<WEITBLICK>
ベルティーニのマーラー名門オケとの共演!
マーラーの権威ベルティーニは、名演を世界中で繰り広げておりますが、ここ
に登場する名演群は、ヨーロッパ有数の名門オケとの共演でその実力は既出の
盤を上回るとさえ言えます。マーラーに取組み始めた初期の第6番「悲劇的」
はぎらつくナイフのような鋭利な演奏で、凄いです。第4番は最晩年のライヴ
でプライヴェート盤が、大変な評判となっておりました。そして、ウィーン響
との共演となる第5番、第9番は、オケの音色とホールトーンの美しさを最大限
に生かした魅惑の名演です。何れもライナーノートは許光俊氏による詳細な演
奏分析です。英語、日本語、ドイツ語によるライナーノート付。
SSS0074/75-2 2枚組 \3960
(1)マーラー:交響曲第4番
(2)マーラー:交響曲第6番「悲劇的」
ガリー・ベルティーニ指揮
ベルリン・ドイツ交響楽団、
カミラ・ニルンド(S)
(1)2004年2月29日フィルハーモニー・ベルリン、デジタル・ライヴ録音
(2)1973年4月30日フィルハーモニー・ベルリン、ステレオ・ライヴ録音
最晩年までエネルギッシュな活動を繰り広げた巨匠ベルティーニのマーラー名
演集。超名演としてCD化が熱望されていた第4番。マーラーを積極的に取り上
げた初期の第6番「悲劇的」の刺激に満ちた名演を収録しました。いずれも高
音質です。
ライナーノートより:
第4番について:第3楽章の14分あたりからを聴いてみるがいい。感覚的な美し
さと内面性が見事に一体化している。ベルリン・ドイツ交響楽団は、決してベ
ルティーニが特別親しかったオーケストラではない。にもかかわらず、完璧に
ベルティーニの音楽が鳴っている。そして16分過ぎ、弱音からのいきなりの爆
発。それはあたかも、突然天国の扉が開かれるかのような荘厳な一瞬だが、こ
こでのすさまじい響きは筆舌に尽くしがたいものがあった。この録音でもその
片鱗はうかがえよう。いったいオーケストラというものがどれほどものすごい
音を出すことができるか、私は本当に久しぶりで感じ入った。仮にもしこの一
瞬だけしか聴いていなかったとしても、私はこの指揮者を忘れることができな
いだろう。
第6番について:この演奏は冒頭からして異常な緊張感と切迫感を持っている。
まるで獲物を追い込んでいくようなテンポ。情け容赦なく刻まれるリズム。透
明で明快な響き。潔癖なフレージング。それなのに単に外側を整えただけの醒
めた演奏ではない。熱狂的なまでに心が高ぶっている。速めのテンポだが、旋
律は窒息せず、ギリギリまで歌われている。
SSS0080-2 \1980
マーラー:交響曲第5番
ガリー・ベルティーニ指揮
ウィーン交響楽団
1983年4月12日ムジーク・フェラインザール、ステレオ・ライヴ録音
ベルティーニは、マーラーの交響曲全曲をケルン、東京、ウィーンで指揮しま
した。ウィーンでのパートナーは密接な関係を誇ったウィーン交響楽団です。
木管のウィーンサウンドが実に魅力的です。
ライナーノートより:有名なアダージェットでも表現力は全開だ。ことに6分
過ぎからは、あまりにもロマンティックでとろけるような夢幻美が広がる。テ
ンポを自由に伸縮させながら柔らかく弱い音で紡がれる、月夜に映える美しさ
とでも言おうか。甘美さや陶酔という点では、この楽章の究極の演奏のひとつ
と言ってよいだろう。特に終わりの3分ほどは恍惚としながらも不安や孤独や
寂しさが交叉して曰く言い難い味わいを醸し出して絶品だ。
SSS0081-2 2枚組(1枚分価格) \1980
マーラー:交響曲第9番
ガリー・ベルティーニ指揮ウィーン交響楽団
1985年2月3日ムジーク・フェラインザール、ステレオ・ライヴ録音
晩年は、快速テンポを採用することも多かったベルティーニですが、第9番に
関しては悠然とした遅いテンポを守りました。当演奏も究極の美演で、耽美的
マーラーの最右翼と申せましょう。こういう場合にウィーン響の音色、ムジー
クフェラインのホールトーンが最適である証拠となっております。
