藤岡陽子著"トライアウト"を読みました。
トライアウトとは野球で戦力外通告を受けた選手が
もう一度どこかの球団に入るためのテストです。
久平可南子は新聞記者です。
8年前に未婚で息子の孝太を生みました。
入院を繰り返す孝太を見かねて仙台の新聞販売店を
やっている両親が孝太を引き取ってくれました。
母子別れて暮らしています。
9年前に酔って野球選手の片岡といしょにいるところを
写真に撮られてスキャンダルになりました。
片岡はその直後に警察に捕まっています。
片岡とはなんでもありません。
孝太の父親はやはり野球選手の藤村茂高です。
可南子は校閲部にいましたが運動部に異動になりました。
仙台で行われるトライアウトの取材が運動部の最初の
仕事になりました。
そこでトライアウトを受けている深澤翔平に出会います。
可南子は高校野球で投げている深澤を見ています。
インタビューを申し出て深澤と知り合います。
孝太は地元の野球チームへ入っています。
深澤は孝太が東京へ来たときにキャッチボールの相手を
してやります。
父が倒れたとの知らせが入ります。
新幹線もバスもすでにありません。
深澤がレンタカーで仙台の病院まで送ってくれます。
父は何日も意識不明でしたが目を覚ましました。
右半身が不随になりました。
妹の柚奈はしっかり者で家族の間を繋ぐ役目をしてくれて
います。
柚奈は父の病気をきっかけに保科広海と結婚すると
発表します。
彼は障害者のやっている店で働いています。
ゆっくりと愚直に働いています。
東京に戻った可南子に孝太のことですぐ戻れと柚奈から
連絡があります。
孝太がクラスメートの文弥に怪我をさせたといいます。
文弥の両親が謝れとすごい剣幕です。
担任が動いてくれて文弥が孝太を言葉で傷つけ孝太が
振り向いた拍子に自分で自転車の前に飛び出したことが
わかります。
孝太を連れて謝りに行きますが、帰る時に文弥も孝太に
謝れと可南子はいいます。
二度目に父が倒れたとの連絡が入ります。
今度は助かりませんでした。
深澤とは時々会っています。
二人はかなり本音で話せる間柄です。
深澤の野球に対する気持ちは深いです。
日本でなくてどこででも野球をやっていたい人です。
可南子に対してどうしてそんなに無理して働くのかと
問いかけます。
孝太を育てるため意地で新聞社にしがみついて働き
続けてきました。
孝太には父親が藤村だと教えました。
父親が有名野球選手であることを喜んでいます。
片岡を使って写真を撮らせたのは藤村です。
深澤は全て知っていて可南子に告げました。
彼女は新聞社を辞めることにしました。
仙台に戻って母と孝太と三人で暮らし始め就職活動中です。
深澤はつてを頼って台湾のチームで働くことになりました。
可南子のまわりの人達は新しい人生に向かって歩き始めます。
なかなかいい話でした。
可南子の意地っ張りな生き方はわかる気がします。
さめたような深澤も結構可南子と似た感じがします。
あっさり新聞社を辞めてしまいましたがそれまでのことは
無駄ではないでしょう。
少し力を抜いてこれからは生きていくことでしょう。
藤村は卑怯な男ですがどうのこうの言ったところで始まり
ません。勝手にやらせておくしかありません。