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雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

陽気な容疑者たち

2017-09-29 11:57:41 | 

天藤真著"陽気な容疑者たち"を読みました。
計理事務所の事務員の辻が語り手です。
吉田鉄工所の会社解散の仕事を請け負いました。
社長は吉田辰造です。
会社の経営は順調ですが、労働組合の力の強い従業員を
全員解雇して会社を売るつもりです。
辻は最後の書類を持って辰造の家のある桃谷村を訪れる
ことになります。
村の者たちに荷物を運んでくれるよう頼まれ、表紙の
ごとく荷物だらけの状態で最終バスには乗り遅れ
山道を歩いて到着しました。
家に泊めてもらうことになります。

辰造は従業員だけでなく、親類にも憎まれています。
妹のおみつは寝たきりの夫と小さな養子を抱えていますが
ぼろ小屋で最低の生活をしています。
辰造の亡妻の連れ子の弘子はひどい暮らしでしたが
働くようになって家を出ました。
甥の保は父親に対する仕打ちに怒っています。
周りは憎む人ばかりです。
横浜のバーのマダムの久良子を信用し共に暮らす
つもりでいます。

夜はトーチカのような蔵で寝ています。
周りは堀で尖った杭で防御してあります。
高い所に窓がありますが、入り口は一ヶ所しかありません。
翌日になって辰造は姿を見せません、
警察に連絡します。
警官が来た時に家にいた者たちは陽気に酒盛りしていました。

警察が入り口を時間をかけて開けていきます。
3つものドアで手こずりました。
辰造はベットで死んでいました。
警察医は心臓マヒと判断しました。

久良子が乗り込んできて殺人だと、調べ周りますが
結局は覆りませんでした。

辰造の死で会社は苦労のすえ存続され、周りの人々も
それぞれ生活は改善されました。

これだけで終わったらミステリーではありませんね。
彼の死を引き起こした出来事とはなんでしょう。
辻の役目は。

それにしても辰造は嫌われたものですね。
ここまで嫌われる人生を送っても本人はなんとも思っては
いなさそうです。
でも思うに現代の親類関係で自分の家族以外のものの
面倒を見ている人なんて裕福な人でもそういるようには
思えません。
すぐ側に置いていてまったく援助しないでひどい生活をさせ、
自分は豊かな生活をしていては理不尽さが際立って見えます。

ずいぶん危険なことをしたものです。
辰造が死ななければどうなっていたことやら。

ビストロ青猫謎解きレシピ 魔界編

2017-09-27 09:19:15 | 

大石直紀著"ビストロ青猫謎解きレシピ 魔界編"を
読みました。
辻村凪子の新聞記者の夫は取材に出かけたまま
行方不明となり三年経ちました。
京都御所近くのビストロ青猫で働きながら凪子は
夫が帰ってくるのを待っています。
凪子の提案でケータリングをするようになりました。
店主杉浦の甥の準平は神社仏閣めぐり、特に魔界と
関係するところが好きという人物です。
店の手伝いをしています。

溝口家へケータリングで行った時に、呪術研究者の
桂喜美子が招かれていました。
彼女はかつて霊能者のキミーKとして客から金を
巻き上げていました。
客に丑の刻参りをさせて死なせています。
早くに帰った喜美子が死体で見つかりました。

宮市家に準平を連れてケータリングに行きました。
清吉の退院祝いです。
清吉は長男の太吉と共に元衆議院議員です。
次男は元ゼネコン社長です。
奥の部屋へ行った太吉を呼びに行った凪子は死体を
目にし、自分も殴られ気を失いました。

地下室が見つかりそこには髑髏が飾られていました。
死んだあとはどうなってもいい、現世での栄光が
得られればいいという信仰が髑髏を拝むものです。

信者からお金を巻き上げるために設立された崇光道と
いう教団がありました。
最初に殺された喜美子が関わっていました。
光美という女性がいました。その娘のスミ子が登場します。

光美は多少の知的障害がありました。
でもまわりの人を幸福な気持ちにさせました。
とらわれていたのを逃げ出し、尾野と出会い少しの間
幸せに暮らしました。
尾野はずっと光美を探していました。

連作短編集かと思っていたら一続きの長編でした。
好き放題にお金を求めた人たちがぜんぜん幸せそうでは
ありません。
長年に渡ってずい分あくどい生き方をしてきたものです。
凪子の夫は果たして無事でしょうか。

