ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国内の映画の興行成績 [8月20日(金)~8月22日(日)]と人気順位 ▶画期的!? 韓国映画が1~3位独占 ▶台湾の青春映画「藍色夏恋」 19年目にやっと初の一般公開

2021-08-27 23:51:05 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶日付を確認してください。本記事を早くご覧になった方でも8月28日のはずです。週末の興行成績ですが、先週末のデータですのでお間違いなく。次週はもっと早く公開します。

▶8月20~22日の興行成績ランキングで「人質」「シンクホール」「モガディシュ」の韓国映画3作品が1~3位を独占。いつ以来のことか記憶にありません。4位の「オールド」とも観客動員数に大きな差があります。
▶今回初登場の韓国映画の注目作は「パクカン・アルム結婚する」。82年生まれの女性監督パクカン・アルムさんによる<自伝的ドキュメンタリー>ということで、以前からフランスで生活している監督と、韓国から来た男性ソンマンさんとの結婚生活を撮ったものですが、フランス語を話せるアルムさんがいわば行政経済(?)を担当し、韓国ではシェフをしていたソンマンさんはフランス語を全く話せないこともあって家事(炊事・洗濯さらに育児等)を務めることに。・・・というわけで、伝統的なジェンダーの役割を愉快に(?)覆した夫婦の関係性。監督自身は韓国によくある自分より弟が優先されるという家庭で育ったそうで、そんな家父長制度には一貫して抗してきたはずなのに、自分が家長的な立場になるとジレンマに悩むこともあったとか。食事の時彼女が「ご飯もうちょっと」と言ったらソンマンさんが「俺はお手伝いさんか!」と抗議したこともあったりして・・・。
 このようなキャラクターの女性監督は日本にいるかなあ? いかにも韓国という印象ですが・・・。映画誌「シネ21」のある記者は「自分の偏見を省みるが、同感は別問題」と評しつつ4/10の低評価。(←チョットだけわかる。) 他の記者・評論家の評点は7/10、6/10が2人ずつです。
 ポスター(右画像)は「いかにも」の感あり。(後ろに座ってるソンマンさんが大した方だと思います。) ※後の記事も参照してください。
▶2つ目は、韓国映画でも新作でもないのですが、「藍色夏恋」。2002年の台湾・フランス合作の青春ドラマ&ラブロマンス(?)で、グイ・ルンメイチェン・ボーリンのデビュー作です。2人とも当時19歳だったんですねー。今韓国版ポスター(右画像)を見ても、言われなければ誰かわかりません。韓国でも当然再上映と思っていたらなぜか一般公開は今回(8月18日)が初めてとは意外。(特別上映等はあった。)  グイ・ルンメイ主演の「言えない秘密」(2007)は韓国ではとくに人気で2008年に公開され、再上映もされているのに・・・。
 関連記事をいくつか見たら、どうも台湾についての認識が日本とズレているようで(まあそうでしょ)、その件についてはさらに調べて別立ての記事にしなくては、と思った次第です。(この頃一段と有言不実行が続いてますが・・・(汗)。

    ★★★ NAVERの人気順位(8月24日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(新) パウ・パトロール ザ・ムービー  9.74(46)
②(2) 学校に行く道(韓国)  9.58(155)
③(4) シャーマン・ロード(韓国)  9.50(16)
④(1) かもめ(韓国)  9.46(46)
⑤(新) パクカン・アルム結婚する(韓国)  9.44(16)
⑥(3) 銀魂 THE FINAL(日本)  9.43(248)
⑦(5) ブータン 山の教室  9.40(172)
⑧(6) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本)  9.28(12,780)
⑨(7) 復活:その証拠(韓国)  9.27(422)
⑩(9) クルエラ  9.23(7,309)

 ①と⑤の2作品が新登場です。
 ①「パウ・パトロール ザ・ムービー」はカナダ・アメリカ合作の家族(向け)アニメシリーズ第2作。日本でも8月20日から公開されているので説明は省略します。韓国題は「퍼피 구조대 더 무비」です。
 ⑤「パクカン・アルム結婚する」は韓国のドキュメンタリー。<パクカン・アルム>とは82年生まれの女性監督自身の名前です。 (※おそらくご両親の姓が朴[パク]さんと姜[カン]さんなのでしょう。ここらへんに<男女平等>の意思が込められています。) 彼女が撮った最初の映画は15歳の時教会で上映した教会を批判する映画だったとか。初の長編はアムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭新人のコンペ部門に招請された「パクカン・アルムの仮装舞踏会」(2016)。高校の芸術科講師もしていた彼女が仲間や教え子から「合コンでいつも失敗してるのは外見に無頓着だからだ」と言われたのを契機に自分をモデルに社会が期待する女性性について実験(?)したという作品でした。本作もその線に沿った<自伝的ドキュメンタリー>です。彼女は2015年以降フランスに移住し、韓国と行き来しつつ、社会の中での女性がどのように自分の声を政治に反映できるか考えながら映画・ビデオ作品を制作してきました。その彼女がフランスでの留学に際してチョン・ソンマンさんとフランスで結婚生活を送ることになります。
 「仕事も愛も全部ほしい!」と意欲満々のアルム。「アルムがやりたいことはなんでもやって!」というロマンチストの男性ソンマンはひたすらやる気と愛だけを持ってフランスに向かいます。ところがソンマンさんは韓国ではシェフとして働いていた人でフランス語は全然話せないし、ほとんど家にこもってもっぱら家事専門の生活になります。
 2人が直面した結婚生活の現実は、学業、生活費、家事労働(やがて育児も)。私たち、なぜ結婚したの? 結婚、一体何なの?・・・という疑問もわいてきます。監督はそんな自身の結婚生活を紹介すると共に、伝統的な家父長制の問題や、家事労働でのジェンダーの問題等を笑いの要素も交えて提起します。原題は「박강아름 결혼하다」です。