ライナーノートより:全曲を通じてもっとも聴きごたえがあるのはフィナーレ
であろう。たっぷり量感がある、しかし柔らかな弦楽器の響きが楽しめる。会
場のムジーク・フェラインザールではさぞや美しく鳴ったに違いないと想像さ
れる。絶望や終末感は薄く、表情は意外にも明るい。ベルティーニのマーラー
演奏は、多くの場合、他の指揮者たちよりも肯定的な色合いを帯びている。や
さしげな慰撫の感じられるこのフィナーレはその典型的な例だ。コーダに至っ
ては甘美な微笑のようですらある。あるいはこの豊麗な演奏は、この曲になじ
みがない人にとってはもっとも親しみやすいものかもしれない。
SSS0083-2 \1980
ベートーヴェン: 交響曲第9番「合唱」
クルト・ザンデルリング指揮
ベルリン交響楽団(旧東)、
ベルリン放送合唱団、ベルリン国立歌劇場合唱団、
ベルリン・コミッシェ・オパー合唱団、
エヴァ・マリア・ブンドシュー(S)、ウタ・プリエフ(Ms)、
ペーター・シュライアー(T)、テオ・アダム(Bs)
録音:1987年10月23日ベルリン・ドイツ民主共和国会館、
ステレオ・ライヴ
巨匠ザンデルリンクの第9ライヴ。ベルリン市制750周年を記念した祝賀演奏会。
東ドイツ(DDR=ドイツ民主共和国)では最大の音楽イベントと申せましょう。
独唱歌手も東独系の超大物が用意されました。手兵ベルリン交響楽団を存分に
駆使し、強靭な造型を堅持しつつ、ザンデルリンクとしては、かなり音量、テ
ンポの変化を与えたドラマティックな演奏です。フィルハーモニア管とのベタ
ッとしたはっきりしない演奏とは正反対の緊張感に満ちた、そして気迫の籠も
った怖ろしいまでの威容を誇る超名演です。ザンデルリンク先生がお孫さん達
へのクリスマス・プレゼントにしたいと仰ったために緊急リリースとなりまし
た。英語、日本語、ドイツ語によるライナーノート付。
<Glossa>
GCD 921406 \2300
ジョゼッフォ・ツァルリーノ(c.1517-1590):
ソロモンの雅歌/聖霊来たりたまえ/我らが父よ-アヴェ・マリア
マイケル・ヌーン(指揮)、アンサンブル・プラス・ウルトラ
1517年頃にイタリアのキオッジャで生まれたと伝えられているジョゼッフォ・
ツァルリーノは特に音楽理論の分野で才能を発揮し、16世紀における対位法理
論の第1人者として当時の音楽の発展に多大な影響を与えたと言われている。
またツァルリーノの著書「調和概論」はこれまでの音楽史においても最も重要
な著作の1つとされており、当時のヴェネツィア楽派の中でも突出した存在感を
放っていたことが窺い知れる。
1540年代後期に書かれた10曲のモテットで構成される「ソロモンの雅歌」と2つ
のモテットを収録した宗教作品集は、ツァルリーノの作曲家としての卓越した
才能を証明する貴重かつ重要な録音となる。
ルネサンス時代、その中でも屈指の名演と名高いゲレーロのレクイエム
(GCD 921402)を筆頭としたスペインの作品を数多く手懸けてきたマイケル・ヌ
ーン&アンサンブル・プラス・ウルトラ。
ルネサンス音楽の演奏と解釈には絶大な実績と評価を持つだけに、今回のイタ
リア・ルネサンスの録音も演奏、資料の両面で重宝されることだろう。グロッ
サらしい意義深いリリースである。2005年5月の録音。
<Avie>
AV 2145 \2180
ジョン・ロード(1941-):ダラム・コンチェルト
マシュー・バーリー(チェロ)、ジョン・ロード(ハモンドオルガン)、
ルース・パーマー(ヴァイオリン)、
キャスリン・ティッケル(ノーザンブリアン・パイプ)、
ミッシャ・ダムフ(指揮)、
ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニック管弦楽団
イギリスのダラム大学の創設175周年を記念して作曲された「ダラム・コンチェ
ルト」。この作品の作曲者は、なんと全世界を熱狂させたハード・ロック・バ
ンド「ディープ・パープル」の創設メンバーであり、1976年の解散までキーボ
ードとして活躍したジョン・ロードなのである!
