ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『アゲイン-28年目の甲子園-』

2015-01-12 18:24:16 | 新作映画

----いよいよ。
今年の一本目。
確かこの『28年目の甲子園』って、
去年の夏くらいに観た映画だよね。
そのときから「来年のベスト!」とか言ってなかった?
「そう。
これだけ早からく試写を回しているからには
そうとうの自信作だろうとは思ったけど、
これは想像のはるか上をいったね」

----へぇ~っ。
でも、そうは言っても
これ、いわゆるヒューマンストーリーでしょ?
甲子園に行けなかった
かつての球児たちが
もう一度、自分たちも夢と向き合う…。
「ま、それはそうなんだけど、
原作が『青い鳥』重松清だけあって、
そこにいくつもの軛を入れている」

----どういうこと?
「普通に考えたら、
中年になった男たちが
夢の続きを…と、
もう一度集まるというのは、
よくある話。
ところがこの映画の大人たちの場合は、
そうスムーズにはいかない。
それは、一つには
今の時代を反映しての現実の厳しさであり、
そして、彼らが背負った過去であったりする。
この映画は、
なぜ彼らが
今そこにある夢の続きと向き合えないか
この社会的現実と
小説ならではの物語の両面で描いていくんだ」

----ふうん。
それって、描くの難しそう。
「だよね。
この映画では、
物語の水先案内人として
ひとりの若い女性を用意している。
震災で父・松川典夫を亡くした娘の美枝(波留)だ。
彼女は別居していた父の遺品の中に、
毎年、書きながらも結句よくは出すことがなかった
かつてのチームメイトに宛てた年賀状の束を見つける。
元高校球児が再び甲子園を目指す<マスターズ甲子園>のスタッフとして働く美枝は、
坂町春彦(中井貴一)を訪ね、大会への参加を進める。
何をいまさらと思う坂町」

----それは、もう体が錆びついているってこと?
「いや、本当の理由は別にある。
彼らが甲子園に行けなかった原因は、
なんと美枝の父・松川典夫にあったわけだ。
本来ならプロになれていたかもしれない
元ピッチャーの高橋(柳葉敏郎)などは、
今の自分の不本意な暮らしぶりを思うにつけ、
無念の思いを隠すことができない」

----いったい、ニャにがあったんだろう?
「それは知らないほうがいいね。
というか、それこそがこの映画のポイントだから。
観客はもちろん美枝も、
その<謎>を抱えたまま物語は進んでいく。
そして美枝にとってはあまりにも残酷な<父の過去>が
いよいよチーム発足というかつての仲間が集まった酒席の場で明らかになる。
いやあ、ここの演出はほんとうに息を飲んだね。
美枝が松川の娘であることを知っていながら
それでも再び甲子園を目指そうとする坂町と高橋。
だが、他のチームメイトは
美枝が松川の娘と知り激怒する。
感情を爆発させ、美枝を攻撃する者、
美枝の心を傷つかせないように気配りをする者。
さまざまな大人たちがぶつかり合う。
これは中井貴一も柳葉敏郎も
本当にやりがいがあったと思うよ」

----ニャるほど。
日本の俳優の底力ってやつだニャ。
「うん。
こういう、
彼ら役者が本領を発揮できるような企画って
これまでなかなか巡り合えなかったんじゃないか、
そう思ったね。
あっ、あと、これは言っておかなくてはというのがひとつ。
坂町の娘・沙奈美を演じる門脇麦
『愛の渦』での大胆な演技が記憶に新しい彼女。
ここでは、
両親の離婚以来、距離を置いていた父に対する
冷酷とも思える態度で、観る者に緊張感を強いる。
今の時代の、そしてこの年齢ならではの
ぶっきらぼうな口調もさることながら、
それをベースにした父親への複雑な思いの表現。
『キネマ旬報』での新人賞も納得の実力だね」




フォーンの一言「去年の最初にしゃべった『ラッシュ/プライドと友情
2014年のベスト1だったよニャ」身を乗り出す

※この映画のための書下ろし浜田省吾 「夢のつづき」がまたいい度

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