天藤真著"陽気な容疑者たち"を読みました。
計理事務所の事務員の辻が語り手です。
吉田鉄工所の会社解散の仕事を請け負いました。
社長は吉田辰造です。
会社の経営は順調ですが、労働組合の力の強い従業員を
全員解雇して会社を売るつもりです。
辻は最後の書類を持って辰造の家のある桃谷村を訪れる
ことになります。
村の者たちに荷物を運んでくれるよう頼まれ、表紙の
ごとく荷物だらけの状態で最終バスには乗り遅れ
山道を歩いて到着しました。
家に泊めてもらうことになります。
辰造は従業員だけでなく、親類にも憎まれています。
妹のおみつは寝たきりの夫と小さな養子を抱えていますが
ぼろ小屋で最低の生活をしています。
辰造の亡妻の連れ子の弘子はひどい暮らしでしたが
働くようになって家を出ました。
甥の保は父親に対する仕打ちに怒っています。
周りは憎む人ばかりです。
横浜のバーのマダムの久良子を信用し共に暮らす
つもりでいます。
夜はトーチカのような蔵で寝ています。
周りは堀で尖った杭で防御してあります。
高い所に窓がありますが、入り口は一ヶ所しかありません。
翌日になって辰造は姿を見せません、
警察に連絡します。
警官が来た時に家にいた者たちは陽気に酒盛りしていました。
警察が入り口を時間をかけて開けていきます。
3つものドアで手こずりました。
辰造はベットで死んでいました。
警察医は心臓マヒと判断しました。
久良子が乗り込んできて殺人だと、調べ周りますが
結局は覆りませんでした。
辰造の死で会社は苦労のすえ存続され、周りの人々も
それぞれ生活は改善されました。
これだけで終わったらミステリーではありませんね。
彼の死を引き起こした出来事とはなんでしょう。
辻の役目は。
それにしても辰造は嫌われたものですね。
ここまで嫌われる人生を送っても本人はなんとも思っては
いなさそうです。
でも思うに現代の親類関係で自分の家族以外のものの
面倒を見ている人なんて裕福な人でもそういるようには
思えません。
すぐ側に置いていてまったく援助しないでひどい生活をさせ、
自分は豊かな生活をしていては理不尽さが際立って見えます。
ずいぶん危険なことをしたものです。
辰造が死ななければどうなっていたことやら。