女王ムローヴァの夫君でありイギリスのトップ・チェリストの1人として名を
馳せるマシュー・バーリー、自ら製作したCD(QTZ 2045)がクラシカル・ブリッ
ト・アウォード2007に輝き話題を呼んだ若きヴァイオリン奏者ルース・パーマ
ー、イングランド北部の伝統楽器ノーザンブリアン・パイプの名手として絶大
な人気を誇る女流奏者キャスリン・ティッケル、そして作曲者ジョン・ロード
自身が弾くハモンドオルガンといった4人のソリストとオーケストラが効果的
に絡み合う「ダラム・コンチェルト」。
第1部-朝、第2部-午後、第3部-夕暮れの3部で構成されており、世界文化遺産
に登録されているダラム大聖堂やダラム城があるダラムの町並みが目に浮かぶ
ような雄大な作品に仕上がっている。
ロックのジョン・ロード、ワールドミュージックのキャスリン・ティッケル、
そしてクラシックのアーティストたちがジャンルのしがらみに囚われることな
く音楽を奏でる姿は素晴らしい。
<Hyperion>
CDA 67630 \2180
ロマンティック・ピアノ・コンチェルト・シリーズ第44集 ――
ヘンリク・メルツェル(1869-1928):
ピアノ協奏曲第1番ホ短調/同第2番ハ短調
ジョナサン・プロウライト(ピアノ)、
クリストフ・ケーニッヒ(指揮)、BBCスコティッシュ交響楽団
前作ベネット&ベイシュの協奏曲を収録した第43集(CDA 67595)に続くのは、
ポーランドのコンポーザー・ピアニスト、ヘンリク・メルツェル。
メルツェルは当時のポーランドを代表するピアニストとしてアントン・ルビン
シテイン・コンクール、パデレフスキ・コンクールなどの入賞を経験。教育者
としてはワルシャワ音楽院の教授、院長を務めるなど、ポーランドの音楽の水
準を一気に引き上げた功労者である。
ピアノ協奏曲第1番はリストとショパンのスタイルを踏襲したスタイルで書か
れた作品であり、スリリングなフィナーレが特徴的。対する第2番はポーラン
ドの旋律を創造性豊かに用いて1898年に作曲された作品である。
高度な技巧とスタミナを要求されるメルツェルの協奏曲に挑むのは英国の実力
者ジョナサン・プロウライト。プロウライトはハイペリオンにストヨフスキの
協奏曲とソロ作品、パデレフスキのソロ作品を録音するなど、ポーランドの音
楽に凄まじいまでの情熱を注ぎ込んでおり今回の起用はまさに適役。ロマンと
情熱が同居するポーランドのピアノ協奏曲、大注目!
CDA 67617 \2180
アレッサンドロ・ストラデッラ(1639-1682):オラトリオ《洗礼者聖ヨハネ》
アンケ・ヘルマン(ソプラノ)、マルティン・オロ(カウンターテナー)、
アントニオ・アベテ(バス)、フレドリク・アクセルベルク(テノール)、
エレーナ・チェッチィ・フェディ(ソプラノ)、
アレッサンドロ・デ・マルキ(指揮)、
アカデミア・モンティス・レガリス
合奏協奏曲様式の土台を誕生させるなど、17世紀イタリア・バロックを代表す
る大作曲家として歴史にその名を残すアレッサンドロ・ストラデッラ。
「洗礼者聖ヨハネ」や「スザンナ」といった優れたオラトリオによって当時の
音楽に大きな功績を残したストラデッラだったが、私生活は波乱に満ちており
枢機卿の怒りを買いローマから追放される。その後は貴族の愛人に手を出すな
ど以前からの女性関係で相変わらず周囲を騒がせ、最期は刺客に暗殺されてし
まうという波乱万丈の生涯を送ったことでも有名な人物である。
現代有数のイタリア・バロック音楽、特にヴィヴァルディの権威としての名声
を確立したアレッサンドロ・デ・マルキがハイペリオンに初登場!オーケスト
ラはもちろんこれまでにデ・マルキとのコンビで多くの成功を収めてきた若手
古楽器奏者の精鋭集団アカデミア・モンティス・レガリス。
ハイペリオンでの最初の録音がストラデッラ、しかも代表作「洗礼者聖ヨハ
ネ」という組み合わせは、両者の今後の更なる快進撃を予感させるに相応しい
プログラムであり期待は自然と膨らんでしまう!
