<GRAND SLAM>
GS 2021 \2250
(1)ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調Op.55「英雄」
(2)同:「レオノーレ」序曲第3番Op.72a
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:(1)1952年11月26日、27日(2)1953年10月13日-17日
以上ウィーン、ムジークフェラインザール
Source:(1)HMV (U.K) ALP 1060(2)HMV (U.K.) XLP 30090
制作者より
この1952年のHMV(EMI)の「英雄」はフルトヴェングラーのスタジオ録音の中
でも最も有名なものです。この復刻CDを制作するにあたって、約3年の間に初
出LP(ALP 1060)を5枚用意しましたが、思うような結果が得られませんでし
た。しかし、昨年の秋に6枚目にしてようやく望みうる最上の保存状態のALP盤
を入手し、これを使用してリマスタリングを行いました。
余白には「レオノーレ」序曲第3番を収録しましたが、ノイズの少なさと溝に
余裕のあるカッティングという点を考慮して初出盤の「フィデリオ」全曲
(ALP 1130-2)からではなく、最初に「レオノーレ」序曲第3番のみが単独に
発売された盤(XLP30090)を使用しました。
なお、「英雄」は2003年にCDR(Serenade SEDR-2025)として発売した実績が
ありますが、今回のGS-2021はそのCDRの原盤を流用したものではなく、全くの
新リマスタリングとなります。
■解説書の内容
1942年3月28日、フルトヴェングラーはウィーン・フィルの創立100周年を記念
し、ムジークフェラインザールで記念の講演を行いました。その時の話は小冊
子にまとめられましたが、この全文の邦訳を掲載します。この小冊子は当時関
係者のみに200部しか配布されなかったもので、知られざる逸話も多く含まれ
た非常に貴重な文献です。(平林 直哉)
<DOREMI>
DHR 7892 \1980
「リヒテル第13集 / シューマン・ライヴ集」
シューマン:
(1)ピアノ協奏曲イ短調Op.54
(2)パガニーニのカプリースによる6つの演奏会練習曲Op.10より
第4番、第5番 & 第6番
(3)おとぎの絵本Op.113
(4)幻想小曲集Op.73
スヴャトスラフ・リヒテル(P)
(1) ジョルジュ・ジョルジェスク(指)ソヴィエト国立交響楽団
(3)ユーリ・バシュメット(Va) (4)ピエール・フルニエ(Vc)
録音:(1)1958年4月17日モスクワ(ライヴ)
(2)1986年10月16日高崎、音楽センター(ライヴ)
(3)1985年12月13日モスクワ(ライヴ)
(4)1969年7月3日トゥール(ライヴ)
第7集(DHR.7786)に次いで、巨人リヒテルによるシューマンのライヴを集め
たアルバムです。まず、同年10月にロヴィツキともスタジオ盤を残しているコ
ンチェルト。絶頂期だけにテクニックが冴え渡り、思いのたけを弾ききって聴
きもの。ここでバックを務めるのはブラームスの第2協奏曲(61年ライヴ /
DHR.7746)でも好サポートをみせたルーマニアの名匠ジョルジェスク。亡くな
る10年ほど前、高崎公演というのが珍しいパガニーニ練習曲。この年の日本公
演は9月18日の上越市に始まり10月21日の長野まで全14回、ソロ・リサイタル
のほかカガン、グートマン、バシュメットとの共演も含む大掛かりなものでし