     【記者・評論家による順位】

①(8) グリーン・ナイト  8.20(5)
②(2) マーティン・エデン  8.00(8)
②(2) ノマドランド  8.00(8)
④(4) 水を抱く女  8.00(6)
⑤(5) スパイの妻(日本)  8.00(5)
⑥(7) あの日のように抱きしめて  7.80(5)
⑦(9) イントロダクション(韓国)  7.67(3)
⑧(-) モガディシュ(韓国)  7.27(11)
⑨(-) 本当に遠いところ(韓国)  7.14(7)
⑩(-) ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結  7.11(9)

 新登場の作品はありません。

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績8月20日(金)~8月22日(日) ★★★
         1位「人質」以下3位まで韓国映画が独占

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(8)・・人質(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/18 ・・・・454,191・・・・・・・・638,811・・・・・・6,347・・・・・1,287
2(1)・・シンクホール(韓国)・・・・・・・・・・8/11 ・・・・326,508・・・・・・1,657,967 ・・・・16,306・・・・・1,252
3(2)・・モガディシュ(韓国)・・・・・・・・・・7/28・・・・・222,303 ・・・・・2,781,182 ・・・・26,649・・・・・・・968
4(新)・・オールド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/18・・・・・・51,980・・・・・・・・・85,282・・・・・・・・838 ・・・・・・525
5(3)・・フリー・ガイ・・・・・・・・・・・・・・・・・8/11 ・・・・・35,698・・・・・・・・251,948・・・・・・2,258・・・・・・・404
6(新)・・パウ・パトロール ザ・ムービー・・8/18・・・・27,583 ・・・・・・・・・33,724・・・・・・・・295 ・・・・・・355
7(4)・・ザ・スーサイド・スクワッド・・・・8/04 ・・・・・・7,742 ・・・・・・・・410,887・・・・・・4,319・・・・・・・132
       “極”悪党、集結
8(5)・・ボス・ベイビー・・・・・・・・・・・・・・・7/21 ・・・・・・5,971・・・・・・・・・919,455・・・・・・8,252・・・・・・・138
       ファミリー・ミッション
9(6)・・ブラック・ウィドウ・・・・・・・・・・・7/07 ・・・・・・4,180・・・・・・・2,955,481・・・・・29,927 ・・・・・・・59
10(新)・・パーム・スプリングス・・・・・・・8/19 ・・・・・・3,257 ・・・・・・・・・・・5,180・・・・・・・・・45 ・・・・・・・83
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 1~3位を韓国映画が独占というのは実に久しぶり。なお4~10位はすべてアメリカ映画です。
 新登場は4・6・10位の3作品ですが、すべて日本でも公開済みか近日公開。これもめずらしいことです。
 4位「オールド」はアメリカのサスペンス&スリラー。日本でも8月28日公開で諸情報が流されているので説明は省略します。韓国題は「올드」です。
 6位「パウ・パトロール ザ・ムービー」は上述のように日本でも8月20日から公開されています。
 10位「パーム・スプリングス」はアメリカのSFファンタジー&ラブロマンス。日本では4月9日に公開されています。韓国題は「팜 스프링스」です。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・パーム・スプリングス・・・・・・・・・・・8/19 ・・・・・・3,257・・・・・・・・・5,180 ・・・・・・・・・・45・・・・・・・・83
2(16)・・藍色夏恋 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/18 ・・・・・・3,058 ・・・・・・・・6,050・・・・・・・・・・・53・・・・・・・・75
3(-)・・フラッシュバック・・・・・・・・・・・・・・・6/10・・・・・・・1,152 ・・・・・・・・7,196・・・・・・・・・・・51・・・・・・・・・3
4(67)・・パクカン・アルム結婚する(韓国)・・8/19 ・・・・・・・594 ・・・・・・・・1,660・・・・・・・・・・・13・・・・・・・・28
5(2)・・今度はうまくいくだろう(韓国)・・・7/08・・・・・・・・・582・・・・・・・・12,906・・・・・・・・・・・67・・・・・・・・・2

 1・2・4位の3作品が新登場です。
 1位「パーム・スプリングス」と4位「パクカン・アルム結婚する」については上述しました。
 2位「藍色夏恋」は2002年制作の台湾・フランス合作の青春ドラマ&ラブロマンス。この作品については記事冒頭にいろいろ書いたので、コチラでは説明を省略します。韓国題は「남색대문(藍色大門)」です。
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韓国内の映画の興行成績 [8月13日(金)~8月15日(日)]と人気順位 ▶韓国の「シンクホール」事情 ▶独立系映画「思考の夏」に見るMZ世代の人気詩人ファン・インチャン

2021-08-21 07:44:01 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶ノートPCの不調で作業が遅れるばかりです。ふつうなら1日で済むのが3日かかったりして。愛用してきたレッツノートですが、買い替えるしかなさそう。トホホ。しかしコレ、めっちゃ高いからなー、中古にするかな、トホホ。

★ありゃ、今「投稿する」ボタンをクリックしたら「タグ名:わたしは金正男を殺してないは、受け付けられません」だと!? なんでや!?(怒)