CDA 67648 \2180
ダウランドのリュート歌曲集とブリテンのノクターナル ――
J・ダウランド:
騒ぎ立つ思いよ、愛の神よ,かつて出会ったことがあるか、悲しみよとどまれ、
去れ自己愛の若者たちよ、ファンタジア第7番(リュート独奏)、来たれ甘い愛
よ、眠れ定まらぬ思いよ
B・ブリテン:ノクターナル
J・ダウランド:
来たれ深き眠り、流れよわが涙、わが嘆き、私の嘆きに心が動くなら、
ディゴリー・パイパー大佐のガリアード(リュート独奏)、この思い遂げられ
ぬとしたらどうしよう、君たち愛と運命に、今こそ別れねばならぬ、暗闇に
住まわしておくれ
マーク・パドモア(テノール)、エリザベス・ケニー(リュート)、
クレイグ・オグデン(ギター)
バロック音楽界で綺羅星の如き輝きを放つ世界有数のテノール歌手マーク・パ
ドモア。20世紀イギリスの歌曲集「この子らはだれか?」(CDA 67459)以来と
なるハイペリオンからの久々のリリースはダウランド。
定評あるパドモアの豊かな歌声と表現力、エリザベス・ケニーのリュートがダ
ウランドの世界を物悲しく、そして美しく描いている。またパドモアとケニー
はダウランドの手稿譜による異版も取り入れており、さらに魅力的な演奏を実
現させている。
またジュリアン・ブリームのために1963年に作曲されたブリテンのノクターナ
ルを演奏するのは、世界を駆けるイギリス人ギタリスト、クレイグ・オグデ
ン。こちらも期待大!
CDA 67645 \2180
G・マーラー:
歌曲集《子供の不思議な角笛》より
死んだ少年鼓手/高き知性への讃歌/ラインの伝説/塔に囚われ迫害を受ける
ものの歌/トランペットが美しく鳴り響くところ/番兵の夜の歌/この世の生
活/魚に説教するパドゥアの聖アントニウス/この歌をこしらえたのは誰だろ
う/不幸な時の慰め/むだな骨折り/少年の鼓手/原光
シュテファン・ゲンツ(バリトン)、ロジャー・ヴィニョールズ(ピアノ)
旧東ドイツで生まれた世界的な歌手兄弟であるゲンツ兄弟の弟、シュテファン
・ゲンツのマーラー歌曲集第2集。
ゲンツは聖トーマス教会聖歌隊のメンバーとしても活躍した経歴を持ち、フィ
ッシャー=ディースカウやシュヴァルツコップから伝えられた歌唱力で世界を
舞台に活躍しているバリトン奏者として高い人気を誇っている。
伴奏のピアノは第1集に引き続いてゲンツが全幅の信頼を寄せるロジャー・
ヴィニョールズが務めており、管弦楽伴奏を凌駕するスケールの大きさと繊細
な表現でゲンツの歌声を支えている。
CDA 67606 \2180
アンリ・エルツ(1803-1888):ピアノ作品集 ――
創作主題第2番による主題と変奏Op.81/ロッシーニの歌劇《シンデレラ》の
「悲しみは消えて」による変奏曲Op.60/3つの性格的な小品Op.45/バラード
第1番Op.117-1/無窮動Op.91-3/劇的幻想曲Op.89/バラード第2番Op.117-2
/幻想曲と変奏曲Op.158
フィリップ・マーティン(ピアノ)
ハイペリオンの超人気シリーズ「ロマンティック・ピアノ・コンチェルト」シ
リーズからも2枚の録音がリリースされているアンリ・エルツの独奏ピアノ作
品集。19世紀フランスの作曲家であるアンリ・エルツは著名で人気のあった
ヴィルトゥオーソだったとされており、パリ音楽院でピアノ科の教授をつとめ
るかたわら、ピアノ製作にも興味を示し自分で工場を建設、経営までしてし
まったという異色の経歴の持ち主なのである。
演奏は8枚に及ぶゴットシャルクのピアノ作品集でリスナーを沸かせたダブリ
ン生まれのピアノ奏者フィリップ・マーティン。フランスの知られざるロマ
ン派作曲家のピアノ作品をどのように聴かせてくれるのか、楽しみなアルバ
ムが登場。
ベルティーニのマーラー名門オケとの共演!