た。そのバシュメットとの「おとぎの絵本」は初出ライヴ。さらに、当日はド
ビュッシー、ショパン、メンデルスゾーンのソナタも演奏された名手フルニエ
とのリサイタル。ともにピアノが強く主張するところにリヒテルの存在感の大
きさを聴くことができます。
DDR 71151 \1980
ベートーヴェン:
(1)ピアノ・ソナタ第32番ハ短調Op.111
(2)6つのバガテルOp.126
(3)連作歌曲「遥かなる恋人に寄す」Op.98
(3)ジル・トムキンズ(Br)
ボリス・ザランキン(P)
録音:2006年
地元カナダでは高い評価を得ている、ロシア系カナダ人のボリス・ザランキン
によるベートーヴェンの最新録音。
<FARAO>
B 108022 \2180
ヴィオレータ・ウルマーナ-歌曲をうたう
フランツ・リスト:「少年漁師」、「漁師の娘」、「さあ、話せ」
リヒャルト・シュトラウス:
「ゲオルギーネ」、「春の雑踏」、「ツェツィーリエ」、「あした」、
「苦悩の賛歌」、「睡蓮」、「僕らは踊りだしたい気持ちだ」、「解き放たれた心」「悪いお天気」、「あなたの青い目で」、「春の祝祭」
アルバン・ベルク:
「7つの初期の歌曲」「夜」「葦の歌」「夜鳴きうぐいす」「夢に見た栄光」
「室内にて」「愛の賛歌」「夏の日」
ヴィオレータ・ウルマーナ(S) ヤン・フィリップ・シュルツェ(P)
リトアニア生まれの歌手、ヴィオレータ・ウルマーナはメゾ・ソプラノとして
デビューし、名声を得ました。1993/1994シーズンにミュンヘン歌劇場、バイ
ロイト音楽祭、ミラノ・スカラ座(ムーティ指揮・フリッカ役)で立て続け
にデビューし、フリッカ(ワルキューレ)、クンドリ(パルジファル)をは
じめとするワーグナー作品、エボリ公女(ドン・カルロ)、サントゥッツア
(カヴァレリア・ルスティカーナ)などを中心的レパートリーに、国際的な
キャリアを築いてきました。そして2003年にウィーン国立歌劇場においてマッ
ダレーナ(アンドレア・シェニエ)でソプラノとしてのデビューを飾ったの
ち、イゾルデ(トリスタンとイゾルデ)、ジョコンダのタイトル・ロール、
レオノーラ(運命の力)などをレパートリーとして、現在も国際的第一線で
活躍するスターのひとりです。
これまでリヒャルト・シュトラウスの歌曲を収録したCDは数多く存在します
が、この盤の特筆すべきは、期待されながらもエキスパートが少なかったた
めに録音されなかったリストとベルクの作品がR.シュトラウス作品との共存
を実現したことでしょう。この成果により、私たちは後期ロマン派から近代
音楽への音楽史をこの1枚で体験することができるのです。なにより中音域か
ら高音域まで均一に響く稀有の歌声でウルマーナが叙情的に表現する世界は、
非常に上品でかつドラマティックです。そのウルマーナの世界をウルマーナ
と日常的に共演しているドイツ人ピアニスト、ヤン・フィリップ・シュルツェ
が知的にサポートしています。
<ORFEO>
ORFEO 558061 \2250
イタリア・ドイツの近・現代歌曲集
ルイージ・ダッラピッコラ(1904-1975):
アントニオ・マチャードの四つの詩
【(1)春が来た、(2)きのう夢を見た(3)主よ、あなたは私の最愛のものを
(4)春が来た】
(5)-(7)Rencevals
カール・アマデウス・ハルトマン(1905-1963):
アンドレアス・グリフィウスの哀歌
(8)不幸 (9)わが母に (10)平和
ヴォルフガング・フォン・シュヴァイニッツ(1953-):
サラ・キルシュ 紙の星
(11)-(13)凧揚げ (14)-(20)8月の雪 21.-25. 赤い鳥たち
