A Challenge To Fate

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【アナログLPで聴く現代地下音楽】川島誠『HOMO SACER』/ネクロ魔『VOIDHYMN』

2019年05月10日 02時03分08秒 | 素晴らしき変態音楽


2019年春、二組の日本のアーティストのアルバムが海外のレーベルからいずれもアナログLP盤でリリースされた。方や70年代フリージャズの精神を継承する前衛サックス奏者、方や地下アイドルシーンで異彩を放つ暗黒系アイドル。性別も編成もスタイルも違えど、現代日本地下音楽を象徴する個性派であり熱狂的なファン/支持者が存在する。まさに日本の極端音楽の代表格と言える両者の作品が海外の音楽ファンに届けられる意義は非常に大きい。デジタル配信やストリーミングが主流の欧米の音楽マーケットでは、音楽マニアの関心はアナログレコードに注がれている。アナログレコードを手に入れることでアーティストと音楽への愛情が高まり、熱心なファンが生まれるのである。売上やヒットだけを求めて活動をしていない表現者にとっては、一過性のブームよりも心から応援してくれる真のファンこそ重要である。そういうファンに支えられてネクロ魔は2019年7月UKヨーロッパツアーを行う。川島誠の2度目の海外ツアーも話が進んでいるようだ。レコードの次に生のライヴパフォーマンスを経験することで、海外リスナーのファン心理はますます高まるに違いない。日本の現代地下音楽への評価は黒船のように海外からもたらされるのかもしれない。

●川島誠『HOMO SACER(ホモサケル)』

Black Editions ‎– BE-006/0211 / US

今は亡き日本の地下音楽の代表レーベルPSFレコードの最後の作品として2015年にリリースされたソロ・アルバム。現在まで活動拠点のひとつとなっている越生の山猫軒で雨の夜にレコーディングされた。使ったリードは、70年代日本フリージャズ界の伝説的サックス奏者、故・阿部薫が使っていたものだという。切れ味と深みを兼ね備えた川島のサックスには、彼が育った環境や知り合った人々や聴いて来た音楽の精神が宿っている。自己のレーベルHomosacer Records(ホモ・サケルレコード)を主宰し、現代を生きる表現者として進化と深化を続ける川島の原点と呼べる作品である。

Makoto Kawashima solo @ Downtown Music Gallery 1-29-17

JazzTokyo Disc Review#1603 『Makoto Kawashima / HOMO SACER』


●NECRONOMIDOL『VOIDHYMN(ヴォイドヒム)』

Specific Recordings – SPCFC044_2019 / France

暗黒系アイドルユニットNECRONOMIDOL(ネクロノマイドル)、通称・ネクロ魔の2018年の3rdアルバム。デビュー時に追求していたブラックメタル/ダークウェイヴからヘヴィメタル/ハードロックへと拡張してきた音楽性がひとつのベクトルに統合され、メランコリックなメロディとクリスタルなヴォーカルに貫かれた高次元なサウンドクリエーションにより、唯一無二のゴシックホラーアイドルの世界観を作り上げている。丸尾末広のアートワークはもちろん、CDにはない黒を基調とした裏ジャケット、ディープパープル・カラーヴァイナルという30センチLPならではのアート作品。本作リリース後メンバーチェンジがあったが、進化を止めない不屈の創造精神は、2019年4月30日平成最後の日に開催された東京キネマ倶楽部ワンマン公演で証明された。

NECRONOMIDOLギュウ農フェス‬@新木場スタジオコースト2019-05-06


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川島誠は1981年生まれ、ネクロ魔のプロデューサーのリッキー・ウィルソンは1983年生まれ。川島が現在の楽器であるアルトサックスと出会ったのは2007年、リッキーが日本に移住したのは2006年。方や実演家、方やプロデューサーと立場は異なれど、自分の信じる音楽世界を一貫して追求している。まさに「信念こそ力なり」である。

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