ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

小川晴久教授の6ヵ国協議批判、今も正論かも・・・ (北朝鮮の人権問題を最重要視する観点で)

2012-06-29 23:56:54 | 北朝鮮のもろもろ
 1つ前の記事で、18世紀後期の実学者洪大容について、朝鮮実学の研究者・小川晴久二松学舎大教授の本を引用しました。

 その記事でも少しふれましたが、小川晴久先生は20年近く前から北朝鮮の人権問題に取り組み、活動を続けてきた人です。

 私ヌルボが小川先生のことを知ったのは、ミネソタ弁護士会国際人権委員会・アジアウォッチ((編集「北朝鮮の人権―世界人権宣言に照らして」(連合出版.2004)の翻訳者としてです。(川人博弁護士との共訳。)
 この本の巻末に、小川先生の14ページに及ぶ解説が付いています。その最後の方に、北朝鮮の人権問題に対する世界の認識について、次のような記述がありました。

 日本の認識の遅れをよく示すのは、政府を中心に六ヶ国協議が大事だとする声が大きいことである。方法としては包括的に諸問題を解決していくというやり方で、人権問題も諸問題の一つという位置づけである。 
 六ヶ国協議で危険なのは核問題で北朝鮮が要求する「体制の保障」をのんでしまうことである。金正日の体制を保障してしまったら、北朝鮮の人権状況の改善は二〇年も遅れてしまう。北朝鮮の民衆の苦難を二〇年も放置することになる。東アジアの平和確保が先決だとか、難民の大量流入は困るとか、いずれも自分の国のことしか考えない周辺国のエゴである。北朝鮮民衆を犠牲にする六か国協議は断じて許されない。戦争の防止は人権の保障である。北朝鮮の山の中の強制収容所を根幹とする人権抑圧状況こそ是正されていかねばならない。本書は何よりもそれを雄弁に語っている。本書を読まれた人ならば包括的解決方式が正しいか人権改善でいくべきかは、自ら明らかであろう。
 今国内では、否東アジア世界では、北朝鮮に対する態度をめぐって、六ヶ国協議派と人権改善派とが真向うから対立している。小泉首相は二年以内に日朝国交を実現しようとしているが、とんでもないまちがいである。人権問題の解決なくして国交正常化はあり得ない。


 このくだりを読んで、ヌルボは驚きました。心打たれた、といった方がいいかもしれません。
 このようにはっきりと人権問題を最優先課題とする主張を目にしたのは初めてでした。とくに平和を追求する話し合いみたいでイメージ的にはよさそうに見える6ヵ国協議を批判するとは!
 また、いわゆる「保守派」「右翼」等のように拉致問題をはじめ日本人の問題のみを突出して訴えたり、政治的観点から論ずるのではなく、世界人権宣言を拠り所により普遍的な観点から論を展開している点に共感を覚えました。

 概して、韓国でも日本でも「進歩陣営」の人たちには平和的な交渉を積み上げていくことの大切さを主張する人が多いようです。
 ヌルボも、「一般論としては」それが正しいとは思いますが、これまでの6ヵ国協議等で核問題は大きく取り扱われても、人権問題については重視されてきませんでした。むしろ、本ブログでも2011年8月25日の記事「北朝鮮の強制収容所についてのアムネスティのアクション(上)」の中で書いたように、「北朝鮮・韓国・中国・ロシア・アメリカ、そして日本の6ヵ国政府は、どこも政治的・軍事的な観点から現状維持を望んでいるようです。その中で多数の北朝鮮住民が犠牲になっています」という状態がずっと続いています。

 ところが韓国の進歩陣営では、「北朝鮮人権問題の悪化原因には様々な要因が複合的に組み合わさっている」という(北朝鮮政府を弁護しているような)見方や、「国内外保守派(韓国の保守政権やアメリカ等)が北朝鮮人権問題を北朝鮮体制の崩壊のための手段としている」と韓国やアメリカでの北朝鮮人権法に異を唱え、小川先生が批判している「包括的解決方式」を追求する声が今に至るまで一般的なようです。

 そんな「包括的解決方式」に立脚した本の1例として、玄武岩(ヒョン・ムアム)北大准教授の「統一コリア」(光文社新書)があります。およそ韓国の進歩陣営の立場に立った内容だと思いました。その中で、とくに人権問題について疑問に思った箇所を引用します。

 「脱北者」を難民とみなして自国への亡命を認める、米国で制定された北朝鮮人権法(North Korea Human Right Act)は、かえって南北関係をこじらせる結果を招くとして憂慮されている。同法が結局は人権を名目にして北朝鮮の崩壊をもくろんでいることで、脱北支援活動が活発化されることが予想されるからであった。また「北朝鮮の住民は韓国の憲法によって享受する法的な権利によって、米国における難民地位や亡命資格の獲得に妨げられることはない」とする項目も、北朝鮮との和解・協力を重視する韓国政府(盧武鉉政権)を困惑させた。

 人権問題の追及をすべて「名目」と捉えるのですか? また、人権よりも体制維持の方が優先されるのですか?

 たんなる思想であれば、社会主義は韓国内での急進的な運動として花を咲かすことなく摘み取られた革新運動となんら変わりはない。しかし、全国民が不動産投機に走り、新自由主義的なグローバル化へのシンクロが進む韓国的な状況から照らし合わせてみても、破たんしたとはいえ一度は理想に向かって現実化した北朝鮮の住民と共存するなかで、そこから救い上げられるものはけっして少なくないはずである。また、その共存は、同胞たちが嘗めてきた多大な苦痛を理解し尊重するための課程(ママ)でもある。 
 それによってとっくに半世紀を超えてしまった分断の経験を無意味にすることなく、それぞれの時代の財産と教訓にして、「過程としての統一」に生かすことができるのである。


 社会主義が北朝鮮で「一度は理想に向かって現実化した」と捉えていますが、政治学者として、かつてのスターリニズムの現実とそのたどった過程をどう理解しているのでしょうか? また北朝鮮の人々が政治的意見を持った市民で、またその意見が反映されるような社会だと思っているわけではないでしょうね!? ヌルボも昔から理想を語ったりもしてきましたが、ここまであまくはないですよ。

※玄武岩「統一コリア」については、→コチラのブログ記事で手厳しく批判されています。
 彼の先生の姜尚中氏については、さるブログに次のような興味深い記事がありました。
 「2003年8月16日の、佐高さんが客員教授を勤める東北公益文科大学での姜、佐高対談(角川文庫「日本論」に収録)で、対談後の質疑応答の時間に、ある学生さんが「姜教授は拉致問題の解決は6カ国間の協議で解決すべきだと言われるが、私はもっと国際的な手続きを重視べきだと思うがどうか」というような質問をしたところ、姜教授は「極端な話だが正義よりも平和を尊ぶべきだ」という答えを出されました。このことに川人弁護士は疑問を呈したのがそもそもの姜教授批判のきっかけとなったのですが、そのとき対談者の佐高信さんは特に反応しなかったということがありました。」
 姜尚中氏は川人博氏の他、鄭大均・三浦小太郎両氏の著作でも名指しで批判されたりもしていますが、ここらでしっかりとした説得力ある反論、北朝鮮論を期待したいところです。(皮肉に非ず。)
 また「日朝関係の克服」(集英社新書)等で一般読者からも厳しいコメントを書かれていますが(→コチラ)、やはり師弟とも北朝鮮認識は基本的に共通していますね。

※玄武岩「統一コリア」には、開城工団等韓国と北朝鮮の間の人的交流の拡大についても(とても肯定的に)書かれていましたが、これについてはいずれ別記事にします。

 最初の小川先生の「6ヵ国協議批判」に戻ります。
 人権問題を最重点課題とすると、北朝鮮に対して厳しくならざるを得ません。だからといって、それは軍事的圧力や経済制裁に直接つながるものではない、というのがヌルボの意見。
 北朝鮮の人権の実態を伝える日本書や韓国書を各国語に翻訳したりして国際社会に広くアピールすること自体が力になるでしょう。脱北者も積極的に支援する。北朝鮮への食糧支援はすべきだとは思いますが、北朝鮮政府はの分配監視条件付き支援を拒否しちゃってるからなー・・・。(関連ニュース→コチラ。)

 小川先生の文中でもうひとつ気になる言葉が、北朝鮮が要求する体制の保障(証?)」。これはどういうことか、ちゃんとした説明は少し探しても見つかりませんでしたが、たとえば①アメリカや韓国等が軍事力を行使して北朝鮮の体制を倒したりはしないという保障、②北朝鮮の現体制が崩壊しないように支える(??)・・・の、①の意味なのか、それとも②まで含むものなのか?
 小川先生の文章では「体制の保障」=「金正日の体制の保障」=「人権状況改善の20年遅滞」と捉えている、ということは②まで含むということのようですね。
 それで間違いないとすると、「体制の保障」を北朝鮮政府が求めるとはなんと面妖な、と思わざるをえないのですが・・・。人権問題のような、現代では国のワクを越えた普遍性を持つと思われるような問題についてさえ「内政干渉だ」と反発するのに、国の体制のような、まさにその国の主権に関わる重要な事柄について他国が保障するといったものでもないでしょうに・・・。崩壊の瀬戸際に立たされている政権を他国が支えるとなると、それこそゆゆしき内政干渉でしょう。・・・よくわからん。
 <アジアプレス>のサイト掲載の日本で暮らす脱北者女子学生の手記「リ・ハナの一歩一歩」の2009年の記事中に次のような内容の一文がありました。
 米韓両政府が北朝鮮に対して「核の廃棄と引き換えに金正日体制、現体制の存続を保証する案を検討中」という新聞記事を読んで「今の北朝鮮の体制―金正日総書記、若しくはその子孫たちが君臨し続ける体制の存続を認めるというのは如何なものなんだろうか。その体制の下で苦しみ続ける庶民たちに対する何らかの保証はあるんでしょうか」ということが気にかかる、というものです。
 こうした心配が的外れでないとすると、ヌルボも「体制保証」には当然反対です。

 たまたま「本ばかり読むバカ」というジュニア向け歴史小説を読んだことが契機となって、小川晴久先生の北朝鮮関係の本もひもとくことになりました。
 開明的な知識人としてはごくふつうに北朝鮮にプラスイメージを持っていた小川先生が北朝鮮の人権状況に目を開かされたのは、1993年に在日朝鮮人帰国者家族の証言を聞いたのが契機だったそうです。その後の先生の熱意と行動力には頭が下がります。
 しかし、その時からもう20年近く経ってしまいました。
 「北朝鮮の人権」の共訳者・川人博弁護士は、あとがきで「「北朝鮮はひどい国だ」ということについてはほぼ世論は一致している。ただ、だからと言って、北朝鮮の人権状況を改善しようとする活動が発展しているとは必ずしも言えない」と書いています。
 そして今、状況はどのくらい変わっているのでしょうか?  
 韓国と、世界は近ごろそれなりに(不十分ながら)変わってきたかな、とヌルボには感じられます。ところが、総体としては北朝鮮や日本を筆頭にたいして変わっていないのではないでしょうか?
 北朝鮮の人々の置かれた状況についての直接の責任は北朝鮮の支配者にあるにせよ、「6ヵ国」を構成する1国である日本国民にも、もしかしたら、いや、たしかに責任の一端はあると思いますよ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

[韓国本]安素玲「本ばかり読むバカ」を読む ②(朝鮮ならではの)「地転説」の衝撃

2012-06-28 16:57:37 | 韓国の小学生~高校生向き小説・物語
 6月24日の記事で、小説本ばかり読むバカの書き手として設定されている李懋(イ・トンム)等の実学者仲間の先生格にあたる洪大容(ホン・デヨン.1731~1783)について、「今ふうにいえば「理系」の人」と書きました。

 その彼が、李懋や柳得恭(ユ・ドゥッコン)等に対して宇宙論を語る場面がなかなか興味深く、また感動的だったので、本文の翻訳を交えつつ紹介します。

 まず洪大容は、地球が丸いこと、そして1日に1回ずつ回っていることを説きます。一同は「月食は地球の影だ」等の説明にうなずきながらも、疑問の声も当然起こります。
 「なぜ回っていて落ちないのですか?」という李懋の質問に、洪大容は答えます。
 「地球の中に大きな力があって、引っぱっている。地上の人だけでなく、空を飛ぶ鳥も、海水も同様だ。」
 ・・・以下、長文ですが、原文に近い形で訳しました。

 「そんな理や大きな地球が非常な速度で廻っているとは、われわれの心の中ではそれよりもっと大きな暴風が起こっていた。 

  <この世の中の中心は私>
 われわれをしばし見渡していた先生(洪大容)は、ふたたび温かい声で話しかけた。
 「おまえ、さっき地球が球のように丸ければわれわれが下側であるはずはないと言ったな?」
 「はい・・・。」
 「球には上、下がない。どこが中央かもいえない。中国の人たちの立場から見ればわれわれは東の外れの小さな国にすぎないが、われわれの立場で見ると中国も北側の大きな国土にすぎない。われわれは西洋人とよぶが、彼らの眼で見るとわれわれは東洋人だろう。すると自分だけが中心だと自慢することも、辺地だからとしょげることもないな。皆同じこの地球で生きていく人たちだろう。」
 その瞬間、われわれの胸には大きな波が揺らめいた。朴齊家の濃い眉は一段とうごめいた。天、地、地球のことはもともと実感がわかず、とまどいもしたが、われわれが住んでいるこの場所が中心となるのだという言葉は鮮やかに迫ってきた。われわれが住んでいるこの国が、そしてここで暮らしているわれわれ自身が大切な存在として新しく生まれるような、充たされた感じだった。」


 (・・・夜更けて帰宅した彼は、子どもが遊び道具にしていた糸玉を転がしつつ、どの国も中心となり得るのだ」という考えを反芻します。そして彼は、さらに考えを先に進めます。)