モイカ・エルトマン(S) ディートリヒ・ヘンシェル(Br)
アクセル・バウニ(P) クラウディア・バラインスキ(S)
ドリス・ゾッフェル(メゾ・ソプラノ) アリベルト・ライマン(P)
オルフェオの「現代歌曲シリーズ」も10周年を迎え、今回はダッラピッコラ、
ハルトマン、シュヴァイニッツというイタリア・ドイツの現代音楽作曲家の歌
曲たちが顔をそろえました。戦後、オペラ「囚われ人の歌」で名を成したダッ
ラピッコラはイタリアで初めて十二音技法を用いて作曲した人物で、またセリ
ー音楽を発展させた人物としても知られています。一方ほぼ同世代といってよ
いドイツの作曲家、ハルトマンは交響曲が名高い人物です。二人の共通点は新
ウィーン楽派のアルバン・ベルクに啓発されていることと、そして第二次世界
大戦を生き抜き、ナチスに対する反感の思いが作風に多大に影響を残している
ことでしょう。もう一人の作曲家、戦後生まれのシュヴァイニッツは先述の
2人とは半世紀ほど世代が違い、いまもベルリンに住んでいます。20代のころ
にやはり奨学金を受けて同時期にローマに滞在していた作家サラ・キルシュの
作品「紙の星」に曲をつけた、みずみずしい作品が収録されています。キャリ
ア十分の実力派歌手とピアニストが、作曲家が描いた世界を忠実に表現するこ
とに成功しているといえるでしょう。
<WERGO>
WER 6693 \2080
ジョン・ケージ(1912-1992):チェロのための作品集
(1)ソロ・フォー・「チェロ」(1958) 7:42
(2)一人の弦楽器奏者のための59秒1/2 (1953) 0:59
(3)アトラス・エクリプティカリス(2つのチェロのための)(1961) 26:40
(4)変奏I (1958)(ガウヴェルキ編によるチェロ独奏版) 1:55
(5)Etudes Boreales(1978)-チェロ独奏のための 14:31
フリードリヒ・ガウヴェルキ(チェロ)
CDをかけた瞬間から、宇宙で原子がぶつかりあっているかのような、プリミ
ティヴな世界が展開されており圧倒されます。孤高の奇才チェリスト、ガウ
ヴェルキは、ケージの作品をボディ・ペインティングのように激しい弓使い
で進めてゆきます。「ジョン・ケージ」という険しくそそり立つ氷山の一角
に昇り、そこで裸で踊っているような、命がけの演奏です。4曲目の「変奏I
(1958)」はガウヴェルキ編によるチェロ独奏版ですが、偶然性の音楽の最た
るもの。ガウヴェルキの神がかり的な弓さばきによって織り成される音世界
は、人間の内奥の叫びのようです。最後におさめられたEtudes Borealesは、
同じ題名でピアノのためにも同じ長さの曲が書かれており、このチェロのた
めのものとピアノのためのものを同時に演奏することもできるというもの。
意識の奥底に押し込められている狂気を呼び覚ますような作品です。
WER 6804 2枚組 \4160
PRIMEVAL SOUNDS-太古の響き-
ドビュッシー:前奏曲集I(1909-10)/クラム:マクロコスモスI(1972)
[CD1]
1.クラム:.始原の響き(創生I) "巨蟹宮"
2.ドビュッシー:デルフィの舞姫
3.クラム:プロテウス "双魚宮"
4.ドビュッシー:帆
5.クラム:牧歌(紀元前10,000年のアトランティスの王国から) "金牛宮"
6.ドビュッシー:野を渡る風
7.クラム:十字架 "磨羯宮"
8.ドビュッシー:音と香りは夕べの大気の中に漂う
9.クラム:幻のゴンドラ乗り "天蠍宮"
10.ドビュッシー:アナカプリの丘.