マーラーの権威ベルティーニは、名演を世界中で繰り広げておりますが、ここ
に登場する名演群は、ヨーロッパ有数の名門オケとの共演でその実力は既出の
盤を上回るとさえ言えます。マーラーに取組み始めた初期の第6番「悲劇的」
はぎらつくナイフのような鋭利な演奏で、凄いです。第4番は最晩年のライヴ
でプライヴェート盤が、大変な評判となっておりました。そして、ウィーン響
との共演となる第5番、第9番は、オケの音色とホールトーンの美しさを最大限
に生かした魅惑の名演です。何れもライナーノートは許光俊氏による詳細な演
奏分析です。英語、日本語、ドイツ語によるライナーノート付。
SSS0074/75-2 2枚組 \3960
(1)マーラー:交響曲第4番
(2)マーラー:交響曲第6番「悲劇的」
ガリー・ベルティーニ指揮
ベルリン・ドイツ交響楽団、
カミラ・ニルンド(S)
(1)2004年2月29日フィルハーモニー・ベルリン、デジタル・ライヴ録音
(2)1973年4月30日フィルハーモニー・ベルリン、ステレオ・ライヴ録音
最晩年までエネルギッシュな活動を繰り広げた巨匠ベルティーニのマーラー名
演集。超名演としてCD化が熱望されていた第4番。マーラーを積極的に取り上
げた初期の第6番「悲劇的」の刺激に満ちた名演を収録しました。いずれも高
音質です。
ライナーノートより:
第4番について:第3楽章の14分あたりからを聴いてみるがいい。感覚的な美し
さと内面性が見事に一体化している。ベルリン・ドイツ交響楽団は、決してベ
ルティーニが特別親しかったオーケストラではない。にもかかわらず、完璧に
ベルティーニの音楽が鳴っている。そして16分過ぎ、弱音からのいきなりの爆
発。それはあたかも、突然天国の扉が開かれるかのような荘厳な一瞬だが、こ
こでのすさまじい響きは筆舌に尽くしがたいものがあった。この録音でもその
片鱗はうかがえよう。いったいオーケストラというものがどれほどものすごい
音を出すことができるか、私は本当に久しぶりで感じ入った。仮にもしこの一
瞬だけしか聴いていなかったとしても、私はこの指揮者を忘れることができな
いだろう。
第6番について:この演奏は冒頭からして異常な緊張感と切迫感を持っている。
まるで獲物を追い込んでいくようなテンポ。情け容赦なく刻まれるリズム。透
明で明快な響き。潔癖なフレージング。それなのに単に外側を整えただけの醒
めた演奏ではない。熱狂的なまでに心が高ぶっている。速めのテンポだが、旋
律は窒息せず、ギリギリまで歌われている。
SSS0080-2 \1980
マーラー:交響曲第5番
ガリー・ベルティーニ指揮
ウィーン交響楽団
1983年4月12日ムジーク・フェラインザール、ステレオ・ライヴ録音
ベルティーニは、マーラーの交響曲全曲をケルン、東京、ウィーンで指揮しま
した。ウィーンでのパートナーは密接な関係を誇ったウィーン交響楽団です。
木管のウィーンサウンドが実に魅力的です。
ライナーノートより:有名なアダージェットでも表現力は全開だ。ことに6分
過ぎからは、あまりにもロマンティックでとろけるような夢幻美が広がる。テ
ンポを自由に伸縮させながら柔らかく弱い音で紡がれる、月夜に映える美しさ
とでも言おうか。甘美さや陶酔という点では、この楽章の究極の演奏のひとつ
と言ってよいだろう。特に終わりの3分ほどは恍惚としながらも不安や孤独や
寂しさが交叉して曰く言い難い味わいを醸し出して絶品だ。
SSS0081-2 2枚組(1枚分価格) \1980
マーラー:交響曲第9番
ガリー・ベルティーニ指揮ウィーン交響楽団
1985年2月3日ムジーク・フェラインザール、ステレオ・ライヴ録音
晩年は、快速テンポを採用することも多かったベルティーニですが、第9番に
関しては悠然とした遅いテンポを守りました。当演奏も究極の美演で、耽美的
マーラーの最右翼と申せましょう。こういう場合にウィーン響の音色、ムジー
クフェラインのホールトーンが最適である証拠となっております。
ライナーノートより:全曲を通じてもっとも聴きごたえがあるのはフィナーレ
