ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『借りぐらしのアリエッティ』

2010-07-06 23:23:50 | 新作映画
----これってジブリ の新作だよね。
監督の米林宏昌って初めて聞く名だけど…。
「そうだね。彼はジブリ最年少、37歳の監督。
『崖の上のポニョ』でフジモトの部屋から金の水魚に乗って
地上にやってくる一連のシーンを描き、
宮崎駿をうならせたらしい。
その宮崎駿は、今回、脚本と設定を担当。
それを基に、キャラクターを設定し、絵コンテを完成させたのだとか…」

----で、単刀直入に聞くけど、映画はどうだった?
「まずオープニング。
ここを観た瞬間、ぼくは『耳をすませば』を思い出した。
それって、あながち間違った連想でもなかったみたい。
米林監督がジブリに入ろうと思ったきっかけは
その『耳をすませば』なんだって。
さて、映画の方はメアリー・ノートン
1952年にイギリスで出版した『床下の小人たち』に基づいている。
ぼくはさとうさとるいぬいとみこなど、
小人をモチーフにした小説は昔から好きだったけど、
これに関しては読んでいなかったから、逆に楽しみにしていたんだ。
小人が人間の少年に見られてしまうという設定だというしね。
――小人の娘・アリエッティはお父さん、お母さんとのふたり暮らし。
荒れた庭からオリーブやシソの葉を取ってきてお茶を楽しんだりしている。
そんなある日、アリエッティはお父さんと“狩り”ならぬ“借り”へ」

----えっ、それってどういうこと?
「たとえば、ティッシュだとか角砂糖だとか、
ほんのちょっとだけ生活に必要なものを人間から借りてくるんだ。
このシーンが、最初のハイライト。
彼ら小人は特に魔法が使えるわけではない。
ロープやガムテープを器用に使って、
昇ったり降りたりしながら、冒険の旅に出るんだ。
ところが、その姿を、病気療養のためにこの地に来ていた
12歳の少年・翔に見られてしまう。
そこで翔が行なった、ある行為が彼ら家族を追い詰めていく…
こういうお話だね」

----あらら、翔って悪い人ニャの?
「う~ん。ここがジブリらしい、
一筋縄ではいかないところ。
翔自身は、とくに悪い人でも何でもない。
しかし、彼がよかれと思ってしたことが
結果的にはおせっかいとなっていく。
というように、この映画には、
これまでのファンタジーの枠には収まりきれない
いくつもの現代的なテーマが含まれている。
そのひとつがタイトルにも使われている
“借りぐらし”」

---モノを買わずに借りちゃう…。
でも返さないんだから、
結局もらっちゃうんじゃニャい?
「しっ(笑)。
実は宮崎駿と高畠勲が、
この企画を立てたのは40年以上も前。
ところが、今の方が人に受け入れられる。
なぜなら今の時代の方が深刻だから…と、
こういうことらしい。
これは偶然にも先日、友人から聞いた話だけど、
学者の中には、すでに貨幣に頼らない経済の仕組みを
本気で研究している人たちもいるのだとか」

----?
マイケル・ムーアじゃないけど、
資本主義はもう行き詰っているということ。
確かに、これだけの格差社会になると、
根本的なところで大変革を起こさないと
これから先、世界は難しいかもしれない」

---ふうむ。ギリシャのように経済が破綻した国もあるしね。
ところで絵の方は?
「これは、花やグリーンに興味がある人なら大満足。
一つひとつの植物が愛を持って描かれているのがよく分かる。
庭も手入れが行きとどいてなく、適度に荒れている。
そう、自然ままが残っているんだね。
で、その中を、小人たちが動き回るわけだから、
ふだんとは違う低い目線での風景が目の前に広がる。
まあ、これは『ミクロキッズ』『バグズ・ライフ』など、
これまでにもないではなかったけど、やはり絵の丁寧さが違う」

----ということは大満足?
「いやあ。そうともいかないんだな、これが。
理由は声のキャスティング。
あまりにも聞きなれた<声>が多すぎて、
どうしてもその俳優の顔がちらついてしまう。
こちらはもう少し、無名な人にしてほしかったな。
勝手な言い分かもだけど…」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「『ポニョ』よりも前売がスゴイらしいニャ」身を乗り出す

※ぼくはポニョの方が好きだ度


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18 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
■悠雅さん (えい)
2010-08-07 23:15:37
こんばんは。

いま、ふと思ったのですが、
こういう小人のお話、
それも身近な世界だと、
アニメじゃなくて実写で観てみたいです。
アニメだとなんでもありで、
最初から作られた世界でもOKになってしまう。
ほんとうは、ありえない(であろう)世界を
目の前に繰り広げられてこそ、
夢も広がるものじゃないか、
ふと、そう思いました。

