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A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【第2波感染防止 巣ごもりサマー音楽の友】リアルイベントロスに効く癒しのMIX。『クラウド盤魔殿 第4弾 - Disque Daemonium Soundcloud Vol.4』公開中!

2020年07月23日 21時56分07秒 | 素晴らしき変態音楽


第2派感染の到来に備えて再び巣ごもりをはじめた地下音楽愛好家の皆さんへ朗報です。異端音楽DJイベント『盤魔殿』のSoundCloud版、『クラウド盤魔殿』の第4弾が公開されています。リアルイベント開催の目途が立たない現在、禁断の変態音楽のシャワーを心おきなく浴びられる場所はネットの中のみ。異端DJが全身全霊を籠めて送るMIX満載のラインナップで、Stay Home Summerを楽しくお過ごしください!




●DJ YONJU MIYAOKA

track list
1.光線願望 / 金子寿徳
2.My two kids / Mad Nanna
3.I'm Ready / Jandek
4.遡る雨 / 終古のオミット
5.夢のよう[+] / 分水嶺
6.In Ends / 工藤礼子
先月リリースの分水嶺、年末LPリリース予定の終古のオミットの音源を含むマイナーサイケデリックの自己紹介的な30分。


●DJ Hitch

いとおしい楽曲と自分の人生に所縁のあるノイジャンの作品とでミックスしました。
同じ曲を2回入れ込んでみたり。1度目の再生と2度目の再生とではきこえかたが変わったりと。
★セットリスト
Title / Artist
Cinque Sintesi Radiofoniche / Filippo Tommaso Marinetti
Auschwitz / MB
Opposites Attack / Ned Rothenberg
Dynasty / S.B.O.T.H.I
Titbit I / Freakowitz & Einstein
Titanic In The Rock Ice / Seed Mouth
Strugglediver / Robochanman
Study No. 3a / Conlon Nancarrow
9. intervalles bleus / Francois Bayle
Osmanthus Fragrans(Homemade Electrid Music) / Walter Marchetti
Titbit I / Freakowitz & Einstein
Far away inside / O
Tempo Furioso Pt.2 / Martin Davorin Jagodic
翳り VII-コンピュータ音楽演奏システムのために / 高橋悠治
echo-structures / oskar sala
9. intervalles bleus / Francois Bayle
Study No. 3a / Conlon Nancarrow


●DJ涅槃

--Set List--
1.Linx On - Rave Racer
2.Euphoria - Rave Racer
3.Drive U 2 Dancing - Ridge Racer 2
4.Mathemabeat - Rage Racer
5.Euro Fight - Sega Rally 2
6.Groovin´ Daylight - Scuad Race
7.Divas - R:Racing Evolution
8.Movin' In Circles - Rigde Racer Type 4
今回はレースゲーム特集です。多少ゲームを知っている方なら解るタイトルと思いますが、イケイケな気分で夏を乗り切って頂ければ幸甚です。


●ケロッピー前田

7月6日@阿佐ヶ谷TABASA
出演 ケロッピー前田
ゲスト 持田保
カウンターカルチャーの最先端・身体改造を日本に紹介してきたケロッピー前田が、『INDUSTRIAL MUSIC FOR INDUSTRIAL PEOPLE!!!』の著者・持田保とともに、数々の音源を振り返りながら、クレイジーミュージックのカリスマたちの文化的な背景やカウンターカルチャーとのかかわりを読み解く!!
今回は、1978年にブライアン・イーノがプロデュースした、最も過激で実験的なバンドのコンピレーション『NO NEW YORK』に焦点を当てる。特に、アートスクール出身で早々に反音楽家を宣言していたイーノは、テープレコーダーの実験、クラウトロック(ジャーマンロック)との接近、NYパンクとのかかわり、Fourth World Music、さらにアンビエントミュージックなど、次々に斬新な音楽手法に挑んできた。また一方で、アンチ・ヒッピーとして登場した本物のパンク(NYのNO WAVE一派)は、最も"凶悪"な音楽を志向することで、ポストパンクやノイズ・インダストリアル・ミュージックを先取りしていた。
 いま改めて、イーノ& NO NEW YORKがカウンターカルチャーに及ぼした影響を数々の貴重音源を聴きながら振り返る!


