<Ondine>
ODE 1100(SACD-Hybrid) \2300
デュパルク(1848-1933):
旅への誘い、ミニョンのロマンス、戦のある国へ、悲しき歌、フィディレ
カイヤ・サーリアホ(1952-):
歌曲集「4つの瞬間」(2002) (アミン・マアルーフの詩による)
憧れ、苦悩、瞬間の香り、余韻
ラフマニノフ(1873-1943):
美しい人よ、私のために歌わないで 作品4-4、夕暮れ 作品21-3、
ミュッセからの断片 作品21-6、ムーサ 作品34-1、何という幸せ 作品34-12
ドヴォルザーク(1841-1904):歌曲集「ジプシーの歌」 作品55 B104
カリタ・マッティラ(S)
マーティン・カッツ(P)
録音:2006年10月 フィンランド国立オペラ (ヘルシンキ) (ライヴ)
フィンランドが誇るスターのひとり、リリック・ドラマティック・ソプラノの
カリタ・マッティラ。オペラ舞台に立つことの多い彼女が2006年10月、めずら
しくリサイタルを行いました。場所はヘルシンキのフィンランド国立オペラ。
チケットが売り切れるほどの人気を呼び、「ヘルシンキ・サノマット」紙
(2006年10月3日) は、「すばらしい夕べ、なんと素敵な!」と報じました。
当夜のメイン・プログラムは、フィンランドの女性作曲家カイヤ・サーリアホ
(1952-) の歌曲集〈4つの瞬間〉。フランスの作家、アミン・マアルーフの詩
をテクストとするオペラ的モノローグ。エロティックで過激。ヤナーチェクの
〈イェヌーファ〉のタイトルロールもレパートリーに収めるマッティラが表現
意欲を強くそそられる領域です。共演はマーティン・カッツ。「ミュージカル
・アメリカ」 の1998年最優秀伴奏者賞を受けたピアニストです。
<ALBA>
ABCD 233(SACD-Hybrid) \2080
J.S.バッハ:オルガン編曲集
シャコンヌ(ミッデルシュルテ編曲)、前奏曲とフーガ変ロ短調、
前奏曲イ短調、前奏曲ト短調(オスカル・メリカント編曲)、
半音階的幻想曲とフーガ(レーガー編曲)、
バッハの思い出(ヴィドール編曲)
ヤン・レヘトラ(Org)
使用楽器:クーサンコスキ教会(ヴェゲリウス、1933年製)
録音:2006年6月
フィンランドの歴史的な楽器を紹介するシリーズ。ヘルシンキ音楽院を設立し
シベリウスなどフィンランドの優秀な音楽家を育てたヴェゲリウスにより設計、
ヘルシンキから東へ150キロほどに位置するクーサンコスキという町にある教
会の歴史的なオルガンを使った編曲集です。注目は編曲陣の面々。自身もオル
ガンの達人であったミッデルシュルテのシャコンヌ、シベリウスと同時代に
活躍したフィンランドの国民から愛されていた作曲家オスカル・メリカントに
よる珍しい編曲、レーガーによる濃厚な編曲、オルガン一家で育ちとりわけ
バッハに傾倒していたヴィドールなど考え抜かれたレパートリーが収録されて
います。
<Profil>
PH 07033 2枚組 \4250
ベルリオーズ:レクイエムOp.5
キース・イカイア=パーディ(T)
ドレスデン国立歌劇場合唱団、ドレスデン・シンフォニー合唱団、
ドレスデン・ジングアカデミー
サー・コリン・デイヴィス(指)
シュターツカペレ・ドレスデン
録音:1994年2月14日ドレスデン、聖十字架教会(ライヴ)
第2次大戦中の1945年2月13日から14日にかけて、米英連合軍はドイツの古都ド
レスデンに対して無差別爆撃を行いました。この爆撃により都市の85パーセン
トが破壊され、3万とも15万ともいわれる一般市民が犠牲となりました。ドレ
スデン爆撃50周年を翌年に控えた1994年、未曾有の戦禍を被ったのと同じ2月
13、14の両日に、デイヴィスとシュターツカペレ・ドレスデンによって演奏さ
