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マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

    カウンター中華・ひとり舞台

2006-09-19 00:02:47 | 

中国料理といえば仲間の4,5人も募って行かねばならず、懐具合も気になる。そうでなければ餃子ラーメン天津飯の世界になってしまうし、今までなかなか間尺に合う店がなかった。ところが、ここ数年で若くて力のある料理人が出てきた。2人で行ってもアラカルトやコースで楽しめる。客の質の変わった今、こうでなくては中華は生き残っていけない。というわけで注目度の高い、堺筋本町の「一碗水」の一夜…。
 
「冷製岩ガキの殻蒸し薬味ダレ」 紅腐乳を使ってあるのかな。コースの口あけには喉ごしツルンといい感じ。シャンパンでもいい。甕出し紹興加飯酒8年物をデカンタ、本場風に常温で。
「秋刀魚の黒酢煮、石川小芋の咸魚ソース」秋刀魚の蒲焼のコテッとした黒酢版。咸魚(広東語でハムユイ)はコノシロを塩漬けにして干した調味料で、茨木「ジェイドガーデン」では炒飯に入ってきた。独特の匂いとアミノ酸系の旨みが強い。ここでは(香港式くさや)と書いてあった。
  
「塩漬牛舌のスモーク風味・(手前)合鴨広東式揚物」合鴨は皮目をパリッと揚げてある。「蒸し鶏の麻辣ソース」かなり辛いソース。ナッツと香菜。こういった前菜は歓迎。百年一日の如き、皮蛋・焼豚・くらげ・胡瓜酢などに飽き飽きしている。こういうのが延々続いても愉しいだらう。
 
「鮭白子入り中華風茶碗蒸し葱油かけ」松茸、椎茸、タラバガニ、髪菜(パーツァイ)、フカヒレ、干し貝柱。スープ替りに結構なもんだ。懐石における煮物椀みたいに、お椀がメリハリとして今後中華でも注目されるような気がする。「ホタテ貝柱、キノコ、フェンネルの煮込み」煮込みとメモったのは間違いか、写真はどう見ても炒だなぁ。黄ニラ、ズッキーニ。黄ニラを初めて食べたのは東京吉祥寺「竹櫨山房」。一碗水主人の修行先だった。なぜ黄ニラが高級食材なのか不思議に思ったもんだ。散らしてあるフェンネルの粒がアニスのような香りを添える。ここらでデカンタ2本目を所望す。
 
「茄子青葱の蝦子玉子炒め」小粒の蝦子の卵が散らしてある。油がかなり使われているだろうに、この軽みはどこから来るのだろう。「スペアリブの煮込み、空心菜添え」じっくり下拵えした豚バラ。調理工程はできるだけシンプルに努め、背越しに、煮凍り状態にしてあるのを鍋の中で温める程度に見えた。一人舞台なので時短こそが勝負である。
 
シメの「太刀魚の煮込みそば」は塩味ぴたり。いくらでも入ってしまいそうだ。昔小さい店だった目黒「聚景園」で食べたイシモチそばを彷彿とさせる。デザートは「オレンジで煮たさつま芋、黒米の餅包み」和でも十分に通用する自家製菓子。この多彩さ、驚きの安さ。ただ主人は驚くほど無愛想である。何せ作るのもサービスも一人。椅子は12席。愛想を振りまいている余裕などなし。満席。声高にしゃべるテレビ屋らしい客がいて気分よからず。


   縁の下の力持ち、油カス

2006-09-18 01:46:18 | 

           
芦原橋に珍なるめし屋がある。人よんで「カス丼屋」。界隈でネタに詰まると、ねえちゃんとこへ情報収集にお邪魔する。ねえちゃんったって俺の方が上やけど。先日「カス鍋」を売り出すとのことで試食してきた。なかなかやる。

かつお昆布のだしに各種野菜(明かさぬが、薄切りのジャガイモがいい)が入り、ホルモンとカスが入るのであるが、あっさりして予想以上の美味さ。だしにアクなど浮くものか。最後は黄ぃそば(黄色いチャンポン麺という意味)が入り、出汁は最後まで頂ける。

油カスと天カスは混同してはいけない。一字違いで大違い。牛の内臓中もっとも脂が乗り、効率よく油が取れるのが小腸(コテッチャン)なのである。この小腸を鉄の鍋に入れて火にかけると、自身から滲み出した油で自ら揚がってしまう。
その油の上等なものは食用ヘットとなり、石鹸の原材料にもなる。動物性だから肌にいい。この油を絞ったカスだから油カス。そのまんま。周囲はカリッとして中は半生の油が残る。