であろう。たっぷり量感がある、しかし柔らかな弦楽器の響きが楽しめる。会
場のムジーク・フェラインザールではさぞや美しく鳴ったに違いないと想像さ
れる。絶望や終末感は薄く、表情は意外にも明るい。ベルティーニのマーラー
演奏は、多くの場合、他の指揮者たちよりも肯定的な色合いを帯びている。や
さしげな慰撫の感じられるこのフィナーレはその典型的な例だ。コーダに至っ
ては甘美な微笑のようですらある。あるいはこの豊麗な演奏は、この曲になじ
みがない人にとってはもっとも親しみやすいものかもしれない。
SSS0083-2 \1980
ベートーヴェン: 交響曲第9番「合唱」
クルト・ザンデルリング指揮
ベルリン交響楽団(旧東)、
ベルリン放送合唱団、ベルリン国立歌劇場合唱団、
ベルリン・コミッシェ・オパー合唱団、
エヴァ・マリア・ブンドシュー(S)、ウタ・プリエフ(Ms)、
ペーター・シュライアー(T)、テオ・アダム(Bs)
録音:1987年10月23日ベルリン・ドイツ民主共和国会館、
ステレオ・ライヴ
巨匠ザンデルリンクの第9ライヴ。ベルリン市制750周年を記念した祝賀演奏会。
東ドイツ(DDR=ドイツ民主共和国)では最大の音楽イベントと申せましょう。
独唱歌手も東独系の超大物が用意されました。手兵ベルリン交響楽団を存分に
駆使し、強靭な造型を堅持しつつ、ザンデルリンクとしては、かなり音量、テ
ンポの変化を与えたドラマティックな演奏です。フィルハーモニア管とのベタ
ッとしたはっきりしない演奏とは正反対の緊張感に満ちた、そして気迫の籠も
った怖ろしいまでの威容を誇る超名演です。ザンデルリンク先生がお孫さん達
へのクリスマス・プレゼントにしたいと仰ったために緊急リリースとなりまし
た。英語、日本語、ドイツ語によるライナーノート付。
<Glossa>
GCD 921406 \2300
ジョゼッフォ・ツァルリーノ(c.1517-1590):
ソロモンの雅歌/聖霊来たりたまえ/我らが父よ-アヴェ・マリア
マイケル・ヌーン(指揮)、アンサンブル・プラス・ウルトラ
1517年頃にイタリアのキオッジャで生まれたと伝えられているジョゼッフォ・
ツァルリーノは特に音楽理論の分野で才能を発揮し、16世紀における対位法理
論の第1人者として当時の音楽の発展に多大な影響を与えたと言われている。
またツァルリーノの著書「調和概論」はこれまでの音楽史においても最も重要
な著作の1つとされており、当時のヴェネツィア楽派の中でも突出した存在感を
放っていたことが窺い知れる。
1540年代後期に書かれた10曲のモテットで構成される「ソロモンの雅歌」と2つ
のモテットを収録した宗教作品集は、ツァルリーノの作曲家としての卓越した
才能を証明する貴重かつ重要な録音となる。
ルネサンス時代、その中でも屈指の名演と名高いゲレーロのレクイエム
(GCD 921402)を筆頭としたスペインの作品を数多く手懸けてきたマイケル・ヌ
ーン&アンサンブル・プラス・ウルトラ。
ルネサンス音楽の演奏と解釈には絶大な実績と評価を持つだけに、今回のイタ
リア・ルネサンスの録音も演奏、資料の両面で重宝されることだろう。グロッ
サらしい意義深いリリースである。2005年5月の録音。
<Avie>
AV 2145 \2180
ジョン・ロード(1941-):ダラム・コンチェルト
マシュー・バーリー(チェロ)、ジョン・ロード(ハモンドオルガン)、
ルース・パーマー(ヴァイオリン)、
キャスリン・ティッケル(ノーザンブリアン・パイプ)、
ミッシャ・ダムフ(指揮)、
ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニック管弦楽団
イギリスのダラム大学の創設175周年を記念して作曲された「ダラム・コンチェ
ルト」。この作品の作曲者は、なんと全世界を熱狂させたハード・ロック・バ
ンド「ディープ・パープル」の創設メンバーであり、1976年の解散までキーボ
ードとして活躍したジョン・ロードなのである!