 「してみると、自分の境遇も同じではないか? 身分の制約がある現実の中で、自分のような庶子は片隅で生きるほかない。しかし一人の一生をみれば、誰が中心で誰が外れだと言えようか? 誰も自分の人生では自分が中心なのだ。 
 私は何度も糸玉を転がしてみた。地球が丸いという湛軒先生(洪大容)の言葉は、われわれが暮らしている土地の姿に対しての話だけではなかった。外れの小さな国に住むといって大きな国の目ばかり見ないで、花開く道のない身の上だといって臆することなく堂々と生きていこうということをおっしゃりたかったのだろう。糸玉をあちらこちら転がして、その晩私は眠りにつくことができなかった。ほかの友人たちも同じだっただろう。」


 洪大容は(「本ばかり読むバカ」に描かれているように玄琴(ヒョングム)の名手で、先の記事に書いたように数学等に優れた「理系の人」ですが、とくに注目すべきはやはり天文学で、渾天儀(天体観測器)を作りも籠水閣という私設の天体観測所に設置して観測したそうです。

 彼は毉山(いざん)問答という著作でその宇宙論や社会論を展開しています。(※原漢文。ハングルの翻訳本も出ています。→コチラ参照。)

 洪大容について、長く研究を続けてきた代表的研究者が小川晴久二松学舎大教授です。
 小川晴久先生といえば、90年代から北朝鮮の収容所等の人権問題に対してNO FENCE副代表や北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会名誉代表として精力的に活動してきた人として知られているかもしれません。
 しかし専門は東アジア思想史の学者です。1963年鄭鎮石・鄭聖哲・金昌元共著「朝鮮哲学史」(弘文堂)を読んで朝鮮実学に興味を持ったとのことで、1978年には韓国に洪大容研究のため留学した経歴があります。
 その小川先生が朝鮮の文化・歴史・学問を素材として1986年度のNHKハングル講座のテキストに連載した文をまとめた「朝鮮文化史の人びと」(花伝社)という本があります。その中に、7ページの小稿ですが、この「毉山問答」の魅力を記した「虚子と実翁」という章がありました。その内容を以下略述します。
 虚子と実翁は「毉山問答」の登場人物2人の名です。虚子は30年間学問に専念した学者ですが、その成果を語ろうにも朝鮮国内には語り合える者はなく、中国の北京を訪ねても大学者にめぐりあえず、帰途につきます。その途中、東北の名山の毉山で遁世の心が起き、山中をさまよう最中に出会った隠者が実翁でした。
儒者としてあらゆる学問を学んだ虚子にあっても抜きがたい人間中心主義、天円地方的天地観、中華意識といった固定観念を、実翁は、次のような観点から打ち砕きます。
・天より視れば人と物と均し・・・無限性と自然という立場からみるとき、人間とそれ以外の物の優劣の差はなくなる。
・宇宙に上下の勢いなし・・・宇宙は無限の空間であり、上と下との区別もなく、したがって上から下へ落ちるという勢い(方向性)もない。地球は周囲が9万里の球体で、一時(2時間)あたり12分の9万里の速度で回転している。
・空界無尽、星もまた無尽・・・満天の星も地球と同じ姿の星界である。星界から見れば地球もまた無数の星の1つである。

 大地が球体と把握されたとき、すでに中国が中心という中華意識は根拠を失うのですが、さらに地球中心、太陽中心の否定まで進めているのです。
 小川先生の説明には、「毉山の位置にも注目しなければなりません」とあります。今は中国の領内ですが、高句麗時代には中国と朝鮮の境だったそうです。そこに住む実翁(実は洪大容)は、「中国人でも朝鮮人でもない国際人化した朝鮮人だったとみるべきでしょう」というわけです。

※「毉山問答」の、主に宇宙論に関する内容については、「朝鮮新報」のサイト中の<人物で見る朝鮮科学史>で紹介されています。

 <李英愛研究>というブログの中に<鶏林日月抄 韓国と儒教>と題して、ヤフー百科事典(韓国語版)の実学の項目に基づいてその特性を紹介し考察している記事がありました。
 それによると、朝鮮後期の実学思想の特性としては、
 ①開放的思惟への転換 ②現実問題に対する関心 ③自主的基盤の覚醒
・・・の3点が挙げられる、とのことです。
 そして、「③自主的基盤の覚醒」に関しては以下のように述べられています。
  ・自主的基盤の覚醒は学問的主題の派生的な成果と言える。 
  ・実学思想の現実意識は、中華主義の理念的な虚構性を拒否し、滅びた明朝ではなく、現在の清朝の先進技術に関心を向けた。そして洪大容の「域外春秋論」に見られるように、国ごとに自己中心意識が可能であるという多元的世界観を提起した。
  ・中国中心の華夷論から脱して、朝鮮の客観的現実に対する関心が高まり、朝鮮社会の独自の自主性に覚醒し始め、朝鮮の歴史・地理・言語・風俗に関する研究が活発に起こった。


 大国中国に隣接し、その影響力があまりにも大きかった朝鮮だからこそ、中華主義の固定観念を打破する観念として洪大容の宇宙観は(とくに思考の柔軟な実学者たちにとって)衝撃的だったことが推察されます。

 上述の「本ばかり読むバカ」中のエピソードを読むと、自然科学の分野での新しい知見が、社会科学・人文科学にも大きな影響を及ぼすことがわかります。とくにこの洪大容の地転論は、近代的な思想を導く性格をもっていたことが理解されます。もちろん、その後の歴史の展開をみると、決してスムーズに近代につながっていったというわけではないようですが・・・。

 ・・・こうしてみてみると、「本ばかり読むバカ」で描いた洪大容が弟子たちに宇宙論を語り、弟子たちはそれを社会観とも関連づけて受けとめ、大きな衝撃と感動を受けたという場面は、セリフ等々は安素玲さんが想像で書いたとしても、基本的には史実に基づいた叙述と理解していいのだな、と思いました。(李懋の「身分制に対する疑問」については保留。)

☆先に書いたように「本ばかり読むバカ」は勉強にもなり、上記のような感動的なくだりもあって読んで「正解」ではありましたが、思い起こせばずいぶん前に、加藤文三「学問の花ひらいて」(新日本出版社)という江戸時代後期の蘭学者群像を描いた本を読んだことがありました。ソチラの方が内容もドラマチックで、感動の度合いも大きかったという印象が残っています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[6月22金)~24日)]

2012-06-26 23:53:30 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 この記事は26日夜にupするつもりが、その直前に寝入ってしまったので大幅に(15時間以上)遅れてしまいました。しかし諸般の事情で(?)日時をごまかしてupしちゃいます。

 4月24日の記事で、映画「ドライヴ」について「女優(キャリー・マリガン)が心に残ります」と書いたら、その後「週刊文春」(先々週)で小林信彦さんが彼女のことを絶賛してましたね。ファン宣言といった方が正確かもしれませんが・・・。地味そうに見えて、意外にもてる人は(一般人にも)けっこういるものです。

 この1週間観た映画で、ゼッタイお薦めは「誰も知らない基地のこと」。米国防省によると全世界で、38ヵ国に716もの米軍基地があるが、実際にはそれ以上とのこと。人類学者のキャサリン・ラッツによれば、ほとんどの基地は戦争の戦利品というべきもので、「基地を残すことが戦争の究極の目的」なのだそうな・・・。イラク、コソボ、アルバニア、ボスニア、アフガニスタン、クルディスタン等々、近年米軍が派遣された紛争地には基地が造られ、それが恒久化される。戦争がその絶好の機会。軍隊維持のため冷戦終結後も中国、テロリスト、麻薬等々新たな敵が次々に設定される。背後には巨大な軍産複合体が・・・、ということ。ところがアメリカ国民の多くは「平和は最前線で守ってくれている人々のおかげ」と思い、兵士たちもそんな使命感を持つ。・・・私ヌルボ思うに、アメリカ映画の一大ジャンルを占めるスーパーヒーロー物も根っ子は共通してるゾ。「自分は100%正義の側にいる」という思い込みは、思想の左右を問わず、宗教の如何を問わず怖ろしいものです。

 韓国映画、ようやく「ムサン日記 白い犬」を観ました。なんともコメントの難しい作品。難しいながらも書こうとすると長くなりそうなので、思い切って今回は何も書かないことにします。少なくとも、ヌルボにとっては、全然感動はしませんでしたが、意味のある映画ではありました。

         ★★★ Daumの人気順位(6月26日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①おばあさんは1年生(韓国)  9.7(42)
②ヤコブへの手紙  9.5(23)
③語る建築家(韓国)  9.5(46)
④アンニョン、ハセヨ!(韓国)  9.5(45)
⑤第七の封印  9.4(22)
⑥二つの扉(韓国)  9.3(67)
⑦オモニ(韓国)  9.3(21)
⑧Delicacy  8.8(32)
⑨ミックマック  8.7(54)
⑩石打ち刑  8.6(28)

 今回の初登場は⑥「二つの扉」だけ。原題は「두 개의 문」。このランクおなじみの、韓国のドキュメンタリーです。その分野は、キリスト教関係、左派の立場からの社会問題関係、障碍者等の社会的弱者関係の3つに大別されるとみてよさそうですが、この作品はその2番目にあたります。
具体的には、2009年1月20日の竜山(ヨンサン)惨事を扱ったものです。竜山の再開発地域で、反対派の撤去民が立てこもった建物に警察特攻隊員が投入され、望楼から発生した火災が主原因となって撤去民5人と警察特殊部隊隊員1人が死亡した事件です。その後検察側は「火炎瓶による火事と見ている」と発表しましたが、遺家族たちの同意もなく死体剖検が強行されたこと等に対し強い疑念も残り、またこのような強硬手段を取ったことにも野党側から批判の声があがりました。そのような疑念は今も解消されず、社会的関心は薄れていません。
 この作品については、<レイバーネット>のサイト中に「金碩基(イ・ソッキ.当時ソウル地方警察庁長官)と李明博がぜひ見るべき映画」と題して、竜山惨事真相究明委のチョン・ヨンシンという人が詳しく紹介しています。それによると、この事件についてこれまで作られたドキュメンタリーが撤去民や、遺族の葬儀闘争を主なテーマとしていたのに対し、この作品は裁判に出てきた警察特殊部隊の証言や陳述調書を基礎に事件を再構成したものとのことです。
 「二つの扉」とは、このビルの屋上に上がる2つの扉のことで、片方は望楼に通じる扉、もう一方は反対の建物に通じる扉なのですが、そこに入った特殊部隊の誰もがそのことを知らず、混乱したそうです。「彼らの感じたであろう恐怖と、撤去民の恐怖は同じかもしれないという思いが、映画を見ている間ずっと胸を打った」と寄稿には書かれています。
※<レイバーネット>には、この他にも龍山惨事関係の記事が掲載されています。→コチラ。そしてコチラコチラも。
※6月25日の<OhmyNews>の記事「二つの扉 興行突風」という記事によると、「「牛の鈴音」より熱い雰囲気」で、「孫鶴圭や鄭東泳等の進歩陣営の政治家も相次いで観覧」ということです。(左派系の)<OhmyNews>の記事という点は多少割り引いてみる必要はあるかもしれませんが・・・。
※韓国在住28年の専業主婦という方のブログに「「竜山惨事」に思う」と題した惨事後まもない頃の3回続きの記事がありました。

【専門家による順位】

①第七の封印  9.0(2)
②メランコリア  8.3(6)
③The Future  8.0(1)
④二つの扉(韓国)  7.8(5)
⑤アベンジャーズ  7.7(7)
⑥よその国で(韓国)7.6(6)
⑦レッドマリア(韓国)  7.5(2)
⑧アルマジロ  7.3(3)
⑨プロメテウス  7.2(9)
⑩建築学概論(韓国)  7.1(6)

 新登場は④だけ。上述しました。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[6月22日(金)~24日(日)] ★★★

         「ミスGO」が初登場1位。「私の妻のすべて」は400万人を突破!

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・ミスGO(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・6/21 ・・・・・・・・・・・・・・268,768 ・・・・・・・・・・331,660 ・・・・・・・・・2,464・・・・・・・439
2(1)・・後宮:帝王の妾(韓国) ・・・・・・・・・6/06 ・・・・・・・・・・・・・・224,477・・・・・・・・・2,187,962 ・・・・・・・・16,142・・・・・・・429
3(2)・・マダガスカル3・・・・・・・・・・・・・・・・6/06 ・・・・・・・・・・・・・・219,371・・・・・・・・・1,275,524 ・・・・・・・・10,034・・・・・・・449
4(26)・・ごますりの王(韓国) ・・・・・・・・・・6/21・・・・・・・・・・・・・・213,947 ・・・・・・・・・・270,610 ・・・・・・・・・1,936・・・・・・・426
5(3)・・私の妻のすべて(韓国)・・・・・・・・・5/17・・・・・・・・・・・・・・179,441・・・・・・・・・4,144,281 ・・・・・・・・30,987・・・・・・・327
6(4)・・ロックアウト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/14・・・・・・・・・・・・・・・87,591 ・・・・・・・・・・411,818 ・・・・・・・・・3,021・・・・・・・284
7(5)・・チャ刑事(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・5/30・・・・・・・・・・・・・・・81,855・・・・・・・・・1,258,871 ・・・・・・・・・9,146・・・・・・・226
8(6)・・メン・イン・ブラック3 ・・・・・・・・・・・・5/24・・・・・・・・・・・・・・・60,485・・・・・・・・・3,346,713 ・・・・・・・・27,067・・・・・・・222
9(7)・・プロメテウス・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/06・・・・・・・・・・・・・・・58,763・・・・・・・・・・・929,919 ・・・・・・・・・8,273・・・・・・・211
10(新)・・フェイシズ・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/21・・・・・・・・・・・・・・・41,091・・・・・・・・・・・・53,123 ・・・・・・・・・・・404・・・・・・・173
       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 初登場は1・4・10位の3作品。しかし1~4位が20万人台とは、ドングリ同士で競り合っているという感じですね。
 1位「ミスGO」はコ・ヒョンジョン主演のアクション・コメディー。対人恐怖症に悩む小心な女性が偶然500億ウォンがかかった犯罪組織の事件に巻き込まれ、その過程で個性豊かな5人の男に出会ってなんと犯罪の女王に生まれ変わるんですと!
 4位「ごますりの王」もコメディ。私ヌルボ、原題の「아부의 왕」の「아부(アブ)」という単語がわからず。「阿附」という漢字語で、「へつらい、おべっか、追従」と辞書にありました。まあ今なら「ごますり」がいちばんわかりやすいとこでしょうか? ポスター(下参照)なんか、いかにもですね。中身はというと、機転が利かずセンスもよくない男が、「感性営業の定石」という本まで出したごますりの名人にワザを伝授してもらって人生が変わっていく・・・。具体的には今ひとつわからんゾ。
 10位「フェイシズ」は、日本ではすでに5月12日公開されています。韓国題は「페이스 블라인드」。ペイス・プルラインドゥか、日本題同様よくわからん。

