ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国のTV番組 週間視聴率ベスト20(2011年1月24日~30日)

2011-01-31 20:03:32 | 韓国のTV番組 週間視聴率ベスト20
 いろいろ予定のネタが山積しているにもかかわらず、新企画で<韓国の地上波TV週間視聴率ベスト20>をスタートします。
 データの出所は韓国の視聴率調査機関TNmSのサイトです。
 毎週月曜日に更新されていますが、当ブログでは、2ヵ月に1回程度upしようかなと思っています。

【1月24日(月)~30日(日)】
①サッカー・アジア杯準決勝:韓国対日本(KBS2)  35.3%
 いろいろと「波紋」がありましたね。
②連続ドラマ「笑えトンヘ[웃어라동해야]」(KBS1)  33.9%
 これも入養児関係のドラマなんですねー。 ※→<入養児(입양아)>
③ハッピー・サンデー[해피선데이](KBS2)  23.4%
④週末連続ドラマ「愛を信じて[사랑을믿어요]」(KBS2)   22.6%
 韓国のドラマやエンタメ情報などを「超特急KTX並みの速さで紹介」と豪語(??)しているブログ参照。
⑤KBSニュース9(KBS1)  20.4%
⑥ギャグコンサート[개그콘서트](KBS2)  18.5%
⑦無限挑戦[무한도전](MBC)  17.0%
⑧スターキング[스타킹](SBS)  16.2%
 少女時代ティファニーが出演。キャプチャーばっちりのブログ発見!
⑨週末特別企画ドラマ「欲望の炎[욕망의불꽃](MBC)  16.2%
⑩ドラマスペシャル「サイン[싸인]」(SBS)  15.8%
 日本ロケで負傷したパク・シニャン、松葉づえで撮影再開
⑪月火ドラマ「ドリーム・ハイ[드림하이]」(KBS2)  15.3%
 「カリスマを加えたペ・ヨンジュン、捨てたパク・ジニョン」だって。
⑫世界を変えるクイズ セ・バ・クィ[세상을바꾸는퀴즈세바퀴](MBC)  14.9%
 KNTVで昨年夏からやってます。
⑬全国歌自慢[전국노래자랑](KBS1)  14.4%
 最長寿芸能番組、昨11月30周年!
⑭水木ミニシリーズ「マイ・プリンセス[마이프린세스]」(MBC)  14.3%
⑮黄金漁場[황금어장](MBC)  14.1%
⑯瞬間捕捉世の中にこんなことが[순간포착세상에이런일이](SBS)  14.0%
⑰日曜日がいい1部[일요일이좋다1부](SBS)  13.7%
⑱スターオーディション偉大な誕生[스타오디션위대한탄생](MBC)  13.4%
⑲SBS大企画「アテナ:戦争の女神[아테나:전쟁의여신]」(SBS)  13.3%
 チョン・ウソンが撮影中に負傷して、「アテナ」、25日は特別編放送
⑳サッカーアジア杯3位決定戦韓国対ウズベキスタン(MBC)  12.9%
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朴婉緒さんとか、選抜高校野球とか、金石範「死者は地上に」とか・・・

2011-01-29 23:56:02 | 在日の作家と作品
 寒いと眠たくなります。クマの気持ちがわかります。(冬眠は気持ちの問題じゃないか・・・。) アタマの働きも一段と鈍くなるようです。

 この1週間、韓国関連でいろんなネタがありました。
 李秀賢さん、例の新大久保駅での事故からもう10年も経ったのですね。
 小説家朴婉緒さんが22日に亡くなったのは意外でした。昨年もエッセイ集「行ったことない道が美しい」がベストセラー上位に入ったりして、80歳直前でも現役作家として活躍していたのに・・・。あ、昨年8月教保文庫でのサイン会&インタビューの時の動画(約6分)→コチラで視聴できます。ハングルの字幕付きなので聴き取りが苦手の人も大丈夫! 彼女のことをご存知なかった方もぜひ見てみてください。とても感じのいいおばあ様ですよ。日本語訳の動画もあります。(自動翻訳なので開城個性になってる等々かなりヘン。)
 それから、サッカーの日韓戦もありましたね。

 個人的には、一気に読了した本が「趙容弼 釜山港へ帰れ」(三修社)。1984年刊行の自伝です。これも古本の本田靖春「私のなかの朝鮮人」(1972.文春文庫)は読みかけ。
 その他、ドラマ「19歳の純情」関係で、延辺方言等についても少し調べてみました。

 ・・・が、上記のようにアタマの血のめぐりが鈍っていてブログの記事としてはどれもいっこうにまとまらず。ま、近いうちにポツポツ記事にしますけどね、たぶん。

 そして昨日。韓国・朝鮮とは全然関係ないのですが、私ヌルボが注目していたのが、選抜高校野球の選抜校発表。予想していた通り、今日私ヌルボの出身高校の徳島県立城南高校が選抜高校野球に21世紀枠で選抜されました。\(^o^)/ヤター!!
 学校は1875年創立(旧制徳島中)。野球部は1898年に県内で初めて創部で、やっと悲願の甲子園初出場です。ネット上では(OBの)仙谷由人が官房機密費でウラ工作したのでは等の冗談(?)も流布されてますが、秋の県大会で優勝してるし、まあ順当でしょう。
 同じく21世紀枠で初出場となったのが佐渡高校と秋田の大館鳳鳴高校なんですが、(ここからいつもの韓国・朝鮮モード) たまたま今読んでる本のひとつが金石範「死者は地上に」(岩波書店)。 まさにこの小説の重要モチーフが1964年1月の大館鳳鳴高校生の岩木山遭難事件なんですね。