11.クラム:夜の魔法I "人馬宮"
12.ドビュッシー:雪の上の足あと
[CD2]
1.ドビュッシー:西風の見たもの
2.クラム:影の音楽(エオリアン・ハープのための) "天秤宮"
3.ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女
4.クラム:無限の不思議な輪(永久運動) "獅子宮"
5.ドビュッシー:さえぎられたセレナード
6.クラム:時の深淵 "処女宮"
7.ドビュッシー:沈める寺
8.クラム:燃えいずる火 "白羊宮"
9.ドビュッシー:パックの踊り
10.クラム:夢の影像(愛と死の音楽) "双子宮"
11.ドビュッシー:ミンストレル
12.クラム:らせんの銀河 "宝瓶宮"
エンリコ・ベッリ(Pf)
ジョージ・クラムは、1929年に生まれたアメリカの作曲家。内部奏法を多用し
た作品、マクロコスモスの第1集(1972年)の出版譜の冒頭で、彼は次のよう
に述べています。「私の「マクロコスモス」のタイトルと形式は、20世紀のピ
アノ音楽の偉大なる2人の作曲家に対する私の敬意が反映されています。それ
は、バルトークとドビュッシーです。もちろん、私はバルトークのミクロコス
モスと、ドビュッシーの24の前奏曲を念頭において書きました(マクロコスモ
スIIは、1973年に完成され、マクロコスモスIとあわせると24の‘幻想的な作
品集’になります)。」ドビュッシーの前奏曲第1集は、「大地」に、そして
クラムのマクロコスモスIは「天体」に根源を持っています。これらは二つと
も、近代化や機械化に逆らうかのように、古代から伝わる神話への郷愁によっ
て調和しています。ドビュッシーは想像上の時空の中で、自身が神話の登場人
物のパーンとなって、海、風、音を感じたままに音にしています。クラムは、
無意識の感情や夢の投影としての星座の神話の世界を見つめながら作品を書
きました。スタンスは違えども、二人とも神話を手がかりとして異次元への
旅を試みています。そんな二人の作品が交互に演奏されることによって形成
される螺旋階段をひとつひとつ昇っていくと、クラムの作品によって我々の
想像力の扉が開かれ、ドビュッシーの作品の中に広がっている、今までに見
たことのない世界、聴いたことのない響き、感じたことのない香り、すべてが
くっきりと鮮やかに聴く者の目の前に立ち上ってくるのです。そしてドビュッ
シーのあとに演奏されるクラムの曲も、無機的な宇宙ではなく、香り高く幻
想的な神話の世界として我々のもとに降りてくるような感じがします。不思
議な気分で、2枚とも一気に聴きとおせてしまう不思議な説得力のあるCDです。
エンリコ・ベッリはペーザロ出身の、フレスコバルディからシェルシまで、
膨大なレパートリーをもつピアニストです。写真家、指揮者、役者、舞踊家、
画家、すべての芸術家たちが一堂に会するPerpianosolo Festivalにも度々出
演しています。今後、クラムのマクロコスモス全集を録音予定もあるという
ことです。沈思に満ちた演奏は、説得力抜群、哲学者のようなピアニストです。
<FARAO Classics>
B 108049 \2250
ワーグナー:
(1)ヴェーゼンドンク歌曲集 (2)ジークフリート牧歌
(1)マルヤーナ・リポヴシェク(A)ヴォルフガング・サヴァリッシュ(P)
(2)ヴォルフガング・サヴァリッシュ(指)
バイエルン国立管弦楽団のメンバー
録音:1991年5月4日ノイシュヴァンシュタイン城、ゼンガーザール(ライヴ)
[バイエルン放送による収録]
ジークフリート牧歌でヴァイオリンによる調べが優しく開始されると、もうそ
こは別世界。眼前の総勢13人の奏者による親密な掛け合いに耳を澄ませば、ま
るで初演の朝のワーグナー邸にタイムスリップしたかのよう。地元ミュンヘン