一見シイタケの天ぷらか一夜干ししたウツボ(そんなもん見たこたぁねぇか)に見えるだろうが、これが由緒正しい油カスだ。お好みにもうどんにも焼きそばにもたこ焼きにも香ばしくて段違いによくなるから、こいつがまぁ取り合いらしいのだ。

ハリハリ鍋のクジラの替わりに水菜と煮てもよく、油あげとしろ菜の揚げさんの替りにもバツグンの持ち味を発揮するという。少々濃くったって構わねぇ、カスパーティーをしたいもんだ。ねえちゃんはさいぼしも取り寄せておくと言ってくれた。サシの入った半生の桜干し、ホースジャーキー、これもたまらん美味いらしいど。

ねえちゃんは言う。「ビストロ料理の『和牛の頬肉の煮込み』いうたらツラ身や。『テリーヌ』いうたら煮凝りやん」まさに。言葉だけ言い換えて上等みたいなツラして幻惑するのは何だかムカっ腹が立ってくるではないか。トリッパの煮込みいうたらハチノスやし、フロマージュ・ド・テットいうたら豚のツラや。
油カス、焼きそばに入れて焼いて出したら、むちゃウケたで。コクが出る。ま、見も知らないでごちゃごちゃ言わず、まずは食ってみよ、なのである。


  祇園のテキは今日の友

2006-09-17 14:11:45 | 

祇園切通し、白川にかかる辰巳橋付近は最も絵になる場所の一つだろう。撮影に使われることも多い。これから南に下ったところにある『ステーキゆたか』は創業47,8年という老舗。床は信楽か、草色に釉薬を塗った焼き物がはめ込まれ、脂くささはおろか、半世紀近い歴史を感じさせないほど磨き上げられている。

ちょいと早めに着くと、二階で女性達の賑やかな声が。聞けば祇園の芸妓はんの誕生会やそうで。さぞかし高級ワインが抜かれていることだろう。なんと浮世離れした世界がまだここいらにはある。
 
いつの間にかステーキというようになったが、なぁにビフテキである。もっと昔の人はビステキと呼んだ。

うれしい反面、胃袋にズンと来るのは重いなぁ、と身構えていった。トロと一緒で霜降りの上等の肉はほんのすこしあればいい。そういう年代になってしまった。主人の高田氏は銘柄にこだわるのではなく、霜降りだけぢゃなく、食べていてしんどくならない美味しい肉を使うのだという。そうそう、それだ。
           
まずはオードブル盛り合わせ。自家製スモークサーモン、ホタテマリネ、才巻海老の刺身、肉刺し、煮アワビ。アワビは殻付のまま大根と一緒に煮る。かういふクラシックなアンティパストもいいね。
実に辛口の白ワインが進む・・・
 
ヴィシソワース(ジャガイモの冷製スープ)、野菜サラダ…スープはザラリとした舌触りの質感が残してある。
そして・・・真打登場。ゴクッ・・・
         
フィレステーキ、大きさは客の求めに応じて。これは150g。同席した京都の名料亭の主人も舌を巻く美味さ。フィレはどうしたって脂が少ない分、パサッとした感じが残るが、このフィレは肉汁を含み、見事に杞憂を裏切ってくれる。もちろん吟味に吟味を重ねているのだろう。ここゆたかのウリは実はこのフィレで、300~400gの背の高いフィレステーキの豪華さ、美味さで一躍人気店に押し上げたという。

ロースはチャコールグリルで脂を落としながら焼き、フィレは鉄板で両面を焼き、ニンニク・スライスの上にのせて蒸焼きにする。バターを入れた醤油ベースのガーリックソースがかかる。これなら200gはいけた。
ワインは赤のシャンベルタン。
          
そしてシメはお約束・・・いったい誰が始めたんだろう。エライ奴だぜ、ガーリックライス。肉片など入らないアッサリとしたガーリックライスに漬物と赤だし。水菓子。

最初に、主人手ずから二階の常連客用に、フィレのステーキ肉をビフカツにしていた。メニューには載っていない物だという。カツにしてくれなどと注文がつけられるのは一度や二度の来店では歯が立たない。
ああ、かういふ店で常連客みたいな顔をするには、一体いかほど使えばいいのであろうか。


  家人、いちじく、暴れ食い

2006-09-17 11:46:34 | 

           
京都府城陽のいちじく農家・KITAさんのいちじく。車飛ばして行ってしまった。上のは小さいのがあったり、不揃いだけに安くして頂いた。宅配便で送るのはまだ硬い未熟なものを送る由。
KITAさんとはテキーラ・サーキットのライブで、一回会ったっきりで、mixiのシンジケートつながりである。彼はいちじくを見て、キラリと光るヨメの目とヨダレを見逃さなんだ。「本当にお好きなんですねぇ~」。ホントは樹から自分でもいで、その場で皮をペッと捨ててかぶりつきたかったんだって。野生の猿か!