         
   【「ごますり王」のポスター。この手つきは日韓共通のようです。もしかして世界共通?】

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・Delicacy・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/14 ・・・・・・・・・・・・・・・4,324 ・・・・・・・・・・・・・14,517 ・・・・・・・111・・・・・・・・・・23
2(42)・・二つの扉(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・6/21 ・・・・・・・・・・・・・・・3,753 ・・・・・・・・・・・・・・5,852 ・・・・・・・・42・・・・・・・・・・16
3(2)・・よその国で(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・5/31 ・・・・・・・・・・・・・・・2,028 ・・・・・・・・・・・・・26,688 ・・・・・・・206・・・・・・・・・・18
4(新)・・哀愁・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1940年・・・・・・・・・・・・・・・・1,723 ・・・・・・・・・・・・・・3,174・・・・・・・・・・9・・・・・・・・・・・1
5(新)・・星空・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/05・・・・・・・・・・・・・・・・・・345 ・・・・・・・・・・・・・・4,355・・・・・・・・・32・・・・・・・・・・・1

 初登場は2・4・5位の3作品。
 2位「二つの扉」は前述しました。
 4位「哀愁(애수)は往年の名作。江陵独立映画劇場신영(新映?)という映画館で上映してるようですよ。他の上映作品を見るとなかなか魅力的なラインナップ! 1度行ってみたいなー。
 5位「星空」は、今年(2012年)3月に開かれた第7回大阪アジアン映画祭に特別招待作品として上映された台湾映画。韓国題は「별이 빛나는 밤(星が輝く夜)」。孤独な少女が、同じような男子転校生と出会い、星空を一緒に見るため家出する・・・。大人になって、人生で最も輝かしかった瞬間の記憶についての映画、だそうです。7月アメリカで公開されるそうですが、日本公開はどうかなー?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国KBS1ラジオの番組「正しい言葉・きれいな言葉」 朝鮮戦争開戦62周年の今日の言葉は<サンボン>

2012-06-25 23:54:01 | 韓国語あれこれ
 今日6月25日は、1950年朝鮮戦争の開戦の日。
 韓国では、午前10時から第62周年6.25戦争記念式が戦争記念館(の建物の前)で開かれました。夜帰宅後、たまたまKBS1テレビの番組表を見たら、中継放送を後からでも視聴可能となっていたので、さっそく見てみました。その内容は近日中記事にします。(たぶん)

 その他、KBS1テレビでは、22:00~の「歌謡舞台」も「6.25企画」となっているので、これも見たいな、と思ったのですが、アトの祭。
 もちろん他局でも、例年通り特集番組を組んでいました。私ヌルボはKTV(韓国政策放送)の「戦争の痛み、青い目の宣教師たち(전쟁의 아픔, 파란 눈의 선교사들)」というのを見ただけなので、全体の傾向等はわかりません。

 さて、KBS1ラジオに06:56~放送の連続番組「바른말 고운말(正しい言葉 きれいな言葉」という番組があります。韓国語の勉強によく、わずか2分間の番組なので、私ヌルボ、愛聴というほどではないにしろ、しばしば聴いています。
 で、もしかして、6月25日だと朝鮮戦争に関係した言葉を取り上げるのでは、と思って聴いてみました。すると案の定でしたね。

 その言葉は상봉(サンボン)」。戦争等で離れ離れになっていた家族等が互いに(期待をもって)会うこと。相逢という漢字語の音読みです。たしかに、これまでも南北の離散家族同士の再開をめぐる報道でよく見たり聞いたりしてきた言葉です。日本語だと「再開」というしかないですかねー。少しニュアンスは違うみたいですが・・・。

 「바른말 고운말」では、この「상봉(相逢)」に関連して해후(ヘウ)」という言葉についても説明していました。「ん? ヘウ?」と聴き取りの苦手なヌルボ、何のことか首を傾げましたが、「これは상봉とは違って偶然に出会うこと」という説明を聴いてかろうじてひらめきました。邂逅の音読みです。「語頭以外のㅎ(h)の音は消える(he-huはhe-uになる)」と長渡陽一先生から何度も言われた成果かも、とちょっとうれしくなっちゃいました。(自己満足型)

 しかし、南北朝鮮では多くの人々が「상봉」もかなわないまま長い年月が経ってしまっているんだな、と考えると、この言葉の重みを痛感せざるをえません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

[韓国のジュニア向き歴史小説] 安素玲「本ばかり読むバカ」を読む ①正祖の時代の実学者群像

2012-06-24 23:42:06 | 韓国の小学生~高校生向き小説・物語
 ヤター! 久々に韓国書を読了。
 本ブログの今年2月19日の記事で紹介したタサンの父にの作者・安素玲(안소령.アン・ソリョン)が2005年に書いた、これもジュニア向きの本ばかり読むバカ(책만 보는 바보)」という小説です。

 読みやすい韓国語ですが、電車に乗った時等に少しずつ読み進んだので、結局約4ヵ月もかかってしまいました。

           
      【帯に「“1都市1冊読書”選定図書」とあり、その下に「2011年one book one 釜山」以下が並んでいます。】

 この書名は、朝鮮の正祖の時代(18世紀末)の実学者李徳懋(이덕무.イ・ドクム)が21歳の時に書いた短い自叙伝「看書痴伝」からとったものです。

 内容はというと、彼ら実学派の学者・文人たちの生活や学問、彼らの間の友情等を、李徳懋1人の視点から描いたものです。
 彼を含む実学者仲間を具体的にあげると次の通りです。(生年順)

洪大容(홍대용.ホン・デヨン)1731~1783
朴趾源(박지원.パク・チウォン)1737~1805
李懋(이덕무.イ・ドンム)1741~1793
白東脩(백동수.ペク・トンス)1743~1816
柳得恭(유득공.ユ・ドゥッコン)1748~1807
朴齊家(박제가.パク・チェガ)1750~1805
○李書九(이서구.イ・ソグ)1754~1825
※正祖(정조.チョンジョ)1752~1800

 この7人の中で、私ヌルボが知っていたのは、「熱河日記」(東洋文庫所収)の著者朴趾源と、2011年SBSのドラマ「武士ペク・トンス」の主人公白東脩の2人だけ。
 それがこの本のおかげで他の人々の業績等をいろいろ知ることができました。
 洪大容と朴趾源は、年長というだけではなく、学識からいっても先生格なのですが、洪大容という人は今ふうにいえば「理系」の人で、彼の宇宙観等々、小川晴久先生が著作で詳述しているのを読むと非常に興味深いものがあります。いずれ記事にします。

 また、この中で李懋・柳得恭・朴齊家の3人は、ドラマ「イサン」にちょっと登場しました。見た人たちは覚えているのでしょうね? (私ヌルボは見てないくせしてちゃっかり書いてます。)
 たとえば第58話。ナム尚宮とテスは、やむなくイサンに従い、日が沈むのを待ってから、共に雲従街(ウンジョンガ.現在の鍾路)へ向かった。そして酒場で3人の男(上記の3人)と酒を酌み交わしたが、気軽にジョークにも応じるイサンのことを彼らは気にいったようで、ぜひ白塔派に入るよう勧めて、名前を尋ねてきたりもする。酒場を出てから、ナム尚宮がイサンに言った。「白塔派を自称する実学者たちのようです」。(その後、彼らは正祖が新設した奎章閣(図書館)の検書官に登用される。)

 白塔派とは、この「本ばかり読むバカ」にも書かれているように、彼らの多くは園覚寺址十層石塔すなわちタプコル公園のあの国宝第2号の石塔がある近辺に住んでいて親しくしててたために付けられた名称で、彼らが書いて出した散文集も「白塔清縁集」と題されています。
 あ、「イサン」には上記3人の検書官だけでなく、白東脩も出てますね。

   
  【MBCドラマ「イサン」より。正祖(イサン)は、庶子でありながも能力のある(左から)李懋・朴齊家・柳得恭らを奎章閣の検書官に任命した。右は李懋。(ちょっと本のイメージと合わない・・・。)】

 作者の安素玲さんが、なぜ李懋が一人称で物語るという形式をとったのかというと、たぶんこのグループの中で一番地味な存在だったからではないかと思います。「文藝春秋」の「同級生交歓」で、多くの場合知名度とか世間的「地位」においてあまり目立たない人が書き手を担当するようなものです(?)。また、貧しい中、読書に没頭して日々を過ごし、時折同好の友人たちと語り合ったりするという生活が、作者自身と重なる点があったのかもしれません。
 その結果、TVドラマとは違って、物語の展開は実に淡々としています。約260ページの本文中180ページくらいまで延々と友人や2人の先生個々の詳しい紹介が続き、その後やっと清の都・北京に使節団の一員として行ったことが記され、奎章閣の検書官になるのは210ページ辺りですからねー。
 (※北京は燕京という別名があったことから、北京に行くことを燕行(연행)と言ったそうです。)
 登場人物も悪人はいないし、大事件とかもありません。(正祖の近辺にはあったでしょうが・・・。) しかし歴史の勉強にもなって、感動する場面もちゃんとあるから、つまらなくはないし、まさに健全そのもののジュニア小説で、中学校の国語の教科書に採択されているというのもうなずけます。
 また一応はジュニア向けとなっていても、大人が読んでも十分に大丈夫で、韓国サイトを見るとなかなかの好評を得ています。

 ・・・ということで、とても収穫の多かった本でした。
 が、気になった点もないではありません。「湛軒先生(洪大容)は1765年から翌年の4月まで、清に行く使臣の一行に随って・・・」のように1人称なのに当時はもちろん使われていない西暦表記が何か所もある等。
 また、現代の価値観がそのまま主人公たちに投影されているのではないかと思われる箇所もありました。
 その他、特にこれは、という事柄については、今後さらに個別に記事を立てることにします。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国の死刑制度と、連続大量殺人事件 (4) 韓国と日本の現況

2012-06-23 23:57:00 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
昨年末(2011年11~12月)に、「韓国の死刑制度と、連続大量殺人事件」というテーマで次の3つの記事をupしました。
(1)制度と歴代政権の姿勢
(2)韓国の世論は?
(3)過去の大量殺人事件

 ところが、(2)の最後に「個人的見解については最後にまとめて書くことになってたんだ!」と書き、(3)の最後には「この続きはあと1回です。間に別の記事をいくつか挟みます」と書いたにもかかわらず、それっきりになっていました。

 その後決して忘れていたわけではなく、気にはなっていたのですが(ウソっぽい?)、つい半年近く経ってしまいました。
 
 たまたま「毎日新聞」夕刊で、21日(木)~23日(土)に「死刑 韓国からの報告」という3回連続の企画記事が掲載されていたので、その内容紹介がてら、韓国の現況をみるとともに、日本の状況についても考えてみたいと思います。
 担当は長野宏美記者。「日本弁護士連合会の調査に同行し、実情を探った」とのことです。
 とりあえず、記事の要点は次の通り。☆印は直接取材相手。

○21日(上)「97年最後に執行されず」  「廃止への壁高く」
 ・韓国には死刑制度はあるが、97年12月の23人を最後に執行されていない。
 ・98年に就任した金大中大統領は死刑判決を受けたこともあり、死刑に批判的だった。
 ・その後も再開されず、アムネスティは07年12月韓国を「事実上の死刑廃止国」に分類した。
 ・だが、法改正は伴っていなくて死刑判決は続き、政権の意向でいつでも執行できる状態にある。
 ・05年国の機関の国家人権委員会は「死刑を廃止すべきだ」と表明したが、10年憲法裁判所は「合憲」と判断し、その存廃は立法で決めるよう求めた。
 ・国会では死刑廃止法案が6度は次されたが、成立していない。
 ☆李相赫(イ・サンヒョク)弁護士・・・かつて刑務所の教化委員として(冤罪も含む)死刑囚と接してきた彼は、89年に「韓国死刑廃止運動協議会」を発足させ、会長となったが、世論は厳しく、連日のように抗議や嫌がらせの電話を受けた。
 ☆柳寅泰(ユ・ジテ)議員・・・04年国会議員の過半数の署名を集め、法案を提出した人物で、自身民主化運動で死刑判決を受けた経験がある。


※取材した上記2人の顔ぶれをみても、記事中にさりげなく入っている「世界で死刑廃止の流れが進む中」という一節をみても、これまでの「毎日」の論調に沿った、死刑に対して批判的立場からの記事であることが わかります。

○22日(中)「「執行を」の世論に動かず」  「国際関係に配慮」
 ・韓国の死刑囚は現在58人。手紙や接見、月3回の電話で外部との交流が可能。08年以降本人が申請すれば刑務作業に就けたり教育を受けることも可能になった。
 ・一方、韓国世論は死刑存続賛成が6割前後。
 ・李明博政権は09年死刑執行の検討を指示したが、実行しなかったのは「国際関係が廃位にあるため」(許一泰(ホ・イルテ)東亜大教授)。死刑執行停止を決議した国連のトップが潘基文事務総長ということも影響しているという。
  ☆高貞元(コ・ジョンウォン)さん・・・03~04年計20人を殺害して社会に衝撃を与えた柳永哲(ユ・ヨンチョル)死刑囚に、母と妻、長男の3人を殺された被害者遺族。「最初は許せなかった」が、米国の遺族や被害者家族との交流等を続ける中で「彼らを殺して何の意味があるのか」と感じるようになった。


