マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

アメリカンな歌舞伎

2012-03-04 23:43:39 | Weblog

過日の話。 軽い食事をしてから、劇場に入ろうということで、道頓堀の名店、
純喫茶「アメリカン」へ。 昭和21年の創業。
料理研究家の小林カツ代さんは、ここを思い出の店とあげていらした。

ここには時代錯誤と切り捨てられないだけの、うまい物がたくさんある。
すぐそこの道頓堀がいかに姿を変えようとも、ここは最低20年は変わりはしない。
そのことが信用となり、逆にアダルトな客をつかんでいる。

そう、時代に敏感とかいって、早いばかりが食いもん屋ぢゃないよ。




ホットサンド。スパイシーなハンバーグがサンドされる。 ようがすな。





そして、イタリアンスパゲッティ。 ホットケーキしかり。

こういう定番ものがもの凄くいい。

ちょいと色は薄いが、なにケチャップをケチってる訳ではないのだ。





うん、まだ3人前は食えるな。

コーヒーは昔大阪風のうんとローストの強いタイプ。

なんか食った時には、こういう濃い味でスキッと洗い流す。





道頓堀の喧騒の中を歩いてすぐ。

松竹座へ。

2月花形歌舞伎を見に。 染五郎・獅童・愛之助がすこぶるいいらしいので。

歌舞伎ファンでもなんでもいいが、名人上手は見ておきなさいと師匠連中に言われ、
尾上松緑の勧進帳も見ている。





さて花形歌舞伎。本公演と比べ、若手のアイデアが光る。

愛之助がいがみの権太を演じた、「義経千本桜 二段目 すしや」。

ひとの言うことを聞かぬガキのことを大阪でゴンタと呼ぶのは、この権太から来ている。





3階の上手席を選んだのが運のツキ。

客席を見降ろすと、目がクラクラしてしょうがなかった。

芝居見巧者はだいたい3階に座るもので、ここから良い間で
「高麗屋! 松嶋屋!」などと声がとぶ。

吉本系の放送作家とばったり会った。





舞台をこの角度で見て、オペラグラス覗いてご覧なさいな。

首はおかしくなるし、なんだか目が右の方に寄って、胸が悪くなった。

やはり、席は多少悪くても、芝居は正面で見た方がよろしかろう。

あ~、気持ち悪かった。





ということで、劇場のおねえさんにお願いして、正面に移動させてもらった。

幕間(まくあいと読む)で、さっきのアメリカンで買ってきた、サンドイッチをひらく。
50年代を思わせるようなポップな箱である。




ちょいと歪んでしまったのは、いがみの権太のタタリか。

関西人は玉子サンドには異状な思い入れがあり、なぜか茹で卵をつぶし、
マヨネーズなどで合えるフィリングは余り人気なく、厚焼き玉子の方が
圧倒的に人気なのである。




玉子を食べるというダイナミズムはもちろん、こちらに軍配があがる。

ま、松竹座の客席で何してんだの声もあろうが。

後半の「研辰の討たれ」がめちゃくちゃ面白かった。
染五郎とはあんなに身体の動く役者だったのか。軽妙である。
エノケンか野田秀樹かと思った。 仇討に来る兄弟相手に、劇場中も逃げ回る。

スラップスティック喜劇さながらで、セリフも歌舞伎調ではなく、現代語でやる。
いや見事な体技を見せてもらい、惜しみない拍手となった。

花形歌舞伎、実験的なこともやるらしいので、マークしておくとよろしかろう。