▶今回初登場の韓国映画の注目作その1は、興行成績1位の「シンクホール」です。ストーリーは、ソウル市内にマンションを購入して長年の夢を実現した男が知人を招いて新居披露の宴会をしていた時になんとそのマンションが突如<シンクホール>に落ち込んで・・・というコメディなのですが、私ヌルボ、この<シンクホール>という言葉が日本でどの程度知られているか見当がつきません。簡単に説明すると、地面が突然陥没してできた大穴のこと。鍾乳洞があるようなカルスト台地や、鉱山跡及び採石場跡、あるいは地下鉄工事、地下水の汲み上げ等で地下に空洞が発生・陥没し、地表にまで到達して大きな穴ができるというわけです。日本でも2016年11月8日博多駅前の道路が縦横約30mにわたって陥没し、深さ約15mのシンクホールが生じたことは大きく報道されましたね。ところが「싱크홀(シンクホール)」で画像検索してみると道路の陥没等の画像がいっぱい! 記事を読むと、運転中の車が道路に出現した穴に落ちたとか、散歩中の人が急に消えた!と思ったら深さ1.5mほどの穴に落ちた等の事例がいくつもありました。
    
 上の画像①はソウルの東に隣接する九里市(2020年8月26日) 幅17m・長さ20mのシンクホール。地下鉄8号線延長工事が原因か。道路横のアパートの住民は避難したそうです。これより小さいレベルの道路陥没はかなり多いようです。画像②はソウル市衿川区加山洞(2018年8月31日) 横30m・縦10m・深さ6m。マンションの駐車場の地面が大きく陥没してマンションは約5度傾き、ここでも住民が避難したとか。2015年にソウル市が東京都に道路陥没に対する技術協力を求めてきた等の道路保全の日韓のレベルの差はありますが、韓国で人為的なシンクホールがとくに多いと見るのは早計かもしれません。(世界各地でシンクホールの事例は多い。) 画像③は中国四川省広元市(2013年12月12日) 直径60m深さ30mの超大型シンクホール。瞬く間に地面が消えて5部屋の家と納屋が埋没したが幸いにも死者はいなかったそうです。
 さて、映画「シンクホール」ではなんとマンションが深さ500mもの穴に落ちたという設定。それで主な登場人物に死者はないとは! しかし上記のように日本に比べるとシンクホール問題はとくにソウル市民にとっては決して非現実的なものではないようです。それをコメディにするとはねー・・・等々、非難する声が上がるのも当然でしょうね。

▶韓国映画の注目作その2は、独立・芸術映画のランキング3位の「思考の夏」です。詩人をめざす30歳間近の女性が主人公、というのはまず日本映画では考えられないのでは? 韓国の大型書店に行くと詩集のコーナーがずいぶん広いことに驚きます。また詩集がベストセラーのランク入りすることも日本ではまず考えられないのでは? この作品の概略は本記事の最後の方を見ていただくとして、この作品で紹介されている詩5編はいずれもMZ世代(1980~2004年生まれ)を代表する人気詩人ファン・インチャン(황인찬.1988~)の作品とのこと。・・・って、この詩人のこと全然知らなんだなー。私ヌルボの韓国詩人の知識は崔勝子(1952~)と崔泳美(1961~)までで止まってるから。ま、今度韓国に行った時書店で観てみますか。(いつになることやら。)

         ★★★ NAVERの人気順位(8月17日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) かもめ(韓国)  9.72(39)
②(2) 学校に行く道(韓国)  9.61(152)
③(5) 銀魂 THE FINAL(日本)  9.43(241)
④(4) シャーマン・ロード(韓国)  9.43(14)
⑤(6) ブータン 山の教室  9.39(171)
⑥(9) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本)  9.28(12,769)
⑦(10) 復活:その証拠(韓国)  9.27(422)
⑧(7) 映画ドラえもん のび太の新恐竜(日本)  9.25(99)
⑨(-) クルエラ  9.24(7,274)
⑩(新) フリー・ガイ  9.21(1,203)

 ⑩「フリー・ガイ」はアメリカのコメディ。日本でも8月13日から公開されているので、説明は省略します。韓国題は「프리 가이」です。

     【記者・評論家による順位】

①(1) Mank/マンク  8.14(7)
②(2) マーティン・エデン  8.00(8)
②(2) ノマドランド  8.00(8)
④(4) 水を抱く女  8.00(6)
⑤(5) スパイの妻(日本)  8.00(5)
⑥(6) 夏時間[ハラボジの家](韓国)  7.83(12)
⑦(7) あの日のように抱きしめて  7.80(5)
⑧(8) グリーン・ナイト  7.75(4)
⑨(9) イントロダクション(韓国)  7.67(3)
⑩(-) ミナリ(韓国)  7.58(12)

 新登場の作品はありません。

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績8月13日(金)~8月15日(日) ★★★
         「モガディシュ」に続いて韓国映画「シンクホール」が1位に