     

 作中ではP県とかO市、蓬莱高校とか蓬莱山などと固有名詞がぼかされているものの、明らかに秋田県大館市で、その遭難事件については知らなかったのですが、たぶん事実に基づいているのだろうと思って探ってみたら、かなりよく知られた遭難事件だったようで、「空と山のあいだ」という本にもなったり、2001年にはNHKでドラマ化されたりもしています。この遭難について詳しく記されたブログもみつかりました。

 しかし「死者は地上に」では、それらには描かれていない事実(?)、「唯一人生き残った生徒が在日朝鮮人で・・・」という重たい裏話を、主人公の作家たちが現地取材するところから物語は始まります。そして戦争末期の花岡鉱山での中国人労働者の蜂起事件等がからみます。小説では「花菱鉱山」で、中国人たちが集まった場所「獅子ヶ森」も「虎ヶ森」になっています。第二部は(なんと)1980年代の民主化闘争のさなかのソウルが舞台で、第三部で現代に戻る、という構成。
 ミステリアスな要素もあって、引き込まれます。なんとなくおもしろそうな感じがしたので店頭で衝動買いした本ですが、アタリだったようです。金石範さん、「世界」にも「過去からの行進」を連載しているし、85歳になるのに、なんとも旺盛な創作意欲です。
 代表作の「火山島」、ヌルボは10数年前に読みました。貴重な読書体験でした。未読の方、すごい大部ですが、ぜひ読んでみてください。
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1月29日(土)「朝鮮の子」(1954年)上映 アムネスティ・フィルム・フェスティバルの中で

2011-01-26 23:50:16 | 韓国・北朝鮮に関係する映画
 2011年1月29日(土)・30日(日)、国際人権団体 アムネスティ主催のフィルム・フェスティバルが開かれます。
 上映8作品の中に、1954年のドキュメンタリー「朝鮮の子」(30分)があります。

 1952年、東京都教育委員会が都立朝鮮人学校の4年後廃校を通告すると、それに憤慨した在日朝鮮人たちが「民族教育を守れ」と朝鮮の子制作委員会を組織し、製作した貴重なドキュメンタリーです。「当時の都立朝鮮人学校の子どもたちの作文を基に制作されたもので、戦前の辛苦に満ちた生活を切々と語る神戸の祖母や、父親が仕事につけないため苦労する母親など、差別と抑圧とともに歩んできた民族の歴史が子どもの視点で捉えられ、語られている」とのことです。
 会場はヤクルトホール(東京都港区東新橋1-1-19 ヤクルト本社ビル)、「朝鮮の子」は29日(土) 13:30~14:00です。

 このフィルム・フェスティバルの上映作品では、「TOKYOアイヌ」も興味をひかれます。「首都圏にが暮らしているアイヌ民族は、5千人とも、1万人ともいわれる」とは、意外です。

 詳細は<アムネスティ>のサイト参照のこと。

 私ヌルボ、当日は他の予定もあるので「朝鮮の子」1本だけ観て帰るつもりです・・・が、チケットは当日券 一般3,000円を買うしかないのかなー、うーむ・・・。
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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[1月21日(金)~23日(日)]

2011-01-25 20:24:17 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 <泣ける映画>だからといって<良い映画>というわけではありませんが、「ハーモニー」横浜ブルクの18:55~の回、久々の観客1人かと思いましたよ。本編上映の直前に1人入ってきて、それでもたった2人。韓国で観客動員300万人の映画としてはさびしい入りです。「彼とわたしの漂流日記(キム氏漂流記)」なんかもすごくいい映画だったのに、神戸の元町映画館のブログにコメントしたら、Re.に「めちゃめちゃ良い映画ですよね。 なのに、お客さんがさっぱり来ませんでした。とても悔しいです」とのこと。宣伝のしかた等にも問題があるんですかねー?
 別件で、22日から「K-POP DREAM CONCERT-New Generation’10」の上映も始まりました。当然KARAも出場しているんですけどね、例の解散騒動はどうなっているのでせうか? ソフトバンクの孫正義さんが「KARA解散すべきじゃない」とつぶやいたとか。その影響力はあるかどうか??
 考えてもしょうがないことは考えないで、オジサンもドリコンを観にいくことにしますかねー・・・。

    ★★★ Daumの人気順位(1月25日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①なくな、トンズ(韓国)  9.7(640)
②サミーの冒険  9.3(352)
③劇場版ポケットモンスター  9.2(77)
   ダイヤモンド&パール 幻影の覇者 ゾロアーク(日本)
④瞳の奥の秘密  9.0(69)
⑤のだめカンタービレ 最終楽章 後編(日本)  8.8(39)
⑥メガマインド  8.8(325)
⑦グローブ(韓国)  8.8(463)
⑧ハートビーツ  8.7(36)
⑨終着駅 トルストイ最後の旅  8.6(45)
⑩ケチなロマンス(韓国)  8.6(1112)

 初登場は⑦です。説明は後述。
 ①、こういう宗教色の強い映画、日本人の目から観たらどうだろう? ・・・ということを以前記しました。最近ようやく<Mary Kay PINKISH !>というブログで、韓国で働く日本人女性の感想をみつけました。やはり韓国の人たちと受けとめ方が少し違うようです。
 
