放送大学の科目の一つ「グローバリゼーションの人類学」のテキストに、イヌイトのことが出ていた。狩猟を生業とするカナダ極北圏の先住民である。
今は、かなり生活の様子は変わっているそうだが、この狩猟に関して、イヌイトの考え方がでている。人間は、魂を持つ野生生物から食物を与えられ、分かち合うことを、命じられているというのである。すべてを食べつくすことによって、食物を与えた野生生物は、魂が滅びることなく再生する。
人間が分かち合って、食べつくすことをしないと野生生物の魂は滅び、再生できないので、食物は与えられないことになる。わかちあうので、独り占めしたりしない。「誘惑」の技術についても、隠したりしない。助け合い協働することとなる。
イヌイトは、野生生物に対して、常に「食べ物の受け手」という劣位にあり、分かち合われねば食物をうることはできない。この循環システムでは、命令したりされたりの関係が、人間の側にないことである。
資本の論理で、独り占めを是認する考え方では、すぐに滅びの道を歩むこととなる。拝金主義のはびこるなかで、奇跡のような、すばらしいシステムをイヌイトは持っている。