れたのがベルリオーズの大作レクイエム。これはその追悼演奏会のドキュメン
トです。なお、2月13日も録音が予定されていましたが、当日は氷点下25度と
いう極寒のために録音機材を作動させるためのバッテリー用のディーゼル・
エンジンが凍り付いてしまったので録音が出来なかったとのことです
大空襲からほぼ半世紀前の1897年にドレスデン初演がなされたレクイエム。
さすがは異端児の作にふさわしく、まず編成がともかく破格。大オーケスト
ラ&大合唱のほか、ティンパニ8対、大太鼓、タム・タム、シンバル10対、さ
らに4群のバンダ(各4のトランペットとトロンボーン)が加わるというもの。
さらに、これら大音響が鳴り渡る第2曲「怒りの日」や第6曲「ラクリモサ」か
ら一転、アカペラによる第5曲「われをさがしもとめ」では静謐なる音楽とい
う具合に、全10曲の内容も恐ろしく起伏に富み入り組んでいます。「自作でた
だ一曲だけを残すことが許されるなら迷わずこれを残してもらうように」とい
うほどベルリオーズ自身強く惚れ込んでいたと伝えられています。
また、デイヴィスにとっても過去に2度の録音(LSO / 69年、バイエルン放送
響 / 89年ライヴ)を残す当作品は、“ベルリオーズのエキスパート”がまだ
クラリネット奏者だった時分に演奏して指揮者を志す啓示を受けた運命の曲で
もあります。
デイヴィスはのちにインタヴューで次のように述べています。「このときの追
悼演奏会は私にとってドレスデン時代の最大の出来事だったかも知れない。ほ
んとうにショッキングだった。それこそぴったりの時、ぴったりの場所、ぴっ
たりの作品だった。ただのアイデアやお膳立てとしてではなく、突如として音
楽というものがほんとうにそうでなくてはならないものとしてそこにあった。
まさに忘れることの出来ない感動的な体験であった。」彼はまたドレスデン在
任期間中2月13日に指揮台に立つ機会が訪れると、ミサ・ソレムニス、モーツァ
ルトのレクイエム、ブリテンの戦争レクイエムといった作品を取り上げていま
した。
このように爆撃を行った側の人間としての痛切な衝動に駆られて臨んだデイ
ヴィスのもと、時と場所を選ぶ演奏至難のベルリオーズの大作が、ほとんど奇
跡的にぴたりとはまったドレスデン追悼演奏会。かくも迫真の内容を持つ演奏
に触れる機会はまれといえるのではないでしょうか。
<audite>
AU 95498 \2080
モノラル
(1)チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調Op.64
(2)シューマン:ピアノ協奏曲イ短調Op.54
(3)[ボーナス・トラック]
フリッチャイのスピーチ-1957年1月24日ベルリン放送交響楽団創立10周年記
念祝祭コンサートに際して
(2)アルフレッド・コルトー(P)
フェレンツ・フリッチャイ(指)
(1)ベルリン放送交響楽団 (2) RIAS交響楽団
録音:(1)1957年(2)1951年ベルリン(ライヴ)
「絶対に忘れられないのがコルトー(P)フリッチャイの51年ライヴだ。ピア
ノもミス・タッチだらけだが、昔の巨匠の表現力がいかに濃厚自在であった
か、いかに劇的かつロマンティックであったか、いかに作曲者の魂の奥底ま
でをあぶり出すほど深かったかを、いやというほど教えてくれるのである」
-宇野功芳
メロドラム盤以来のあまりにスリリングな内容で知られる大演奏が、このた
びドイチュラントラジオ・クルトゥーア提供の正規音源使用により大幅に音
質改善が施されて登場します。また、フリッチャイが手兵と行なった1957年
ライヴによるチャイ5は、クリアなオケの響き、とめどないパワー、弛緩する
ことないフォルムと、まさにこの時期のフリッチャイの音楽の魅力を伝える