【専門家による順位】

①Io sono l'amore(I am Love)  8.5(5)
②リミット  7.7(7)
③Winter's Bone  7.7(5)
④虹(韓国)  7.0(5)
⑤クララ・シューマン 愛の協奏曲  7.0(4)
⑥カフェ・ノワール (韓国)   7.0 (2)
⑦意外~accident~  7.0(2)
⑧なくな、トンズ(韓国)  7.0(1)
⑨アウトレイジ(日本)  6.7(7)
⑩黄海(韓国)  6.7(5)

 ①と③が初登場。
 ①はイタリア映画。ミラノの大金持ち一家のロシア人夫人が息子の親友と不倫の関係になって・・・という昼ドラっぽいストーリーですが、美しい映像と音楽と美味しそうな料理等々で通俗的にはなっていないとか・・・。さるブログでは「21世紀のVisconti風な作品と言えるか」ですと。
 ③、昨年の東京国際映画祭でも上映された、いかにもミニシアター系のアメリカ映画。サンダンスの審査員賞受賞作。主人公は17歳の少女。父親は刑務所出所後行方不明で、母親は精神病。幼い弟と妹の面倒は彼女がみるしかない。これだけでもタイヘンなのに、父親を探し出さないと家を出ざるを得ないことになる。うーむ、どこまでも暗くなるなー。こういうのが専門家の好みなんだよねー。日本公開未定のようです。

   ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[1月21日(金)~23日(日)] ★★★
         韓国映画「グローブ」が初登場1位

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・封切り日・・・・・・週末観客動員数累計・・・・観客動員数・・・・上映館数

1・・グローブ(韓)・・・・・・・・・・・・・・・・1/20・・・・・・・・473,227 ・・・・・・・・・・・・・・554,055・・・・・・・664
2・・メガマインド・・・・・・・・・・・・・・・・1/13 ・・・・・・・・204,686 ・・・・・・・・・・・・・・690,495・・・・・・・392
3・・ハロー、ゴースト(韓)・・・・・・・・12/22 ・・・・・・・151,562 ・・・・・・・・・・・・2,934,471・・・・・・・337
4・・Love And Other Drugs・・・・・・1/13・・・・・・・・129,185 ・・・・・・・・・・・・・・442,508・・・・・・・318
5・・Season of the Witch・・・・・・・・1/13 ・・・・・・・103,958 ・・・・・・・・・・・・・・394,058・・・・・・・247
6・・心臓が脈打つ(韓)・・・・・・・・・・・1/05 ・・・・・・・・81,935 ・・・・・・・・・・・・・・992,154・・・・・・・301
7・・ラスト・ゴッドファーザー(韓)・・12/29 ・・・・・・・・79,343・・・・・・・・・・・・・2,517,237・・・・・・・335
8・・アフリカ魔法旅行 ・・・・・・・・・・・1/20 ・・・・・・・・32,797・・・・・・・・・・・・・・・・37,908・・・・・・・159
9・・昆虫物語みつばちハッチ ・・・・1/13 ・・・・・・・・17,908・・・・・・・・・・・・・・・・69,901・・・・・・・128
    ~勇気のメロディ~(日)
10・・泣くな、トンズ ・・・・・・・・・・・・・9/09・・・・・・・・・17,855 ・・・・・・・・・・・・・・367,659・・・・・・・・96

 1・8位が初登場。
 1位は、韓国で53番目に正式登録された高校野球チームの選手たちとコーチの感動物語。その学校というのが聴覚障害の生徒の学校。打球音が聞こえない等のハンディが当然あるわけです。コーチはプロ野球のスター投手でしたが、飲酒暴行事件を起こして懲戒処分を受け、しばらくその学校の臨時コーチを務めることになった。、ということで、演じるのがチョン・ジェヨン。最近では「彼とわたしの漂流日記」の自殺に失敗した失職青年から「黒く濁る村」の特殊メイクの老人役までホントに芸域が広いです。監督も「黒く濁る村」のカン・ウソク監督。事実に基づいた話のようで、映画と同じ校名の<충주성심학교(忠州誠心学校←漢字は推定)>のサイトに野球部や映画の情報が載っています。(字幕付きの上映館のリストとか。) 原題は「글러브(グラブ)」。英語題は「Glove」ではなく「GLove」になっています。ふむふむ、なるほどね。
 8位はスペイン製の3Dファンタジー&アドベンチャー。想像力豊かな10歳の少女ジャナはバルセロナの街でアフリカの少年ガボと出会った後、想像のおもむくままに、星野ように輝く魔法の石を求めて驚くべき旅に出る・・・。「全世界7700万人の観客を感動させた」ということですが、日本語サイトにはほとんどナシ。ヨーロッパの映画はもっと日本で上映してほしいです。原題は「Magic Journey To Afric」、韓国題も「아프리카 마법여행」とそのまんま。
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安宇植さんのこと