女王ムローヴァの夫君でありイギリスのトップ・チェリストの1人として名を
馳せるマシュー・バーリー、自ら製作したCD(QTZ 2045)がクラシカル・ブリッ
ト・アウォード2007に輝き話題を呼んだ若きヴァイオリン奏者ルース・パーマ
ー、イングランド北部の伝統楽器ノーザンブリアン・パイプの名手として絶大
な人気を誇る女流奏者キャスリン・ティッケル、そして作曲者ジョン・ロード
自身が弾くハモンドオルガンといった4人のソリストとオーケストラが効果的
に絡み合う「ダラム・コンチェルト」。
第1部-朝、第2部-午後、第3部-夕暮れの3部で構成されており、世界文化遺産
に登録されているダラム大聖堂やダラム城があるダラムの町並みが目に浮かぶ
ような雄大な作品に仕上がっている。
ロックのジョン・ロード、ワールドミュージックのキャスリン・ティッケル、
そしてクラシックのアーティストたちがジャンルのしがらみに囚われることな
く音楽を奏でる姿は素晴らしい。
<Hyperion>
CDA 67630 \2180
ロマンティック・ピアノ・コンチェルト・シリーズ第44集 ――
ヘンリク・メルツェル(1869-1928):
ピアノ協奏曲第1番ホ短調/同第2番ハ短調
ジョナサン・プロウライト(ピアノ)、
クリストフ・ケーニッヒ(指揮)、BBCスコティッシュ交響楽団
前作ベネット&ベイシュの協奏曲を収録した第43集(CDA 67595)に続くのは、
ポーランドのコンポーザー・ピアニスト、ヘンリク・メルツェル。
メルツェルは当時のポーランドを代表するピアニストとしてアントン・ルビン
シテイン・コンクール、パデレフスキ・コンクールなどの入賞を経験。教育者
としてはワルシャワ音楽院の教授、院長を務めるなど、ポーランドの音楽の水
準を一気に引き上げた功労者である。
ピアノ協奏曲第1番はリストとショパンのスタイルを踏襲したスタイルで書か
れた作品であり、スリリングなフィナーレが特徴的。対する第2番はポーラン
ドの旋律を創造性豊かに用いて1898年に作曲された作品である。
高度な技巧とスタミナを要求されるメルツェルの協奏曲に挑むのは英国の実力
者ジョナサン・プロウライト。プロウライトはハイペリオンにストヨフスキの
協奏曲とソロ作品、パデレフスキのソロ作品を録音するなど、ポーランドの音
楽に凄まじいまでの情熱を注ぎ込んでおり今回の起用はまさに適役。ロマンと
情熱が同居するポーランドのピアノ協奏曲、大注目!
CDA 67617 \2180
アレッサンドロ・ストラデッラ(1639-1682):オラトリオ《洗礼者聖ヨハネ》
アンケ・ヘルマン(ソプラノ)、マルティン・オロ(カウンターテナー)、
アントニオ・アベテ(バス)、フレドリク・アクセルベルク(テノール)、
エレーナ・チェッチィ・フェディ(ソプラノ)、
アレッサンドロ・デ・マルキ(指揮)、
アカデミア・モンティス・レガリス
合奏協奏曲様式の土台を誕生させるなど、17世紀イタリア・バロックを代表す
る大作曲家として歴史にその名を残すアレッサンドロ・ストラデッラ。
「洗礼者聖ヨハネ」や「スザンナ」といった優れたオラトリオによって当時の
音楽に大きな功績を残したストラデッラだったが、私生活は波乱に満ちており
枢機卿の怒りを買いローマから追放される。その後は貴族の愛人に手を出すな
ど以前からの女性関係で相変わらず周囲を騒がせ、最期は刺客に暗殺されてし
まうという波乱万丈の生涯を送ったことでも有名な人物である。
現代有数のイタリア・バロック音楽、特にヴィヴァルディの権威としての名声
を確立したアレッサンドロ・デ・マルキがハイペリオンに初登場!オーケスト
ラはもちろんこれまでにデ・マルキとのコンビで多くの成功を収めてきた若手
古楽器奏者の精鋭集団アカデミア・モンティス・レガリス。
ハイペリオンでの最初の録音がストラデッラ、しかも代表作「洗礼者聖ヨハ
ネ」という組み合わせは、両者の今後の更なる快進撃を予感させるに相応しい
プログラムであり期待は自然と膨らんでしまう!