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(17)・・シンクホール(韓国)・・・・・・・・・8/11 ・・・・647,579・・・・・・・・922,356 ・・・・・9,086・・・・・1,603
2(1)・・モガディシュ(韓国)・・・・・・・・・・7/28・・・・・347,853・・・・・・2,319,007 ・・・・22,295・・・・・1,273
3(新)・・フリー・ガイ・・・・・・・・・・・・・・・・8/11 ・・・・104,993・・・・・・・・157,112・・・・・・1,599・・・・・・・733
4(2)・・ザ・スーサイド・スクワッド・・・・8/04 ・・・・・38,312・・・・・・・・382,273・・・・・・4,012・・・・・・・478
       “極”悪党、集結
5(3)・・ボス・ベイビー・・・・・・・・・・・・・・・7/21 ・・・・・27,365・・・・・・・・894,299・・・・・・8,026・・・・・・・456
       ファミリー・ミッション
6(4)・・ブラック・ウィドウ・・・・・・・・・・・7/07 ・・・・・13,251・・・・・・2,942,556・・・・・29,795 ・・・・・・220
7(5)・・映画ドラえもん・・・・・・・・・・・・・・8/05 ・・・・・・8,142 ・・・・・・・・・56,495・・・・・・・・488 ・・・・・・216
       のび太の新恐竜(日本)
8(26)・・人質(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・8/18 ・・・・・・6,693 ・・・・・・・・・・7,013・・・・・・・・・70 ・・・・・・・・16
9(33)・・ハイキュー‼ 陸VS空(日本)・・2020/01/23・・4,445 ・・・・・・33,745・・・・・・・・280・・・・・・・114
10(8)・・グリーン・ナイト ・・・・・・・・・・・8/05 ・・・・・・3,472 ・・・・・・・・・18,638 ・・・・・・・174 ・・・・・・・・76
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 1・3・8位の3作品が新登場です。
 1位「シンクホール」は韓国のドラマ&コメディ。タイトルの<シンクホール>については記事冒頭に書いた通りです。一家の主ドンウォン(キム・ソンギュン)はソウル暮らしと共にマイホーム購入の夢を叶えました。ところが引っ越し初日から同じマンションのおせっかい屋マンス(チャ・スンウォン)と揉めてしまいます。ドンウォンはマイホームを持った記念として職場の同僚たちを新宅開きに招きますが、幸せなひとときも束の間、あっという間にマンション全体が土の中に落ちてしまいます。あいさつをすればぶつかっていた隣人同士のミンスとドンウォン、ドンウォン宅に招かれていたキム代理(イ・グァンス)とインターンのウンジュ(キム・ヘジュン)まで。地下500メートルものシンクホールの中に落ちた彼らは無事に抜け出すことができるでしょうか・・・。原題は「싱크홀」。「緊張感が全然ない災難映画??」というレビューがあったなー。
 3位「フリー・ガイ」は上述のように日本でも8月13日から公開されています。
 8位「人質」は韓国のアクション。ファン・ジョンミン主演の期待作で、先行上映で上映館が少ない中ベスト10入りしました。ピル・カムソン監督初の長編映画ですが、制作陣には「ベルリンファイル」「国際市場で逢いましょう」「ベテラン」等々の撮影を担当したチェ・ヨンファン撮影監督等のスタッフがそろっています。ふだんとまったく変わりなかったある夜明け。ソウルのど真中で目撃者もなく人気俳優ファン・ジョンミン(本人)が拉致されます。正体不明の暴漢に襲撃され気を失ったファン・ジョンミンが目を覚ました所は5人の拉致犯たちのアジト。廃屋を改造したこの山の中のアジトはファン、冷蔵庫、時計、洗濯物干しなど生活感が漂っています。一寸先も分からない状況の中、ファン・ジョンミンは必死の脱走を決行します。目的のためなら手段と方法を選ばない拉致犯たちの追撃は山中からついにはソウル都心でのカーチェイスにまで及びます・・・。原題は「인질」です。
 なお、9位「ハイキュー‼ 陸VS空」はコロナ禍に入る少し前の公開作の再上映。厳密には<陸VS空>と<ボールの"道">の2編のセットで46分。上映時間が短い上、途中でいきなりエンドマークが出てしまうので観た人たちはあせったようですが、おおよそ好評と言ってよさそう。日本では劇場公開はなく、韓国公開の前日にOVAすなわちBlu-ray、DVDが発売されています。(→コチラ)。あるいは配信により視聴できます。→コチラ参照。なお韓国題は「하이큐!! 땅 VS 하늘」です。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(10)・・わたしは金正男を殺してない・・・・8/12・・・・・・・・・964 ・・・・・・・・1,637・・・・・・・・・・・12・・・・・・・・38
2(4)・・今度はうまくいくだろう(韓国)・・・7/08・・・・・・・・・713・・・・・・・・11,350・・・・・・・・・・・64・・・・・・・・・3
3(16)・・思考の夏(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・8/12・・・・・・・・・664 ・・・・・・・・1,255・・・・・・・・・・・10・・・・・・・・38
4(2)・・あの日のように抱きしめて・・・・・・・7/22・・・・・・・・・622・・・・・・・・・9,771・・・・・・・・・・・82・・・・・・・・21
5(5)・・学校に行く道(韓国)・・・・・・・・・・・・・5/05・・・・・・・・・339・・・・・・・・27,001 ・・・・・・・・・205・・・・・・・・・6

 1位「わたしは金正男を殺してない」は、アメリカのドキュメンタリー。日本では昨20年10月に公開されています。韓国では大抵の外国映画が日本より早く公開されますが、本作の場合は10ヵ月遅かったのはなんでかな? 私ヌルボ、もちろん観ましたが、思った以上にまっとうなドキュメンタリーで、とくに<容疑者>の女性2人に重点を置いた内容もよかったと思います。タイトルも「わたしは・・・」と容疑者女性を主語にしているし・・・。(暗殺犯たちについての詳細を追及しきれなかったという理由もあるにしても。) その点原題は「ASSASSINS」で韓国題は「암살자들(暗殺者たち)、ポスターも共に金正男を後ろから目隠ししている図柄で、どうも興味が先行している感じです。一方日本版はポスターもタイトルに合わせて女性2人を大きく配置しています。なお、韓国ではネチズンの評価は9.00近いのに記者・評論家は5.60。記者・評論家は概して<進歩系>なので「やっぱりなー」といったところ。うち1人は「CIAの行跡も知りたい」と書いてましたね。ググったら事件の1ヵ月後(2017年3月)の「週刊ポスト」にそんな記事(→コチラ)が載ってたんですね。
    