○23日(下)「法相経験者の葛藤」  「犯罪者の受容を」
 ・6月4日日本弁護士連合会「死刑廃止検討委員会」の調査団が、韓国で最も多い18人の死刑囚が収容されているソウル拘置所を訪れた。(ソウル中心部ら約30キロ南の京畿道義王にある。)
 ・その拘置所内にある死刑執行施設は14年半もの間使われていないが、数年前「整備せよ」との指示があり、現場が緊迫したことがあった。
 ・日弁連は、2011年12月「死刑廃止」を掲げた委員会を設置し、去る6月18日「死刑廃止について議論を始め、その間の執行を停止すべきだ」とする要望書を法相に提出した。韓国での調査を踏まえ、8月にも「終身刑」等の代替措置について方針を示すとのこと。
 ☆杉浦正健(自民党)・平岡秀夫(民主党)・・・ともに元法相で、調査団に同行。いずれも在任中に死刑執行命令を出さなかった人物である。「日本は国際社会から一周も2週も遅れている」「執行回避のために再審請求している人もいるのに、反省して死を受け入れた人の死刑を、先に執行しかねない」(杉浦氏)、「日本は犯罪者を排除する方向に進んでいる。反省や立ち直りの場を与え、受け入れる寛容な社会が求められる」(平岡氏)。


 ・・・本ブログの過去記事と重なる部分が多く、ヌルボとしてはとくに意外な内容ではありませんが、死刑をめぐる状況が十分に知られていない中で、このような記事が掲載されるのはいいことだと思います。死刑賛成派の立場の人にすれば、凶悪事件をもっと具体的にあげるべきだ、という意見は当然あるでしょうが・・・。

 さて、ようやく私ヌルボの意見を書くわけですが、なにせ「究極の」といっていいほどの難問だし、そのわりには死刑賛成派・反対派のどちらにも「絶対賛成」「断固反対」等々、信念といったものを持っている人が多いのが厄介なところで、ここで(反対論であれば)「誤審の可能性」「残酷な刑罰」(賛成論であれば)「遺族の感情」「命を奪った罪は命で贖うしかない」等々の主張を述べ立てても、そんな「想定内」の意見はとっくに聞き飽きてることでしょう。

 で、ヌルボとしては、賛否以前に、「賛成」「反対」の両派の人に訴えたいことを1つ提示します。それは「当事者意識を持とう」ということ。
 「裁判員制度が始まって市民が死刑の判断が迫られるようになった」と「毎日」の記事にありますが、裁判員制度の有無にかかわらず、死刑存置国の国民として以前から恒常的に死刑に関与してきているのです。裁判員を辞退しようがしまいが、そのことに変わりはありません。厳しくいえば、「裁判員制度がスタートして初めて死刑の問題に直面するようになった、と思うなら、今までそんな鈍感さで多くの人を死刑にしてきたの?」と問いたいところです。

 当事者意識とは、具体的には、死刑に賛成するなら(あのA.クリスティの推理小説のように)1人1人が刑の執行人となること。あるいはアメリカ等であるように刑の執行をみとどけること等。それだけの「覚悟」といったものを持とうということです。
 従来は反対派から賛成派に対して「冤罪の場合取り返しがつかない」という意見が投げかけられてきました。ヌルボがいう「覚悟」とは、賛成論を唱える人は「自分がまかり間違って冤罪で死刑に処せられることがあったとしても、死刑は存続すべきである」と言ってこそ説得力を持つわけです。
 反対派の人についても同様で、「深く罪を悔いている人を死刑にする意味があるのか?」と賛成派に問いかける前に、「自分はどんなに大切な家族や愛する人を残虐に殺されても、また殺人者が全然反省の色さえ見せずせせら笑っているような奴でも、死刑にはしない」という「覚悟」があるかどうかをまず自問すべきだと考えます。

 他の人たちに対する主張はここまで。

 そしてヌルボ自身の判断を最後に述べると、死刑に反対です。理由は、上述の(死刑に加担しているという)「当事者意識」といったものが耐え難いから。
 よく「被害者感情の尊重を!」と言われます。が、私ヌルボの場合は、それが約1億(有権者数)分の1程度であるにせよ、「人を殺すことに加担している」という意識を持っています。それがイヤでしょうがない・・・ここらへんは理屈ではないので、外に向かって堂々と主張したい、というものではありません。しかしだからといって、「妻や子を殺された被害者遺族の気持ちがわからないのか!?」と問われると「わかるはずはない」ものの、自分の「殺人に加担している」という「イヤでしょうがない」意識も容易に消してしまえるものでもないし、それを凌駕するだけの死刑肯定理論(←感情論でなく)は見たことがなく、感情論ならどれも等価だろう・・・等々と呟き続けると、いつしか「外に向かって」語り始めちゃってますか?

[6月24日の付記]
 同じ「毎日新聞」の6月10日(日)付「時代の風」で、元世界銀行副総裁・西水美恵子さんが「人道外れる死刑制度」というタイトルで死刑について書いていました。
 →コチラ。ただし、このリンク先の記事は1ヵ月(?)で削除されてしまうので、同記事を含んだブログ記事を併せて紹介しておきます。
 →コチラ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[6月15日(金)~17日(日)]

2012-06-19 23:59:54 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 もうホラーとかスリラーの季節ですねー。
 しかし、最近映画のレビューでこんなに「絶賛の嵐」ならぬ「酷評の嵐」を浴びている映画もめずらしいのではないかな。
 ・・・って「貞子 3D」のことです。<映画生活>の「クチコミ満足度」が平均36点! コメントもキョーレツなものがわんさか。「「絶対に」見に行かないほうがいいです。金を溝に捨てるようなものです」、「ここまで酷い映画はちょっと記憶にない」、「3Dをいいことに驚かせようとしすぎww見て体験するお化け屋敷行ったみたいで」、「これはもうホラー映画じゃありません。貞子のアイドル映画とすら言えるものでした。それはタイトルにもはっきり表れてますね、露骨に。3Dで貞子が飛び出てきますよー、と」等々・・・。3Dの問題点がもろに出てきちゃったということですかね、私ヌルボは観てませんけど(無責任)。
 観客動員がそれなりの数字に達しているのは、シリーズの過去の実績と宣伝効果ですか? 東京ドームで始球式もやっちゃってるし、ナゴヤドームでは観客席指さしたりしてますよ! ドアラに抱きかかえられたりして・・・(笑)。(→動画)
 韓国では6月14日公開。コチラでもソウルの地下鉄に集団出没したり等々。

    
       【ソウルの貞子はチマチョゴリ姿です。】

 しかし韓国でもネチズンの平均評点は5.1で、「リング」の8.4、「リング2」の8.6に遠く及ばず、コメントも厳しいものが日本同様ずらっと並んでます。やれやれ・・・。

         ★★★ Daumの人気順位(6月19日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①おばあさんは1年生(韓国)   9.7(41)
②語る建築家(韓国)  9.6(42)
③ヤコブへの手紙  9.5(22)
④アンニョン、ハセヨ!(韓国)  9.5(44)
⑤第七の封印  9.4(20)
⑥オモニ(韓国)  9.3(21)
⑦石打ち刑  8.7(22)
⑧ミックマック  8.7(52)
⑨マダガスカル 3  8.5(152)
⑩建築学概論(韓国)  8.5(2235)

 今回の初登場は⑦「石打ち刑」は、私ヌルボがつけた仮題。原題は「The Stoning of Soraya M.」、韓国題は「더 스토닝」です。2008年のトロント国際映画祭で「スラムドッグ$ミリオネア」に次いで評判をよんだ映画で、イランでの、事実に基づく小説の映画化作品だそうです。
 14歳の少女と再婚したいがために、夫が自分の妻を無実の罪(=浮気)に陥れるだけでも酷いのに、その刑は公開処刑。それも下半身を地面に埋めて、死ぬまで村人が(夫や息子も!)石を投げるという石打ち刑とは・・・。2010年7月にこの映画を観た人のブログ記事によると、「イスラム教徒である彼らは石を投げるごとに自分に名誉が与えられるって信じてる」ということです。また別の人の感想には「どんなホラー映画を見るよりも怖いです」とあります。
 私ヌルボも、物語の概略を読んだだけで言葉を失います。ただ、心の中に数%の自問といったものも残ります。うまく言えないのですが・・・、と思っていたら、たまたまその問を的確に書いてくれていたブログ記事を見つけました。その記事では、ラカン派マルクス主義者のシジェクの次のような言葉を引用しています。「西洋の「寛容な」多文化主義でいうところの「自由選択の主体」が現れるには、特定の生活世界から引きはがされるという、つまり、自分のルーツから切り離されるという、きわめて暴力的な過程を経なければならない、ということ」であって、「つねに心に留めるべきことは、この暴力が社会的因習からの解放をもたらし、そのおかげでわれわれは自分の文化的背景を偶発的なものとして経験できる、ということだ」。つまり、伝統的な社会の解体と密接不可分と解していいのかな? またブログ筆者の「それはイスラム教の価値観だから」と容認するような価値相対主義を否定できるような普遍的な価値観があるとしたら、その根拠はどこにあるのか? ・・・というような疑問も、私ヌルボのそれと共通するものがあると思いました。
 先週、専門家筋の評価の高いイラン映画「別離」を観ました。最初から最後まで、観る者をささくれ立った気持ちにさせる映画で、正直言って好きではありませんが、優れた映画ではあります。近年、イランの社会(イスラム社会?)が深刻な価値観の葛藤・相剋を続けていることが、この映画からもうかがわれました。


【専門家による順位】

①第七の封印  9.0(2)
②メランコリア  8.3(6)
③The Future  8.0(1)
④アベンジャーズ  7.7(7)
⑤よその国で(韓国)7.6(6)
⑥異邦人たち(韓国)  7.5(2)
⑥レッドマリア(韓国)  7.5(2)
⑧アルマジロ  7.3(3)
⑨プロメテウス  7.2(9)
⑩建築学概論(韓国)  7.1(6)

 新登場はなし。⑨「プロメテウス」はこのランクは初ですが、先週興行成績の方で紹介しました。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[6月15日(金)~17日(日)] ★★★

         <19禁>時代劇「後宮」が連続1位、2・3位も不動

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・後宮:帝王の妾(韓国) ・・・・・・・・・6/06 ・・・・・・・・・・・・・・379,576・・・・・・・・・1,720,817 ・・・・・・・・12,762・・・・・・・536
2(2)・・マダガスカル3・・・・・・・・・・・・・・・・6/06 ・・・・・・・・・・・・・・311,861・・・・・・・・・1,001,316 ・・・・・・・・・7,937・・・・・・・557
3(3)・・私の妻のすべて(韓国)・・・・・・・・・5/17・・・・・・・・・・・・・・238,536・・・・・・・・・3,820,143 ・・・・・・・・28,607・・・・・・・370
4(新)・・ロックアウト・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/14・・・・・・・・・・・・・・201,339 ・・・・・・・・・・237,598 ・・・・・・・・・1,757・・・・・・・373
5(6)・・チャ刑事(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・5/30・・・・・・・・・・・・・・145,123・・・・・・・・・1,098,600 ・・・・・・・・・7,993・・・・・・・282
6(5)・・メン・イン・ブラック3 ・・・・・・・・・・・・5/24・・・・・・・・・・・・・・135,530・・・・・・・・・3,231,892 ・・・・・・・・26,221・・・・・・・332
7(4)・・プロメテウス・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/06・・・・・・・・・・・・・・129,414・・・・・・・・・・・801,538 ・・・・・・・・・7,176・・・・・・・322
8(新)・・貞子 3D(日本)・・・・・・・・・・・・・・・6/14・・・・・・・・・・・・・・・71,361・・・・・・・・・・・・87,968 ・・・・・・・・・・・817・・・・・・・261
9(7)・・未確認動映像 ・・・・・・・・・・・・・・・・5/30 ・・・・・・・・・・・・・・57,245・・・・・・・・・・・837,628 ・・・・・・・・・5,729・・・・・・・254
       絶対クリック禁止(韓国)
10(新)・・遊星からの物体X ・・・・・・・・・・・6/14・・・・・・・・・・・・・・・27,912・・・・・・・・・・・・33,488 ・・・・・・・・・・・245・・・・・・・173
       ファーストコンタクト
       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は4・8・10位の3作品。
 4位「ロックアウト」は、リュック・ベッソンがプロデューサー・脚本家として参加したSFアクション。スパイ容疑の冤罪で投獄されている政府エージェントが、囚人たちによって占拠された宇宙刑務所に閉じ込められてしまった大統領の娘を救出すれば自由の身にする、という提案を受けるが・・・という話だそうです。日本公開は未定。韓国題は「락아웃:익스트림미션」。韓国語ではラックアウトと発音するのかー。
 8位「貞子 3D」については前述しました。韓国題は「사다코 3D :죽음의 동영상」と、「死の動映像」という副題がついています。9位にもありますが、日本の「動画」を韓国では「動映像」というのですね。(あっ、今まで「同映像」になってたな! お詫びして訂正します。)
 10位「遊星からの物体X ファーストコンタクト」、1982年の「遊星からの物体X」は怖かったな~という記憶があります。あ、元はハワード・ホークス監督の「遊星よりの物体X」(1951年)か。約60年間も有効なアイディアってとこですかね。日本公開は8月4日。日本版予告編もできてます。(→コチラ。) 韓国題の「더 씽(ドッシン)」というのは原題「The Thing」の韓国語表記。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(9)・・Delicacy・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/14 ・・・・・・・・・・・・・・・4,581 ・・・・・・・・・・・・・・6,407 ・・・・・・・・50・・・・・・・・・・29
2(1)・・よその国で(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・5/31 ・・・・・・・・・・・・・・・2,150 ・・・・・・・・・・・・・22,989 ・・・・・・・177・・・・・・・・・・24
3(2)・・The Future・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/17 ・・・・・・・・・・・・・・・・・363 ・・・・・・・・・・・・・・9,270・・・・・・・・・75・・・・・・・・・・・3
4(6)・・語る建築家(韓国)・・・・・・・・・・・・・・3/08・・・・・・・・・・・・・・・・・・275 ・・・・・・・・・・・・・38,109 ・・・・・・・207・・・・・・・・・・・2
5(4)・・A Dangerous Method ・・・・・・・・・・5/10・・・・・・・・・・・・・・・・・・222 ・・・・・・・・・・・・・26,956・・・・・・・・205・・・・・・・・・・・4

 初登場は1位のフランス映画「Delicacy」(英題)だけ。 オドレイ・トトゥ主演のフランスのラブコメディ。「アメリ」から10年以上も経つのか・・・。彼女が演じるのが、突然の事故で夫を亡くしてから気力を失い、何年間も色恋とは無縁で仕事に没頭する日々を送っていた女性。ところがある日、自分でも訳が分からないまま同僚の男とキスをしてから状況が一変する・・・。韓国題は内容に沿って「시작은 키스!(はじめはキス!)」。原題は「La Délicatesse」です。
 4位「語る建築家」、ほんとに長く続いています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

集英社の全集「戦争×文学」 第1巻「朝鮮戦争」の口絵 ④信川虐殺事件の真実は?