2011-01-24 16:14:34 | 韓国の小説・詩・エッセイ
 暮れの12月22日に安宇植さんが亡くなりました。享年78歳、です。
 私ヌルボは直接親交があったというわけではありませんが「金史良」(岩波新書)等の著作や、尹興吉・李文烈・申京淑等々の韓国人作家の翻訳が多数あって、ずっと以前から目になじんできた名前でした。
 1990年代末、月刊誌「翻訳の世界」(バベルプレス)で<韓国語翻訳コンテスト>というのをやっていて、その出題者・選考委員が安宇植先生でした。ヌルボも数回応募しましたが、その出題文に提示された李文烈の「若き日の肖像」の冒頭部分などは強く印象に残っています。(「翻訳の世界」は2000年に残念ながら廃刊してしまいましたが・・・。)
 昨年、韓国文化院主催:韓国文学読書感想文コンテストの審査委員長ということで、応募して入賞したら直接会って話できるかも、と思ったのですが、コンテストの開催を知ったのがすでに締め切り直前で、課題図書は読んだものの結局時間切れ。表彰式&講演会の日も所用で行かれませんでした。それで次回にはぜひ、と心に期していたのに・・・。
 もしかして、一昨年の申京淑の大ベストセラーの名作「オンマをお願い」も安宇植さんの訳で近いうちに出るのかなとも期待していたのですが・・・。(「離れ部屋」のように<オムマ>ですか?)

 昨日1月23日付「毎日新聞」の<悼む>欄に、川村湊さんによる追悼文が載っていました。
 安宇植さんの訳業がしばしば目にふれるようになってきたのが80年代以降で、それ以前のことはヌルボは知らなかったのですが、1970年代以前は朝鮮大学校の教員だったんですね。主に北朝鮮文学の翻訳に携わり、黄健(ファンゴン)「ケマ高原」が代表作とのことです。
 川村湊さんによると、安宇植さんが80年代以降韓国文学の翻訳に仕事の中心を移したことを彼の「転向」と見る人もいるそうです。つまり<北>から<南>、<社会主義>から<資本主義>への。「安氏は釈明も弁明もしなかったが、在日の文学世界では、やや孤立的だったことは否定できない」と川村さんは記しています。
 川村さんが、そのことと、「彼が、金史良文学の中に己を見」たことを重ね合わせて見ている点はなるほどと思いました。金史良の作品は<北>では「粛清」され、<南>でも長らく「北系作家」とされて、「彼の名を出すのさえ忌避されていた」のだそうです。
 今も<北>と<南>の間には政治的な壁だけではなく、文学の面でも過去&現代の作家や文学作品の評価や作品の公開等をめぐって高い壁があります。
 そうした対立・矛盾が続いているこの時代の中で、日本にいたからこそ成し得た彼の業績はとても大きなものがあったのではないでしょうか。

※川村さんは<北>の文学状況について次のように記しています。
 70年代以降、北では父子独裁体制の文芸政策が功を奏し、まともな文学は消滅した。安氏が、それを痛切な思いで見ていたことは疑えない。人間の営みの上に文学があり、それを大切に思えば思うほど、人々の生活の困難と文学の衰退とは、無念でないはずはない。
 ・・・川村さんも安さんも、文学に携わる人として至極真っ当で、共感を覚えます。
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孔枝泳さん、2011年の李箱文学賞受賞 & 一昨年のベストセラー「るつぼ」映画化

2011-01-22 23:55:39 | 韓国の小説・詩・エッセイ
 韓国の大型書店・教保文庫と、最大のネット書店YES24からはウルサイほど頻繁にメルマガが届くので、ヘッドラインだけ見てそのまま削除してしまうことが多いのですが、昨日の教保文庫のメルマガは、「2011年李箱文学賞作品集」発行のお知らせ。

 そういえば、もう李箱文学賞受賞作が発表されていたんだ、と気がつきました。李箱文学賞昨年3月8日の記事でふれたように、日本でいえば芥川賞に相当する純文学の権威ある賞で、昨年はパク・ミンギュ(박민규.朴玟奎)「朝の門(아침의 문)」が受賞しました。(私ヌルボ、「感想等は別の記事にします」と書いたのに<別の記事>をupしてなかったですね、ははは(汗)。)

 さて、今回は誰のどんな作品が受賞したのかなと、教保文庫のサイトでその本の表紙を見たら<공지영(孔枝泳(コン・ジヨン)'맨발로 글목을 돌다'(「はだしで文章の道を回る」)と記されているではないですか。

      

 あれ、なーんだ、彼女はまだ受賞していなかったのか、という感じですね。
 すでに人気作家としていくつもの話題作、ベストセラーをものしている作家で、日本でもカン・ドンウォン&イ・ナヨンの主演で映画化された「私たちの幸福な時間」の原作者です。
 そんな彼女が受賞するということは、芥川賞とは少し性格が違うのかな?

 今回の受賞作「맨발로 글목을 돌다」の<글목>は辞書にない語で、<글(文)>と<길목(道)>をかけた彼女自身の造語だそうです。
 <ファイナンシャル・ニュース>の記事によると、「作家の内面と慰安婦とアウシュビッツ収容所等の歴史的暴力に対する逸話が重ねあわされて、人間に対する暴力とそれによる個人の苦痛が対比される」という、彼女らしい社会的なテーマの作品のようです。

 直接教保文庫に注文するか、職安通りのコリアプラザに入荷するのを待つか、いずれにしろ読んでみようと思います。

     
        【孔枝泳さん

 孔枝泳といえば、私ヌルボが原書で読破したした数少ない小説中のひとつが彼女の一昨年のヒット作「るつぼ(도가니)」。(本ブログにupした感想は→コチラコチラ)。この小説が、最近の<Innolife>の記事によると、コン・ユとチョン・ユミの主演で映画化されるとのことです。今秋封切りなんですと。チョン・ユミ、着実に階段を上がってきてますね。

 ついでにもうひとつ。この孔枝泳さんが、ヌルボもときおり(録画で)見ているTV番組「黄金漁場」の<ヒザ打ち導師>に出るということで、すでに録画撮りを終えた、という記事が<韓国経済>のサイトにありました。放映は2月中旬だそうです。「作家としての生活、作品世界に対する話等を虚心坦懐に打ち明けた」そうで、これは覚えておいて録画DVDを買わなくっちゃ・・・。
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38度線と軍事境界線について(4) 「日本は朝鮮の分断をねらい時期を見計らって降伏した」という説も!