●DJ Qliphoth

1. Harry Roesli Gang - Prolog
2. Iron Marshall - Goldenes Zeitalter
3. iszoloscope - all is immensity and chaos
4. Codex Empire - Mental Recession
5. SDH - Four Arms
6. Noire Antidote - ÆÆÆ
7. T.H. Industry - Unerwuenscht (Doch Erwuenscht Remix By e:o:nity)
8. Flint Glass, Collapsar - Olden Wrath of the Great Ones [Iszloloscope Mix]
9. Harry Roesli Gang - Sekar Jepun
世界が疫病に病み、抑圧に軋み、資本主義と都市文明が終焉を迎える時に黙示録の音楽


●Dj Vaby

前回に続きジャップインディーをチョイス!今回はSodom、Ybo2などTrans Recordsのマテリアル、しかも自然と身体が小刻みに震えちゃいそうなヤツ(笑)をメインとして攻めちゃいます!!再び不穏な空気が世の中に蔓延しつつある今日この頃、少しでも皆様が元気になれるのでは?と思えるアイテムを揃えましたので、是非是非楽しんで下さいまし。
以下がセットリストです。
1. Off Mask 00 / Virtual, Speed, X.T.C
2. Sodom / Art Of Lab
3. Ybo2 / Boys Of Bedlam
4. Ruins / Human Being
5. Sadie Sads / Angora
6. Zeitlich Vergelter / Schlagen
7. Z.O.A / Das Grab


●浅倉玲音 bass drone

今回のソロベースはフレーズを削除した周波数帯のみのdrone作品にしました
通常のDJ MIXでも特に気にする場所は周波数でラウンジでのジャズ、Goa trance、テープコラージュ、DUBでも耳に心地よくなるように選曲も抑えながらもイコライザーで調整してMIXしたり出力するようにしている
今回は以前から思考していたDrone作品にしました
ベースを始めたきっかけになったCDを改めて手にして作った作品です


●DJ カナブンa.k.a.平岡俊之

今回もカセットカルチャーの音源です。ノイズ、アンビエント、アバンギャルド、パンク、ニューウェーブ、フォーク、、、大量にリリースされましたが、多くの作品は埋もれてしまっています。今回発掘したのはこちらです。エネルギーと云うか、当時の雰囲気を味わっていただければ嬉しく思います。
1.Rambo’s Fist - Annilhate Descendants
2.Schaum Der Tage - Dance Of Feat
3.Nord - 04 Paramasukha
4.Dirty Husbands - Convictions
5.Toshiyuki Hiraoka – Cupl SSG
6.Neva - Frenezie
7.Red Combo - Lento
8.Ode Virale - Frieden
9.WeR7 - Untitled
10.Otre La Morte - Derwish


●DJ Guiggles(薔薇色の愚者船レギュラーDJ・Rose de Reficul et Guiggles劇中曲選曲者&パフォーマー)

盤魔殿mix Vol.4
セットリスト:
1.YBO2/パヴァーヌ
2.AKIRA SAKATA-NOBUYASU FURUYA/part1
3.goat/rhythm&sound
4.otim alpha/tongwen
5.nihiloxica/choir chops
6.damo suzuki&killer-bong/killer-damo
7.吉田達也/即興組曲「暗黒星雲」
8.jac berrocal/car havana mid
9.顔がない/little boy
聴かせどころ:
カセットのものも含むレアなインディーズ音源を入れたノイズ!ジャズ!アヴァンギャルドでフリーキーなMIXセレクトです。盤魔殿らしさという中では個人的に最高傑作が出来ました!
まだまだ巣篭もりがちに過ごさなければならない日々、狂気を内包した音を愉しみながら夏を過ごしましょう。


●DJ Ipetam

1.Devil got my woman / Skip james
2.展覧会の絵・プロムナード/ 冨田勲
3.展覧会の絵・バーバ・ヤーガの小屋 / 冨田勲
4.Kliks / Z'ev
5.Unchain my soul / Dark funeral
6.Golau / Z'ev
7.幻惑されて / 中森明菜
8.天に星、地に花 / 薬師丸ひろ子
9.雨の庭 / 冨田勲
10.Gebrechlichkeit Ⅱ / Burzum
11.展覧会の絵・プロムナード / 冨田勲
12.Bride of Rain dogs / Tom Waits