2012-06-18 23:56:14 | 韓国・朝鮮に関係のある本
 → 集英社の全集「戦争×文学」 第1巻「朝鮮戦争」の口絵 ③信川虐殺事件とジェネラル・シャーマン号の関係??の続きです。

 ピカソの作品「朝鮮の悲劇」を導入として、朝鮮戦争中の信川の虐殺事件について長々と記してきました。とくに、北朝鮮側の①「米軍の蛮行である」という主張を2回にわたって紹介しましたが、今回は韓国側の異論を紹介し、私ヌルボの感想等も入れて区切りをつけたいと思います。

 韓国ウィキペディアの「신천군 사건(信川郡事件)」の項目で、前記の北朝鮮側の主張の次にあげられているのが下記の主張です。

②右派の地下組織と信川郡民の抵抗であり、反共闘争事件である。[韓国に移り住んでいる信川郡出身の体験者の証言]
 北朝鮮とは逆に、黄海道信川郡の出身で、当時を体験した韓国在住の人たちは、「罪のない良民を虐殺している労働党と人民軍に対抗した右派の地下組織と信川郡民の抵抗であり、反共闘争事件である」と説明しています。彼らの主張によると、「1950年9月仁川上陸作戦が成功し、韓国軍と国連軍が38度線を越えて北進を開始すると、戦況が不利になった共産軍は、地主・聖職者を含めた右派勢力を処刑した。このような労働党に反対する右派の青年たちが、10月13日を期して反共蜂起を起こした」というのですが・・・。
 つまり、加害者は米軍ではなく、韓国人の右派勢力。ところが、その前提として、共産勢力側による「人民裁判」という名の虐殺があった、というわけです。なんとなく、言い訳めいたニュアンスが感じられます。
 しかし、写真資料にあるような無差別的な大量虐殺の状況を考えると、酷い人民裁判がその前にあったにしても、合理化はできないでしょう、と私ヌルボは思いますが・・・。
 同じ右翼集団が加害者という主張でも、ニュアンスが異なるのが次の例。

②’主に反共青年団によりなされた。[文化放送の番組担当者の推測]
 文化放送が2002年4月に放映した「今は言うことができる 忘却の戦争編」によると、この事件は「左右対立の結果」としています。番組担当のディレクターは「当時、米軍は平壌を先取りしようという競争のため信川滞在は短く、米軍が主導したと確認するに足る証拠は見つからなかった」と語り、そして「信川地域の反共青年団がやったことで、李承晩政府が追認した」と、虐殺が主に反共青年団によりなされたものと推測しています。

③惨劇は、民族内部(同じ村人たちの間)で演じられた。[小説家・黄晳暎(ファン・ソギョン)の小説「客人(ソンニム)」]
 この小説に関する岩波書店のサイト内にある「著者からのメッセージ」によると、韓国の代表的な現代作家の1人黄晳暎は、ニューヨークで会った韓国人プロテスタントのユ牧師から、彼が生まれ育った信川の地での目撃談を聞き、この「客人」(2001)を表しました。その内容は、「編集者からのメッセージ」にあるように「朝鮮戦争をこれまでとまったく違った角度から描いた」もので、「南北の軍や米軍、あるいは中国軍の戦争であっただけでなく、それは同じ村人たち、隣人たちの殺し合いでもあったというのです。具体的には、住民を悪魔として大量殺戮したプロテスタントたちが加害者だというものです。
 「客人」は私ヌルボは未読ですが、実際に読んだ上で深く詳しい感想が記されている「小説『客人(ソンニム)』に見るキリスト教の狂気」と題されたブログ記事(→コチラ)では、文京洙「韓国現代史」(岩波書店.2005年)を引用しつつ、およそ次のようにまとめています。
・当時北朝鮮には、共産主義により打撃を受けた階層には多くのクリスチャンがいた。(平安道では、平壌を中心に反日的プロテスタントの民族主義者
・共産勢力は、大地主ばかりか、勤勉と質素によって小・中規模の地主に成長していたプロテスタントたちも一挙に打ちのめした。
・プロテスタントたちは、北上してきた米軍を十字軍と呼び、米軍の占領下で北の住民をサタンとして殺戮に及んだ。

※このブログ記事によると、「キリスト教徒が集団で次々住民を襲い、閉じこめ、壕の中にガソリンを流し込み、火をつける。そのような残虐な行為をしたのは、軍人や兵士ではない。それまで敬虔に神に祈りを捧げていた、ごく当たり前のキリスト教徒」ということです。
 この筆者も考察しているように、キリスト教と民族主義(orナショナリズム)との結びつきは、現代的なテーマでもあるようです。

 小説「客人」では、「米軍ハリソン部隊が数時間信川に立ち寄ったあと、西北のクリスチャンとは敵対関係にあった共産党の影響を受けた人たちに対して凄絶なリンチがはじまった」と書かれているそうです。
 上記「著者からのメッセージ」には、「解放後、朝鮮半島のわれわれに大きな傷痕を残したキリスト教もマルクス主義も、自律的な近代の達成に失敗し、他律的なものとして受け入れた近代化への二つの異なった途であり、天然痘のように西方からもたらされた「西病」であって、だからこの作品に「客人」というタイトルをつけた」と書かれています。

 いわば黄晳暎はタブーを破ったのであり、「北のマルクス主義者からも、南のクリスチャンからも、・・・批判を受ける」ことになった」(編集者)のも「さもありなん」です。
 この小説で彼は、民俗的な踊り(マダンクッ)を取り込み、鎮魂と祈りと赦しでこの悲劇を終えているとのことです。(「パリデギ」のラストもそんな雰囲気だったような・・・。)

 また本書には、「北朝鮮はこの同族どうしの争いであったという事実を隠蔽するために、大虐殺事件を米軍に仕業にして、信川に「米帝良民虐殺記念博物館」を建てた」ということも詳しく記述されているそうです。
 ・・・とするとつまり、北朝鮮側は、事実を知りつつ、米軍が加害者であると史実を捏造した、ということになります。

※立命館大・徐勝氏は、「当時の状況や韓国での証言採録の結果を勘案すると、黄氏の言が現実性を帯びてくる」としつつも、「ただし、当時、また今も、韓国軍の軍事指揮権を米軍が持っている事を考えるなら、米軍が虐殺の直間接的な責任を負わなければならない事は言うまでもない」と結論付けています。「なんと安易な解釈!」と私ヌルボは唖然茫然。

※黄晳暎に体験を語ったユ牧師は小説にも登場するそうです。韓国ウィキの「信川の事件」によると、「北朝鮮は、共産主義者を迫害したキリスト教右派に対して報復もせず、むしろ福祉を提供することによって社会的統合を遂げた」と北に好意的な見解を持っているようです。

 ・・・以上、長々と信川虐殺事件について、とくに誰が加害者か、という点についての諸説を見てきました。

 で、私ヌルボの感想と意見です。
○事実の把握として、最も説得力のあるのが黄晳暎の見方と思われます。 
○誰かに100%の責任を負わせることは正しくない。直接の加害者はもちろん、戦争を始めた金日成(←この責任は大きい)も、ソ連も中国も、無理な北進策を取った李承晩も、米軍もそれぞれに責任があります。
○直接手を下したと思われる者たち(この場合はプロテスタント勢力)は、どんな言いわけもできません。これはかつて戦時中、数々の「蛮行」を犯した日本軍兵士も、今世界各地で「蛮行」をやっているらしい米軍兵士も、その他、過去及び現代の数々の戦争の中での無数といっていいほどの良民を虐殺した者たちについても同様です。(「上官の命令」「天皇の命令」は、裁判では情状の余地はあるかもしれませんが、自分自身を免責してはダメでしょう。
○虐殺を行った(らしい)プロテスタントたちも、その呼び水となってしまった「人民裁判」を行った共産軍の側の人々も、なぜ同じ村人同士で殺し合ったり、あるいは一族の間でも対立を生んでしまったのか? 「ふだんは普通の平凡な庶民」がある状況下でそのようになってしまうのであって、決して「本来残忍なアメリカ人」というようなものではありません。
 また、今たしかに、アメリカのふりまわす鼻持ちならない「正義」が多くの害悪をまき散らしているとヌルボも考えていますが、徐勝氏のようにほとんどの責任をアメリカに帰するような見方は単純に過ぎると思われます。
 どんな場合に正義の名の下に蛮行を働いてしまうのか、宗教上・思想上の「思い込み」がいかに強力なものかを、教育の場等でしっかり教えるべきです。
○ところが、この信川虐殺にしても老斤里事件等々の虐殺事件にしても、韓国・北朝鮮ではそれぞれの政治的主張に沿った形で解釈されて利用されることが非常に多い、というより、そればかりといった感じです。
 そのような厳しい思想的・政治的対立こそが、問答無用に「敵」を殲滅することを「正義」として、結局は虐殺を生んでしまうということに気づくべきでしょう。
○北朝鮮のように「敵」への報復を国民に教え込むというのは論外! ひどいとしか言いようがありません。このような前近代的「教育」は、むしろ悲劇を再生産するばかりです。


★2011年6月の「朝鮮日報」の記事によると、韓国ではピカソの「朝鮮の虐殺」が一部の教科書に掲載されたそうです。
 このことに言及したブログ記事(→一例)もあります。どちらの記事も、「反米」という「左派勢力」の主張にこれが「利用」されることを懸念しています。

 韓国メディアで伝えられる情報に接すると、軍事・政治以外の、たとえば映画や文学等々の文化的なイシューについても、実に左右両派間のミゾが深いなー、ということをことあるごとに痛感します。
 私ヌルボ、(左派代表)「ハンギョレ」の記事にしろ(右派代表)「朝鮮日報」の記事にしろ、最近は正直言ってどちらもウンザリ、ということが多くなってきました。4月の総選挙前はどっちもそれぞれの陣営の応援団になってたからなー。選挙後もあいかわらずですが・・・。ホントに不毛だなーと思います。やれやれ・・・。

 今日の「読売新聞」の世論調査結果を見ると、日本も負けず劣らず「不安が心配」という状況ですけどねー・・・。
 本ブログ去る4月1日の記事で、「小泉純一郎氏にも懲りずに今度は橋下氏を支持している人たちをみると、イソップ物語の中の、王様を求めたカエルの寓話を連想してしまうのですが・・・。最後に王様=コウノトリ(ツル?)に喰われてしまうカエルです」などとアカラサマに書いてしまったことを思い出しました。
 対象が誰であれ、何であれ、過度の期待は結局は裏切られるものと相場は決まっているし、自ら墓穴を掘っているような危うさを感じてしまいます。「新しい何か」に期待をかけたい気持ちはわかりますが、たとえばピースおおさか人権博物館(リバティおおさか)に対する橋下氏の姿勢だけ見ても不安を覚えます。
 今は世論の中の多数派に属していると思っている人は、何かのきっかけで多数派に指弾される少数派とされてしまう可能性は考えないのでしょうか? たとえ「けむたいヤツら」と目に映っても、少数派の尊重、異論の尊重は、個々人の、つまり自分も含めてすべての人々の尊重につながります。 
 あ、テーマとか、本ブログの趣旨から離れて時論政論になってきちゃったな・・・。

[2019年9月3日の追記]この記事を書いた後、「客人」を読みました。その内容紹介&感想の記事<信川虐殺事件の真実に迫る = 黄晳暎(ファン・ソギョン)の小説「客人(ソンニム)」>は→コチラ
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

集英社の全集「戦争×文学」 第1巻「朝鮮戦争」の口絵 ③信川虐殺事件とジェネラル・シャーマン号の関係??

