ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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あの鄭泳文さんが文学賞三冠王 ①ストーリー性を拒絶する作家

2012-11-05 19:17:46 | 韓国の小説・詩・エッセイ
 「あの」鄭泳文さん、と書きましたが、私ヌルボがたまたま知っている人なので、決して日本人の間での知名度が高い人ではありません。全国で数百人くらい? 千人はいるかな? 

 先日「朝鮮日報」のサイトをなんとなく見ていたら、10月31日のコラム「萬物相」の「文学賞三冠王(문학상 3관왕)」というタイトルに目がとまりました。読んでみると、チョン・ヨンムン(정영문)という作家が「ある作為の世界(어떤 작위의 세계)」という作品で今年1月に韓戊淑(한무숙.ハン・ムスク)文学賞、9月に東仁(동인.トンイン)文学賞、そして10月には大山(대산.テサン)文学賞と、1年に3つの文学賞を受賞したとのこと。
 (たぶん)日本では注目されそうにない記事だから、「朝鮮日報日本語版」にはこの記事は載ってないですね、やっぱり。

 私ヌルボ、すぐにはわからなかったものの、この名前はなんか覚えがあるぞ、とぼんやりした記憶をたどると、そういえば本ブログの昨年10月の記事「下北沢で申京淑さんの話を聞く(1)」で彼すなわち鄭泳文さんのことを書いてましたね~(笑)。申京淑さんの前に、むつかしげな自らの小説論(メタ小説論?)を話された作家ではないですか。まー、[慶]この度はおめでとうございます![祝]
 先の記事でも記したように、その時は冒頭から起承転結をもった物語を強く否定し、「何も起こらない」ことや「メッセージの不在」を強調。メッセージの有無よりも「小説の形式そのものについての実験に関心があり、行為そのものよりも意識の動き、内面を重要視している」と語っていました。
 いろんな場で「ベケットから強い影響を受けた」と明かしていますが、この時も「彼の最後の頃の三幕劇から大きな示唆を得た」と言ってましたね。

 過去記事を読み直すと、講演後、個人的に「80年代までの韓国文学の伝統を意識しないのか、それとも意識的に否定しようとしているのか」と質問して、「後者」とのお答えをいただいてました。(うーむ、自分のこととは思えん・・・。)

        
   【実は質問の後、いつものなぐり書きメモノートにサインをいただいたのです。만나게 되어 반갑고 늘 건강하세요 정영문(お目にかかってうれしいです。ずっとお元気で 鄭泳文)←もっと破格の方が彼らしいんだけどな。】

 昨年10月19日の下北沢で開かれたその「韓国作家と集う夕べ」の翌日には、彼は韓国文化院でやはり申京淑さんとともに「韓国文学への誘い」と題した催しでステージに立ちました。
 「東洋経済日報」に、その時の詳しい報告記事があります。(→コチラ。) 写真付き。身長185㎝で体重62㎏と、韓国人作家中きっての長身で、痩躯です。

 さて、この文学賞三冠王の記事は「ハンギョレ」にも載っていました。それによると3賞の賞金を合わせると1億1千万ウォンとか。「萬物相」の記事には「13年前東西文学賞を受賞した後、今まで小説12冊を出したが合わせて2万部が売れただけ」だったそうで、それが今回一挙に「テ~バク(대박)!」と相成ったわけで、めでたいはずなのに、写真を見るとあんまりうれしそうでもないのが彼らしいところか? 
 「朝鮮日報」10月17日のインタビュー記事(→コチラ)
によると、借金の返済や家賃の足しにするほかは、好きな先輩後輩作家たちにご馳走と酒をおごってあげて、今まで必死に文を書いてきたので、一息ついて、どこかへ行ってちょっと休んで、健康を回復するつもりとのことです。

 そんな下世話なことはおいといて、難解といえども彼の小説世界にほんの少しでも触れてみよう、という私ヌルボのほとんど無謀ともいうべき試みは続きの記事で・・・。(って、ホントかなー?)
コメント
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