生まれのサヴァリッシュは1971年より22年間に渡りバイエルン国立歌劇場の総
音楽監督を務めました。この間“ワーグナー演奏の本場”における総決算的な
仕事として、リング全曲の映像作品(89年)を残し高い評価を得ていますが、
ここでもじつに共感いっぱいの眼差しでワーグナーの官能美に満ちた世界を描
き上げています。プログラム前半は会場となった“歌の間”にふさわしく、リ
ポヴシェクの表情も豊かで深深とした歌唱で聴くヴェーゼンドンク歌曲集。も
ちろん名手サヴァリッシュのピアノが見事なのはいうまでもありません。
サヴァリッシュによるワーグナーのふたつのライヴは、ワーグナーの庇護者バ
イエルン王ルートヴィヒ2世が築いたノイシュヴァンシュタイン城という、ゆ
かりある場所で行われたことも大きなポイントとなっています。ともに拍手入
りながら、録音も優秀です。
GS 2021 \2250
(1)ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調Op.55「英雄」
(2)同:「レオノーレ」序曲第3番Op.72a
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:(1)1952年11月26日、27日(2)1953年10月13日-17日
以上ウィーン、ムジークフェラインザール
Source:(1)HMV (U.K) ALP 1060(2)HMV (U.K.) XLP 30090
制作者より
この1952年のHMV(EMI)の「英雄」はフルトヴェングラーのスタジオ録音の中
でも最も有名なものです。この復刻CDを制作するにあたって、約3年の間に初
出LP(ALP 1060)を5枚用意しましたが、思うような結果が得られませんでし
た。しかし、昨年の秋に6枚目にしてようやく望みうる最上の保存状態のALP盤
を入手し、これを使用してリマスタリングを行いました。
余白には「レオノーレ」序曲第3番を収録しましたが、ノイズの少なさと溝に
余裕のあるカッティングという点を考慮して初出盤の「フィデリオ」全曲
(ALP 1130-2)からではなく、最初に「レオノーレ」序曲第3番のみが単独に
発売された盤(XLP30090)を使用しました。
なお、「英雄」は2003年にCDR(Serenade SEDR-2025)として発売した実績が
ありますが、今回のGS-2021はそのCDRの原盤を流用したものではなく、全くの
新リマスタリングとなります。
■解説書の内容
1942年3月28日、フルトヴェングラーはウィーン・フィルの創立100周年を記念
し、ムジークフェラインザールで記念の講演を行いました。その時の話は小冊
子にまとめられましたが、この全文の邦訳を掲載します。この小冊子は当時関
係者のみに200部しか配布されなかったもので、知られざる逸話も多く含まれ
た非常に貴重な文献です。(平林 直哉)
<DOREMI>
DHR 7892 \1980
「リヒテル第13集 / シューマン・ライヴ集」
シューマン:
(1)ピアノ協奏曲イ短調Op.54
(2)パガニーニのカプリースによる6つの演奏会練習曲Op.10より
第4番、第5番 & 第6番
(3)おとぎの絵本Op.113
(4)幻想小曲集Op.73
スヴャトスラフ・リヒテル(P)
(1) ジョルジュ・ジョルジェスク(指)ソヴィエト国立交響楽団
(3)ユーリ・バシュメット(Va) (4)ピエール・フルニエ(Vc)
録音:(1)1958年4月17日モスクワ(ライヴ)
(2)1986年10月16日高崎、音楽センター(ライヴ)
(3)1985年12月13日モスクワ(ライヴ)
(4)1969年7月3日トゥール(ライヴ)
第7集(DHR.7786)に次いで、巨人リヒテルによるシューマンのライヴを集め
たアルバムです。まず、同年10月にロヴィツキともスタジオ盤を残しているコ