2011-01-20 23:56:50 | 韓国・朝鮮関係の知識教養(歴史・地理・社会等)
 前回の記事「38度線と軍事境界線について(3)誰が祖国を分けてしまったの?(続)」で、「38度線による分断は日本の責任」という考え方に対して疑問を呈しました。
 しかし、そんな罪責感を抱いている人も、たとえばブログに「日本が分断されなかったのは終戦の決断時点と米ソの戦局の展開の差による偶然であって、日本の身代わりに朝鮮が犠牲になったといえるのである」と記しているように、「終戦の決断時点と米ソの戦局の展開の差による偶然」によって日本は分断されず、朝鮮が分断された、と捉えています。

 日本がもっと早く、ソ連の参戦以前に降伏していれば朝鮮は分断されず、あるいはもっと遅く、本土決戦まで粘っていればソ連が朝鮮全土を占領したのでは、ということです。
 つまり、朝鮮にとってみれば最悪のタイミングで日本が降伏したために、分断されてしまったということ。
 このような見方は広く受け入れられているのではないでしょうか? 私ヌルボもそう思っていました。

 ところが、最近まさにオドロキの歴史解釈があることを知りました。
 それは「日本は、朝鮮が分断されるようにタイミングを見計らって降伏した」というものです。

 最初にこのような諸説があることを知ったのは2005年4月の韓国<時事ジャーナル>のサイト内の「38선은 일본이 그었다(38線は日本が引いた)」という記事。
(→日本語訳)

 記事の要点は次の通りです。

 従来はアメリカのラスク等が38度線を引いたとされていて、何の力も使うことがなかったようにみえた敗戦国日本は、当然分断の責任から免除されてきた。 
 しかし、日本の軍国主義勢力が太平洋戦争で敗北し、朝鮮半島から退くまさにその瞬間まで、<大東亜共栄>の後日を期して、朝鮮半島の分割を想定し、そのために機敏に動いたという事実を立証した歴史学の論文一方を見つけた。


 つまり「朝鮮半島の分断が日本の緻密な降伏の作戦の産物だった」というわけです。その論文の筆者は小代有希子日大教授。<ユーラシアの衰退:日本の第二次世界大戦の終戦戦略(Eurasian Eclipse:Japan 's End Game in World WarⅡ)>と題したその論文は2009年4月<米国の歴史学報>に発表されたそうです。

 ・・・この記事では、さらにその論文の内容をかなりくわしく紹介しています。それによると、日本の軍国主義者たちの内部で38線分割案を具体的な検討対象に検討し始めたのは1945年の初めで、またこのような流れに決定的な指針を提供していたキーパーソンが終戦当時、海軍省教育局長だった海軍少将高木惣吉だとしています。

 また関東軍約100万は、すでに1944年8月にソ連軍が満州を侵攻すると予想される進撃ルートを把握し、6つの防御のシナリオを用意していたにもかかわらず、自国の民間人150万人も疎開させず、この兵力をソ連の侵攻ルートに移動させなかったのは「ソ連から不審を買うことを憂慮したため」とのことです。(この辺もオドロキの歴史解釈です。)

 この面妖な(?)、驚くべき言説は、何か裏付けになるような確固たる資料があるのかと思ったら、次のような記述もあります。

 小代の論文には、日本が直接38度線を引いたという具体的な物証が提示されていない。その理由は、日本が原爆投下で降伏が秒読みに押し寄せたため、将来、米軍政治下に入る時に備えて機密文書を急いで廃棄することにより、この時期の日本側の戦略的な判断と、それに伴う具体的な行動が現われないようにしたからだ。小代の説明によると、機密文書の廃棄作業は、原爆が落とされたまさにその日に決定され、主に外務省と大本営で迅速かつ広範に行われた。特に焼却は、中国(満州国を含む)関連の外交文書、ソ連関係文書、枢軸国関係の文書の順に行われた。

 えっ、つまり証拠書類は廃棄・焼却したからない、っていうの!? うーむ・・・。

 いろいろと疑問点は多いと思うのですが、この韓国サイトは小代先生の所論をそのまま受け容れた上で、次のように記事を締めくくっています。

 国を代表する首相が周辺国の反対を押し切って靖国神社参拝を強行したり、戦争犯罪を勝手に美化し、独島領有権について、ますますへらず口の主張を高めるのは、降伏宣言の最後の瞬間まで、米国とソ連を相手に二重プレーを繰り広げ、韓半島を活用した<귀신 같은 솜씨(鬼のような手際)>との考え方の面で同じ脈絡である。

 上記の記事の元となっている小代先生の論文を探したら、ご自身のサイトがみつかりました。そして当の論文もありました。
 あいにく私ヌルボは英語を読もうとすると頭が痛くなる体質なのでこの論文は読んでいません。ただ、一昨年2月の「日本大学広報 特別版」にその概要が掲載されていました。