2012-06-17 23:52:04 | 韓国・朝鮮に関係のある本
 集英社の全集「 戦争×文学」第1巻「朝鮮戦争」の口絵にあるピカソの「朝鮮の虐殺」について、1つ前の記事の続きです。

 前回は、1950年末の信川郡の虐殺事件の加害者について、主に北朝鮮が主張している「①米軍が加害者である」という説を紹介しました。

 次にそれと異なる所説を紹介するつもりでいたところ、北朝鮮の現地にある信川博物館の動画があることに気づきました。
 それをまず紹介しておきます。

 2種類あります。

 最初は<(2010/11/21)黄海南道・信川博物館>と題されたもので、在日と思われる人(?)がupした全4編の動画。

 博物館の女性ガイドの説明を、通訳の人が日本語に訳しています。
 「アメリカ人の蛮行」を描いた絵を説明している部分が入っているパート=「(2010/11/21)黄海南道・信川博物館03」を下に載せます。
    

 この動画の他のパートへのリンクは次の通り。
 →(2010/11/21)黄海南道・信川博物館01
 →(2010/11/21)黄海南道・信川博物館02
 →(2010/11/21)黄海南道・信川博物館04

 もう1種類の動画は「련속참관기 미제의 죄행을 단죄하는 력사의 고발장 신천박물관을 찾아서(連続参観記 米帝の罪行を断罪する歴史の告発場 信川博物館を訪ねて)」という7編の動画。
 コチラは、「uriminzokkiriさんが2011/07/16にアップロード」とあります。
 <uriminzokkiri(わが民族同士)>は、北朝鮮の公式IDです。北朝鮮当局も、YouTubeを政治宣伝のツールとして利用しているのです。

 最初のパート1には、金正日総書記も登場しています。 
    

 この中で、アレレ!?と思ったのが、1866年7月のジェネラル・シャーマン号の事件からまず展示・説明されていること。
 日本でいえば幕末。平壌に侵入したアメリカ船ジェネラル・シャーマン号を焼き討ちし、それが端緒となった辛未洋擾で結局アメリカは撤退を余儀なくされました。
 この信川博物館の説明では、やはり(史実に反して)金日成の曾祖父の金膺禹(キム・ウンウ)がジェネラル・シャーマン号の焼き討ちを指揮した、と説明しています。
 「なんでそんな昔の事件が信川虐殺事件と関係があるの?」という疑問が当然起こりますが、そんな昔から米帝の侵略があり、われわれは(金日成一家の指導の下に)彼らと戦ってきた、ということでしょう。
 この博物館には随所に金日成&金正日のお言葉が掲げられていて、このパートにも次のような掲示が映されています。
 「アメリカ帝国主義者たちはシャーマン号の侵入から始まって1世紀間もわが国を侵略してきた朝鮮人民の徹天之怨讐です。金日成」

 パート2以下はリンクのみにして、簡単にコメントします。
 →パート2
 ・・・犠牲者の悲惨な写真資料等が映されています。
 →パート3
 ・・・写真資料の他、「米軍の蛮行」を描いた絵も映されています。
  ここにも金日成のお言葉が掲示されています。
 「米帝の怨讐の奴らが信川の地で犯した鬼畜のような蛮行は、先祖の時から人間狩りに慣れていたアメリカ食人種たちだけができる殺人行為で、ヒトラーファッショ分子たちの行為を上回る人間殺戮の蛮行です。 金日成」
 →パート4
 ・・・犠牲となった子どもたちについての写真等の資料が紹介されています。
 (なぜかパート5はありません。)
 →パート6
 ・・・米兵の「野獣のような蛮行」が多くの絵で説明されています。
  このパートでは、「全信川タバコ工場女性同盟(?)委員長パク・ヨンギョが残した言葉」が掲げられています。
 「朝鮮労働者は永遠にこの地上に光を注ぐであろう。私はいかにおまえらに殺されても、朝鮮労働党の懐の中で永く生き続けるだろう。≪金日成将軍 万歳!≫ ≪朝鮮労働党 万歳!≫」
 さらに、金正日の言葉もあります。(字が小さくて解読不能。)
 →パート7
 ・・・「党と首領に対する信念を守った愛国者たち」がテーマ。皆、≪金日成将軍 万歳!≫ ≪朝鮮労働党 万歳!≫を叫びながら死んでいきました、ということです。
 →パート8
 ・・・見学の生徒たちが犠牲者の墓に参拝した後、当時6歳だった男性ガイドの説明を聞いています。
 全国各地の遊撃隊の闘争に関する展示物が映されています。
 このパートにも金日成・金正日父子のお言葉が掲示されています。

 通して見ると、写真資料等からたしかにひどい大量虐殺があったことがわかります。
 ただ、その加害者が誰だったかを確実に示す資料はないようです。
 米軍による蛮行の絵は、彼らの顔をいかにも悪辣に描いています。
 北朝鮮の他の博物館同様に、金日成・正日父子のお言葉が何枚も掲げられています。
 さらに、上述のようにシャーマン号事件から彼らの悪行を説明することによって、虐殺の悲劇に対する悲憤を、そのまま米帝に対する敵愾心に直結させています。

 冷静に受け止めると、信川の虐殺についての一定程度の知識と、北朝鮮による政治的プロパガンダのありようについての一定程度の知識を得ることができる動画、といえるでしょう。 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

集英社の全集「戦争×文学」 第1巻「朝鮮戦争」の口絵 ②ピカソ「朝鮮の悲劇」と信川虐殺事件

2012-06-15 23:51:08 | 韓国・朝鮮に関係のある本
 →1つ前の記事の続きです。

      

 集英社の全集「 戦争×文学」第1巻「朝鮮戦争」の口絵にあるピカソの「朝鮮の虐殺」です。(パリ・国立ピカソ美術館所蔵)
 ナポレオン軍によるマドリッド攻略時の虐殺を描いたゴヤの「マドリード、1808年5月3日」を下敷きにして描いたと言われている作品です。
 1951年、当時フランス共産党員だったピカソが、米軍の朝鮮半島介入に反発するフランス共産党に依頼され描いたものだそうです。(しかしフランス共産党から「殺人者の実体が不明瞭」だとして「酷評」され、結局フランス共産党と袂を分かつ結果となったそうです。)

 ところが、本書巻末の口絵解説(木下長宏)を見て、私ヌルボ、「あれっ?」と驚きました。次のように書かれていたからです。
 「[2]は、戦争が始まる前、済州島で起った武装蜂起とその弾圧、民衆虐殺を知ったピカソが制作した。(以下略)」

 あれれ、この作品は朝鮮戦争中の黄海南道・信川(シンチョン)郡での集団虐殺にインスピレーションを得て描いたもの、・・・と大方の、いや、すべての関係記事に書かれています。
 木下長宏先生は何かしっかりした根拠があって済州島の四・三事件と書いているのか? いろいろ日本と韓国のサイトを検索してみましたが、やはり済州島としているものは皆無。もしかして、思い違い?

 ・・・ということで、首を傾げつつも私ヌルボ、その信川虐殺事件についてみていくことにします。

 以下、記事作成に当たっては、次の2つの記事に多くを負っていることを最初に明らかにしておきます。
 [A] <愛・蔵太の気になるメモ>というブログの記事「ピカソの絵「朝鮮の虐殺」(Masacre en Corea)と信川虐殺事件について」
 [B] 韓国ウィキの「신천군 사건(信川郡事件)」の項目

 まず、この事件の概略から。
 1950年6月25日の朝鮮戦争開戦以後、半島の南端にまで追いつめられた国連軍は、9月半ばの仁川上陸作戦以降勢力を挽回し、9月28日にソウルを奪回、そしてさらに38度線を越えて進撃し、10月20日には平壌を制圧します。
 その間、10月17日から、米軍が中国人民義勇軍の参戦で撤収を余儀なくされるまでの12月7日までの52日の間に、黄海南道(現・北朝鮮)信川郡で起ったのがこの良民虐殺事件です。当時の信川郡の人口の4分の1の35,383人もの、女性や子どもを含む多くの人々が殺された、とされています。
※この事件を、韓国では「信川虐殺」や「信川虐殺事件」とよび、北朝鮮では「信川大虐殺」という。

 では、一体誰がこの虐殺を行ったのか?
 肝心の点であるにもかかわらず、上記の韓国ウィキには複数の異なる見方があげられています。

①米軍が加害者である。[北朝鮮の主張]
 ハリソンを隊長とする米軍1個中隊による蛮行である、とするもの。
 上記[A]の記事に引用されている「朝鮮新報」(朝鮮総聯の機関紙)の1999年10月の記事「ニュースの眼/朝鮮戦争時の米軍の虐殺」には次のように記されています。
 朝鮮社会科学院歴史研究所の資料によると、米軍は平壌など34の地域で17万2000余人の非戦闘員を虐殺している。 
 とくに50年12月7日、黄海南道信川郡で起きた婦女子虐殺事件は米軍の残忍性をそのまま物語っている。米軍は2つの火薬庫に母親と子どもを分けて閉じこめ、ガソリンをかけて火を付けた。そして400人の母親と102人の子どもを含む910人を虐殺した。
 信川郡を占領した米軍司令官のヘリソンは「母親と子どもが一緒にいるのは、あまりにも幸福すぎるではないか。ただちに引き離して別々に閉じこめろ。そして母親は子どもを捜しながら死に、子どもは母親を捜しながら飢え死にするようにしろ」と叫んだという。

※この記事は、AP通信が朝鮮戦争当時の米軍による老斤里住民虐殺事件を報じて以来の、韓国内での関連事件の真相究明の動きに呼応したものです。(ヌルボ)

 また北朝鮮では、金日成首相(当時)の提案で信川博物館(→韓国ウィキ)が造られ(1958年開館)、数千点の資料が展示されています。代表的な反米教育の場として、反米糾弾会や決議会議などの関連行事が開かれ、また外国人旅行者の見学ポイントにもなっています。

 2005年1月の「朝鮮新報」の記事「信川博物館を訪ねて 米軍による大量殺りく「朝鮮版アウシュビッツ」」によると、博物館の女性案内人は米軍による凶悪な犯罪の詳細な説明として次のようなことを語っています。
 「信川地区米軍司令官であったハリソンは、共産主義者の種を絶やさねばならないと、火薬庫に一緒に収容されていた母子を引き離し、殺せと命じた」 
 「母の懐から子どもを引き離した米軍は、母子を別々の部屋に入れ、ガソリンをかけて焼き殺した」
 「橋の上で逃げ惑う人々に一斉射撃を加え、川に落として2000人を虐殺、貯水池でも1000人の女性たちを水攻めにして殺りく。さらに冷凍倉庫に1200人の愛国者を閉じ込め、軍犬を放ってかみ殺させた」
 「小学校の校長の頭を切断し、信川たばこ工場の女性党委員長の両目と乳房をえぐりとった。また、妊婦の腹を切り裂き、9ヵ月目に入った胎児を取り出して銃剣で突き刺した」
 (これらの米軍の残忍な蛮行を示す6465点の遺物、証拠資料、450余件の写真資料が、博物館に展示されていた。)


 2000年夏にここを訪れた日本人旅行者のブログ記事に、この博物館に展示されている「米兵による蛮行」を描いた絵が10枚、その他蛮行の証拠写真等が載せられています。(米兵の顔が悪辣このうえない表情に描かれています。)
 最近読んだ柳美里「ピョンヤンの夏休み」に、この博物館を訪れたことが書かれていました。彼女の受けとめ方は、いたって「すなお」です。
 この本を読んだ人のブログ記事にも「信川大虐殺の博物館の記述に、米国に対する怒りで気持ちが暗く沈んでしまった」という「すなお」なもの(→コチラ)もあれば、「案内員に言われたことをそのまま信じているだけである。「朝鮮戦争時に、アメリカ兵が子供の腕をノコギリで切り落とした」とか、まともに信じているらしい」という「すなおじゃないもの」(→コチラ)もあります。

 この博物館を訪れた別の旅行者のブログ記事には
次のような記述が・・・。
 「米兵が、ノコギリで頭を切ったとか、ハンマーで頭に釘を打ち付けたとか、複数の牛をそれぞれ違う方向に走らせて労働者を八つ裂きにしたとか、まるで、紀元前の中国における刑罰のような展示ばかりでした。」

 ・・・さて、上記のような米軍による虐殺説が韓国(の為政者)にもふつうに受け入れられてきたがゆえに、親米軍事政権下においてはこの事件のことは(済州島4.3事件同様)タブーとされてきたのです。そしてピカソの「朝鮮の虐殺」も・・・。[A]の記事中の徐勝氏の文によると「1960年代の半ば、この絵が収録されている平凡社版の世界美術全集だったかが、輸入禁止になっていたことを思いだす。当時は、この図版を所持するだけで反共法違反で処罰されたものだ」とあります。

 それが上述のAP通信の報道や、盧武鉉政権による過去事清算事業が進められる中で、老斤里事件の他、保導連盟事件居昌事件等、朝鮮戦争の韓国軍や米軍による民間人虐殺事件もようやく明らかにされてきました。
 そんな中で、「朝鮮の虐殺」も2004年6~9月果川(クァチョン)の韓国国立現代美術館で公開されるに至ります。「この報せに接して隔世の感を禁じえない」というのが徐勝氏の感想でした。

①’米軍が加害者である。[国際民主法律家協会の主張]
 前掲の[B]によると、北朝鮮だけでなく、国際司法団体である国際民主法律家協会も、1952年3月の報告書で加害者が米軍であると結論づけています。1952年に平安道、黄海道、江原道等、多くの地域を訪問・調査をして作成した 報告書で、その中で信川の事例を記しています。
 「1950年12月7日、米軍が撤退する直前、ハリソン(信川米占領軍司令官)は、・・・すべての「アカ」の支持者たちを殲滅することを指示した。・・・彼の命令はそのまま実行された。信川郡ウォンアム里の倉庫2ヵ所で900人の男女が虐殺された。建物の中には子どもも200人いた。米軍は彼らの服にガソリンを撒いて火をつけた。そして窓の中に手榴弾を投げつけた。・・・」

 ところが近年、「直接の加害者は米軍ではない」という見方が韓国で出てきています。

 続きは次の記事で・・・。(たぶん)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

集英社の全集「戦争×文学」 第1巻「朝鮮戦争」の口絵 ①大同江鉄橋の写真等

2012-06-13 23:51:31 | 韓国・朝鮮に関係のある本
 集英社の全集「戦争×文学」については、本ブログで今までに何度かふれてきました。
 今月(2012年6月)の第13冊目の配本は、第1巻「朝鮮戦争」。今までは、各巻に朝鮮・韓国関係の作品が収録されていたら、それにかぎり紹介してきました。
 ところが今回は丸ごと朝鮮・韓国関係なので、全部読破しなくては、ということでタイヘンです。既読作品は冒頭の金石範「鴉の死」松本清張「黒地の絵」だけ。他は未読どころか、初めて知った作品ばかりだし・・・。

 ところでこの全集、購読し始めてから気がついたのですが、各巻に口絵として関連の絵画や写真が掲載されていて、これがとても貴重なものなのです。この部分だけを画集としてまとめ、解説をつけて刊行すると大変意義のあるものとなるのではないでしょうか。
 とくに戦争画。20年ほど前までは「軍国主義の宣伝画」は一般人が見ることさえ困難な状況だったのですが・・・。
 私ヌルボ、以前NHKの戦争画についての番組で藤田嗣治の「サイパン島同胞臣節を全うす」を見て驚いたのが戦争画に関心をもつようになったきっかけ。その後、古書で購入した「太平洋戦争名画集」(ノーベル書房)で、主だった作品は知ることができましたが・・・。(司修「戦争と美術」(岩波新書)が出たのが1992年か。ということは20年以上も前のこと!?)
※「サイパン島~」をご存知ない方は、→コチラのブログ記事で「アッツ島玉砕」とともにご覧ください。もちろん画像検索でもいいですけど。しかし、こんな絵が戦意高揚につながるとは到底思えないですね。