ンチェルト。絶頂期だけにテクニックが冴え渡り、思いのたけを弾ききって聴
きもの。ここでバックを務めるのはブラームスの第2協奏曲(61年ライヴ /
DHR.7746)でも好サポートをみせたルーマニアの名匠ジョルジェスク。亡くな
る10年ほど前、高崎公演というのが珍しいパガニーニ練習曲。この年の日本公
演は9月18日の上越市に始まり10月21日の長野まで全14回、ソロ・リサイタル
のほかカガン、グートマン、バシュメットとの共演も含む大掛かりなものでし
た。そのバシュメットとの「おとぎの絵本」は初出ライヴ。さらに、当日はド
ビュッシー、ショパン、メンデルスゾーンのソナタも演奏された名手フルニエ
とのリサイタル。ともにピアノが強く主張するところにリヒテルの存在感の大
きさを聴くことができます。
DDR 71151 \1980
ベートーヴェン:
(1)ピアノ・ソナタ第32番ハ短調Op.111
(2)6つのバガテルOp.126
(3)連作歌曲「遥かなる恋人に寄す」Op.98
(3)ジル・トムキンズ(Br)
ボリス・ザランキン(P)
録音:2006年
地元カナダでは高い評価を得ている、ロシア系カナダ人のボリス・ザランキン
によるベートーヴェンの最新録音。
<FARAO>
B 108022 \2180
ヴィオレータ・ウルマーナ-歌曲をうたう
フランツ・リスト:「少年漁師」、「漁師の娘」、「さあ、話せ」
リヒャルト・シュトラウス:
「ゲオルギーネ」、「春の雑踏」、「ツェツィーリエ」、「あした」、
「苦悩の賛歌」、「睡蓮」、「僕らは踊りだしたい気持ちだ」、「解き放たれた心」「悪いお天気」、「あなたの青い目で」、「春の祝祭」
アルバン・ベルク:
「7つの初期の歌曲」「夜」「葦の歌」「夜鳴きうぐいす」「夢に見た栄光」
「室内にて」「愛の賛歌」「夏の日」
ヴィオレータ・ウルマーナ(S) ヤン・フィリップ・シュルツェ(P)
リトアニア生まれの歌手、ヴィオレータ・ウルマーナはメゾ・ソプラノとして
デビューし、名声を得ました。1993/1994シーズンにミュンヘン歌劇場、バイ
ロイト音楽祭、ミラノ・スカラ座(ムーティ指揮・フリッカ役)で立て続け
にデビューし、フリッカ(ワルキューレ)、クンドリ(パルジファル)をは
じめとするワーグナー作品、エボリ公女(ドン・カルロ)、サントゥッツア
(カヴァレリア・ルスティカーナ)などを中心的レパートリーに、国際的な
キャリアを築いてきました。そして2003年にウィーン国立歌劇場においてマッ
ダレーナ(アンドレア・シェニエ)でソプラノとしてのデビューを飾ったの
ち、イゾルデ(トリスタンとイゾルデ)、ジョコンダのタイトル・ロール、
レオノーラ(運命の力)などをレパートリーとして、現在も国際的第一線で
活躍するスターのひとりです。
これまでリヒャルト・シュトラウスの歌曲を収録したCDは数多く存在します
が、この盤の特筆すべきは、期待されながらもエキスパートが少なかったた
めに録音されなかったリストとベルクの作品がR.シュトラウス作品との共存
を実現したことでしょう。この成果により、私たちは後期ロマン派から近代
音楽への音楽史をこの1枚で体験することができるのです。なにより中音域か
ら高音域まで均一に響く稀有の歌声でウルマーナが叙情的に表現する世界は、
非常に上品でかつドラマティックです。そのウルマーナの世界をウルマーナ
と日常的に共演しているドイツ人ピアニスト、ヤン・フィリップ・シュルツェ
が知的にサポートしています。
<ORFEO>
ORFEO 558061 \2250
イタリア・ドイツの近・現代歌曲集
ルイージ・ダッラピッコラ(1904-1975):
アントニオ・マチャードの四つの詩
【(1)春が来た、(2)きのう夢を見た(3)主よ、あなたは私の最愛のものを
(4)春が来た】
(5)-(7)Rencevals
カール・アマデウス・ハルトマン(1905-1963):