 私ヌルボの偽らざる感想は、「ウッソー!」という感じですねー。
 これって、答を見てからそれに合わせて式を書いたんじゃないの? ・・・と思わざるをえないのですが・・・。
 まあ、ヌルボの終戦前後の知識はたかだか映画「日本のいちばん長い日」で仕入れた程度のものですが。
 それでも、当時の日本の指導層部内でも降伏反対派もいるし、ソ連軍の動向をどこまで詳しく知りえたかということもあるし、米ソがどんな方針を打ち出してくるかも必ずしも正確には予測できないだろうし、あまりにも不確定要素が多い中で、ちょうど朝鮮が分断されるようにタイミングを見計らって降伏したというのは、ちょっと考えられないですねー。
 専門の大学の先生の所説に対して門外漢が印象だけで否定するのはよくないので、いずれ小代先生の本が日本語で出た時にあらためて考えてみることにしますが、それにしてもオドロキモモノキの学説ですねー。他の先生方の反応はどうなんでしょうね?
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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[1月14日(金)~16日(日)]

2011-01-18 20:21:23 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 今朝の「毎日新聞」に、第65回(2010年)毎日映画コンクールの受賞結果が載っていました。<作品部門>では、日本映画大賞が「悪人」で、外国映画ベストワン賞は「息もできない」でした。このコンクールをちょっと見直しました。
 なお、男優主演賞は堤真一(「孤高のメス」)、女優主演賞は寺島しのぶ(「キャタピラー」)でした。

 昨年末からの他の国内の映画賞の結果を見てみると・・・

 第23回日刊スポーツ映画大賞は、作品賞=「悪人」、主演男優賞= 妻夫木聡(「悪人」)、主演女優賞=深津絵里(「悪人」)、外国作品賞=「ハート・ロッカー」ファンの投票結果「BANDAGE バンデイジ」の圧勝で、「悪人」は8位なんですけどね。

 第34回日本アカデミー賞は2月18日に授賞式。ノミネート作品は、優秀作品賞が「悪人」「おとうと」「告白」「孤高のメス」「十三人の刺客」、優秀外国作品賞が「アバター」「インセプション」「インビクタス 負けざる者たち」「トイ・ストーリー3」「ハート・ロッカー」の各5作です。

 そして、注目の2010年第84回キネマ旬報ベスト・テンも先週発表されました。
 日本映画ベスト・テン第1位=「悪人」、外国映画ベスト・テン第1位=「息もできない」
 ヤター! バンザーイ!! やっぱり、キネ旬です。まあ予想通りではありますが・・・。ヤン・イクチュンは外国映画監督賞も受賞しています。
 なお、主演女優賞= 寺島しのぶ(「キャタピラー」)、主演男優賞=豊川悦司(「必死剣鳥刺し」「今度は愛妻家」)でした。
 日本・外国の各ベストテンは次のとおり。

【日本映画】①悪人②告白③ヘヴンズ ストーリー④十三人の刺客⑤川の底からこんにちは⑥キャタピラー⑦必死剣鳥刺し⑧ヒーローショー⑨海炭市叙景⑩ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う

【外国映画】①息もできない②インビクタス/負けざる者たち③第9地区④白いリボン⑤ハート・ロッカー⑥冷たい雨に撃て、約束の銃弾を⑦クレイジー・ハート⑧冬の小鳥⑨スプリング・フィーバー⑩インセプション

 ・・・どちらもちょうど半分ずつ観ました。やはり一番ヌルボのモノサシに近いのがこのベストテンですね。
 ただ、日本映画で「悪人」と同等か、少し上かな、と思った「告白」が他の賞でも全部「悪人」に負けちゃったのは意外でした。すると日本アカデミー賞も「悪人」になるのかなー。

    ★★★ Daumの人気順位(1月18日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①なくな、トンズ(韓国)  9.7(589)
②サミーの冒険  9.3(344)
③劇場版ポケットモンスター  9.2(67)
   ダイヤモンド&パール 幻影の覇者 ゾロアーク(日本)
④瞳の奥の秘密  9.0(60)
⑤のだめカンタービレ 最終楽章 後編(日本)  8.9(24)
⑥メガマインド  8.9(24)
⑦ケチなロマンス(韓国)  8.6(1104)
⑧終着駅 トルストイ最後の旅  8.6(39)
⑨ハートビーツ  8.5(32)
⑩キム・ジョンウク探し(韓国)  8.5(699)

 初登場は⑤と⑥です。
①は9.6からまた9.7に上昇。
⑤は韓国でもコミックに始まりCDも人気を集めました。
⑥は後述。
 
【専門家による順位】

①リミット  7.7(7)
②虹(韓国)  7.0(5)
③クララ・シューマン 愛の協奏曲  7.0(4)
④カフェ・ノワール (韓国)   7.0 (2)
④意外~accident~  7.0(2)
⑥なくな、トンズ(韓国)  7.0(1)
⑦アウトレイジ(日本)  6.7(7)
⑧黄海(韓国)  6.7(5)
⑨瞳の奥の秘密  6.7(4)
⑩ハートビーツ  6.5(2)

 先週と順位も各ポイントも、まったく同じ!

   ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[1月14日(金)~16日(日)] ★★★
         ベストテン内に200万人超え韓国映画が3作

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・封切り日・・・・・・週末観客動員数累計・・・・観客動員数・・・・上映館数

1・・メガマインド・・・・・・・・・・・・・・・・1/13 ・・・・・・・・313,252 ・・・・・・・・・・・・・・367,861・・・・・・・450
2・・ハロー、ゴースト(韓)・・・・・・・・12/22 ・・・・・・・213,702 ・・・・・・・・・・・・2,673,863・・・・・・・381
3・・ラスト・ゴッドファーザー(韓)・・12/29・・・・・・・・187,936 ・・・・・・・・・・・・2,370,369・・・・・・・391
4・・Love And Other Drugs・・・・・・1/13 ・・・・・・・181,961 ・・・・・・・・・・・・・・216,647・・・・・・・332
5・・Season of the Witch・・・・・・・・1/13 ・・・・・・・180,526 ・・・・・・・・・・・・・・212,092・・・・・・・244
6・・心臓が脈打つ(韓)・・・・・・・・・・・1/05 ・・・・・・・175,087 ・・・・・・・・・・・・・・824,472・・・・・・・395
7・・黄海(韓) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・12/22・・・・・・・・・44,937・・・・・・・・・・・・・2,100,205・・・・・・・284
8・・昆虫物語みつばちハッチ ・・・・1/13 ・・・・・・・・・33,721 ・・・・・・・・・・・・・・・38,864・・・・・・・165
    ~勇気のメロディ~(日)
9・・ハリー・ポッターと ・・・・・・・・・・12/01・・・・・・・・・24,187 ・・・・・・・・・・・・2,835,022・・・・・・・154
    死の秘宝 PART1
10・・きみがくれた未来・・・・・・・・・・1/13 ・・・・・・・・・20,979 ・・・・・・・・・・・・・・・26,122・・・・・・・214

 「ラスト・ゴッドファーザー」も200万人を越えて、「ハロー、ゴースト」、「黄海」と200万人突破韓国映画がベストテン内に3作も並んでます。
 初登場は1・4・5・8・10位、半分入れ替わりました。
 1位は3Dアニメ。正義のヒーローを倒すことが生きがいのアンチヒーロー、メガマインドが主役というコメディ。日本では今春公開予定とか。
 4位、ジェイク・ジレンホールとアン・ハサウェイ主演の○○物? なのにロマンチック・コメディだって? 韓国題は「러브 & 드럭스」。日本公開は未定。
 5位、韓国題は「시즌 오브 더 위치: 마녀 호송단」で、副題に「魔女護送団」とつけています。原題を直訳すれば「魔女の季節」。ニコラス・ケイジ主演かー。14世紀のフランスが舞台で、黒死病の原因を作った魔女という疑いをかけられた少女を悪魔払いの儀式に護送する騎士を描くアクション・スリラー映画、だそうです。ちょっとおもしろそうかも・・・。これも日本公開は未定のようです。
 8位、韓国題は「꿀벌 하치의 대모험(みつばちハッチの大冒険)」。昨夏日本公開。
 10位、昨12月に日本で公開されています原題は「Charlie St. Cloud」で、韓国題は「세인트 클라우드」。
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修能の「日本語」-正解がわからないぞ~ センター試験の「韓国語」-むずかしいぞ~

2011-01-17 23:51:13 | 韓国語あれこれ
 一昨日・昨日はセンター試験。ということで、センター試験の中の「韓国語」の試験と、それに関連して、韓国のセンター試験というべき修学能力試験の中にある「日本語」の試験について前年度に続き見てみました。

 2008年11月実施の韓国・修学能力試験の日本語の問題については、2009年11月16日「★修能の「日本語」の試験★ 出題内容と難易度」と題して記事にしました。
 また、昨年1月のセンター試験の「韓国語」の問題については、2010年1月21日に「センター試験韓国語の平均点148点。難易度はかなり高いが・・・」という記事にしました。

 今回は、両方ひとまとめにして見てみます。まあ、おおよその感想は同じようなもんなんですけどね。

 まず、2011年度の受験者数を比較してみると、
 受験者総数は、韓国の修能試験=約67万人、日本のセンター試験=約56万人。 
 科目の受験者数は、修能の「日本語」=約2万人 センター試験(2010年度)の「韓国語」=167人


 ・・・日本の人口は韓国の倍以上なのに、センター試験よりも修能試験の受験者数が多いんですね。また韓国では受験生の100人中3人が「日本語」を受けるのに対して、日本で「韓国語」を受けるのは1万人中に3人だけ。2ケタも違います。

 ※韓国では第2外国語が独・日・仏・露・西・アラビア・中・漢文の8種類設けられていますが、うち最も受験者数の多いのは意外にもアラビア語で約4.9万人とダントツ。問題が易しいから、だそうです。2位が日本語。3位は漢文で約1万5千人、4位が中国語で約1万人です。仏・西・露・独はどれも3千人前後。日本では、外国語は英語以外に独・仏・中・韓の4ヵ国語があって、中国語が最多、といっても364人。あとはどれも100人台です。

 では問題を見てみましょう。
 まず2010年11月実施の韓国・修能試験の第2外国語の中の「日本語」の試験問題。てっとりばやく見るには→コチラからダウンロードして下さい。表の最下段<제 2 외국어 / 한문(第二外国語/漢文)>中の<일본어(日本語)>欄で、左が問題、右が正答です。

