ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ジャンゴ・繋がれざる者』

2013-01-26 15:07:57 | 新作映画
(原題:Django Unchained)



----これ、一時間以上前に行ったんだって?
タランティーノは好きじゃなかったはずなのに、
どういう心境の変化。
「うん。
この映画がセルジオ・コルブッチの『続荒野の用心棒』が基になっていること、
そして前作『イングロリアス・バスターズ』でタランティーノに対する見方が
かなり変わってきたからかな。
もともと、タランティーノが苦手だったのは、
かつて良識ある映画人ではなく、
ただただ映画を見まくっていた、
今でいうところの映画クラスタが好きな映画の
いいところを
ごっそりいただいて映画を作っていたところ。
まあ、それはそれで問題ないんだけど、
それを業界が、いかにも新しい映画のように売りだして行ったところ。
そしていつしか時代の風雲児のように祭り上げられていったところ」

----でも、それって
自分の好きなものが
自分だけのものじゃなくなったって感じに似ているよ。
「そう。
だから、そこには愛憎が半ばする。
たとえば、あの『レザボア・ドッグス』のラストの三すくみがいい例で、
これ、昔からの映画ファンなら
だれもがセルジオ・レオーネ『続夕陽のガンマン・地獄の死斗』を思いだす。
しかも『レザボア』のすぐ前には
香港のジョン・ウーも『ワイルド・ブリット』でその再現をしている。
まあ、そんな感じで彼の映画に
ぼくは新しさは感じなかったワケだ。
ところが前作『イングロリアス・バスターズ』
それは大きく変わる。
あの映画のオープニング。
そこには、もう何年もスクリーンで観たことがない
かつての西部劇を思わせる雄大なショットが
その記憶のままの構図で…。
あれっ?これって戦争映画じゃなかったの?と目を疑ったね。
思えば『キル・ビル Vol.2』あたりから
彼のマカロニウエスタン志向は覗いていて、
『イングロリアス~』以前は、
『キル・ビル Vol.2』が自分のタランティーノ・ベストだったわけだけど…」

----なかなか本題に入んないニャあ。
「ごめんごめん。
でも公開前だし、
この映画の魅力の一つ一つを言うことは止めておこうと思うんだ。
ストーリー自体は、近年のタランティーノ映画と同じ
愛と復讐のジャンゴ”。
これさえ分かっていれば、もう何も語ることはない。
これは『続荒野の用心棒』でフランコ・ネロのジャンゴが叶えられなかった夢を
ジェイミー・フォックスのジャンゴが叶える、
タランティーノの贈りもののような映画なんだ。
物語はこう。
賞金稼ぎのキング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)の手によって
自由の身となった黒人奴隷のジャンゴ(ジェイミー・フォックス)が
彼と組んで次々とお尋ね者たちを取り押さえる中で、
お互いの絆を深くしてゆく。
やがて、ふたりは、奴隷市場で離れ離れとなってしまったジャンゴの妻を取り戻すべく、
農園の領主カルヴィン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)の元へ向う…」

----ニャるほど。
それでディカプリオの悪役作りが話題になっているワケか…。
「こういう役は、
キレるだけキレたほうが、映画はオモシロくなる。
マカロニウエスタンは、
そこにキーワードの一つともなった“残酷さ”を過剰なまでに入れ込み、
その悪党ぶりを強調するんだけど、
この点もこの映画はクリアー。
しかも感心するのは、
いくら残酷な描写を見せても
それが目をそむける形にはならない。
節度のある距離感、アングルに
キャメラポジションを置いているんだ。
さて、そのマカロニとの近似性を喋ったついでに、
『続荒野の用心棒』へのオマージュ。
これは、もう冒頭ですべて出している。
ネタバレになるので言わないけど、
『続荒野の用心棒』では棺桶を引きずっていたけど、
ここでは? というのがポイント。
そしてその写し方と音楽のお入れ方。
突然、キャメラがアップから超ロングに引くところなんて、
もう涙涙」

----また大げさだニャあ。
「その棺桶もそうだけど、
墓だの頭巾だのと、
あちこちに『続荒野の用心棒』のアイテムが散りばめられている。
なかでもオリジナルのフランコ・ネロとの会話は
ファンへの最大のサービス。
そして、マカロニのもう一つの特徴でもある“ありえなさ”。
これもクリアー」

----どういうこと?
「たとえば、銃に込められた弾丸が
一発の無駄なく敵を全員撃って死に至らしめちゃう。
このときの早打ちと、その正確さ。
ほとんど漫画の世界だけど、
リアリズムなんてくそくらえという、
カッコよさへの徹し方。
この姿勢もマカロニならでは…」

----でも、そんな映画がどうして
アカデミー賞にノミネート?
「映画が描くのは、
アメリカのブラックな歴史。
黒人奴隷制度。
それに対して異議申し立て、検証を行っているのも大きいと思う。
とりわけ、自分も黒人でありながら黒人差別を徹底する
執事スティーブン(サミュエル・L・ジャクソン)への容赦ない視線。
こういうキャラを生みだすところにも
タランティーノの脚本家としての才を感じたね。
そうそう、ロケ中心でSFXが少ないからか、
エンドクレジットが短かったよ」



『マンディンゴ』という言葉を久しぶりに聞いたのもこの映画。

                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「興奮が止まらないようなのニャ」身を乗り出す

※観る前は、黒人がマカロニウエスタンの主人公というのに違和感あったけど、
もう彼しか考えられなくなった度
コトリ・ロゴこちらのお花屋さんもよろしく。

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画像はアメリカ・オフィシャル(ダウンロードサイト)より。