と、それはともかく、
グリーンの描き方は完璧dしたね。
ぼくにとっても理想のお庭でした。
返信する
Unknown (悠雅)
2010-08-05 10:07:10
こんにちは。
いろんな都合で今頃観て来たんですが、
やっぱり今回も、吹替えに難アリ、という感じが否めず…
お母さんの大竹しのぶが特に違和感がありました(あの性格もちょっと好きになれないけど)。
せっかく、日本のアニメーションにしてくれているのに、
原作の児童書を読みたくなってしまったのは、
映画を心底楽しんでなかった証拠かしら。
ただ、お花やグリーンの描写、色使いは素晴らしかったです。
何となくお花がいっぱいの背景というのではなく、
アイビーの根の張り方にしろ、咲いているお花にしろ、
1つ1つがちゃんと特定できる具体的で美しい描写が
一番気に入りました。
適度に雑草が混じり、色とりどりのお花が群生している、って
ある意味、理想の庭ですわ。
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■Keiさん (えい)
2010-08-01 01:06:31
こんばんは。

そうですね。
魅力的な小道具の数々。
こんどはその視点から観てみるのもオモシロいかも。
『千と千尋の神隠し』以来、
はっちゃけたエンディングが続いている
宮崎アニメとは一線を画した
正統派のエンディングも余韻がありました。
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Unknown (Kei)
2010-07-26 00:18:33
こんばんは。
大作ではないけれど、愛すべき小品としてよく出来ていると思います。特に、細かい小道具に凝っている所が好きですね。
逆さにした植木鉢のカマドとか、切手の額縁、ピアスのハーケンによるロック・クライミング、プルトップのハンガー…等々。
それらをもう一度眺め直すだけでも、何度でも楽しめそうです。
あと、角砂糖を心のキャッチボールのアイテムとして活用している所もうまいですね。

最近のジブリアニメは、クロージングがイマイチ不満でしたが、本作は見事でしたね。
その功績は、多分新たに加わった丹羽圭子さんの脚本のおかげもあるような気がします。
米林監督は、次回は自分のオリジナル脚本で勝負して欲しいですね。その時が真価だと思います。
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■ともやさん (えい)
2010-07-25 19:35:07
こんばんは。

そうそう。
著名人を起用することで話題づくりする必要もないのですから、
もう少し、ピッタリする声で観たかったです。
『もののけ姫』の森繁なんかは、
オモシロかったけど…。
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■たいむさん (えい)
2010-07-25 19:33:08
こんばんは。

おおっ、たいむさんも声優のこと指摘されていますね。
ぼくも『耳をすませば』の方が好きかな。
なんと言っても、あの映画には躍動感が…。
ほんとうに血が流れている感じがしました。
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■ノラネコさん (えい)
2010-07-25 19:31:31
こんばんは。

そうそう、基本猫派。
ハリウッド映画とは、ここが一線を画するところ。
ジブリが、全米を制覇するには
このあたりがネックになるかも(笑)。

以前、『おもひでぽろぽろ』のときに、
声優の顔が浮かぶと指摘されたことがあり、
そのときはそうまでは思わなかったのですが、
今回はさすがにきつかったです。
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声優 (たいむ)
2010-07-21 22:27:58
こんにちは!
私もジブリの俳優声優はもう少し考え直してもいいんじゃないかとずっと思ってます。
EDの五十音順もどうかなぁと。
並列は悪くないけれど、だれが何を担当しているのかさっぱり分からないし、仕事の区別はあっても良いような気がしませんか?

「耳をすませば」に近い印象は私にもありましたが、監督の手腕の差は歴然な気がしています。(エラそーですね・・^^;)
ジブリも世代交代にはまだまだ時間がかかりそうですね。
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声優 (ともや)
2010-07-21 20:05:34
こんばんは、えいさん♪
主人公の志田未来や神木隆之介なんかはわりあいしっくり来てて良かったんですが、お母さんの大竹しのぶとお手伝いさんの樹木希林はちょっと…でしたね。
こういうタレントの声優起用が面白い化学反応を起こす場合もあるのは確かですが、個人的にはちゃんとした声優を起用して欲しいです~。
そんな話題作りをしなくても、ジブリ作品ならちゃんとメディアで取り上げてくれるのにねww
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こんばんは (ノラネコ)
2010-07-20 21:17:11
トトロの頃からそうですが、ジブリ映画は基本猫派ですね。
犬派の勢力の強い中、うれしい事です。
それはさて置き、本作はあまり期待していなかったので、出来の良さはうれしい誤算でした。
個人的には今世紀に入ってからのジブリ映画では一番好きです。
でも、ハルさんの声はちょっと困りました。
志田未来や神木くんはそうでもなかったのですが、ハルさんはどうしても本人の顔が浮かんでしまって・・・
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■メビウスさん (えい)
2010-07-20 19:37:24
こんにちは。
「猫の恩返し」か…。なんだか懐かしいですね。今回の映画は「トトロ」に近い感じもしました。そう、肩の力の抜けぐあいみたいなのが…。
「ポケモン」観てますよ。オールスターでしたね。でも、どこかで観た感が強かったです。
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■にゃむばななさん (えい)
2010-07-20 19:32:38
こんにちは。
「魔女宅」を思えば、しごくあたりまえなのでしょうが、
ジブリはほんとうに猫がいい感じで出てきますね。
ぼくも「耳をすませば」は大好き。あのときの猫たちもよかったニャあ。
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アタ~リ~♪ (メビウス)
2010-07-18 23:41:39
えいさんこんばんわ♪