 「戦争×文学」の既刊の巻の口絵からいくつかあげてみると・・・
○第8巻「アジア太平洋戦争」 
 ・宮本三郎「飢渇」(1943)・・・「山下・パーシバル両司令官会見図」(1942)で有名な画家が、悲惨な状況を描いているんですね。→コチラ参照。
 ・鶴田吾郎「神兵パレンバンに降下す(1942)・・・上記「太平洋戦争名画集」所収。
 ・大貝彌太郎「飛行兵立像」(1944)・・・無言館にある。傷みが激しいが、それにより訴えるものがある。→コチラ参照。
○第15巻「戦時下の青春」
 ・手塚治虫「新・聊斎志異 女郎蜘蛛」・・・幅広く資料を集めてます。「「戦争漫画」傑作選」(祥伝社新書)だか「手塚治虫の描いた戦争」(朝日文庫)に載ってるのかな?(どちらも未読)
 ・松本竣介「立てる像」・・・これは私ヌルボ、現物を見ました。神奈川県立近代美術館(鎌倉)所蔵。地元ってことで・・・。→コチラ参照。
○第13巻「死者たちの語り」
 ・小早川秋聲「国之楯」(1944)・・・これも印象に残る絵ですね。(→コチラの記事参照。) 天覧を拒絶されたというエピソードがあるそうです。いつだったか、「芸術新潮」にも大きく乗っていました。ちょうど今、所蔵館の鳥取県・日南町美術館で「小早川秋聲展」(5月12日(土)~7月15日(土)。詳細は→コチラ。近ければ行くのになー、うーむ・・・。
 ※<日南町美術館の日々>というブログの記事を読むと、小早川秋聲の作品発掘にはいろんなドラマがあったそうです。
○第19巻「ヒロシマ・ナガサキ」
 ・アンディ・ウォーホル「原子爆弾」
 ・イヴ・クライン「ヒロシマ(人体測定79)」・・・丸木位里・俊の絵の他に、こうした作品も入れています。
 その他、第20巻「オキナワ 終わらぬ戦争」で今世紀の作品を3点載せているのは、やはり題意に即した選定ということでしょう。

※戦争画について詳述した論考は→コチラ

 だんだんと本論に近づいていきます。ここで第1巻「朝鮮戦争」の口絵を見てみると、以前から知っていたのが1枚の写真1枚の絵

 前者は、朝鮮戦争を撮った作品で1951年ピューリッツアー賞を受賞したAP通信社のカメラマン・マックス・デスフォー(1913~)平壌 大同江鉄橋」(1950)です。(下の画像)

        
  【1950年12月4日撮影。10月25日中国人民義勇軍が参戦。勢力を挽回した中朝連合軍が平壌に迫った時に、橋の骨組みを伝って南に逃げる人々。】

 私ヌルボ、この写真は、2010年4月24日の記事でも書きましたが、横浜の日本新聞博物館でやっていた「「朝鮮戦争から60年 戦場の記録」という写真展で見ました。その記事で「北朝鮮深く進攻した米軍が、中国人民義勇軍の参戦により後退する際、大同江の橋を破壊しましたが、その橋の骨組みにしがみついて、まさにアリの群れのように逃れようとする平壌市民。その写真は1951年のピュリツァー賞を受賞したそうです」とコメントした写真がそれです。

 ※やはり同じ写真展を見た在日の方が、ご自身のホームページ「鳳@bongのpage」で関連記事と写真を載せていらっしゃいます。子ども時代に韓国・全羅北道裡里(今は益山)でなんと(!)米軍機による爆撃を受けて気を失ったとか・・・。

    

 上の写真は、2010年6~8月、ソウル市の芸術の殿堂で開催されたピューリッツァー賞写真展に招待されたデスフォー氏(96歳!)。
 「撮影した時、見ると誰も橋から落ちていない。そこに人々の強靭な意志を感じた」と語ったとのことです。(参照記事→コチラ。)

 さて、この「朝鮮戦争」の口絵7枚中の最後がこの「平壌 大同江鉄橋」なのですが、最初の口絵1というのが公州大学校教授のキム・ジョンホンという人の「雑草と6.25の記憶(잡초와 6.25의 기억)」(2003)という作品です。これは上記の「平壌 大同江鉄橋」の写真を元に、6枚のパネルと2枚の絵を組み合わせたもので、→コチラのサイトで見ることができます。写真の上に描かれた緑の若葉に希望を托しているのか・・・。
 この本の巻末の解説(木下長宏)を読むと、口絵の最初と最後のページに同じ場面を素材とした写真と芸術作品を配置したことで、朝鮮戦争がいまもまだ「休戦中」であることを示しているようです。

 これらの他にも、イ・スオク(李壽億.이수억)の「廃墟のソウル」(1953)(→コチラ)等の韓国画家の作品もあり、いろいろ新たな知識を得ることができました。

 しかし、全巻の口絵の選定を木下長宏先生が担当しているのかどうかはわかりませんが、たいしたものだなあと思います。新しい巻が出るごとに、口絵を見るのも楽しみになってきました。

 さて実は、この本の口絵中「以前から知っていた」もう1枚の絵について書くのがこの記事の目的でした。
 ところが例によって前書きがどんどん長くなってしまったので、結局その「本論」は次の記事にします。
 予告編として、その絵のタイトルだけ紹介しておきます。下の絵ですが、どれくらい知られいるのでしょうか?

    

 あのピカソが書いた朝鮮の虐殺です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[6月8日(金)~10日(日)]

2012-06-12 20:56:28 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 一昨日(10日)に観た「僕のヤクザみたいな恋人」は思っていた以上に良い、というより好い映画でした。笑いもあって、社会批判もあって、最後にたいていの観客を感動させて・・・。チョン・ユミ、やっぱりフンイキがいい。そして「私の愛、私の花嫁」の試写会の時に韓国語初級の私ヌルボがカタコトで話をした俳優がパク・チュンフン。もう20年くら経つのか・・・。そんないい年のオジサンと若い女性という取り合わせの映画、けっこうあるなー。本ブログ記事で、今まで何度もオクタクパン(屋塔房)=屋上に建てた低家賃家屋について書きましたが、これはやはり低家賃の半地下室の隣り同士の男女の話でしたね。ついでに韓国語の勉強。パク・チュンフン演じる三流ヤクザが「顔が立たない」とか言う場面で顔のことを「カオ(가오)」と言ってました。「オヤブン」「コブン」等、ヤクザ関係の日本語は韓国のヤクザ社会を中心にわりと残っているようです。「顔が立つ」は「가오가 살다」となるようです。가오가 안 살았겠나(顔が立たないじゃないか)。あ、「ヤクザ(야쿠자.ヤクジャ)」もそのまま通じるでしょう。今は「組暴(조폭.チョポク)」がふつうですが・・・。
 <真!韓国映画祭>では「2階の悪党」も鑑賞。コメディで、客席から何度も笑い声が上がってましたが、ヌルボとしては今ひとつ・・・。同じ部屋で、見つからないようにソーッと移動したりしている人物を観て、客がドキドキしたり笑ったりというのは、なんといってもマルクス兄弟の映画があるからなー・・・。(ドリフターズも?)
 韓国・朝鮮関係では、浅川巧を描いた「道~白磁の人」。昨夜21:30~の回はヌルボを含め観客4人、うーむ。以前原作を文庫本で読んだ時とどうも印象が違うような・・・。もっと穏やかな感じを受けたんですけどね。作り手としてむずかしいのは、今のふつうの日本人がイメージする戦前の朝鮮と、韓国人とのそれの違いでしょう。たぶんどんな作り方をしても、双方から別々の批判が出てくると思います。この作品は、それを承知の上で綱渡り的な脚本にしているとは思いますが・・・。具体的にいえば、三一独立運動以降、あんな目に見える形での抗日組織や独立運動はなかったでしょう。また「親日派」という言葉も戦後一般化したのでは? (植民地統治を肯定して指摘しているのではないですよ、蛇足ながら。) あと、戦前の知識人を演じるには、今の若い俳優は概して軽すぎ。例の塩川瞬の柳宗悦なんてねー、トーンを低くして声を出してもかえって不自然。最後に、浅川巧の墓が映されますが、ソウルの忘憂里(망우리.マンウリ)共同墓地というテロップは入れてほしかったです。彼の他、詩人・韓龍雲等々の墓があるところで、私ヌルボも行って・・・みようと思って、行かずじまいになっている所です。

         ★★★ Daumの人気順位(6月12日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①アンニョン、ハセヨ!(韓国)  9.7(41)
②語る建築家(韓国)  9.6(40)
③おばあさんは1年生(韓国)   9.6(39)
④タイタニック 3D 9.6(2456)
⑤ヤコブへの手紙  9.6(20)
⑥オモニ(韓国)  9.3(20)
⑦トゥレソリ(韓国)  9.0(130)
⑧マダガスカル 3  8.9(64)
⑨ミックマック  8.9(48)
⑩ブルーバレンタイン  8.5(45)

 少し入れ替わりがありましたが、初登場の作品はありません。
⑥「オモニ」は4月10日の記事の<多様性映画>で紹介しました。1970年11月13日、22歳の青年全泰壱(チョン・テイル)が労働者の悲惨な状況を訴えてソウルの平和市場前焼身自殺した事件は大きな衝撃を及ぼし、1995年には映画化もされました。彼の母・李小仙(イ・ソソン)さんは、男全泰壱の焼身自殺後、彼女自身も逮捕・投獄される目に遭いながら息子の意思を引き継いで労働運動に関わるようになったそうです。その彼女の最後の2年間を撮ったドキュメンタリーです。

【専門家による順位】

①タイタニック 3D  10.0(2)
②第七の封印  9.0(2)
③メランコリア  8.3(6)
④The Future  8.0(1)
⑤アベンジャーズ  7.7(7)
⑥よその国で(韓国)7.6(6)
⑦異邦人たち(韓国)  7.5(2)
⑦レッドマリア(韓国)  7.5(2)
⑨アルマジロ  7.3(3)
⑩建築学概論(韓国)  7.1(6)
⑩ウンギョ(韓国)  7.1(6)

 順位も評点も、先週とまったく同じです。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[6月8日(金)~10日(日)] ★★★

         <19禁>時代劇「後宮」が初登場1位、「私の妻のすべて」は300万人を超える

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(15)・・後宮:帝王の妾(韓国) ・・・・・・・・6/06 ・・・・・・・・・・・・・・522,384・・・・・・・・・・・987,616 ・・・・・・・・・7,417・・・・・・・623
2(8)・・マダガスカル3・・・・・・・・・・・・・・・・6/06 ・・・・・・・・・・・・・・355,039・・・・・・・・・・・636,156 ・・・・・・・・・5,110・・・・・・・561
3(2)・・私の妻のすべて(韓国)・・・・・・・・・5/17・・・・・・・・・・・・・・299,070・・・・・・・・・3,424,742 ・・・・・・・・25,684・・・・・・・393
4(新)・・プロメテウス・・・・・・・・・・・・・・・・・6/06・・・・・・・・・・・・・・273,316・・・・・・・・・・・549,632 ・・・・・・・・・4,951・・・・・・・515
5(1)・・メン・イン・ブラック3 ・・・・・・・・・・・・5/24・・・・・・・・・・・・・・255,367・・・・・・・・・3,016,990 ・・・・・・・・24,627・・・・・・・396
6(3)・・チャ刑事(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・5/30 ・・・・・・・・・・・・・195,111・・・・・・・・・・・861,325 ・・・・・・・・・6,285・・・・・・・353
7(4)・・未確認同映像 ・・・・・・・・・・・・・・・・5/30 ・・・・・・・・・・・・・176,022・・・・・・・・・・・745,045 ・・・・・・・・・5,078・・・・・・・343
      絶対クリック禁止(韓国)
8(5)・・スノーホワイト・・・・・・・・・・・・・・・・・5/30・・・・・・・・・・・・・・・57,187・・・・・・・・・・・605,698 ・・・・・・・・・4,424・・・・・・・235
9(6)・・アベンジャーズ ・・・・・・・・・・・・・・・4/26 ・・・・・・・・・・・・・・・16,211・・・・・・・・・7,040,226 ・・・・・・・・59,297・・・・・・・・71
10(7)・・金の味(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・5/17・・・・・・・・・・・・・・・・・5,521・・・・・・・・・1,156,896・・・・・・・・・・8,714・・・・・・・・91
       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は1・4位の2作品のみ。3位「私の妻のすべて」は300万人を超えて、400万人にとどくかどうか・・・。
 1位「後宮:帝王の妾」は<19禁>映画としては歴代最高の出足なんだそうです。「妾」は「めかけ」ではなくて「ショウ」と読んで下さい。「わらわ」という読み方もありますけどね。日本でもし上映されたら「愛妾」とするところでしょう。さて中身はというと、愛のために後宮に入った女性(チョ・ヨジョン)、彼女を愛する王(キム・ドンウク)、そして彼女を愛したたがために内官になった男(キム・ミンジュン)という悲劇的な運命で結ばれた3人の男女と、欲望が渦巻く宮中の秘話を描くエロティック時代劇、とのこと。史実から離れ、徹底的に想像で書かれたフィクション時代劇で、「どっしりとしたドラマの時代劇としてのジャンル的特性を極大化して芸術性が引き立って見えるエロティシズムを完成し、宮廷恋愛の新たな地平を開く」と制作ノートにありましたが、どうでせうか? 韓国題は「후궁:제왕의 첩」です。
 4位「プロメテウス」は、リドリー・スコット監督によるSF大作。地球の古代遺跡から発見された“人類の起源”を解き明かすヒントを基に、人類の起源に迫る・・・。詳しくは、予告編(→コチラ)、と思って観たけど、よくわかりません。韓国題は「프로메테우스」。日本公開予定日は8月24日。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・よその国で(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・5/31 ・・・・・・・・・・・・・・・3,764 ・・・・・・・・・・・・・18,298 ・・・・・・・141・・・・・・・・・・26
2(2)・・The Future・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/17 ・・・・・・・・・・・・・・・・・481 ・・・・・・・・・・・・・・8,581・・・・・・・・・69・・・・・・・・・・・4
3(新)・・スーパースター(韓国)・・・・・・・・・・6/07 ・・・・・・・・・・・・・・・・・456 ・・・・・・・・・・・・・・・・672・・・・・・・・・・5・・・・・・・・・・18
4(4)・・A Dangerous Method ・・・・・・・・・・5/10・・・・・・・・・・・・・・・・・・414 ・・・・・・・・・・・・・26,500・・・・・・・・201・・・・・・・・・・・3
5(5)・・カラフル(日本) ・・・・・・・・・・・・・・・・・5/10・・・・・・・・・・・・・・・・・・218 ・・・・・・・・・・・・・・4,538・・・・・・・・・30・・・・・・・・・・・5