 3位「思考の夏」は、韓国のドラマ。昨年の第21回全州国際映画祭の韓国コンペ部門に招請されて好評を受けた作品。新人キム・ジョンジェ監督の長編デビュー作です。無気力に陥った30歳間近のヒョンシル(キム・ヘウン)は詩人志望の女性。ところが彼女は先に詩人として評価され、詩壇にデビューした友人の成功を横目に見、恋人とも別れ、人間関係も難しいという「なんだかなー」の青春を送っています。今夏の公募展の締め切りが近づいていますが無気力状態に陥りダラダラ生活。そこで思い立ったのが出すべき最後の詩を「ダラダラと山に行く」決め、新たなインスピレーションを求めて家を出ます。切羽詰まったヒョンシルははたして窮地を脱しインスピレーションを得て本来の自分を見つけることができるでしょうか・・・。原題は「생각의 여름」です。
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韓国内の映画の興行成績 [8月6日(金)~8月8日(日)]と人気順位 ▶初めて聴いたぜ!ブラックピンク(笑) ▶米英等4ヵ国合作の「グリーン・ナイト」に注目・・・って日本公開どうなってる?

2021-08-12 17:11:44 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶今年上半期に観た映画(全75作品)の総括も言行不一致のまま今に至り、その間7月以降に観た映画も18本になりました。とりあえず7月以降のオススメ作品をタイトルだけ挙げておきます。新作のみ、ほぼオススメ順です。
 ・「サマーフィルムにのって」★★★★★ ・「ブータン 山の教室」★★★★★ ・「プロミシング・ヤング・ウーマン」★★★★☆ ・「返校 言葉が消えた日」★★★★☆ ・「逃げた女」★★★★☆ ・「少年の君」★★★★☆ 「サマーフィルムにのって」は久々に感動したなー。

▶今回初登場の韓国映画は「BLACKPINK THE MOVIE」の1作のみ。人気女性アイドルグループBLACKPINKの公演記録プラスα。日本でも8月4日同日公開。ファンの皆さんはたぶんもう知ってる? ジツは私ヌルボ、BLACKPINKからして知らなかったんだよねㅋㅋㅋ いやー、10年代以降日韓のヒットチャートとか全然疎くなっちゃって・・・。そんなワケで→コチラの動画(京セラドームの公演)で初めて聴きましたがな! しかしやっぱりヌルボのようなトシヨリには韓国SBSラブFMのDJ番組「崔白虎(チエ・ベッコ)の浪漫時代」で懐メロを聴く方がなんぼかシアワセを感じられますです、はい。

▶日韓以外の映画で注目は何と言っても米英等4ヵ国合作の「グリーン・ナイト(The Green Knight)」ですが、日本での公開情報ナシ。まさか公開されないということがあるのでせうか??

         ★★★ NAVERの人気順位(8月10日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) かもめ(韓国)  9.70(37)
②(-) 学校に行く道(韓国)  9.63(149)
③(新) BLACKPINK THE MOVIE(韓国)  9.46(100)
④(3) シャーマン・ロード(韓国)  9.43(14)
⑤(4) 銀魂 THE FINAL(日本)  9.39(201)
⑥(5) ブータン 山の教室  9.39(170)
⑦(新) 映画ドラえもん のび太の新恐竜(日本)  9.36(75)
⑧(6) 子供たちは楽しい(韓国)  9.33(215)
⑨(7) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本)  9.28(12,746)
⑩(8) 復活:その証拠(韓国)  9.27(422)

 ③「BLACKPINK THE MOVIE」と⑦「映画ドラえもん のび太の新恐竜」の2作品が新登場ですが、いずれについても後述します。

     【記者・評論家による順位】

①(1) Mank/マンク  8.14(7)
②(2) マーティン・エデン  8.00(8)
②(2) ノマドランド  8.00(8)
④(4) 水を抱く女  8.00(6)
⑤(5) スパイの妻(日本)  8.00(5)
⑥(6) 夏時間[ハラボジの家](韓国)  7.83(12)
⑦(7) あの日のように抱きしめて  7.80(5)
⑧(新) グリーン・ナイト  7.75(4)
⑨(8) アイダよ、何処へ?  7.67(3)
⑨(8) イントロダクション(韓国)  7.67(3)

 ⑧「グリーン・ナイト」が新登場ですが、この作品については後述します。

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績8月6日(金)~8月8日(日) ★★★
         2週連続1位の「モガディシュ」が他を圧倒