内容。まだ白血病発病前、快速テンポによる演奏から“リトル・トスカニー
ニ”と呼ばれていた時期のものです。
<harmonia mundi>
HMC 901963 \2250
バルトーク:弦楽四重奏曲第5番、第6番
アルカント・クヮルテット
【アンティエ・ヴァイトハース(1Vn)、ダニエル・ゼペック(2Vn)、
タベア・ツィンマーマン(Vla)、ジャン=ギアン・ケラス(Vc)】
録音:2006年10月
なんとも豪華な顔ぶれによる弦楽四重奏団が結成されました。その名もアルカ
ント・クヮルテット(イタリア語の「アルコ(弓)」と「カント(歌)」を組
み合わせた造語)。ヴァイオリンにウィーンの名手ヴァイトハースと、シュタ
イアーとのベートーヴェンの録音(HMC 901919)でも評価が高い、モダンもオ
リジナルもマルチにこなすゼペック、そして今ひっぱりだこで大活躍のヴィオ
ラ奏者タベア・ツィンマーマン、そしてチェロにいわずとしれたケラスという
錚々たる面々。2006年11月には日本でのお披露目公演もあり、その深みのある
表現と精緻なアンサンブルが話題となりました。記念すべき第1弾のリリース
は、泣く子もだまるバルトーク。第5番第1楽章冒頭の激しいリズム、第2楽章
のチェロの極端に低いどこか無機質な響き、その後現われる柔らかな旋律、
第3楽章の複雑なリズムの絡み合いは名手たちの真骨頂、そして第4、第5楽章
でも、エッジの効いた演奏に圧倒。続く第6番では、タベア・ツィンマーマン
による冒頭のヴィオラ・ソロの深みのある歌に、一気に世界に引き込まれます。
第3楽章の四分音の掛け合いも、絶妙なことこの上なしです。終楽章、静寂へ
と帰ってゆく終結部は、死者の魂が天へと静かに昇ってゆくような神聖さに
満ちています。
<Anthonello Mode>
AMOE 10003 \2450
西山まりえバッハ・エディション1 -MARIE NISHIYAMA BACH EDITION 1
J.S.バッハ(1685-1750):ゴルトベルク変奏曲BWV988
西山まりえ(バロック・ハープ、チェンバロ)
録音:2007年1月9-11日 Hakuju Hall, Pro Tools HD Recording System
24Bit/192KHz
ジャケット:さそうあきら
バッハ作品をチェンバリストのゴールと位置づける西山まりえによる「バッハ
:チェンバロ作品全集」第一弾の登場。チェンバロだけでなく、バロック・
ハープ、オルガネット、さらには歌もこなし、ルネサンスからバッハへと至る
音楽の歴史を多面的に検証してきたマルチプレイヤー西山まりえならではの
バッハ像がここにあります。西山は、即興演奏家としての立場からこの作品を
再熟考、第30変奏(最終変奏)「クオドリベット」とアリアには、この曲を見
直す重要な鍵──アリアそのものが、第30変奏にだけ用いられたベルガマスカ
の旋律(原曲はルネサンス期に成立)の変奏であること──を発見しました。
新たな発見をふまえた西山の演奏は、新たな翼を得たかのように流麗かつ自由
闊達。バッハが目の前に降りてきて即興しているかのような錯覚すらおぼえる
演奏です。(今後毎年2-3作のペースで主要鍵盤作品を録音予定。)
〈ゴルトベルク変奏曲〉というミノタウロスの迷宮は、数多の名演が引いたア
リアドネの糸によって、もはや歩き慣れた道筋のように思えるときがある。
だが、西山まりえの〈ゴルトベルク〉は、アラベスク模様を描く装飾と、足ど
りを撹乱する自在なテンポの揺らぎによって、迷宮に無数の枝道があることを
示す。喜んで、足を踏み入れよう。そこには見たことのない、魅惑的な風景が
広がっている。これは高橋悠治の新盤と並んで、私たちを解放する〈ゴルトベ
ルク〉なのだ。(矢澤孝樹)