雨天だったので、これでも味が薄いのだという。カラカラの晴れが続くと味がぐっと凝縮して甘さが増すのだという。永田農法のトマトみたいなものかな。野菜も果物も厳しい状況に置くと味が濃くなるという。甘やかすのはダメらしい。作物もガキも。

帰宅するや、いちじくは皮をむき冷蔵庫へ。こうして熟れるのを止め、タッパに入れ、いつでもすぐ食べられるようにしておく。その作業をおとなしく遂行しているものと思えば、家人はカポ!カポ!カポ!といちじくを口いっぱいに頬張り、桃源郷をさまよっていた。こんな無茶、普段はやれぬからなぁ。
           
KITAさんに教わったいちじくのプロシュート巻きを作る。単に生ハムで巻いただけだが、上等なアンティパストになる。曙橋の「バックインタウン」ではこうしてメニューに加わっているそうだ。ちょっとレモンを絞ってもいい。もちろんいちじくにごまペーストで、和の前菜にもなる。   

           
もったいないんだけど、熟れた一部をジャムにする。食感を残したいのであんまり煮込まない。コトコト煮立てていると、ピチャッとはねてアチチとなるらし。レモン汁で安定させる。甘さもほどよく、パンに塗ると朝からごっつぉになる。ほんじゃ、ワタシが珈琲をガリガリやるか…。


  ピッツァは窯のそばに陣取るべし!

2006-09-11 00:34:13 | 

京都東山七条のピッツェリア・トラットリア「イル・パッパラルド」に再び。

挽き立て・打ちたて・茹でたての3タテをもってよしとする蕎麦ではないが、ピッツァも同様。焼き立てのアツアツにかぶりつくのが最上。
よって、できるだけ石釜の側に座らせてもらって、待ち構えていてパクつきたい。写真なんて撮ってる場合ではない。
ナポリピッツァ協会が認めるピッツァはマリナーラとマルガリータ。つまり基本中の基本、「マリナーラ」は、ま、すうどん、或いは豚玉というところか。トマトソース・ニンニク・オレガノ・バジル。これがかなりいい線イッてる。
          
ピッツァ職人で店主の北村さんの動きが間近に見える。寝かせていた生地を手際よく伸ばし、トマトソースやチーズをのせ、オリーブ油をかけ回し、石窯へと入れる。実にシンプルな作業だ。石窯の中で燃える薪の様子を見ながら、まんべんなく焼けるように、炉辺焼きで使うような長いパラを操り、窯の中でピッツァを回す。ここが腕の見せ所。
           
「プロシュート」はモッツァレラチーズを乗せて焼かれ、取り出してから生ハム、ルッコラ、パルミジャーノを上から削りかける。生ハムが熱でジワッと脂を出し魅惑的。コルニチョーネ(額縁)と呼ばれる耳をしっかりと作るのがナポリピッツァの特徴。耳はたい焼きの尻尾と同じで、ここにソースがかかっていないからいいのだろう。

参考までに焼いてもらった「フォカッチャ」。聞いた話だが、ピッツァの原型はこういったもので、共同の石窯でおっかさん達はパンを焼きながら世話話に花咲かせ、その合間に生地の余りで塩味かせいぜいオレガノパラリの素焼きのフォカッチャを焼いて、虫養いとしたらしい。
小麦粉と塩と水と酵母…これだけで十分旨い。
         
魅力的なメニューはピッツァ以外にもふんだんにある。
「鱧とポルチーニ茸のスパゲッティ・すだち風味」ハモ松茸のイタリアン解釈といったところ。あっさりしながらも、ポルチーニがいいダシを出す。「キノコいっぱいのパルメザンのリゾット」パルミジャーノの穴に熱いリゾットを入れてチーズを和え、客前で取り分けてくれる。トロトロ…
 
「やわらかい和牛頬肉の煮込み、太平パスタ・マファルデ」手打ちパスタと見まごうようなもっちりした歯応え。マファルデとは、リボンの如きひだひだがよくソースとからむロングパスタ。ラグーはもうちょっとリッチな味付けでもいいかな。
「霜降り豚のシンプルな炭火焼と松茸のフリット甘くせつないバルサミコソース」長いわッ!まぁこういうのが流行なんざんしょ。バルサミコとバジルソースの2種類の味。豚肉はジューを含み、旨み十分。松茸は香りよろしく、2つの食感のちがいは面白い。
 
杯を持て、さぁ卓を叩け!
いよいよ、食欲の秋到来。 いざ、体重計を遠ざけるべし…!