下山レコ発 BUG ME TENDER vol2
今最も要注目の大阪の"サイコデリシャス・ハード・ポア"バンド下山(Gezan)の1st フル・アルバム「かつてうたといわれたそれ」レコ発ライヴ東京編。出演は下山(Gezan)/ズボンズ/DODDODO/JON(犬)/カスッターズ【元木利尚+宮原秀一(サーファーズオフロマンチカ)+プンクボイ+JON(犬)+860(ロストフロッグ)+山本抗+田口史人(円盤)】。
大阪では2月12日にMELT BANANAや撃鉄など10バンドをゲストに迎えて大々的にレコ発ライヴが開催されたが、東京編も下山のメンバー自ら観たいアーティストを選んだイベントだった。観たことがあるのは下山とJON(犬)だけだったので未知のアーティストとの出会いを楽しみにしていた。
所用で開演時間に間に合わず、Basement Barについた時にはJON(犬)は終わり、DODDODOの最後の曲の途中だった。前回下山を観たのも同じ会場だったので軽いデジャヴ感がある。前回は八十八ヶ所巡礼やオワリカラといった人気バンドの出演するBeat Happeningのイベントだったので満員だったが、今回もそれに負けないくらいの動員。20代の若者が多い。入るといきなり物販コーナーに下山のドラムのシャーク・安江氏が座っていてちょっとビビる。
という訳で3番手のズボンズから参戦。活動歴17年でメジャー・レーベルからもCDをリリースしているベテラン・バンドだが音を聴くのもライヴを観るのも初めて。ギター&ヴォーカルのドン・マツオ氏の破天荒な演奏を核として女性キーボードを含む4人組。ファンキーでノリのいいビートにマツオ氏のジミヘン風のギターが暴れるハードロックは悪くない。後に出たバンドが強烈な個性派だったので比べれては悪いが、まあまあいい感じのミクスチャー・バンドという印象。イベント終了後にこの会場でプロモ・ビデオ撮影をするので興味のある人は残っていて、とのアナウンスがあった。
次のカスッターズは名前を聞いたことも無かったが、構成メンバーを見ればタダ者じゃないことが想像出来る。気が付くと横に下山のメンバーが立っていてライヴが始まるのを待っている。客席内にマイクを持った男性がいて、ステージ上はベース、ドラム、キーボードと一見DJ風の男性、変な被り物をしたヴォーカリスト、熊のぬいぐるみを持った女性の7人組。のっけから想定外のメチャクチャなパフォーマンスに度肝を抜かれる。客席の男性はマイクで叫びながら客の中に突っ込む。DJかと思った男性はLPレコードをジャケットから出しては次々叩き割る。多分これが田口氏だろう。ぬいぐるみを持った女性はひたすら狂ったように踊りまくる。着ぐるみを脱いだJON(犬)さんである。オルガンを弾きながら優しい歌を聴かせるいつもの姿からは想像もつかない弾けぶり。とにかく全員が無軌道に暴れまくるステージは非常階段のファンなら面白いだろう。後半は客をステージに上げてマイクやベースを託し、客席にシンバルとタムを運んで客にドラム・スティックを渡し叩かせる。私もスティックを受け取って少し参加し、近くいた女性客にそれを渡したら壊れかけのテープレコーダーズのゆさ嬢だった(w 30分間の混乱とばか騒ぎが嵐のように過ぎ去った。あとでネットで調べてみたら1995年に一度だけライヴを行った伝説のスカムバンドで、ゲリラ的な活動のため滅多に観ることが出来ないレアな存在とのこと。今回下山のメンバーの強いリクエストで参加が実現したらしい。観れたのは幸運だった。一度観れば充分だけどネ。
最後に下山(Gezan)。このブログで彼らのデビュー・アルバムを紹介した時に「マスコミに持ち上げられる前に裸の下山を体験して欲しい」と書いたのだが、彼らの演奏はそんな懸念を吹き飛ばして余りあるもの。ステージ前を若い女性ファンが埋めていたのは予想外だったが、全裸のベーシスト、カルロス・尾崎・サンタナ氏、グラム風の衣装がアリス・クーパーを思わせるギターのイーグル・タカ氏、強面のドラマー、シャーク・安江 ウォーホール氏、フロントマンの三島由紀夫の狂った生まれ変わりマヒトゥ・ザ・ピーポー氏の放出するエネルギーはいくら激しく踊りまくっても追いつかない強烈さで観る者に迫ってくる。先ほどのカスッターズはひたすら暴れることに専念したパフォーマンスだったが、下山の場合はもっと自然体の狂気が内包されていてロック芸術としては正統派と言っていいのではないかと思う。本編の最後に演奏された10分を超える壮大なバラード「春の膝」は圧巻だった。
アンコールではいつも通り客席へメンバー全員が飛び込む暴力演奏。観るのは2度目だから今回は冷静に(?)撮影出来たので彼らの傍若無人ぶりをご覧頂きたい。そして「ベジタリアンをぶっ飛ばせ」というタイトルのラスト・ナンバーでは「俺は命を張っているからな!」とマヒトゥ氏がMC、セックス・ピストルズの「アナーキー・イン・ザ・UK」を元ネタにした曲。こいつらは本物だ、と実感した。アンコールの途中から突然非常ベルが鳴り出し終演後も響いていたのは神の警告か。
日本の
ロックの未来
知るもんか
5月12日にはタワーレコード梅田NU茶屋町店でインストアライヴをやるそうだが、店内が破壊されないかなとちょっと心配かつ楽しみでもある。どなたか大阪在住の方レポートしていただけませんかねぇ?