千の命

2017-09-24 21:00:00 | 

植松三十里著"千の命"を読みました。
江戸時代の実在の産科医、賀川玄悦の人生を描いた
ものです。
玄悦は彦根藩士の息子として生まれました。
しかし妾の子であり、実母の八重はは下働きとして側に
いましたが、母とは名乗っていません。
玄悦が七歳の時、八重は身ごもり実家へ帰りました。
出産の時、八重は亡くなりました。
この時玄悦は母の実家の賀川家へ引き取られました。
玄悦は医者になりたいと願いますが反対されたため、家を
出て京都へ行きました。
医者の弟子になることはできませんでした。
按摩と針治療を独学で学びました。
お信と結婚し、玄吾、金吾、お佐乃と三人の子を持ちました。
昼はくず鉄を集め、夕方から按摩、針治療の仕事をしました。

長屋の隣の夫婦のお菊が出産する時、難産となりました。
この時はお産には関わっていなかったのですが玄悦が
呼ばれました。
赤ん坊は腹の中で死んでいます。
このままでは妊婦まで死んでしまいます。
赤ん坊をお腹から出さなければいけません。
昼の仕事で手に入れた物の中から都合の良さそうな道具を
手にして赤ん坊を一旦戻して引き出しました。
妊婦の命は助かりました。
このことから玄悦は死産の赤ん坊を取り出し、妊婦の命を
救うために呼ばれるようになりました。
こうして死産の時だけではなく、産科医としても
知られるようになります。
すべて独学です。
それまで胎児は頭を上にしていて、生まれる時に反転すると
信じられていましたが、玄悦が最初から頭を下にしていると
臨床から見つけ出しました。

忙しくなった時代は家族とはうまくいっていません。
長男は産科医として修行させていましたが意見が合わず
家を出て行ってしまいました。
次男も十四歳で黙って、本屋に働きに行ってしまいました。

山脇東洋という高位の医師が主催する医者や儒者の集まりに
玄悦は呼ばれ知識を披露しました。
東洋の息子の格五郎を弟子として引き受けました。
このころから多くの弟子を指導し知識を伝授するように
なりました。
長屋に行き場のない妊婦を住まわせ面倒をみました。

それまで妊婦は座って出産し、出産後も何日も横にさせ
ませんでした。
玄悦はその必要はなく横になって出産することを奨め
出産後も横になることが体のためだと主張しました。

人生の後半になって家族関係も好転してきます。

独学で産科医となったということが驚きです。
彼が編み出した回生術で何人もの妊婦の命を救いました。
多くの弟子に伝授したことで全国で多くの命が救われる
ことになりました。

教えを受けられなければ、自力で学ぶことができる
のですね。
すごい人です。
でも同時になぜそれ以前の人たちは考えつかなかった
のだろうとも思います。

死角に消えた殺人者

2017-09-23 21:00:00 | 

天藤真著"死角に消えた殺人者"を読みました。
千葉県銚子の断崖から車が落ち、4人の男女が
亡くなりました。
令子の母親もその一人です。
父が早く亡くなり母は苦労して令子を育て、令子が
働くようになりやっと生活が安定してきたところでした。
吉川千代子は父親に結婚を邪魔され体調も良くない
若い女性です。
両角公子は有名な学園の学園長です。
伊東寅太郎は裁判所の書記官です。
4人の間にはどう調べてもつながりがありません。
落ちた車は由良進一という工員が借金をして買った
ばかりの高級車でした。
公子の息子の至、寅太郎の息子の信夫と情報交換の
ための遺族会を作ります。
千代子の父親は最初から関わろうとしません。
令子は犯人を見つけて復讐をすることを目論んでいます。

令子には付き合っていた男性がいましたが、事件を知って
去っていきました。
令子はある時は至と、ある時は信夫と行動を共にして
事件を調べます。
公子の秘密、寅太郎の秘密がわかってきます。
聞いたことがなかった令子の母のまつ江と父の過去も
わかってきます。

警察は4人共に殺意を持ったのか、4人のうちの一人、
あるいは二人が目的で他はカモフラージュのため
巻き添えをくったのかと調べています。
それでも4人の関係はわかりません。
たまたま乗り合わせた他人同士なのか。