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・モガディシュ(韓国)・・・・・・・・・・7/28・・・・・480,622・・・・・・1,712,392 ・・・・16,579・・・・・1,639
2(新)・・ザ・スーサイド・スクワッド・・・8/04 ・・・・177,469・・・・・・・・281,384・・・・・・2,942・・・・・1,041
       “極”悪党、集結
3(2)・・ボス・ベイビー・・・・・・・・・・・・・・・7/21 ・・・・・78,532・・・・・・・・836,809・・・・・・7,511・・・・・・・783
       ファミリー・ミッション
4(4)・・ブラック・ウィドウ・・・・・・・・・・・7/07 ・・・・・51,380・・・・・・2,908,684・・・・・29,457 ・・・・・・552
5(新)・・映画ドラえもん・・・・・・・・・・・・・8/05 ・・・・・27,736 ・・・・・・・・・38,669・・・・・・・・337 ・・・・・・502
       のび太の新恐竜(日本)
6(3)・・ジャングル・クルーズ・・・・・・・・・7/28 ・・・・・25,557・・・・・・・・237,891・・・・・・2,200・・・・・・・509
7(6)・・謗法:在此矣[ぼうほう:ざいしい](韓国)・・7/28 ・・13,966・・166,005 ・・・1,476・・・・・・・359
8(37)・・グリーン・ナイト ・・・・・・・・・・・8/05 ・・・・・・6,693 ・・・・・・・・・10,902 ・・・・・・・100・・・・・・・228
9(新)・・BLACKPINK THE MOVIE(韓国)・・8/04・・・5,420 ・・・・・・・・・11,761 ・・・・・・・154・・・・・・・147
10(6)・・ランジョン(韓国・タイ)・・・・・・7/14・・・・・・・4,582・・・・・・・・827,685・・・・・・8,586・・・・・・・・80
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
2・5・8・9位の2作品が新登場です。
 2位「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」はアメリカのアクション。日本でも8月13日から公開されているので、内容等の紹介は省略します。韓国題は「더 수어사이드 스쿼드」です。
 5位「映画ドラえもん のび太の新恐竜」は日本では昨年8月7日公開なので1年の間が空きました。この作品もネチズンの人気ランキングに入っているように好評です。もしかして日本以上? TVアニメは2001年から始まりましたが、もちろんそれ以前に漫画があって、1994年から漫画誌連載が始まり、翌95年に右画像の「ドラえもん 第1巻」をはじめとする全45巻が刊行されました。いや、それ以前に80年代から長~い海賊版の時代があって・・・と、これは独立した記事にすべきか・・・。韓国題は「극장판 도라에몽: 진구의 신공룡」です。
 8位「グリーン・ナイト」(仮)はアイルランド・カナダ・米・英合作の冒険&ファンタジー。「ムーンライト」「レディ・バード」「ミッドサマー」「フェアウェル」等々のヒット作・話題作を手掛けてきた映画等の製作・配給会社A24が製作した新作です。14世紀後期のイングランドで書かれた作者名不詳の物語「ガウェイン卿と緑の騎士」に基づく壮大な中世ファンタジー映画です。アーサー王(ジョエル・エドガートン)の宮殿で新年の宴が開かれている時、突如謎の人物が現れます。その男は衣服も皮膚も、さらには跨る馬まですべて緑色の<緑の騎士(Green Knight)>(ラルフ・アイネソン)でした。そして彼は「首切りゲーム」をもちかけます。つまり、自分の首を大鉈でかき斬ってみろというのです。この挑発に応じたのがアーサー王の甥である騎士ガウェイン卿(デーヴ・パテール)でした。彼は騎士の言葉通り緑の騎士の首を一振りで斬り落とします。が、・・・(中略)・・・緑の騎士は「1年後緑の礼拝堂で再び対戦しよう」と言い残し、自分の首を小脇に抱えて走り去ります・・・。そしてついに1年後、ガウェインは緑の礼拝堂を目指して旅に出ます・・・。韓国題は「그린 나이트」。日本公開は未定のようです。が、カクチョー高そーな注目作で実際記者・評論家による評価も高いこの作品が公開されないはずはないのに上映情報も正式タイトルも出てないのはなぜ? →日本語字幕の予告編もあるんだけどねー。※未公開映画を日本語字幕をつけて紹介しているPIGWIG FILM(現イーニッド・フィルム)による予告編です。
 9位「BLACKPINK THE MOVIE」は、人気の韓国4人組女性アイドルグループ<BLACKPINK>の公演記録。ライブ映像だけでなく、リハーサル風景、メンバーへのインタビュー等も盛り込まれています。韓国題は「블랙핑크 더 무비(BLACKPINK THE MOVIE)」。日本でも韓国と同日の8月4日に公開されています。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・ジャッリカットゥ 牛の怒り・・・・8/05・・・・・・・1,364・・・・・・・・・2,913・・・・・・・・・・・25・・・・・・・・44
2(2)・・あの日のように抱きしめて・・・・・・・7/22・・・・・・・・・907・・・・・・・・・8,521・・・・・・・・・・・72・・・・・・・・30
2(1)・・トゥ・オブ・アス・・・・・・・・・・・・・・・・・7/28・・・・・・・・・825 ・・・・・・・・4,951・・・・・・・・・・・41・・・・・・・・38
4(3)・・今度はうまくいくだろう(韓国)・・・7/08・・・・・・・・・787・・・・・・・・・9,586・・・・・・・・・・・61・・・・・・・・・3
5(64)・・学校に行く道(韓国)・・・・・・・・・・・・5/05・・・・・・・・・582 ・・・・・・・26,452 ・・・・・・・・・199・・・・・・・・・4

 1位「ジャッリカットゥ 牛の怒り」が初登場です。インドの(一応)パニック映画。<ジャッリカットゥ>とはインド南部のタミル・ナードゥ州の収穫祭で催される伝統行事。男たちが解き放たれた牛の背にできるだけ長く乗り続けられるかを競うものだが、この作品はこの行事を描写する作品ではありません。屠畜場から逃げた水牛が町中を暴れ回り、村の男たちだけでなく隣町の男たちまでその水牛を捕まえるためにやってきて大騒動に・・・。韓国題は「잘리카투」。日本では7月17日から渋谷のシアター・イメージフォーラム等で公開されています。これ、観に行こうかな・・・。
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韓国内の映画の興行成績 [7月30日(金)~8月1日(日)]と人気順位 ▶韓国映画「モガディシュ」が1位-1991年内戦下のソマリアが舞台 ▶注目の韓国映画「かもめ」は性暴行被害者女性の<克服>の物語