新人の監督さんだからどこか構えてた所もありましたけど、思った以上に好感な部分が多くて、その新人監督さんを起用したジブリ作品の中では個人的に猫の恩返し以来のアタリでございました。
小人の視点や借りをするシーンなどもホント冒険といった感じがあって、アリエッティ同様楽しく観れたんですよねぇ♪昔と違い、ちょっと裕福になった現代社会を批判的に捉えてるような所がアリエッティパパらの態度から感じ取れもしたのですが、それでもあんまり説教くさく無かったから許容範囲内でしたw

※それと全然関係ないですが、えいさん今年ポケモン観ました?^^;
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鈴木P (にゃむばなな)
2010-07-18 15:12:35
米林監督だけでなく、鈴木敏夫Pも多分『耳をすませば』を強く意識していたと思います。
あのニーヤという名の無愛想なデブネコもそんなメタファーの一つなんでしょうね。
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■よろづ屋TOMさん (えい)
2010-07-13 22:49:41
こんばんは。

なるほど、テレビ放映だったんですね。
ありがとうございます。

さて、
ぼくも「宮崎アニメだけがアニメじゃない」と、
声を大にして言いたいです。
いま、もっとも気になっているのが
原恵一監督『カラフル』。
あの細田監督も大絶賛とか。
首を長くして待っています。
返信する
あ、映画化ではなく。 (よろづ屋TOM)
2010-07-08 14:04:25
サザエさん、サスケを作ったエイケンが遙か昔に『冒険コロボックル』としてテレビ放映してたんです。
親友がさとうさとる氏の熱狂的なファンで、さんざんレクチャーされまして。

宮崎風アニメが時代遅れと言うわけではないんですが、今の深夜帯アニメを観ていると、すでにジブリが日本の(あるいは世界の)最高峰ではない、と思えるだけのさらなる可能性を多々観る事ができるのです。
もちろん、素晴らしい作品ばかりではないのは、映画の世界と同じですが、貧しくも魂と生命を削りながらがんばる無数のアニメーター達によって、たしかに裾野はひろがり、そのぶん頂上はどんどんせり上がっている事も確かです。

微力ですが、そうした彼らの命懸けのがんばりを少しでも“アニメを知らないオトナたち”に伝えられたら、と思います。
返信する
■よるづ屋TOMさん (えい)
2010-07-07 22:52:48
こんにちは。

>ジブリ最大の悲劇である近藤善文さんを失った事

ほんとうにそうですよね。
あの映画は、青春とファンタジーが
絶妙なコンビネーションを見せた作品だと思います。

そうか、京都アニメーションっていうのは、
いま注目株なんですね。
何かの記事を書くとき目にしたことはありますが…。

そういえば、先日の東京新聞の記事。
アニメーターの月収が45000円というのには衝撃を受けました。
そんな状態だとは思ってもいませんでした。
エンドクレジットを見る目が変わりそうです。

「コロボックル」のリメイク…。
あれ、映画化されていたんですか?
知りませんでした(汗)。
返信する
ブランドならではの苦しみを感じますね… (よろづ屋TOM)
2010-07-06 23:50:52
今躍進中の京都アニメーションも自然や背景描写が見事なんですが、そこはジブリをはじめとしてこれまで当たり前だと思ってた描写とは根本的に違うアプローチをしてることに昨日『けいおん』記事を書いてて気づきましてね。

例えるならジブリなどはNHKの自然ドキュメンタリー的描写。しかし京アニはもしかしたら戦中戦後の邦画に登場するような背景の扱いかも、という気がしまして。
つまり自然描写をシーンの主役にした事がないんです。どんなに美しくても叙情的でも、あくまで人物たちの心情表現としての背景でしかない。
映画では、いくら美しいからといって、自然の描写に登場人物の芝居を“食わせる”なんてことがないように、京アニの背景描写は単なる背景。むしろ映画的なんだと気づいてハッとしたんです。

私はたぶんビデオ鑑賞になるであろうこの作品も、いっそ宮崎色から完全脱却してほしいのですが、やはりジブリ最大の悲劇である近藤善文さんを失った事が今も尾を引いているという感じですね。できれば次回作は新監督のカラーで染めて欲しいものです。

ところで魔法なしってのは違いますが、『銀曜日のおとぎばなし』『小さなメモル』のような温かい話だと嬉しいな。さとうさとる氏の『コロボックル』も今こそリメイクしてもいいかも。
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