令子はもうひとつのことに気づきます。
犯人はこの人たちと見極めますが、もう一つの解釈に
思い至ります。

令子という主人公が好きになれません。
男たちを信用しているわけではないのに二人で行動
します。
あまりに無防備ではないかと思うようなことをします。
最後に取った行動はしていいものではありません。
まわりの男たちがかばってくれますが、将来に禍根を
残す出来事です。
他人の将来にまで悪い影響を与えるかもしれません。
そんなわけで読み心地がいいとはいえませんでした。

阿蘭陀おせち 料理人季蔵捕物控

2017-09-16 21:00:00 | 

和田はつ子著"阿蘭陀おせち 料理人季蔵捕物控"を
読みました。
店を手伝っている三吉は自分の風邪が治った後は
長屋の風邪ひきの面倒をみるため、おき玖は夫の
倉之進の風邪の介抱で二人共が店を休んで登場は
最後の方までありません。

季蔵は磁照寺の庵主の瑞千院から阿蘭陀正月の料理を
重箱に詰めて欲しいと頼まれます。
寺には行倒れていた女が保護されていました。
桃江と名付けられた女は記憶を失っています。

旅籠の三浦屋で逗留していた男が殺されました。
高価な根付がなくなっています。
見つかった刀には鮫皮を扱うさめ善の金鮫遣いが
されていて女将の守り袋が花生けから見つかりました。
殺されたのは男の姿をして様子も男と見られていましたが
女でした。
さめ善夫婦が捕らわれます。

さめ善の娘のおいくに恨まれることがあったか聞きます。
奉公人の娘に父親が挑み、拒まれて店を追い出したことが
あります。
呉服店の女性店員に落ち度がないのに荒い言葉をかけ、
彼女は店を辞めさせられるはめになりました。

頼まれた料理に季蔵は苦労しています。
知り合いの豪助がお光を紹介してくれます。
お光は阿蘭陀料理に精通しています。

おいくの許婚の吉右衛門と三味線の師匠のお冬が死んで
いるのが見つかります。

おいくには弟の好太郎がいます。
家を出ています。
きよ乃と暮らしていました。
好太郎を見つけた母が別れて家に帰るように言っているのを
聞いて姿を消しました。

男の姿をして死んでいた女は誰なのか。
さめ善のものを恨んでいるものは。

おもしろい展開でした。

春告げ花 口中医桂助事件帖

2017-09-15 21:00:00 | 

和田はつ子著"春告げ花 口中医桂助事件帖"を
読みました。

"二代目中村梅之丞"
絵師の喜代麿は呉服橋お美と呼ばれている女を
探しています。
泉福寺の瑞雲和尚から逗留している人の治療の
依頼がありました。
行ってみると治助という男は殺されていました。
この寺には中村梅之丞の墓があります。
墓は荒らされていました。
和尚は訪れた信者が悔恨を書いた紙を保存していました。
保存してある箱は開けられる予定でした。

"吉原やなぎ"
美鈴が薬草園の手入れや患者の応対を手伝うことに
なりました。
料理屋の仲居のおひさ、水茶屋の文代と殺され、続いて
長唄の師匠の小春が殺されました。
小春殺しとして平吉が捕まりました。
他の2件は自分ではないといいます。
おひさの許婚だという菓子職人の順吉が治療所に
治療に来ました。

"お歯黒の樹"
美鈴の叔母のお晴は骨董舗の三島屋へ嫁いでいます。
一人息子の信太朗は三年前の商用の途中で亡くなっています。
お晴は舌の病気で寝込んでいます。
桂助らは診療に訪れました。
お晴が殺され、使用人のお艶が疑われ逃げ出して馬に蹴られて
死にました。
蔵にはお芙美という女が縛られて閉じ込められていました。

"春告げ花"
美鈴の家は吉田屋は茶屋問屋です。
お茶壺道中のお墨付きに八百両を要求されて苦しい状態に
なっています。
裏には商売敵の北沢屋が関わっています。
息子夫婦が神田明神へお参りに行った帰りに雪中花を売る老婆に
会い、買い求めました。
この花を持ったものは良いことが起きると言われました。
庭に咲いていた雪中花のそばを掘ってみると千両箱が出てきました。
先祖が埋めたものだろうとこのお金で危急は救われました。