ODE 1100(SACD-Hybrid) \2300
デュパルク(1848-1933):
旅への誘い、ミニョンのロマンス、戦のある国へ、悲しき歌、フィディレ
カイヤ・サーリアホ(1952-):
歌曲集「4つの瞬間」(2002) (アミン・マアルーフの詩による)
憧れ、苦悩、瞬間の香り、余韻
ラフマニノフ(1873-1943):
美しい人よ、私のために歌わないで 作品4-4、夕暮れ 作品21-3、
ミュッセからの断片 作品21-6、ムーサ 作品34-1、何という幸せ 作品34-12
ドヴォルザーク(1841-1904):歌曲集「ジプシーの歌」 作品55 B104
カリタ・マッティラ(S)
マーティン・カッツ(P)
録音:2006年10月 フィンランド国立オペラ (ヘルシンキ) (ライヴ)
フィンランドが誇るスターのひとり、リリック・ドラマティック・ソプラノの
カリタ・マッティラ。オペラ舞台に立つことの多い彼女が2006年10月、めずら
しくリサイタルを行いました。場所はヘルシンキのフィンランド国立オペラ。
チケットが売り切れるほどの人気を呼び、「ヘルシンキ・サノマット」紙
(2006年10月3日) は、「すばらしい夕べ、なんと素敵な!」と報じました。
当夜のメイン・プログラムは、フィンランドの女性作曲家カイヤ・サーリアホ
(1952-) の歌曲集〈4つの瞬間〉。フランスの作家、アミン・マアルーフの詩
をテクストとするオペラ的モノローグ。エロティックで過激。ヤナーチェクの
〈イェヌーファ〉のタイトルロールもレパートリーに収めるマッティラが表現
意欲を強くそそられる領域です。共演はマーティン・カッツ。「ミュージカル
・アメリカ」 の1998年最優秀伴奏者賞を受けたピアニストです。
<ALBA>
ABCD 233(SACD-Hybrid) \2080
J.S.バッハ:オルガン編曲集
シャコンヌ(ミッデルシュルテ編曲)、前奏曲とフーガ変ロ短調、
前奏曲イ短調、前奏曲ト短調(オスカル・メリカント編曲)、
半音階的幻想曲とフーガ(レーガー編曲)、
バッハの思い出(ヴィドール編曲)
ヤン・レヘトラ(Org)
使用楽器:クーサンコスキ教会(ヴェゲリウス、1933年製)
録音:2006年6月
フィンランドの歴史的な楽器を紹介するシリーズ。ヘルシンキ音楽院を設立し
シベリウスなどフィンランドの優秀な音楽家を育てたヴェゲリウスにより設計、
ヘルシンキから東へ150キロほどに位置するクーサンコスキという町にある教
会の歴史的なオルガンを使った編曲集です。注目は編曲陣の面々。自身もオル
ガンの達人であったミッデルシュルテのシャコンヌ、シベリウスと同時代に
活躍したフィンランドの国民から愛されていた作曲家オスカル・メリカントに
よる珍しい編曲、レーガーによる濃厚な編曲、オルガン一家で育ちとりわけ
バッハに傾倒していたヴィドールなど考え抜かれたレパートリーが収録されて
います。
<Profil>
PH 07033 2枚組 \4250
ベルリオーズ:レクイエムOp.5
キース・イカイア=パーディ(T)
ドレスデン国立歌劇場合唱団、ドレスデン・シンフォニー合唱団、
ドレスデン・ジングアカデミー
サー・コリン・デイヴィス(指)
シュターツカペレ・ドレスデン
録音:1994年2月14日ドレスデン、聖十字架教会(ライヴ)
第2次大戦中の1945年2月13日から14日にかけて、米英連合軍はドイツの古都ド
レスデンに対して無差別爆撃を行いました。この爆撃により都市の85パーセン
トが破壊され、3万とも15万ともいわれる一般市民が犠牲となりました。ドレ
スデン爆撃50周年を翌年に控えた1994年、未曾有の戦禍を被ったのと同じ2月
13、14の両日に、デイヴィスとシュターツカペレ・ドレスデンによって演奏さ
