中山七里著"魔女は甦る"を読みました。
これはすごい話です。
小説の中のお話ではなく現実に起こっているのではと
思われてそこが一番怖いです。
グロテスクな場面を描いた部分が多くあります。
こうも平気で人を物として扱えるのかと過去の部分、
現在の部分で思います。
ドイツのスタンバーグ製薬の日本の研究所の社員だった
桐生隆の何十にもばらばらにされた死体が発見されます。
場所は茨城の田舎です。
研究所は数ヶ月前に閉鎖になっています。
少年たちがドラッグを飲んで破壊的な行為をしています。
彼らが使ったのはヒートというスタンバーグが開発した
薬です。
一旦摂取すると体から抜けません。
スタンバーグ製薬は第一次大戦前から怪しげな薬品を
開発しています。
大きな勢力を持っています。
刑事の槇原と警察庁の宮條が事件を追っていきます。
もうひとり桐生の恋人の薬学部の学生の毬村美里も
事件を追っています。
桐生のすざましい過去が語られます。
家族を災害ですべて亡くしクラスぐるみ、地域ぐるみの
いじめを受け引き取られた叔母に毒殺されかけています。
宮條の過去もすざまじいものです。
刑事の宮條に報復のためその妹を薬物づけにしました。
妹は薬物中毒で亡くなっています。
スタンバーグ製薬の建物の近くの地域では猫が消えて
いきます。そして赤ん坊まで親が目を離したわずかな隙に
消えました。
槇原と美里がラストあたりに敵地に乗り込んで行きますが
このへんは命の危険があるのになんたる軽々しい無謀な
ことをするのかとちょっとあきれます。
おまけに相手のスイッチを入れるようなまねをして
自分の命を大事にしなさいといいたくなります。
実際に殺害した犯人は書かずにおきましょう。
ただただスタンバーグ製薬の人間としての普通の感覚を
失ったもののぶきみさを感じます。
何年も続いてきた組織は善悪を超越した独自の主義を
正しいものとして組織内の人を飲み込んでいくのでしょう。
いつかこういう力は倒れることがあるのでしょうか。
これからも被害がおきそうな状況でぜんぜん解決されて
いなくて終わっています。
音楽を文章であらわしてすごいと思った"おやすみ
ラフマニノフ"の作者の中山さんの作品です。
まったく違った設定や雰囲気でびっくりしました。