鋼次と美鈴は態度には見せませんが互いに好きあっています。
二人は所帯を持つことになります。

鋼次と美鈴が出会い、結婚することになる一冊です。

からくさ図書館来客簿 冥官・小野篁と 優しい道なしたち

2017-09-14 21:00:00 | 

仲町六絵著"からくさ図書館来客簿 冥官・小野篁と
優しい道なしたち"を読みました。
"第二集"を先に読みましたがこちらが最初の巻です。
時子は仁明皇の娘で二歳の時に賀茂社の斎院となり
四歳で解かれ、その後は18歳で亡くなるまで母方の
祖父の元で隠遁生活を送ることとなった女性です。
篁は時子の元へ色んな話を聞かせに行っていました。

"桜守"
恵理子は造園会社で樹木医をしています。
現在は滋賀の小滝村の二つ龍と呼ばれる桜の手当を
しています。
この桜はもう手の尽くしようがありません。
恵理子には戦国時代の鎧武者の森島清兵衛が憑いています。
清兵衛は桜を守ってきましたが、最後が迫っている
桜に無理をさせたくないと思っています。

"うまし国"
小森はカフェで調理師をしています。
体を乗っ取られ知らないうちに食材を買い込んでいます。
鯉をつかもうとしたり、鳩を捕まえていたりします。
首から上が牡鹿になった人物が憑いていました。
八十九歳で亡くなった食べることが大好きな望月です。
食べ物に執着があり過ぎて迷っています。
小森は望月を喜ばせようと考えます。

"葵祭"
沙耶は神社で巫女のアルバイトをする予定です。
神社で踏むなと声が聞こえました。
迷っていたのは葵祭の衣装を手掛けている衣装屋の社長
だった聡子です。
沙耶の祖母の知り合いです。
彼女は若い時に葵祭の斎王代に選ばれましたが直前に
入院するはめになりました。
代役となったのが沙耶の祖母です。
斎王代になれなかったことが心残りとなっています。

"迎え鐘"
良純は寺の息子で、父親は後を継ぐよう強要しています。
今はやっと許してもらったインド哲学を学んでいます。
しかし本当は建築家になりたいのです。
建築学科の教室に紛れ込んで授業を聞いています。
父が横に穴が開いている茶碗を預かったと良純に渡しました。
篁はお産で亡くなった女性を供養するための柄杓だと
用途を見抜きます。
穴は棒を差し込むためのものです。
迷っていたのはおくみで子供を身ごもったまま亡くなり父親が
柄杓を使って供養をしてくれていましたが、その父も供養を
数日残して亡くなりました。

彷徨っている幽霊と関わった人間と、天道へ送り出す
篁と時子の出会いの話、おもしろかったです。

浮雲心霊奇譚 菩薩の理

2017-09-13 21:00:00 | 

神永学著"浮雲心霊奇譚 菩薩の理"を読みました。
シリーズ3冊目です。
浮雲は赤い目をした憑き物落としです。
呉服屋の息子で絵師の八十八が仕事を持ち込んできます。
引き受けるのにぐずぐず言う浮雲ですが、引き受けた
仕事はきっちりはたします。

"死人の理"
倉田屋の娘のお房は突然亡くなりました。
幽霊が現れるようになりました。
お墓を掘り返してみると空っぽでした。
浮雲はお房を生き返らせると、普段は言わないような
ことを言います。
八十八は浪人に襲われます。
浮雲が手配をしておいた伊織に助けられます。
お房の死因はわからないということでしたが、浮雲は
毒殺されたのだといいます。
お房が邪魔になった者の仕業です。

"地蔵の理"
六体ならんだお地蔵さんの一体は頭がありません。
その前に頭がない死体がありました。
調べに行った同心の林太郎に幽霊が憑依しました。
依頼を受けた浮雲と、八十八は現場に出かけました。
林太郎の義弟の少年宗次郎が迎えに来ましたが、
八十八を気絶させてしまいます。
旅籠に宿泊することになります。
亭主は太一郎、行き倒れていたところを先代に助けられました。
憑き物は説得で離れましたが、大勢の者たちが旅籠を
襲ってきました。
宗次郎がすばらしい腕前を発揮します。

"菩薩の理"
忠助は夜になると壁から這い出てくる沢山の赤ん坊の姿や
泣き声に悩まされています。
忠助の姉は働いて忠助を育ててくれました。
亡くなって骨となって帰されてきました。
悲しい赤ん坊たちが迷って出てきていました。