れたのがベルリオーズの大作レクイエム。これはその追悼演奏会のドキュメン
トです。なお、2月13日も録音が予定されていましたが、当日は氷点下25度と
いう極寒のために録音機材を作動させるためのバッテリー用のディーゼル・
エンジンが凍り付いてしまったので録音が出来なかったとのことです
大空襲からほぼ半世紀前の1897年にドレスデン初演がなされたレクイエム。
さすがは異端児の作にふさわしく、まず編成がともかく破格。大オーケスト
ラ&大合唱のほか、ティンパニ8対、大太鼓、タム・タム、シンバル10対、さ
らに4群のバンダ(各4のトランペットとトロンボーン)が加わるというもの。
さらに、これら大音響が鳴り渡る第2曲「怒りの日」や第6曲「ラクリモサ」か
ら一転、アカペラによる第5曲「われをさがしもとめ」では静謐なる音楽とい
う具合に、全10曲の内容も恐ろしく起伏に富み入り組んでいます。「自作でた
だ一曲だけを残すことが許されるなら迷わずこれを残してもらうように」とい
うほどベルリオーズ自身強く惚れ込んでいたと伝えられています。
また、デイヴィスにとっても過去に2度の録音(LSO / 69年、バイエルン放送
響 / 89年ライヴ)を残す当作品は、“ベルリオーズのエキスパート”がまだ
クラリネット奏者だった時分に演奏して指揮者を志す啓示を受けた運命の曲で
もあります。
デイヴィスはのちにインタヴューで次のように述べています。「このときの追
悼演奏会は私にとってドレスデン時代の最大の出来事だったかも知れない。ほ
んとうにショッキングだった。それこそぴったりの時、ぴったりの場所、ぴっ
たりの作品だった。ただのアイデアやお膳立てとしてではなく、突如として音
楽というものがほんとうにそうでなくてはならないものとしてそこにあった。
まさに忘れることの出来ない感動的な体験であった。」彼はまたドレスデン在
任期間中2月13日に指揮台に立つ機会が訪れると、ミサ・ソレムニス、モーツァ
ルトのレクイエム、ブリテンの戦争レクイエムといった作品を取り上げていま
した。
このように爆撃を行った側の人間としての痛切な衝動に駆られて臨んだデイ
ヴィスのもと、時と場所を選ぶ演奏至難のベルリオーズの大作が、ほとんど奇
跡的にぴたりとはまったドレスデン追悼演奏会。かくも迫真の内容を持つ演奏
に触れる機会はまれといえるのではないでしょうか。
<audite>
AU 95498 \2080
モノラル
(1)チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調Op.64
(2)シューマン:ピアノ協奏曲イ短調Op.54
(3)[ボーナス・トラック]
フリッチャイのスピーチ-1957年1月24日ベルリン放送交響楽団創立10周年記
念祝祭コンサートに際して
(2)アルフレッド・コルトー(P)
フェレンツ・フリッチャイ(指)
(1)ベルリン放送交響楽団 (2) RIAS交響楽団
録音:(1)1957年(2)1951年ベルリン(ライヴ)
「絶対に忘れられないのがコルトー(P)フリッチャイの51年ライヴだ。ピア
ノもミス・タッチだらけだが、昔の巨匠の表現力がいかに濃厚自在であった
か、いかに劇的かつロマンティックであったか、いかに作曲者の魂の奥底ま
でをあぶり出すほど深かったかを、いやというほど教えてくれるのである」
-宇野功芳
メロドラム盤以来のあまりにスリリングな内容で知られる大演奏が、このた
びドイチュラントラジオ・クルトゥーア提供の正規音源使用により大幅に音
質改善が施されて登場します。また、フリッチャイが手兵と行なった1957年
ライヴによるチャイ5は、クリアなオケの響き、とめどないパワー、弛緩する
ことないフォルムと、まさにこの時期のフリッチャイの音楽の魅力を伝える