2021-08-06 23:51:42 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶今回初登場の韓国映画でとくに注目は「かもめ(갈매기)」です。キム・ミジョ監督の長編デビュー作で、2020年の<第21回全州国際映画祭>の韓国コンペ部門でシン・ドンミン監督の「風よ、霧を取り除け」と大賞を受賞し、その他内外の多くの映画祭でも招請・受賞等で注目されている作品です。
 近年韓国の映画界では、「小公女」(2017)のチョン・ゴウン監督、「はちどり」(2018)のキム・ボラ監督から最近では「一人暮らしの人々」(2021)のホン・ソンウン監督まで、とくに独立系映画で優れた女性監督が次々に現れて注目されてきましたが、キム・ミジョ監督もそこに加わることになりました。
 本作は水産物市場の商人である中年女性が市場の商人仲間との飲み会の後、彼らの1人から受けた性暴行への立ち向かい方を描いたドラマなのですが、加害者は、市場の再開発反対闘争の中心にいる人物ということもあってか「大目に見ろよ」という市場の仲間も多く、近所の人や家族からもすんなりと支援は得られませんが、そんな中で彼女は人生の新しい一歩を踏み出すというストーリー。
 本作の企画が開始した2018年には、ソ・ジヒョン検事が先輩検事のセクハラをテレビインタビューで涙ながらに公表し告訴したことからMeToo運動が始まった年でした。その後政治家や映画・演劇関係者も含む文化人が多数糾弾されてきました。そのような時流の中で、2019年釜山国際映画祭ニューカレンツ部門で観客賞を受賞した「69歳」は、69歳の女性が病院で29歳の男性看護助手に暴行されたという実際の事件に基づく作品でした。(→参考)
 同じようなテーマを扱いながらも、この「かもめ」の場合の大きな特色は<犯行>のシーンは画面を暗転させる等リアルな描写を避けていること。そうすることで観客が被害者女性に丸ごと感情移入するのを避けたとか。このような描き方なら同様の事件の被害者でも「つらい出来事の記憶がよみがえってとても平静な気持ちで観られない」ということにはならないのでは?との監督の意図もあったようです。
 その結果、被害者女性の<復讐>を超えた<克服>の物語として提示されると共に、観客には犠牲者、加害者、傍観者の視線を等しく感じられるように多様なキャラクターを前面に出した作品で、<ドキュメンタリー風のドラマ>というコメントも上記のようなキム・ミジョ監督の撮り方ゆえ、ということでしょう。

         ★★★ NAVERの人気順位(8月3日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(新) かもめ(韓国)  9.77(26)
②(-) 詩を読む時間(韓国)  9.47(15)
③(新) シャーマン・ロード(韓国)  9.43(14)
④(1) 銀魂 THE FINAL(日本)  9.39(176)
⑤(-) ブータン 山の教室  9.39(170)
⑥(-) 子供たちは楽しい(韓国)  9.33(211)
⑦(7) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本)  9.28(12,739)
⑧(-) 復活:その証拠(韓国)  9.27(422)
⑨(8) クルエラ  9.24(7,168)
⑩(6) ボス・ベイビー ファミリー・ミッション  9.24(1,269)

 ①③の2作品が新登場です。
 ①「かもめ」は韓国のドラマ。記事冒頭に書いたようにキム・ミジョ監督の長編デビュー作です。主人公の中年女性オボク(チョン・エファ)は三姉妹の母親であり、また水産物市場の商人としてこれまでずっと別に好きでもない魚を売って子どもたちを育ててきました。そんなオボクが結婚を控えた長女に車の中で2人きりの車の中で打ち明け話をします。(話声は観客にも聞こえません。) その内容は、なんと市場の商人仲間との飲み会の後、彼らの1人から性暴行を受けたということでした。オボクは謝罪を受けたいのですが、他の商人は「漢江に1回船が通っただけで大したことではない」とか「若い人の足を引っ張って、いいことはないよ」とオボクを引き止めます。さらに加害者は、市場の再開発反対闘争の中心にいる人物でもあります。数十年苦楽を共にしてきた隣人の商人たちもオボクの側に立つよりも自分自身の利害関係を優先します。そんな中、結局オボクは娘の助けを借りて加害者を告訴します。警察が証拠や証人を要求するとオボクは自分のために証言してくれる人を探し出します。こうしてオボクは初めて自分のためだけの人生を歩み始めます・・・。原題は「갈매기」です。※主演のチョン・エファはこれまで演劇、ドラマ、映画を行き来した24年目になるベテラン女優ですが主演は今作が初めてとのことです。
 ③「シャーマン・ロード」は韓国のドキュメンタリー。中世であれば<魔女>と呼ばれて火あぶりにあったフランスの女性シャーマン、コレットと、韓国の女性シャーマン、ソンミの運命的な出会いと友情の記録です。ソンミとコレットは幼い頃から聞こえた神の声と映像(visions)によって他の人々とは異なる違った人生を生きるしかなく、これを天刑だと考えていました。しかし、2014年にフランスで開かれた世界シャーマニズム祭でお互いに会った後、コレットとソンミは、自分たちの特別な能力は世界の人々のつらい傷を癒すための神の贈り物であることを悟り、互いを支えとしてシャーマンロードを歩んでいます・・・。原題は「샤먼 로드」です。

     【記者・評論家による順位】

①(1) Mank/マンク  8.14(7)
②(-) マーティン・エデン  8.00(8)
②(2) ノマドランド  8.00(8)
④(-) 水を抱く女  8.00(6)
⑤(-) スパイの妻(日本)  8.00(5)
⑥(-) 夏時間[ハラボジの家](韓国)  7.83(12)
⑦(3) あの日のように抱きしめて  7.80(5)
⑧(-) アイダよ、何処へ?  7.67(3)
⑧(4) イントロダクション(韓国)  7.67(3)
⑩(-) ミナリ(韓国)  7.58(12)