沖田宗次郎というめっぽう強い少年が新たに登場しました。
読みやすかったです。

秋しぐれ 風の市兵衛

2017-09-10 21:00:00 | 

辻堂魁著"秋しぐれ 風の市兵衛"を読みました。
御徒組の組頭を務める旗本の竹崎家から仕事の
依頼を受けました。
指定された妾の家に行き話を聞きました。
家族に内緒の借金を返す当てもなく話をつけてきて
欲しいという無茶な仕事です。
しぶしぶ引き受けることになります。

江戸に誰もが名を知る鬼一と呼ばれる相撲取りが
いました。
やくざ者に襲われその頭のおぞう勘助を死なせました。
鬼一に咎があったわけではないのに役人に手をまわされ
鬼一は江戸を追われました。
十五年後鬼一は江戸に戻ってきました。
母、妻、娘を江戸に残しましたが母と妻は亡くなっています。
娘は茶店勤めをしています。
鬼一は娘のお秀に会いに行きますがお秀は鬼一を拒絶します。

市兵衛は竹崎の借金の相手の札差の橋本屋に交渉に行きます。

お秀は身ごもっています。
相手は橋本屋の三男の順吉です。

おぞう甚助の跡を継いだ観音音五郎は鬼一が江戸に帰って
きたのを知って敵討ちをしようとねらっています。

鬼一は娘に金を残してやりたく、江戸で活躍中の相撲取りの
又右衛門と取り組みをすることになります。

今回の話では市兵衛はそれほど活躍していません。
鬼一の一家は悪いことをした訳ではないのにそれぞれ不幸に
なっています。
理不尽ですねえ。

残照の渡し 甲次郎浪華始末

2017-09-09 21:00:00 | 

築山桂著"残照の渡し 甲次郎浪華始末"を読みました。
大阪は城代が変わることになってざわついています。
幸次郎は呉服屋の若狭屋に暮らしています。
若狭屋の娘の信乃の許婚です。
しかし信乃は病弱で結婚は無理だと思われていました。
若狭屋には千佐という信乃のいとこに当たる娘が寄宿
しています。
甲次郎と千佐は惹かれ合っていますがどうすることも
できません。
剣道の同門だった大工の息子の豊次が殺人で追われています。
居酒屋で爆発騒動があり主の熊七が亡くなりました。
熊吉と豊治とは繋がりがありました。
硝煙蔵から硝煙が盗まれたとの噂が広まっています。
甲次郎は豊次を逃がしてやりたいと思っていましたが
豊次は死体で見つかりました。

千佐の友人の美弥は父の友人の饅頭屋の鈴屋に寄宿
しています。
父の太郎兵衛が病気だと知らせがあり帰りたがっています。
美弥の家は硝煙蔵がある長内村です。
甲次郎と千佐と店の職人が美弥に付き添っていくことに
なりました。
そのあとを十五郎という侍が後をつけてきます。

美弥の父、太郎兵衛が殺されます。
硝煙蔵から硝煙が盗まれたことと関係していると見られます。

十五郎は犯人ではありませんが窮地に追い込まれます。
甲次郎はなんとか十五郎を助けてやりたいと思います。

恋文の樹 口中医桂助事件帖

2017-09-07 21:00:00 | 

和田はつ子著"恋文の樹 口中医桂助事件帖"を
読みました。
歯が痛いと言っていた時に何で歯医者さんの
本が手元にあったのでしょうね。
昔は虫歯、歯周病で命を落とすこともあったという
話は身につまされました。

シリーズになっています。
ずっと前にこの話は読んで志穂が戻って来ていた
ような気がするけど、きっと気のせいですね。

志穂の父の町医者の佐竹道順と口中医の横井宗甫が
殺されてしばらく経ちました。
桂助はその集まりに遅れて行って事件から外れました。
志穂はこのことがあって姿を消しました。
房楊枝職人の鋼次と妻の美鈴が治療所を手伝っています。
庭のゲンニショウコと二輪草が抜かれていました。
犯人の本当の目的は姿が似ている、毒薬にもなる
トリカブトではと思われます。
飛脚の源八が殺されました。
源八が掛かっていた口中医の宗甫の姪の田辺成緒と知り合います。