アンドレアス・グリフィウスの哀歌
(8)不幸 (9)わが母に (10)平和
ヴォルフガング・フォン・シュヴァイニッツ(1953-):
サラ・キルシュ 紙の星
(11)-(13)凧揚げ (14)-(20)8月の雪 21.-25. 赤い鳥たち
モイカ・エルトマン(S) ディートリヒ・ヘンシェル(Br)
アクセル・バウニ(P) クラウディア・バラインスキ(S)
ドリス・ゾッフェル(メゾ・ソプラノ) アリベルト・ライマン(P)
オルフェオの「現代歌曲シリーズ」も10周年を迎え、今回はダッラピッコラ、
ハルトマン、シュヴァイニッツというイタリア・ドイツの現代音楽作曲家の歌
曲たちが顔をそろえました。戦後、オペラ「囚われ人の歌」で名を成したダッ
ラピッコラはイタリアで初めて十二音技法を用いて作曲した人物で、またセリ
ー音楽を発展させた人物としても知られています。一方ほぼ同世代といってよ
いドイツの作曲家、ハルトマンは交響曲が名高い人物です。二人の共通点は新
ウィーン楽派のアルバン・ベルクに啓発されていることと、そして第二次世界
大戦を生き抜き、ナチスに対する反感の思いが作風に多大に影響を残している
ことでしょう。もう一人の作曲家、戦後生まれのシュヴァイニッツは先述の
2人とは半世紀ほど世代が違い、いまもベルリンに住んでいます。20代のころ
にやはり奨学金を受けて同時期にローマに滞在していた作家サラ・キルシュの
作品「紙の星」に曲をつけた、みずみずしい作品が収録されています。キャリ
ア十分の実力派歌手とピアニストが、作曲家が描いた世界を忠実に表現するこ
とに成功しているといえるでしょう。
<WERGO>
WER 6693 \2080
ジョン・ケージ(1912-1992):チェロのための作品集
(1)ソロ・フォー・「チェロ」(1958) 7:42
(2)一人の弦楽器奏者のための59秒1/2 (1953) 0:59
(3)アトラス・エクリプティカリス(2つのチェロのための)(1961) 26:40
(4)変奏I (1958)(ガウヴェルキ編によるチェロ独奏版) 1:55
(5)Etudes Boreales(1978)-チェロ独奏のための 14:31
フリードリヒ・ガウヴェルキ(チェロ)
CDをかけた瞬間から、宇宙で原子がぶつかりあっているかのような、プリミ
ティヴな世界が展開されており圧倒されます。孤高の奇才チェリスト、ガウ
ヴェルキは、ケージの作品をボディ・ペインティングのように激しい弓使い
で進めてゆきます。「ジョン・ケージ」という険しくそそり立つ氷山の一角
に昇り、そこで裸で踊っているような、命がけの演奏です。4曲目の「変奏I
(1958)」はガウヴェルキ編によるチェロ独奏版ですが、偶然性の音楽の最た
るもの。ガウヴェルキの神がかり的な弓さばきによって織り成される音世界
は、人間の内奥の叫びのようです。最後におさめられたEtudes Borealesは、
同じ題名でピアノのためにも同じ長さの曲が書かれており、このチェロのた
めのものとピアノのためのものを同時に演奏することもできるというもの。
意識の奥底に押し込められている狂気を呼び覚ますような作品です。
WER 6804 2枚組 \4160
PRIMEVAL SOUNDS-太古の響き-
ドビュッシー:前奏曲集I(1909-10)/クラム:マクロコスモスI(1972)
[CD1]
1.クラム:.始原の響き(創生I) "巨蟹宮"
2.ドビュッシー:デルフィの舞姫
3.クラム:プロテウス "双魚宮"
4.ドビュッシー:帆
5.クラム:牧歌(紀元前10,000年のアトランティスの王国から) "金牛宮"
6.ドビュッシー:野を渡る風
7.クラム:十字架 "磨羯宮"
8.ドビュッシー:音と香りは夕べの大気の中に漂う
9.クラム:幻のゴンドラ乗り "天蠍宮"
10.ドビュッシー:アナカプリの丘.
