俺の庭を探検していてあまり興味のなかった種類の音楽と遭遇する機会が増えてきた。先日来ハマっているビートパンクもそのひとつと言えるが最近いわゆる「渋谷系」に興味を惹かれている。1990年代半ば渋谷HMVやWAVEなどの大型輸入盤店を発信源にJ-Waveのオンエアとクラブクアトロのコンサートの相乗効果で日本ポップスの最新型として隆盛を誇った。ニューウェイヴ、ネオアコ、ハウス、ヒップホップ、ソウル、ラウンジなどマニアックな音楽をごった煮にしたサウンドは面白くはあったがファッションを含め表面をなぞっただけのお手軽感とバブル崩壊に起因するあっけらかんとした諦念がいまひとつ心に刺さらなかった。大型CDショップに新譜と同列に過去のカタログが並ぶようになりそれまでのようにマニアじゃなくても幻の名(迷)盤が容易に入手できるようになったこと、DJカルチャーとサンプラーやMTRなど演奏・録音機材の普及により自分で演奏しなくてもコピー&ペイストで音楽が作れるようになったこと、そんな時代の変化が生んだスタイルだといえる。音楽的に特定のジャンルに限定されるものではないが現在「渋谷系」と括られるサウンドには共通した時代の匂いが染みついていることは間違いない。90年代当時はのめり込まなかった渋谷系の音楽に懐かしさと共に新鮮な息吹を感じるこの頃である。
●ピチカート・ファイヴ
小西康陽率いるおしゃれなクリエイティヴ音楽集団。1985年デビューだが「おしゃれ」のパブリック・イメージは1990年に野宮真貴が3代目ヴォーカリストとして加入してからのもの。信藤三雄のスタイリッシュなイメージ戦略によるレトロかつフューチャリスティックなデザインも相まって時代の寵児として君臨する。多くのフォロワーを生んだがやはりオリジネイターは別格。現在小西はレディメイド・ エンタテインメント代表取締役で売れっ子プロデューサー/作曲家、野宮はシンガーとして活躍中。小西のこだわりにあふれた才気溢れる名曲多し。
●フリッパーズ・ギター
オザケンこと小沢健二とコーネリアス=小山田圭吾によるデュオ・ユニット。日本ポップス史で「フリッパーズ以前/以後」という区分けをされるほど重要な存在。アルバムは3作しか残さなかったがネオアコを起点として様々な音楽要素を昇華した完成度の高いサウンドとベレー帽・ボーダーシャツ・ホワイトジーンズといった渋谷系を象徴するファッションセンスは高く評価したい。解散後オザケンは人気シンガーになり小山田はコーネリアスとして実験色豊かなポップサウンドを追求。J-POPシーンに多大な影響力を持つふたりの原点がフリッパーズであった。
●オリジナル・ラヴ
1985年に結成されたネオGSバンドThe Red Curtainを前進とする田島貴男によるポップグループ。ネオアコ、ギターロック、ネオソウル、ハウス、アシッドジャズ、ワールド・ミュージックなど様々な洋楽に影響された雑食スタイルで渋谷系の代名詞となる。作品によって音楽性が大きく異なるので注意されたい。おススメは「LOVE! LOVE! & LOVE!」(1991)「結晶 SOUL LIBERATION」(1992)「ELEVEN GRAFFITI」(1997)「L」(1998)「ビッグクランチ」(2000)。田島は現在ソロ弾き語りで活動中。
●カヒミ・カリィ
個人的に最も再評価しているのがカヒミちゃん。ウィスパーヴォイスが萌え系アニメの1000倍の破壊力で直激。これは犯罪、ヤヴァすぎ。レコ倫は即座に18禁指定にすべし!!!
キュートな女性シンガーが多い渋谷系を代表する歌姫カヒミ・カリィは1990年同じくカワイイ系シンガー嶺川貴子とのデュオでデビュー。1992年渋谷系インディーレーベル、クルーエル・レコーズから小山田圭吾プロデュースでソロ・デビュー。小山田のレーベル、トラットリアからも作品をリリースする。毒のある発言とフレンチファッションスタイルとエキゾチックな美貌を持ったサブカルアイドル。アニメ「ちびまる子ちゃん」主題歌でちびっ子にも人気。2000年以降は大友良英や菊池成孔、ジム・オルークなど前衛ジャズ/ロック方面での活動も多い。夫はタップダンサーの熊谷和徳。
●ラヴ・タンバリンズ
カヒミちゅわんと並ぶ渋谷系の歌姫ELLIEを擁するR&Bユニット。ELLIEの黒汁迸るヴォーカルが人気で1995年のデビュー・アルバムはインディーズでは異例の10万枚ヒットとなるが、ELLIEとギターの斎藤圭市との夫婦間の不和(表向きはメンバー間の音楽性の違い)により同年末に解散。ELLIE(現在eli)ははソロ・デビュー。のちのMisiaやUAを筆頭にした「ディーヴァ系」の元祖的存在である。R&Bは個人的には守備範囲外であるが渋谷系括りと思えば意外に楽しめる。ELLIEのダイナマイト・ボディはカヒミちゃんとは違った意味で刺激的。
渋谷系
電波系とは
違います
Part 1となっているのでお察しの通りPart 2もありマス!よりディープなShibuya-Kの世界にご案内いたします。