●DJ Bothis

今回も基本的にいつも通りのアンビエント・ドローンですが、なんとなく退廃的でエモーショナルな作品をピックアップしてみました。
Set list
1.Helios - Seeming
2.How To Disappear Completely - Neoma
3.Hakobune - Melting Reminiscence
4.Zeze Wakamatsu - Decay is the new fade
5.Kazuma Kubota - I Remember You
6.How To Disappear Completely - Seraphim IV
7.Axon Neuron / Vagwa - Untitled I(taken from”:Documents 1995-2005:”)


●DJ BEKATAROU

Setlist
1.ATA EBTEKAR AKA SOTE / Plain Song
2.SOTE / Dxtral
3.Asmus Tietchens / Kammer Music 1
4.ATA EBTEKAR AKA SOTE / Miniature tone
5.SCENES FROM SALAD / DALLAS INJECTION
6.sympathy nervous / Deaf Picture
7.Iannis Xenakis / S.709
8.大野松雄 / まんだらの宇宙
”この度はイランの電子音楽作家Soteを中心にXenakisや大野松雄、Sympathy Nervous、Asmus Tietchens、SCENES FROM SALADらの電子音楽やコラージュの圓盤を廻させていただきました…通して聴いていただければ時間や空間の感覚が希薄になるかもしれません


●DJ Necronomicon a.k.a. 剛田武


長谷川きよしのサイケな世界MIX
日本が誇るサイケデリック・シンガー・長谷川きよしの本質に迫るMIX。きよしに触れると虫や野鳥もお経もポール・モーリアもすべてサイケに染まる。それが「きよしマジック」である。
1. 長谷川きよし / ダリオ・ダリオ(海へ)
2. Iannis Xenakis / Persepolis
3. 長谷川きよし / ハイウェイ
4. 虫・野鳥・せせらぎ / 森林の夜明け
5. 小杉武久 / New York, August 14, 1991
6. 井内賢吾 / 犬神と家畜
7. 小林希史 / Delicious Art
8. 長谷川きよし / 黒の舟唄
9. 東本願寺門徒勤行 / 佛説 阿弥陀経
10. 電音琴 / 愛情多柑蜜
11. Calvin Hampton / Triple Play
12. 工藤冬里 / The last song of my life
13. 長谷川きよし・加藤登紀子 / 灰色の瞳
14. ポール・モーリア / ポール・モーリアのR&B
15. Evan Parker / four of six

巣ごもりの
お供にピッタリ
盤魔殿

FREE ZINE『盤魔殿アマルガム Vol.29』PDF版Download Link

人類にとってリアルイベントは必要不可欠だ。我々は音楽によって生きている。過酷な状況だが、音楽があれば生き残れる。辛抱しよう。
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【クラウド盤魔殿 第4弾 公開中!!】FREE ZINE『盤魔殿アマルガム』最新号公開!!!!

2020年07月23日 00時10分47秒 | 素晴らしき変態音楽


異端DJイベント『盤魔殿』のSoundcloud版『クラウド盤魔殿 第4弾 Disque Daemonium Soundcloud vol.4』は既にオープンしていますが、その告知の前に、Free Zine『盤魔殿アマルガム』最新号の一部を誌上公開(ダウンロード用電子版は明日掲載予定)。レアな音楽情報が満載です。

盤魔殿
Disque Daemonium
AMALGAM

Vol.29
“Infection de deuxième vague” issue


盤魔殿DJ 今月の1枚  
盤魔殿DJ陣が毎月お気に入りの音源をご紹介。こだわりの選盤からどんな世界が広がるかお楽しみください。

●DJ Athmodeus a.k.a. 持田保
PEOPLE’S TEMPLE CHOIR / He’s Able (Grey Matter)


一向に収束する気配ナッシングなコロナ騒動を受け「もはや元の世界に戻ることは不可能なのではないか?」「そもそもお前は元の世界に戻りたいのか??」なる想いが問われ続ける現在、人々が疑心暗鬼むき出しで揺られ続ける満員電車内で僕のスマホから爆音でプレイされているのがこの一枚だ。いわずもがな1978年11月18日、南米ガイアナの地に設立された宗教コミューン「人民寺院」で発生した914名集団自殺の実況録音作品である。そもそもは1973年カリフォルニアのクリスチャン・ゴスペル・レーベル”Brotherhood”からリリースされた人民寺院のソウル&ゴスペル音源に1993年英国のインチキ・レーベル”Grey Matter”が「偶然TEACレコーダーに録音されていた!」集団自殺音源を無理無理にニコイチ化したモノで、前半と後半の乖離によってもたらされる「天国と地獄」感がハンパない。女子供のリアルに泣き叫ぶ声をバックに「われわれがどんなに努力し、平和な生活を営もうと奴らはわれわれを自由にさせてはくれないのだ。奴らはわれわれを追いかけてきたし、嘘っぱちの証言をした。奴らはわれわれを根絶するまであきらめない。こんな苦痛を味わいながら生きるよりも、ここで安らかな眠りにつこうではないか!」とアジテートするジム・ジョーンズの叫びはあなたの心に何を訴えかけるだろうか。世界は暴力と妄想でできているし、時に人は暴力と妄想を愛と呼ぶ。スーサイドの無理心中バラッド”フランキー・ティアドロツプ”と同様に愛は惜しみなく奪う。


●DJ Bothis a.k.a. 山田遼
Singular Cleansweep Operations - Final Service (2012) CD Japan : Teito Sound Company


「Singular Cleansweep Operations」は、ドイツのパワー・エレクトロニクス、デス・インダストリアルデュオ「Operation Cleansweep」のメンバーI.B.によるソロプロジェクトである。本作の全体的な世界観としては、陰鬱で澱んだ電子音を基調とした荒凉たる音像と共に、不明瞭でネガティブなボイス・サンプリングを散りばめる手法により、人間の本質的な愚かさと絶望を誠実に描き出すことに成功している労作であり、特に5曲目の「Death In Order」では、恐らくは旧日本軍の軍事演習の音声であろう「気をつけ!」「全体、進め!」という日本語が虚しく木霊し、7曲目の「Revolutionary Suicide Council」では、適度に歪んだ焦燥的エレクトロニクスの中で、信者の集団自殺でお馴染みの「人民寺院」教祖ジム・ジョーンズの演説が淡々と繰り広げられる。
なお、本作は全12曲収録のCDが通常盤として一般流通しているが、実はDiscogsにも掲載されていない13曲目「Funeral」が収録されたCD-Rがセットになった2枚組の限定盤が存在する。戦時中、多くの若者を戦地へと押し遣り、国家のための死を肯定する準国歌として機能した「海行かば」をサンプリングした「Funeral」は、デス・インダストリアル史に残る名曲である故、この辺りの終末的闘争音楽に関心があれば是非探してみることをお勧めする。なお、筆者はこの限定盤を版元である「帝都音社」の横山氏から直接購入した。


●DJ Ipetam a.k.a. Rie fukuda
"そら" 白石民夫(2020)


風は少し湿り気を帯びていた。
日中に比べて気温も下がっており、上着を持って来なかったのを後悔した。
22時ぴったりに新宿のとある場所に行く、それだけの事が意外に難しくて、この日やっとだった。階段を登った先には誰もいない、どうしたら良いんだろう。。その時、少し離れた所から叫び声の様に聞こえた鋭い音。舞台は地上よりも高い所にある。ざわついた風に乗って聴こえて来る音は、都心の様々な雑音に混じりながらも決して埋もれず、恐ろしい主張を持って鳴り響く。
鳴らされているのはアルトサックス一本。
風と合奏している、そう感じた。ビル風か、気候のせいなのか、風が舞っていた。一本芯の通った力強い高音は、鋭い閃きを見せながらも高層ビル群と強い風に寄り添っていた。
ずっと疑問に感じていたが、歩道橋の上のあの場所を選ぶのは何か意味があるのだろうか。
聴いた感じでは、周囲の建物に反響し、自然なリバーブがかかるのではないかと思う。そして道路に沿って抜けて行く。この上ない心地よさである。街をステージにしたいのであれば、参考にすべきシチュエーションと思う。
二十分ほどであろうか。。演奏が終わり、その人はにこやかに周りを見渡した。
私は何も言えなかった。どんな称賛も陳腐になりそうで、余韻を台無しにしたくなくて、微笑みながらお金を差し出すしか、なかった。
何より録音が素晴らしく、カリヨン橋の上で聴いている印象そのままである。必聴。


●DJ Vaby a.k.a. 大場弘規
Ensemble Basiani / Georgia : Sacred and Secular Vocal Polyphony(CD)
 

かつては"グルジア"という名前で知られていた旧ソビエト連邦の構成国だった一つコーカサス地方の小さな国であるジョージア。4世紀にキリスト教を国教とした最初の国の1つであり、本作はその儀式や典礼で重要な役割を果たしてきたポリフォニー歌唱の記録である。本作に収録されているのはジョージアを代表する"アンサンブル・バシアニ"による録音で、オーストリアのチロルやアフリカの方でも聞けるファルセットと低音域を繰り返す土着の"ヨーデル"を軸とした驚くべきテクニックの歌唱を「これでもか!」と言うくらいに堪能出来ます。音色の変化、予期出来ない倍音の発生など、様々な手法をミックスしたこの国独特のポリフォニーは全人類全ての人々に聴いて頂きたい内容なのです。


●DJ BEKATAROU a.k.a. 伊藤元
ザ・スートンズ "ライブ"


本作は"ザ・スートンズ"が2014年にFOREST LIMITで行ったライブの記録である。彼らは奇しくもローリング・ストーンズが来日していたのと同じ時期に結成。メンバーはGuitar/Vocal:工藤冬里、Bass:西村卓也、Drums:高橋幾郎 という重鎮で録音は福岡俊樹氏、マスタリングは宇波拓氏、レーベルはuramado_records。僕はこのライブを観ていなかったのでこのように音源化してくれたことは嬉しい限りである。

色濃く沈む影のように動くベースや気怠さと熱情の同居するボーカルがやたらと胸を締め付け、風のようにスネアやハイハットを渡るドラミング…序盤から中盤にかけて徐々に脈動が大きくなり、僕の心拍は高まる。おわりへと向かう中、ゆったりとした音の層に覆われた胸はやがて仄かな暖色に温まる…

アルバムを通して聴く中で彼らの表現力はやはり流石で息を飲むが、それでもリラックスして聴けるのは音々が緩急豊かに揺らいで聴く者に程よい弛緩と緊張をもたらすからだろう。そうした意味でも彼らの音楽は生き生きとしているのだ…そして、それぞれが特定の役割を担い、全体の空気を表すというよりも3人の呼吸が伝える最高のロックンロールであるという印象を受けた。


●DJ Necronomicon a.k.a. 剛田武
長谷川きよし『いにしえ坂』


緊急事態宣言に伴う外出自粛期間中、ほとんど誰も外出せず自動車も走らない静かな世界で、もしこのまま死にゆくとすれば最後に聴く音楽は何がいいだろうか、と妄想した。世界の静寂を破るけたたましいノイズやフリージャズは言語道断、かといって静謐な讃美歌や中世音楽じゃ宗教的過ぎる。アンビエントやヒーリングミュージックは嘘臭いし、ポール(といえばモーリア)のラブサウンドでは甘ったるい。もっと優しく、世界の死滅に寄り添う音楽はないものか、と考えながらターンテーブルに乗せた100円レコードの第一音に筆者の死滅願望は凍りついた。それが1949年7月13日生まれの盲目のシンガーソングライター長谷川きよしの4thアルバムだった。バックを務めるのはフリージャズ・ドラマーとして高柳昌行や阿部薫らと共演する山崎弘を中心とするジャズ・セクステット。レーベルはBlack Sabbath、Gentle Giant、Affinity、Nucleus, Tudor Lodgeなど古き良きブリティッシュ・ヘヴィロックやプログレやフォークの宝庫Vertigo Records。一般的にフラメンコやボサボヴァのイメージの強い長谷川きよしだが、このアルバムのB面では放浪の吟遊詩人となり、世界の終末を弔う。壮大なイラン歌謡「ダリオ・ダリオ(海へ)」、早すぎたテクノフォーク「ハイウェイ」、伝説の女性ジャズシンガーPatty Watersの絶唱で知られる黒人哀歌「Black is the Colour of My True Love's Hair」、そしてどこにもない世界を目指して旅する放浪組曲「古(いにしえ)坂」。日本が誇るプログレッシヴ・フォークの金字塔であり、アフターCOVID-19の終末観が蔓延する現在にこそ再評価されるべき忘れられた傑作である。これほど豊潤な音楽作品が人知れず眠っている100円レコードコーナーこそ、音楽愛好家の心のオアシスに違いない。感染リスクを侵しても、毎日通うべきであろう。


●DJ Qliphoth a.k.a. 宇田川岳夫
Harry Roesliの作品について


Harry Roesli(ハリー・ロースリ)は1951年に生まれ2004年に死亡したインドネシアの音楽家。本名はDjauhar Zaharsjah Fachruddin Roesli(ザハルシャ・ファクルディン・ロースリ)。祖父は「近代インドネシア小説の父」とされる高名な作家で獣医のMarah Roesli(マラ・ロースリ)、父は陸軍少将Roeshan Roesli(ローシャン・ロースリ)で、ハリーは4男で末っ子だった。恵まれた家庭に生まれた彼はバンドン工科大学で航空工学を学ぶが、在学中にボブ・ディランの影響を受けてロックバンドHarry Roesli Gang(ハリー・ロースリ・ギャング)を結成、航空工学と並行して音楽を学び、1973年にデビューアルバムHarry Roesli Gangを発表。その後ジャカルタ美術教育研究所で学び、オランダのロッテルダム音楽院に奨学金を得て2年間留学するなどして、その才能を音楽方面に延ばした。また作家である祖父の影響を受けて文学も志す。彼は多種多様な作品を発表しているが、その大きな特徴はインドネシア語の歌詞とインドネシアの民族音楽とロックを融合したところである。主な作品はデビュー作Harry Roesli Gangと本作Titik Api、そしてロックオペラKen Arokである。以上の作品は現在Bandcampで聞くことができる上にレコードやCDとしても復刻されている。

さて、Titik Apiだが1976年にカセットのみでリリースしていた作品であり、近年LPリイシューがなされた。ロック、サイケデリック、プログレッシブ、ファンク、フォーク、ボサノヴァなど、様々な要素を混淆させたアートロックを下地に、ガムランの要素を大胆に取り入れた大傑作となっている。分厚いガムランの響きや、リフを効果的に活かした催眠的な反復、変拍子や転調を取り入れたプログレテイスト、ファンキーなリズム、メロウなメロディとハーモニーなどさまざまなヴァラエティに富んだサウンドが楽しめる上に全体が一つの叙事詩のような展開となっている。使用楽器もギター、ベース、シンセ、ドラムなどに、ガムランのみならず、アラブの擦弦楽器ラバーブや竹製打楽器アンクルン等を使用することで、西洋と東洋の出会いともいうべきものになっている。それぞれの楽曲における演奏/アレンジも独特の美しさがあり、これはインドネシアのJ・A・シーザーではないかと思ってしまう。

もう一つの傑作がロックオペラKen Arok(ケン・アロック)。ケン・アロックはイスラム教伝来以前のインドネシア中世の王朝シンガサリ朝の創始者であり、シヴァ神の化身と言われた実在の人物であるが、その生涯は謎と伝説に包まれている。卑賎の身分であったケン・アロックは、その実力で武将としての戦功をあげ、地方の領主トゥングル・アメトンに仕える。そしてトゥングル・アメトンの妃で光り輝く子宮を持ち、「王を生み出す女」である絶世の美女デデスと道ならぬ恋に落ちる。やがてケン・アロックはトゥングル・アメトンを殺害し、王位につき、デデスを我が物とし、武力でジャワ島を統一する。しかしケン・アロックはデデスの産んだ子供の出自に疑念を抱き、最後はその息子に殺害される。以上のような物語がハリー・ロースリの分厚い音楽性によって展開していく。
スハルト体制の下でハリー・ロースリの活動は抑圧されたものであったが、その作品には風刺や政治批判が込められていて、音楽を通じての抵抗運動が継続されていた。日本でいえばPANTAやJ・A・シーザーのような存在であり、Titik Apiは『邪宗門』、Ken Arokは『身毒丸』、デビュー作Harry Roesli Gangは『頭脳警察1st』といったところだろう。今回の復刻を機会に多くのリスナーが日本でも現れることを祈る。

本当は
リアル盤魔殿
やりたいが

<―――――――――――---- INFORMATION――――――――――――――>



7.25 Sat at ZUBAR @zubar_shibuya
19:00 - 23:00
"The Third Mind"
1st drink 1000 yen

LIVE
Rie Fukuda @Rnennepepe

DJ
DJ Keroppy a.k.a. ケロッピー前田
DJ Athmodeus a.k.a. 持田保 @clearbody
DJ TKD @dj_tkd
脳BRAIN @toplessdeath


*8.15@中野サンプラザ13F まんだらけ ありあるで予定していた、持田保×宇田川岳夫「あなたの聴かない世界vs唸る語る、盤魔殿」は新型コロナウィルス感染防止のため延期になりました。ご了承ください。

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