11.クラム:夜の魔法I "人馬宮"
12.ドビュッシー:雪の上の足あと
[CD2]
1.ドビュッシー:西風の見たもの
2.クラム:影の音楽(エオリアン・ハープのための) "天秤宮"
3.ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女
4.クラム:無限の不思議な輪(永久運動) "獅子宮"
5.ドビュッシー:さえぎられたセレナード
6.クラム:時の深淵 "処女宮"
7.ドビュッシー:沈める寺
8.クラム:燃えいずる火 "白羊宮"
9.ドビュッシー:パックの踊り
10.クラム:夢の影像(愛と死の音楽) "双子宮"
11.ドビュッシー:ミンストレル
12.クラム:らせんの銀河 "宝瓶宮"
エンリコ・ベッリ(Pf)
ジョージ・クラムは、1929年に生まれたアメリカの作曲家。内部奏法を多用し
た作品、マクロコスモスの第1集(1972年)の出版譜の冒頭で、彼は次のよう
に述べています。「私の「マクロコスモス」のタイトルと形式は、20世紀のピ
アノ音楽の偉大なる2人の作曲家に対する私の敬意が反映されています。それ
は、バルトークとドビュッシーです。もちろん、私はバルトークのミクロコス
モスと、ドビュッシーの24の前奏曲を念頭において書きました(マクロコスモ
スIIは、1973年に完成され、マクロコスモスIとあわせると24の‘幻想的な作
品集’になります)。」ドビュッシーの前奏曲第1集は、「大地」に、そして
クラムのマクロコスモスIは「天体」に根源を持っています。これらは二つと
も、近代化や機械化に逆らうかのように、古代から伝わる神話への郷愁によっ
て調和しています。ドビュッシーは想像上の時空の中で、自身が神話の登場人
物のパーンとなって、海、風、音を感じたままに音にしています。クラムは、
無意識の感情や夢の投影としての星座の神話の世界を見つめながら作品を書
きました。スタンスは違えども、二人とも神話を手がかりとして異次元への
旅を試みています。そんな二人の作品が交互に演奏されることによって形成
される螺旋階段をひとつひとつ昇っていくと、クラムの作品によって我々の
想像力の扉が開かれ、ドビュッシーの作品の中に広がっている、今までに見
たことのない世界、聴いたことのない響き、感じたことのない香り、すべてが
くっきりと鮮やかに聴く者の目の前に立ち上ってくるのです。そしてドビュッ
シーのあとに演奏されるクラムの曲も、無機的な宇宙ではなく、香り高く幻
想的な神話の世界として我々のもとに降りてくるような感じがします。不思
議な気分で、2枚とも一気に聴きとおせてしまう不思議な説得力のあるCDです。
エンリコ・ベッリはペーザロ出身の、フレスコバルディからシェルシまで、
膨大なレパートリーをもつピアニストです。写真家、指揮者、役者、舞踊家、
画家、すべての芸術家たちが一堂に会するPerpianosolo Festivalにも度々出
演しています。今後、クラムのマクロコスモス全集を録音予定もあるという
ことです。沈思に満ちた演奏は、説得力抜群、哲学者のようなピアニストです。
<FARAO Classics>
B 108049 \2250
ワーグナー:
(1)ヴェーゼンドンク歌曲集 (2)ジークフリート牧歌
(1)マルヤーナ・リポヴシェク(A)ヴォルフガング・サヴァリッシュ(P)
(2)ヴォルフガング・サヴァリッシュ(指)
バイエルン国立管弦楽団のメンバー
録音:1991年5月4日ノイシュヴァンシュタイン城、ゼンガーザール(ライヴ)
[バイエルン放送による収録]
ジークフリート牧歌でヴァイオリンによる調べが優しく開始されると、もうそ
こは別世界。眼前の総勢13人の奏者による親密な掛け合いに耳を澄ませば、ま
るで初演の朝のワーグナー邸にタイムスリップしたかのよう。地元ミュンヘン
生まれのサヴァリッシュは1971年より22年間に渡りバイエルン国立歌劇場の総
音楽監督を務めました。この間“ワーグナー演奏の本場”における総決算的な
仕事として、リング全曲の映像作品(89年)を残し高い評価を得ていますが、
ここでもじつに共感いっぱいの眼差しでワーグナーの官能美に満ちた世界を描
き上げています。プログラム前半は会場となった“歌の間”にふさわしく、リ
ポヴシェクの表情も豊かで深深とした歌唱で聴くヴェーゼンドンク歌曲集。も
ちろん名手サヴァリッシュのピアノが見事なのはいうまでもありません。
サヴァリッシュによるワーグナーのふたつのライヴは、ワーグナーの庇護者バ
イエルン王ルートヴィヒ2世が築いたノイシュヴァンシュタイン城という、ゆ
かりある場所で行われたことも大きなポイントとなっています。ともに拍手入
りながら、録音も優秀です。