 初登場は3位の韓国映画「スーパースター」だけ。
 これといった仕事もなく(これまた!)オクタプパン生活をしながらも映画監督デビューをめざしている無職(ペクス.白手)の青年(ソン・サムドン)。過去2作がキャスティングと投資の段階で失敗に終わり、今まさに3番目のシナリオを脱稿した後、投資の決定待ちという段階。そこに助監督時代に知り合ったヤクザ専門の端役(キム•ジョンテ)が訪ねてきて、釜山国際映画祭に行こうと誘い、2人は黒いセダンに乗って釜山に向かう。ところが、せっかくの旅行の爽快さも束の間、状況はこじれていって、笑ってはいられないハプニングが2泊3日の間続く・・・という、なんだかおもしろそうな、いやいや、ネチズンの評を見ても「泣いて笑って、また泣いて・・・」等々の高評価が目につくロードムービー。「映画界の現実がよくわかる」ともあります。これは観てみたいなー。原題は「슈퍼스타」。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

T-araの1stアルバムの宣伝トラックを見たよ。 (at新宿)

2012-06-11 23:39:01 | 韓国の音楽
 昨日新宿を歩いていて宣伝トラック(アド・トラック)を見かけました。薄暗くなり始めていた時間なので、ずいぶん目立つんですよ。

    

 それがT-araの日本初アルバムの宣伝。発売初日(6月6日)のオリコンデイリー2位だったそうで・・・。

 帰ってから、ちょっと検索してみると、<ad-car’s~ラッピングデス>というブログで先週同じデザインのT-araの宣伝トラックが大阪・梅田を走っていたことを確認。よく見ると、同じ車ではないんですけどね。ま、当然か。
 しかし、デザイン費・ドライバー人件費・燃料費・道路使用許可申請費等々全部ひっくるめて、4t車1台1週間(1日7時間)だと百数十万円はかかるそうだから、それで売上upの見込みが立つということでしょうね。これも、ま、当然か。
 ※この記事はタダで宣伝してるみたいですね。

 YouTubeに、1年前の少女時代の宣伝トラックが走ってる動画があったので、載せておきます。
 これは4t車2台で、2台目の方はバスの窓かと思ったら、たくさんのディスプレイで映像を流してるんですね。
 こういう車のアイディアをよく考案したものです。どこの誰かは知らないけれど。

    

 この宣伝トラック、近頃は(横浜・東京では)しばしばというほどではないにしても、ときたま見るようになりました。ウィキの「広告宣伝車」の項目によると、それに伴って問題点も指摘されるようになり、法的な規制も加えられるようになっているとか。

 日本でこのテの宣伝トラックが登場したのはいつからなのか、少しネット検索しましたがわかりません。2006~07年頃?
 で、私ヌルボが最初に見たのは、思い起こせば何年か前のソウルでした。2tの宣伝トラックがソウル駅前に停まっていて、側面に何の映像だか、ちゃんと動いていました。これはめずらしい、と思って写真を撮ったのですが、今画像データはみつからず。したがって何年かも不明。
 韓国語では「선전트럭(宣伝トラック)」とか「홍보트럭(弘報トラック)」というようです。しかしこれで検索してもわからないままです。うーむ・・・。

 T-araのことがメインの記事かと思ってここまで読んで下さったファンの皆さんゴメンナサイね。
 ことのついでに過去記事の「辛ラーメンのレシピの考察(?)と、T-araのメンバーのこと等々」も読んでいって下さいませ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国アニメ「Green Days 大切な日の夢」の時代と、挿入歌、エンディングの手話の意味等

2012-06-08 23:58:14 | 韓国映画(&その他の映画)
 韓国アニメGreen Days 大切な日の夢について、ちょっと詳しい時代考証のような記事をまとめようと思いつつ、そのままになっていました。
 1つ前の記事のコメントでりゅうこさんからこの映画に出てくる歌のことについてご質問があったので、とりあえずその部分についての回答と、この映画の時代(何年のことか?)についてとりあえず書いておきます。

 まず、最初の方でソウルからの転校生スミンが、クラスの生徒からせかされて歌った歌は、キム・マンス(김만수.1954~)の「푸른시절(プルン シジョル.青い時節)」です。

 韓国映画情報でお世話になっている<kazumiのミーハーワールド!>に、アン・ジェフン監督の舞台挨拶とQ&Aの記事が載っていますが、それによると、監督は、
 英語で言うと「Green Days」と言う唄なんですが、そこに出てくる歌詞は、本当に今この時代の青少年の皆さんに聞かせたい。そう言った胸がわくわくするような歌詞でしたので、どうしても映画の中に入れたいと思っていました。
 ・・・と語っています。つまり、映画のタイトルもここからとっているのですね。

 YouTubeに往時の音源がありました。



 そして、監督の言うところの「胸がわくわくするような歌詞」は以下の通りです。※参照サイト→コチラ

    푸른시절  青い時節=緑の日々

 하늘과 땅사이에 꽃비가 내리더니  空と土の間に花の雨が降ってた時
 오늘은 공원에서 소녀를 만났다네  今日は公園で少女と出会ったな

 수줍어 말못하고 얼굴만 숙이는데  はにかんで話もできず顔を伏せているけれど
 앞서간 발자국이 두 눈에 가득차네  先に行った足跡がふたつの目にあふれているね
 찡하는 마음이야 뭐라고 말못해도  じいんとする心を 言葉にはできなくても
 찡하는 마음이야 괜시리 설레는것  じいんとする心は わけもなくときめくもの

 어젯밤 꿈속에서 무지개가 피더니만  昨晩夢の中で 虹がかかったけれど
 오늘은 공원에서 소년을 만났다네  今日は公園で少年に出会ったな
 수줍어 말못하고 얼굴만 붉히는데  はにかんで話もできず 顔を赤くしていて
 햇살이 눈을 들어 두눈에 반짝이네  日光が目に入ってふたつの目に輝いてるね
 찡하는 마음이야 뭐라고 말못해도  じいんとする心を 言葉にはできなくても
 찡하는 마음이야 괜시리 설레는것  じいんとする心が わけもなくときめくもの


 なお、クラスの生徒たちが歌を催促して歌ったのは、「노래를 못하면 시집을 못가요(歌が歌えないとお嫁に行けないよ)」という歌。
 この歌については、→コチラのブログ記事(日本語)をご参照下さい。
 元々は男性向けの「結婚できないよ」という歌、ということを韓国サイトで見ましたが、それ以上のことはわからず、動画も見つからないままです。

 りゅうこさんのもうひとつの質問。「古い歌謡曲風の唄」というのは、羅勲児(ナフナ)の「カルムリ(갈무리.しめくくり)」のことだと思います。
 そういえば、レコード店でスミンはモーツァルトのLPを買っていたのに、イランが買ったのは羅勲児だったですね。
 親しみやすいメロディで、カラオケで愛唱されている日本のファンも相当数いらっしゃるようです。


 韓国語の歌詞は→コチラ

 歌については、とりあえず以上です。

 さて、先の<kazumiのミーハーワールド!>の記事によると、監督は
 「韓国の大人と若者にとって、記憶の痕跡として消えないで残っている空間。その時代が1979~1982年代だったのでその当時を時代背景にしました。」
 ・・・と語っていますが、このくだりを読んで「あれ~?」と首を傾げてしまいました。
 私ヌルボ、先の5月29日の記事1977年とほとんど断言してしまいましたから・・・。
 で、あらためてその論拠を提示します。(・・・とムキになることでもないですけど・・・。)

①チラッと出てきたボイジャー1号打ち上げのニュースが1977年9月のことだから。
②リンダ・カーター主演の人気TVドラマ「ワンダーウーマン」が、今はないTBCというTV局で放映されたのが1976年から。
③プロレスで<伝説のパッチギ王>として大木金太郎ことキム・イルの人気がすごかったのはこの時期だったのでは? 彼は1980年に現役を引退しています。
2010年「文化日報」の記事
④前述の「青い時節」の歌をキム・マンスが発表したのが(たぶん)1977年。
⑤部屋の壁に「セマウル暦(새마을 달력)」が貼ってあった。(あまり関係ない?)
⑥路辺に「星たちの故郷(별들의 고향)」のポスターが貼ってあった。1974年李長鎬(イ・ジャンホ)監督のデビュー作品なので、まだ上映していたのかな? 46万人の観客を動員したヒット作なので、往年の映画ファンはこのポスターからも懐かしさを覚えたことでしょう。(スミンが剥がしちゃったのは何のポスターだったのかな?)
⑦「ラブストーリー(러브스토리.Love Story)」は韓国では1971年公開。77年だと高校生の主人公(イラン)の心に深く残っている、でしょう。

 ・・・と、理由をあげればこんなところです。

 この映画では、当時の高校のようすについてもいろいろ興味深いことが描かれています。男女共学なのに男女別のクラスであるとか、軍事教練の授業で女生徒たちは救護訓練をやっていたとか、回虫検査のこととかネイティブの韓国人女性の話では、80年代後期頃まで(?)男女別クラスだったとの話を聞きましたが・・・。
 学校以外のネタも細々あげれば、まだいろいろあります。調べていくとキリがないですね。
 軍事教練等は別として、日本でも年配者にとっては懐かしさを感じる映画です。 ただ、韓国では77年で15歳だと今は50歳前後ですが、日本でこの映画に懐かしさを感じるのは60歳以上ではないでしょうか?

[6月9日の追記]
 おっと! りゅうこさんのもう1つのご質問をうっかりしてました。最後の手話の意味についてですが、動画がすぐみつかりましたので、翻訳をつけて紹介します。内容を見ると監督自身がupしたのかな? (訳語がこなれていない部分もありますがご容赦。) ドサクサまぎれに、本記事のタイトルも手直ししておきました。



  “おじさんが手話で伝える話”  
      
 「あまり未来だけのために今の君を催促するな。
 いつか笑って運よくこんなことに
 出会ったなという時が来るだろう。

 泣きそうなおまえを覚えておけ。
 あとでおとなになって何かを選択しなければならない瞬間
 未来に対して一人で悩んでいた幼かったおまえが
 大切な話をしてくれるだろう。
 今のつらさがおとなになってくたびれた
 おまえの夢を引き起こして立てるだろう。
 たくさん笑って
 おまえの大切な夢が笑って
 おまえを応援するのがいいんじゃないか。」


  (以下、白い字の部分)
 おじさんの手話の話を字幕にしないのは
 私が疲れている時に聴覚障碍を持ったスタッフが
 私にかけてくれた慰めの感じを、観客たちもその身振り自体で
 感じて下さったらと願ったからです。
 各々が今日あることでつらく悩んでいても
 おじさんが伝える応援で
 明日はより大切に夢が見られるように・・・   
   <フィルムの中を見ている中で>


  (背景の机の画面) 
 眼鏡の左、女の子の絵と「大切な日の夢」の文字。
  (下の黒い字の部分は・・・)
 観客との対話で交わした話と  
 絵を描き机の上で交わした悩みです。
 (右下隅)文字で出会う大切な日の夢
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ピングレのバナナミルク(パナナウユ)、ローソン等で発売

2012-06-07 23:50:43 | 韓国料理・食べ物飲み物関係
 過去記事で1度書いたことがありますが、ピングレのバナナ牛乳は私ヌルボが1992年夏、初の韓国旅行の際タプコル公園で飲んだ思い出の飲み物です。

 それから20年経って、日本でも今月から発売されました。
 韓国の飲食関係については、韓食専門家の八田靖史さんはさすがに情報が早くて、ブログ「韓食日記」の5月30日6月1日の記事で詳しく記しています。
 発売日等について、個々にきっちり問い合わせているところはやっぱりプロですね。
 それによると、6/1よりドラッグストアウエルシア、6/2よりイトーヨーカドー、6/4より東急ストア、6/5よりローソンで発売開始とのこと。
 
 で、昨日近所のローソンに行ってみたら、たしかにありましたがな。
 新発売ということで、目につくように並べられていて、とくに同時発売のイチゴミルクと比べるとバナナミルクの方がずっと売れ行き好調なようでした。さっそくヌルボもコチラだけ購入。

          
       【ウエルシアでは128円だそうですが・・・。パックにオリジナルの写真が入ってます。】

 日本でも、バナナミルクはこれまでないこともないですが(明治のアンパンマンのバナナオ・レ等)なぜかポピュラーな飲料とはなっていなかったようです。
 本ブログでは今年になってロッテのマッコリ・チョコレートとかマッコリ・キャンディを紹介しましたが、どうも一般的な認知度はイマイチにも達していない状況です。
 それらに比べると、韓国からのニューカマーや、日本人の韓国旅行リピーターが増えた今、このピングレのバナナ牛乳に対する注目度はけっこう高いのではないでしょうか?
     
         【こちらがオリジナル。】

 ところで、ふと気づいたのは、オリジナルの容器の文字が「바나나우유(バナナ牛乳)」ではなく「바나나우유(バナナ牛乳)」となっていること。原材料名にはバナナは入ってないですからね。そこらへんは韓国の表示の方がきっちりとしているということでしょうか。

 ところで(その2)、過去記事で紹介した(韓国)毎日乳業の「白いバナナ牛乳」のその後はどうなのかな?

[追記 6月8日]
①ソウルのCOEXに、バナナ牛乳の造形物があるんですね。COEXには行ったことがりますが、気がつきませんでした。人が多かったからなー・・・。

     
       【実は韓国ウィキのピングレの項目から拝借した画像です。】

②りゅうこさんのコメントを受けまして、バナナ牛乳の発売年をちょっと調べてみたら、1974年6月とのことです。したがって、「Green Days 大切な日の夢」の時代、つまり1977年(ヌルボ説)にはもうあったんですね。まちがいなくロングセラー商品です。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする