ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』

2008-02-14 23:09:12 | 新作映画
(原題:There Will Be Blood)

----この映画も確かオスカー最多ノミネートだね。
「うん。
観てみて、それも納得。
これは、実にオスカーにふさわしいスケールの作品だ」

----よく宣伝では
『市民ケーン』とか『ジャイアンツ』を
引き合いに出しているよね?
「そこが、まずぼくの興味を引いたんだ。
『市民ケーン』はともかくとして
名作を言うときに
アカデミー監督賞受賞のみの『ジャイアンツ』を持ってくるというのが、
なんとなく中途半端な気がしてね。
もっとも個人的には、
『ジャイアンツ』は大好きな映画なんだけど…」

----でも観たら、それも納得?
「うん。これは
『ジャイアンツ』と同じく石油王のお話なんだね。
『ジャイアンツ』は201分もの長尺の映画。
この『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』も156分。
ところが、途中一度たりとも時計目がいくことはない。
よくできた映画というのは、
ほんと時間が気にならないものだと、
改めて思ったね」

----ふうん。
石油王ということは、
この映画、
主人公が石油を見つけて大金持ちになるお話?
「うん。
簡単に言うとそういうこと。
その一攫千金を夢見る男ダニエルをダニエル・デイ=ルイスが熱演。
ここまで悪意に満ちた、しかも人間嫌いの主人公というのは
アメリカ映画では、ちょっと珍しいかも。
彼は人間を好きになったことがない。
だからたくさんの金を手にしようとするのも
人と関わらないでいいようになるため---ということなんだね」

----mmmm。
『リトル・ミス・サンシャイン』のポール・ダノも出ているよね。
「『リトル・ミス・サンシャイン』では
『神は死んだ』のニーチェにかぶれていた長男を演じていた彼が、
ここでは狂信的牧師の役。
まるで取り憑かれたように説教をするシーンは見モノ。
この映画は、このふたりの対立、対決を軸に物語が進んでゆく」

----へぇ~っ。
対立は分かるけど、対決もあるの?
「うん。しかも何度もね。
殴り合いもあって、これは少し西部劇っぽくもあったね。
まさにハリウッドが描き続けてきた男の世界。
ビジュアル的にも、
酸欠を起こしそうな地中での石油採掘に始まり、
真っ黒な石油の噴出、
そして油井やぐらの爆発炎上と、大迫力。
それらのスペクタクル性豊かな映像が、
いつか観た
太陽が沈んだ後のマジックアワーの光の中で、
シルエットとともに展開するんだから
興奮しない方がおかしい。
そうそう、冒頭20分なんてセリフが一切なし。
レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドによる
耳障りな不協和音だけ。
このシーン、
人によっては『2001年宇宙の旅』の冒頭を
引き合いに出しているようだ」

----それはスゴそうだね。
でも、よく分からないニャあ。
いまどきこんな映画作って意味あるの?
「う~ん。
これはぼくが勝手に考えたことなんだけどね。
この映画、
ある意味、現在のアメリカ批判になっているんじゃないかな。
現在の世界の紛争。
そのほとんどは石油を中心とした資源の奪い合い。
そしてパイプラインが通っている地域で行なわれている。
で、この映画を観ると、
もう100年以上も前から
すでにそれは
アメリカ国内で始まっていたことが分かる。
結局、欲に駆られた彼らが
19世紀後半から
20世紀初頭に国内でやってきたことを、
20世紀、そして21世紀と世界に広げている。
そこに原理的宗教というものが絡んできているところも、
現代と変わりない。
なんだか、そんな気がしたね」


               (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「確かに、これはオスカーに近そうだニャ」おっ、これは

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