 この1年内の近作の再上映が多数ランクに再登場しましたが、新登場はありません。

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績7月30日(金)~8月1日(日) ★★★
         内戦下のソマリアが舞台の韓国映画「モガディシュ」が1位

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(9)・・モガディシュ(韓国)・・・・・・・・・・7/28・・・・・561,731・・・・・・・・788,300・・・・・・7,522・・・・・1,688
2(1)・・ボス・ベイビー・・・・・・・・・・・・・・・7/21 ・・・・138,133・・・・・・・・641,699・・・・・・5,733・・・・・・・956
       ファミリー・ミッション
3(新)・・ジャングル・クルーズ・・・・・・・・7/28 ・・・・104,337・・・・・・・・156,785・・・・・・1,440・・・・・・・820
4(2)・・ブラック・ウィドウ・・・・・・・・・・・7/07 ・・・・・95,496・・・・・・2,791,702・・・・・28,294 ・・・・・・690
5(新)・・謗法:在此矣[ぼうほう:ざいしい](韓国)・・7/28 ・・65,967・・120,701 ・・1,036・・・・・・・718
6(3)・・ランジョン(韓国・タイ)・・・・・・・7/14 ・・・・・12,756・・・・・・・・815,328・・・・・・8,460 ・・・・・・・165
7(4)・・エスケープ・ルーム・・・・・・・・・・・7/14 ・・・・・・6,367・・・・・・・・・21,051 ・・・・・・2,106・・・・・・・113
       :トーナメント・オブ・チャンピオンズ
8(5)・・クルエラ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/26 ・・・・・・4,309 ・・・・・1,975,472 ・・・・・19,178 ・・・・・・・66
9(7)・・銀魂 THE FINAL(日本) ・・・・・・7/22・・・・・・・2,986 ・・・・・・・・27,220 ・・・・・・・・260・・・・・・・・69
10(81)・・ワイルド・スピード・・・・・・・・5/19・・・・・・・1,776 ・・・・・2,291,273 ・・・・・22,053・・・・・・・・・7
       /ジェットブレイク
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 3・5位の2作品が新登場です。
 3位「ジャングル・クルーズ」は、日本でも1日遅れの7月29日から公開されているので、内容等の紹介は省略します。韓国題は「정글 크루즈」です。
 5位「謗法:在此矣[ぼうほう:ざいしい]」は韓国のミステリー&スリラー。殺人事件現場で被害者と共に容疑者の死体も発見されます。しかし容疑者はすでに3ヵ月前に死亡したことがわかり、警察は混乱に陥ります。一方、ミステリーを追う記者イム・ジニ(オム・ジウォン)はラジオに出演中、自分がその殺人事件の真犯人だと名乗る人物からの電話が入ります。その男は、生中継でイム・ジニのインタビューを受けたいとも言います。警察とネチズン(一般聴取者)はイム・ジニ記者のオンライン生放送に注目する中、インタビューの当日その場所に現れた犯人は<在此矣[ざいしい.ジェシイ]すなわち蘇った屍体による3度の殺人を予告します。その最初の殺人が予告された日、膨大な数の<在此矣>軍団が現れて無差別襲撃を開始し、警察当局は総力防御に出たもののお手上げ状態になってしまいます。はたして彼らを操縦している背後には誰がいるのでしょうか? 彼らを阻止する唯一の方法(謗法)がやって来ます・・・。原題は「방법: 재차의」。ふつうの韓国語だと最初の<방법>は<方法>以外にないし、韓国サイトにも<謗法>の漢字はほとんどなく探索に手間取りました。ただ、その意味は「正しい仏法を謗(そし)ること」なので、上の文意には合わないのでは? なお韓国の観客の皆さんは<在此矣>もふくめて漢字でどう書くかはほとんど考えないと思います。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(31)・・トゥ・オブ・アス・・・・・・・・・・・・・・・・7/28・・・・・・・1,434 ・・・・・・・・2,966・・・・・・・・・・・24・・・・・・・・54
2(2)・・あの日のように抱きしめて・・・・・・・7/22・・・・・・・1,368・・・・・・・・・6,392・・・・・・・・・・・53・・・・・・・・36
3(7)・・今度はうまくいくだろう(韓国)・・・7/08・・・・・・・・・783・・・・・・・・・7,651・・・・・・・・・・・57 ・・・・・・・・・3
4(新)・・かもめ(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・7/28・・・・・・・・・760 ・・・・・・・・・2,431・・・・・・・・・・・19・・・・・・・・40
5(4)・・オフィーリア 奪われた王国 ・・・・7/14・・・・・・・・・752・・・・・・・・14,376・・・・・・・・・・127・・・・・・・・29

 1・4位の2作品が新登場です。
 1位「トゥ・オブ・アス」(仮)はフランスのドラマ&ラブロマンス。ニーナ(バルバラ・スコヴァ)とマド(マルティーヌ・シュヴァリエ)はアパートの廊下を挟んで向かいに住んでいる年配の女性同士です。単にごく近くの隣人のように見えますが、実際には2人は20年来愛しあってきた恋人です。引退もしたので余生はローマに行って気楽に暮らそうというニーナの提案を機に、マドは家族たちに隠してきた秘密を打ち明けることにします。マドの誕生日、容易ではない告白の過程で、彼女は最終的には衝撃で倒れます。そしてニーナは、マドを家族から取り戻すプランを練り始めるのですが・・・。韓国題は「우리, 둘」です。
 4位「かもめ」については上述しました。
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