雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

シフォン・リボン・シフォン

2012-12-01 18:33:25 | 

近藤史恵著"シフォン・リボン・シフォン"を読みました。
シフォン・リボン・シフォンは下着専門店の店名です。

"第一話"
佐菜子はスーパーでパートで働きながら寝たきりの母の
介護をしています。
胸が大きく自分の容姿に劣等感を持っています。
父母は佐菜子を傷つける言葉を浴びせます。
家から出て行かないで自分たちの面倒を見るしかない
ようにさせるため自信を持たないようしむけています。
佐菜子は開店したシフォン・リボン・シフォンで美しく
見えるブラを購入します。
佐菜子の心は変わりました。

"第二話"
均はシフォン・リボン・シフォンに息子の篤紀が出入り
しているのに気づきました。
息子よりずっと年上の女性店主との間を疑いました。
息子に問いただすと何か言いたそうでしたが店主との
交際を疑うと笑い出しました。
均は篤紀が小学生の時に母親の下着を広げているのを
見て殴りつけたことがあります。
はっと気がつきます。
息子の部屋に女性下着がいっぱいあるのを見つけます。
母親はずっと前から息子のことに気づいていました。

"第三話"
シフォン・リボン・シフォンの店主のかなえは乳がんで
全摘手術を受けています。
弟夫婦が両親と同居してくれていましたが母親の介護が
必要になり自分も故郷へ戻ってきました。
父母は自分たちの価値観を押し付けてくる人達です。
下着店を始めたときも反対されました。
病気がわかった時に母親は 「ばちがあたったんだ」
といいました。

"第四話"
店に60代半ばの裕福な家の奥様という感じの婦人が
やってきました。
自慢話をして品物を包ませてお金を払う時になって
カードを忘れたと帰っていきました。
次に来たときには取り寄せを依頼しました。
品物は届いたのに受け取っていきません。
町内の他の店でも同じことをしていて知られた人でした。
若いころの裕福な生活をしていた時のことが忘れられない
のです。
彼女は認知症がひどくなり介護施設へ行くことになります。

どの話も物悲しい雰囲気が漂っています。
その中にも絶望ではなく希望が見えているところが
救われます。
静かな雰囲気です。
家族の意識の違いは数日で決着がつくことではなく数十年、
あるいは一生向き合っていかなくてはいけない問題です。
どうやって自分と家族とを分裂させずに両立して生きて
いくかは難しいことです。
第三話の「ばちがあたったんだ」発言は読んでいる私も
ずっきっと心が痛んで落ち込みました。
本当にこう言われたらどれだけ悲しいことでしょう。

幸い我が家族は多少の意見の違いはあっても、まったく
別方向を向いているということはなくありがたいことです。

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