激した覚えがある。ライヴレポはコチラ

それ以降も

●2011年10月16日「Case Of Telegraph 2011」@高円寺HIGH+AMP cafe 
出演:<HIGH>EP-4 unit3 (佐藤薫+BANANA-UG)/NON BAND/コンクリーツ/WECH-UNIT (ヴェク-ユニット= Sadie Sads, Nubile, Sarasvati)/タコ(山崎春美+GREEN FLAMES [成田宗弘,田畑満,氏家悠路] ) <AMP cafe> -アコースティック・ライブ-恒松正敏/杉林恭雄 (くじら)/久保田慎吾/MASCA (てるり+てそん)/アリスセイラー
●2012年6月30日「Case Of Telegraph West」@大阪CONPASS
出演:EP-4 unit3/NON BAND/タコ(山崎春美)/アリスセイラー/SADIE SADS/NUBILE

と回を重ね、レーベルとしても未発表音源や新作リリースを開始。また80’sインディーズ・アーティストの「今」を捉えた異色の写真集「Thus We Live Bit By Bit」、90年代のインディーズ・マガジン「EATER」を再構成した「EATER '90s /オルタナティブ・ロック・カルチャーの時代」を出版するなど現代のロックのオリジネイターであるだけではなく現在もヴィヴィッドに息づくリアルロックとしてのスタンスを明らかにしてきた。

イベントの第4回目となる「Case Of Telegraph 2013」が会場を青山に移して開催された。先日リリースされたばかりのEP-4 unit3の初CD「A Artaud」のレコ発でもある。CAYは昨年11月の「青山ノイズ Vol.4」以来。南国カフェ風にオシャレなテープルが並んでいる。客層は30代以上のアート系・業界風の人が多い。お久しぶりの挨拶があちこちで交わされている。

和やかなムードのうちに出演者がセッティングを始め特に挨拶もなく演奏スタート。派手さのないg,key.dsのトリオ。とぼけた歌はすきすきスウィッチに間違いない。80年代中野PlanBで観た時は腰蓑の土人(放送禁止用語)姿のgとpercの二人組で会場中を歩き回って奇声を発したり踊ったり自由奔放な演奏だったと記憶している(記憶違いかも)。それに比べると随分普通のロックバンドっぽくなったものだ。メインの佐藤幸雄を中心に昨年再結成されて何度かの公開練習を経て今回が初の正式なライヴらしい。鈴木惣一郎はすきすきスウィッチの初期メンバーで80年代にワールド・スタンダードとして活躍した音楽家だが個人的には超音楽ガイド本「モンドミュージック」の著者として印象深い。単なるドラマーではなくパーカッションや合いの手を入れて彩りを加える。佐藤は時々皮肉交じりのMCや歌詞で曲者ぶりを見せるがそれが内輪ウケに終始したのが残念。確かに全盛期も不完全さを武器にしたユニットではあったが、復活して間もないこともあり中途半端さは否めない。

(写真の撮影・掲載に関しては主催者の許可を得ています。以下同)



続いてニウバイル。当時レコード店に自主シングルや12インチが並んでいたのを覚えているが音の印象は薄い。ポジティヴパンク・レーベル”ヴェクセルバルク”所属だからオート・モッドやソドムやG-シュミットのような音を想像してたらEP-4に似たファンク・ビートでちょっと意外だった。バイオによるとニウバイル、サラスバティ、サディサッズの3バンドのメンバーが2011年に合体した21世紀型ダンス・バンドとのこと。女性2名を含む2ベース・2パーカッションの6人組。斉藤洋平がVJで参加しステージが歪むようなサイケデリックな色彩のライティングで包み込む。カラフルな映像に目が眩むが演奏自体はかなり粗い。MCで「一昨年集まってからゆっくりと活動しています。ハッキリ言ってテレグラフのイベントでしかやっていません」と語り、メンバー紹介では会場にいる友人グループから歓声が上がる。まさか同窓会の余興バンドじゃあるまいに。80年代老舗レーベルのイベントだから多少回顧的ノリでも仕方がないし現役感の欠如も許そう。しかしそれに甘えるような姿勢はいまひとつ納得し難い。




前日にバリバリ現役の非常階段入魂のライヴを観たせいもあるが、最初の2バンドの空洞感に疑問が残ったのは事実。

気分が少し↓のところにEP-4 unit3の登場。メンバーのBANANA-UGがインフルエンザでダウンしたためキーボードにPARAの家口成樹が参加し、佐藤薫、家口、千住宗臣(ds)+斉藤洋平(VJ)によるステージ。彼らまで懐かしノリだったらどうしようと不安だったが、それは最初のホワイトノイズに限りなく近い電子音が鳴った途端に杞憂だと判った。ほのぼのした空気を一瞬にして残酷な程のクールネスで塗り替える。佐藤はラップトップ、家口はアナログ・シンセ、真ん中にドラムの千住が構えるステージ風景が何かに似ていると思ったらデビュー当時クラウス・シュルツェがドラマー時代のタンジェリン・ドリームだった。
[2/6追記:確認したらタンジェリンではなくアシュラ・テンペルだった]
PAから滲み出るアンビエントなエレクトロノイズと雷のように空間を引き裂くドラム、そして何よりもテレビの砂嵐の粒子が変形してA Artaudの文字が浮き出る幻覚的な映像ライティングとサウンドの親和性が素晴らしい。凍りつくようなブラックホールが会場をじわじわと浸食していくのが目に見える。佐藤のプレイスタイルは殆ど動きがなく一見するとやる気がなさそうだが内に込められた強固な意志の力が一切の邪念を撥ねつけ隙がない。この姿勢はこの日も30年前のEP-4もラジオDJも昨年のFREEDOMMUNE 0でのタコでの演奏もMusic Life+での連載もすべて同質のブレのなさで貫かれている。故に30年という不在による空洞感=弱点を全く感じさせないハイレベルなパフォーマンスと策略家ぶりを発揮出来るのである。感情と身体を大きく揺さぶる非常階段の肉体派ノイズとは180度ベクトルの異なる演奏態度だが確信に満ちた姿勢は共通していると思う。現役云々を語らせない希代の思索テロリストたる佐藤薫の存在感は常人のレベルを遥かに超えている。




最後はこの日の出演者の中で唯一生涯現役を貫いてきた杉林恭雄率いるくじら。戸川純&ヤプーズの中原信雄を新たにベースに迎えた新生くじらのデビュー・ライヴである。とぼけた歌詞と曲調はすきすきスウィッチに通じるがエンターテイナーとしての力量は比べ物にならないほど高い。流石プロらしい(というかお金を取るなら当然だが)堂々とした演奏と歌に思わず立上がり身体を動かしてしまう。他の客が誰も踊ろうとしないのが不思議でならない。彼らは30年前大好きだったバンドでデビュー曲「カッパ」の歌詞を一緒に歌えるほど心に残っている。たまを始め90年代以降の"うたもの"シーンの元祖的存在であるくじらは15年ぶりの新作をテレグラフ・レコードから5月にリリースするという。地引氏には今後もこうした"意志を持った"良質なアーティストをリリースして欲しいものだ。




なお会場には目についただけで7台の動画撮影が入っていたのでいずれきちんとした形でライヴ映像が公開されることと思う。

ノスタルジー
だけじゃ終わらぬ
テレグラフ

5/18に恵比寿リキッドルームで開催されるEP-4 presents<[klʌ́b] RADIOGENIC/クラブ・レディオジェニク>が2010年の「マハラジャ」復活のような大同窓会にならぬようくれぐれもお願いしたい。
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