CDA 67648 \2180
ダウランドのリュート歌曲集とブリテンのノクターナル ――
J・ダウランド:
騒ぎ立つ思いよ、愛の神よ,かつて出会ったことがあるか、悲しみよとどまれ、
去れ自己愛の若者たちよ、ファンタジア第7番(リュート独奏)、来たれ甘い愛
よ、眠れ定まらぬ思いよ
B・ブリテン:ノクターナル
J・ダウランド:
来たれ深き眠り、流れよわが涙、わが嘆き、私の嘆きに心が動くなら、
ディゴリー・パイパー大佐のガリアード(リュート独奏)、この思い遂げられ
ぬとしたらどうしよう、君たち愛と運命に、今こそ別れねばならぬ、暗闇に
住まわしておくれ
マーク・パドモア(テノール)、エリザベス・ケニー(リュート)、
クレイグ・オグデン(ギター)
バロック音楽界で綺羅星の如き輝きを放つ世界有数のテノール歌手マーク・パ
ドモア。20世紀イギリスの歌曲集「この子らはだれか?」(CDA 67459)以来と
なるハイペリオンからの久々のリリースはダウランド。
定評あるパドモアの豊かな歌声と表現力、エリザベス・ケニーのリュートがダ
ウランドの世界を物悲しく、そして美しく描いている。またパドモアとケニー
はダウランドの手稿譜による異版も取り入れており、さらに魅力的な演奏を実
現させている。
またジュリアン・ブリームのために1963年に作曲されたブリテンのノクターナ
ルを演奏するのは、世界を駆けるイギリス人ギタリスト、クレイグ・オグデ
ン。こちらも期待大!
CDA 67645 \2180
G・マーラー:
歌曲集《子供の不思議な角笛》より
死んだ少年鼓手/高き知性への讃歌/ラインの伝説/塔に囚われ迫害を受ける
ものの歌/トランペットが美しく鳴り響くところ/番兵の夜の歌/この世の生
活/魚に説教するパドゥアの聖アントニウス/この歌をこしらえたのは誰だろ
う/不幸な時の慰め/むだな骨折り/少年の鼓手/原光
シュテファン・ゲンツ(バリトン)、ロジャー・ヴィニョールズ(ピアノ)
旧東ドイツで生まれた世界的な歌手兄弟であるゲンツ兄弟の弟、シュテファン
・ゲンツのマーラー歌曲集第2集。
ゲンツは聖トーマス教会聖歌隊のメンバーとしても活躍した経歴を持ち、フィ
ッシャー=ディースカウやシュヴァルツコップから伝えられた歌唱力で世界を
舞台に活躍しているバリトン奏者として高い人気を誇っている。
伴奏のピアノは第1集に引き続いてゲンツが全幅の信頼を寄せるロジャー・
ヴィニョールズが務めており、管弦楽伴奏を凌駕するスケールの大きさと繊細
な表現でゲンツの歌声を支えている。
CDA 67606 \2180
アンリ・エルツ(1803-1888):ピアノ作品集 ――
創作主題第2番による主題と変奏Op.81/ロッシーニの歌劇《シンデレラ》の
「悲しみは消えて」による変奏曲Op.60/3つの性格的な小品Op.45/バラード
第1番Op.117-1/無窮動Op.91-3/劇的幻想曲Op.89/バラード第2番Op.117-2
/幻想曲と変奏曲Op.158
フィリップ・マーティン(ピアノ)
ハイペリオンの超人気シリーズ「ロマンティック・ピアノ・コンチェルト」シ
リーズからも2枚の録音がリリースされているアンリ・エルツの独奏ピアノ作
品集。19世紀フランスの作曲家であるアンリ・エルツは著名で人気のあった
ヴィルトゥオーソだったとされており、パリ音楽院でピアノ科の教授をつとめ
るかたわら、ピアノ製作にも興味を示し自分で工場を建設、経営までしてし
まったという異色の経歴の持ち主なのである。
演奏は8枚に及ぶゴットシャルクのピアノ作品集でリスナーを沸かせたダブリ
ン生まれのピアノ奏者フィリップ・マーティン。フランスの知られざるロマ
ン派作曲家のピアノ作品をどのように聴かせてくれるのか、楽しみなアルバ
ムが登場。