内容。まだ白血病発病前、快速テンポによる演奏から“リトル・トスカニー
ニ”と呼ばれていた時期のものです。
<harmonia mundi>
HMC 901963 \2250
バルトーク:弦楽四重奏曲第5番、第6番
アルカント・クヮルテット
【アンティエ・ヴァイトハース(1Vn)、ダニエル・ゼペック(2Vn)、
タベア・ツィンマーマン(Vla)、ジャン=ギアン・ケラス(Vc)】
録音:2006年10月
なんとも豪華な顔ぶれによる弦楽四重奏団が結成されました。その名もアルカ
ント・クヮルテット(イタリア語の「アルコ(弓)」と「カント(歌)」を組
み合わせた造語)。ヴァイオリンにウィーンの名手ヴァイトハースと、シュタ
イアーとのベートーヴェンの録音(HMC 901919)でも評価が高い、モダンもオ
リジナルもマルチにこなすゼペック、そして今ひっぱりだこで大活躍のヴィオ
ラ奏者タベア・ツィンマーマン、そしてチェロにいわずとしれたケラスという
錚々たる面々。2006年11月には日本でのお披露目公演もあり、その深みのある
表現と精緻なアンサンブルが話題となりました。記念すべき第1弾のリリース
は、泣く子もだまるバルトーク。第5番第1楽章冒頭の激しいリズム、第2楽章
のチェロの極端に低いどこか無機質な響き、その後現われる柔らかな旋律、
第3楽章の複雑なリズムの絡み合いは名手たちの真骨頂、そして第4、第5楽章
でも、エッジの効いた演奏に圧倒。続く第6番では、タベア・ツィンマーマン
による冒頭のヴィオラ・ソロの深みのある歌に、一気に世界に引き込まれます。
第3楽章の四分音の掛け合いも、絶妙なことこの上なしです。終楽章、静寂へ
と帰ってゆく終結部は、死者の魂が天へと静かに昇ってゆくような神聖さに
満ちています。
<Anthonello Mode>
AMOE 10003 \2450
西山まりえバッハ・エディション1 -MARIE NISHIYAMA BACH EDITION 1
J.S.バッハ(1685-1750):ゴルトベルク変奏曲BWV988
西山まりえ(バロック・ハープ、チェンバロ)
録音:2007年1月9-11日 Hakuju Hall, Pro Tools HD Recording System
24Bit/192KHz
ジャケット:さそうあきら
バッハ作品をチェンバリストのゴールと位置づける西山まりえによる「バッハ
:チェンバロ作品全集」第一弾の登場。チェンバロだけでなく、バロック・
ハープ、オルガネット、さらには歌もこなし、ルネサンスからバッハへと至る
音楽の歴史を多面的に検証してきたマルチプレイヤー西山まりえならではの
バッハ像がここにあります。西山は、即興演奏家としての立場からこの作品を
再熟考、第30変奏(最終変奏)「クオドリベット」とアリアには、この曲を見
直す重要な鍵──アリアそのものが、第30変奏にだけ用いられたベルガマスカ
の旋律(原曲はルネサンス期に成立)の変奏であること──を発見しました。
新たな発見をふまえた西山の演奏は、新たな翼を得たかのように流麗かつ自由
闊達。バッハが目の前に降りてきて即興しているかのような錯覚すらおぼえる
演奏です。(今後毎年2-3作のペースで主要鍵盤作品を録音予定。)
〈ゴルトベルク変奏曲〉というミノタウロスの迷宮は、数多の名演が引いたア
リアドネの糸によって、もはや歩き慣れた道筋のように思えるときがある。
だが、西山まりえの〈ゴルトベルク〉は、アラベスク模様を描く装飾と、足ど
りを撹乱する自在なテンポの揺らぎによって、迷宮に無数の枝道があることを
示す。喜んで、足を踏み入れよう。そこには見たことのない、魅惑的な風景が
広がっている。これは高橋悠治の新盤と並んで、私たちを解放する〈ゴルトベ
ルク〉なのだ。(矢澤孝樹)