元側用人の岸田とこれらの出来事が関係があるようです。
成緒とそっくりの男勝りのお加代という女も出てきます。

岸田にも最近知った出生には秘密がありました。
父親は医師で生まれる前に亡くなった模様です。
母親は叔母だと思っていた人物です。
叔母が殺されこれがきっかけで過去のことが段々と
わかってきます。
父は悪事に引き込まれたらしく行方が知れません。
過去に麻酔薬を作って貿易を行おうと画策したものたちが
いました。
長い年月が経ってまた同じ企みが復活したかのようです。

古い過去の出来事が表に現れてくる話です。

昔の人たちの歯は強かった、というわけではないでしょうから
虫歯になったらどうしたのでしょう。
この本の中の桂助は痛みを和らげる麻酔の成分のある薬草を
治療に使っています。
つくづく現代に生まれてよかったと思います。

からくさ図書館来客簿 第二集 冥官・小野篁と陽春の道なしたち

2017-09-04 11:38:19 | 

仲町六絵著"からくさ図書館来客簿 第二集
冥官・小野篁と陽春の道なしたち"を読みました。
第二集から読んでしまいました。
それほど困ることはありません。

京都にあるからくさ図書館は私設図書館で館長は
小野篁で、館員の時子と仕事をしています。
実は彼らは昔生きていた人たちで、天道へ行きそびれ
彷徨っている亡霊を天童へ送る冥官として現代で
暮らしています。

"リボンと人力者"
京都の観光人力車の車夫をしている隼人は膝に古傷が
あり、最近痛みがあります。
古い服装の十四、五の少女の幽霊の姿がみえるように
なりました。
隼人は図書館に行ってその話をしました。
幽霊の名は毬、人力車に乗っていた時に襲われ車夫の
杉野と共に殺されました。
杉野の人力車に乗っている時は幸せでした。
怪我をしている車夫を気にして彼女は話しかけました。

"子猿の宝物"
曜子は勤め先で嫌な思いをして退職をして実家の香木屋の
藤波堂へ戻ってきました。
この出来事で心因性の嗅覚障害に陥りました。
織田信長の小姓だったという藍丸という少年に取りつかれ
彼の声が聞こえるようになりました。
仕事で訪れた図書館へ行きました。
蘭丸の心残りを聞くことになります。

"みずがき"
大学に入学したばかりの花梨には亡霊が見えることがあります。
花梨には花を生ける才能があります。
骨董屋で古い竹でできた花入れを見ていました。
舞妓の幽霊にその花入れを燃やしてくれるよう頼まれます。

"鳥めずる若者"
鳥類学研究所に勤める蜂須賀は休日には鴨川でユリカモメの
観察をしています。
一時ユリカモメは鴨川から姿を消しましたが近年また
戻ってきました。
夕方には琵琶湖のねぐらへ帰っていきます。
鳥と共に旅をしているという男と子供らしき者とが話をして
いるのを聞いてしまいました。
鳥部と呼ばれていた男は翼を持ちずっと鳥の観察をしてきました。
天道へ行かねばならない男にはやりたいことがありました。

亡霊と出会ってしまった生きている人はすべてが完了した
時点で亡霊との出会いの記憶を消されてしまいます。
メン・イン・ブラックみたいだなと思って読んでいました。
篁の上司は安倍晴明、茜という人物も姿を現します。
小野篁って人物は実在したのですね。
初めて名を耳にしました。

時子は若く亡くなった女性で、篁より上の地位にあった家の出
のような感じです。

篁、時子、清明、茜とそれぞれ人物がいきいきとしていて
おもしろかったです。

紅い雪 藍染袴お匙帖

2017-09-01 21:00:00 | 

藤原緋沙子著"紅い雪 藍染袴お匙帖"を読みました。
女医者千鶴が出会う出来事を描いたものです。

"紅い雪"
元武士の治左衛門の妻を診察に行きました。
治左衛門は借金取りに押しかけられていました。
千鶴の手伝いをしているお道の友達のおふみが別れの
挨拶にきました。
おふみは吉原に身売りをしたといいます。
おふみの家は落ちぶれてはいますがなんとか生活して
いました。
お金が必要になった原因を言おうとはしません。
許婚だった錺職の松吉は荒れていきました。

"恋文"
札差の奈良屋の徳兵衛はおちよという妾がいます。
おちよのところから出た徳兵衛は男に襲われます。
男はおちよが妻であった呉服屋結城屋の手代だった
乙次です。
乙次は結城屋が奈良屋の陰謀で潰れたと、奈良屋を
狙っています。
乙次を兄と慕っているなつめという女に千鶴は
襲われます。
奈良屋が乙次の襲撃で怪我をしたのを手当したのを
うらんでのことです。

"藤かずら"
千鶴の患者に料理屋ゑびすの女将のおせつがいます。
ゑびすの庭の手入れは音次郎がしています。
千鶴は女牢の医者もしています。
音次郎が捕まって牢へ入れられていると知りました。
無実だという音次郎はずっと会っていない息子へ
鑿を渡して欲しいと千鶴に頼みます。
探し出した音次郎の息子の宗太は鑿の受け取りを
拒否します。

気軽に読める本です。

指名手配 特別捜査官 七倉愛子

2017-08-31 21:00:00 | 

新見きよみ著"指名手配 特別捜査官 七倉愛子"を読みました。
七倉愛子は三十半ばの警察官です。
子供時代は親の転勤で海外を転々としました。
結婚して夫の海外勤務についていきました。
夫の不倫で離婚し、日本に戻って母親と暮らしています。
愛子は数か国語がわかります。
その知識で特別枠で採用されました。
ところが配属先は指名手配されている人物を探す
見当たり捜査をする部署です。
毎日外を歩き回っています。

窃盗で指名手配の藤森洋行を見つけました。
連れて行った所で彼は浅野満の免許証を持っており
その名で仕事もしています。
別人ではありますがこれだけ顔が同じ人物がいる
ことに愛子の同僚らは双子ではないかと思います。

浅野は殺人事件で犯人ではないかと疑われましたが、
確実なアリバイがありました。

二人の過去を調べました。
やはり双子でした。
二人が生まれた時には両親は離婚していました。
会うことなく暮らしてきました。

この双子の一人が殺されました。
殺したのは双子のうちの一人です。

双子の事件の調査の間に単独の事件も交えて話しは
進みます。
この双子、性格はかなり違っているみたいです。

思いもかけない警官という職業についた愛子の
仕事に対する思いも興味深いです。

お師匠さま、整いました!

2017-08-30 21:00:00 | 

泉ゆたか著"お師匠さま、整いました!"を読みました。
小説現代長編新人賞の受賞作だそうです。
作者の最初の本です。

桃は十五歳の時に六十ぐらいの算術家の清道に嫁ぎ
八年を一緒に過ごしました。
桃は特に学問をしたわけではないのですがこの間に子供達
に読み書きや算数を教えるようになりました。
子供は五歳ぐらいから10歳ぐらいの子たちです。
清道は亡くなり桃は引き続いて子供たちに教えています。

寺子屋のある場所は茅ケ崎の寺です。
小田原から15歳の春という娘が両親を川の増水で亡くし、
もう一度勉強がしたいからと桃の元へやってきます。
春は両親と酒匂川の畔で七輪で焼き物をする店をしていました。
寺子屋には九つになる大きな商店の娘の鈴が通っていました。
生意気で利発な学問好きな子です。
春は小さな子に混じっておさらいおさらいから始めます。
鈴は春に対抗意識を燃やしています。

桃はすぐに春の算術の才能に気づきます。
鈴も算術に意欲を持って取り組んでいます。
彼女らは桃の知識を超えていると感じます。

大岡越前が量地術を学ぶ私塾に通う子を探していると
和尚から聞いて桃は春を推薦します。
桃の幼馴染の大工の平助も見込まれて春と共に小田原に
通うことになります。
鈴は自分が推薦されなかったことに怒っています。

鈴は寺に算額を奉納することに意欲を燃やします。
桃は自分も学習しながら鈴の才能を伸ばすよう努めます。

春と平助が通っている塾の目的は氾濫を繰り返す酒匂川を
治めることです。
座学のみではなく彼らは実践しています。

主人公は一人というのではなく桃、春、鈴と三人という
感じです。
それぞれ成長していきます。
自分より能力のあるものを導くのはかなりつらいでしょうね。
まだ幼いのに学問へがむしゃらにむしゃぶりついている鈴。
これだけ学ぶことに夢中になる子を持ったなら現代の
親なら大喜びでしょうね。
鈴の親たちも応援してくれてはいます。
でも江戸時代の女性には能力を生かしていく場はあるのかと
少々心配になります。
でも求めれば開かれますものね。
春は自然と道が現れる人みたいです。

おもしろかったです。