 前の記事で「清音と濁音、長音と短音の違いで、どちらも韓国人が苦手な問題が出る」とか、「問題文自体が日本文化を理解させようという内容になっている」とか指摘しました。また、文化とはちょっと違いますが、学校の「地震の際の注意」から出題しているのはなるほどですね。(日本の地震に対する韓国人の恐怖感はかなり大きいようですよ。)また全体的に実用的な会話文が多いです。

 そして今回、「えっ、これは何だ! 正解がわからんぞ!!」と私ヌルボがあせりまくったのが次の中から正しい発音を選べ、という問題。

 女子学生「あのう、次の電車は(a)なんぷんですか」
 駅員「今10時ですから、(b)さんぷん(c)ろっぷん(d)じゅうよんぷんです」

 (a)~(d)中、正しい発音が2つ。(c)はいいとして、あと1つは何? ヌルボはどれも<ふ>と言ってるかも・・・。ネット検索したら、地方によりor人によりいろいろ違うようですよ。正解を見たら(d)になってましたけどねー・・・。

 ・・・というわけで、日本人なのに満点はとれなかったかも・・・。(しかし、「フンは間違いでブンが正しい!」という明確な根拠はあるのですか?)
 韓国の受験生の皆さんの平均点は、今回もおよそ50点(100点満点)といったところでしょう。

 次にセンター試験。私ヌルボはセンター試験以前の世代ですが、受験科目だった英数国日世生は現在の内容や難易度はどんなものかな、と思って、新聞に載っている問題に本気で立ち向かっています、というのはウソです。この数年挑戦しているのは韓国語だけ。韓国語学習者で、「私もやってみよう」という方は、次のリンク先参照。

 問題は →コチラ
 解答は →コチラ

 あいかわらずむずかしいです。1年前「ヌルボのレベルを正直に申しますと、韓国語能力試験の方は5級の真ん中くらい、ハングル検定試験は準2級合格で、2級はどうだか、という、つまり<上級の下>といった程度ですが、それで今回のセンター試験韓国語の得点は160点くらい。すなわち正答率8割といったところでした」と書きましたが、今回も同じようなものです。
 この1年、マジメに韓国語の勉強やってこなかったからこんなものでしょうが、マジメにやっていても1年間で180点以上のレベルまで到達するとは思えません。5年でもむずかしいかも。以前は初級の上レベルでもできそうな問題がそれなりにあったと思いますが、今回は皆無に近い印象を受けました。ハングル検定だと準2級のちょっと下程度、韓能だと4~5級くらいの問題が多いようです。

 <試験問題評価報告書>を読んでみると、やはり受験生のほとんどは在日とかニューカマーの韓国人で、高校の授業で韓国語を履修した者はほとんどいないようです。したがって難易度は高くても平均点は150点前後にはなってしまうのですね。

 嫌韓サイトなどでは、あいかわらず「在日に有利な試験は認めがたい」という論調の記事があります。たしかに英語の平均点(約120点)とのバランスを考えると不公平にも見えますが、たとえば英語圏からの帰国子女の英語の平均点は当然相当に高いだろうし、しょうがないかも・・・。
 <高等学校教科担当教員の意見・評価>の中に、この際「英語」とは同列にしないで「第2外国語」にして、「英語」+「○○語」という形で40点くらいの配点にしてはどうか、という提言がありましたが、これはいい案かもしれません。
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38度線と軍事境界線について(3) 誰が祖国を分けてしまったの?(続)

2011-01-16 23:48:25 | 韓国・朝鮮関係の知識教養(歴史・地理・社会等)
 38度線と軍事境界線について(2) 誰が祖国を分けてしまったの?の続きです。

 現在、38度線について、日本のウィキでも韓国のウィキでも、先の記事で<一応標準的と考えられる説明>として記したように、「アメリカが線引きをした」という主旨で説明されています。日本の関わりについては何ら記されていません。(もちろんウィキが常に正しいというわけではありませんが・・・。)

 ところが、先の記事で、板門店ツアーのガイドが「38度線による分断は日本の責任」と説明している、と記しました。韓国では奇異ではない解釈のようです。

 <右翼討伐委員会>というサイトの2006年7月13日の記事に、安倍晋三官房長官(当時)の「対北朝鮮先制攻撃論」に対する批判した一文がありました。
 そこで「朝鮮日報」06年7月11日の社説が引用されています。その中に、次のような部分があります。

 日本は韓半島の分断と北朝鮮という国の誕生そのものが、植民支配という日本による罪業の負の遺産であるという事実を忘れたのだろうか。日本がこの地を侵略していなければ、あるいは日本が第2次世界大戦で早期に降伏しさえしていれば、北朝鮮という国は誕生していなかっただろう。
 日本は韓半島の分断と北朝鮮という国の誕生そのものが、植民支配という日本による罪業の負の遺産であるという事実を忘れたのだろうか。日本がこの地を侵略していなければ、あるいは日本が第2次世界大戦で早期に降伏しさえしていれば、北朝鮮という国は誕生していなかっただろう。韓民族にそうした重い罪業を犯した日本だからこそ、たとえ米国が先制攻撃計画を打ち出しても、「それだけは避けなければいけない」と引き留め、代案を示すべきであり、それが人倫に沿った国のあり方ではないだろうか。


 <右翼討伐委員会>は、この社説を「朝鮮日報の良識的社説です」と評価しています。
 さらに「現在、朝鮮半島を分断する38度線は、日本軍の師団間の分担境界線であったのだ。38度線以北は関東軍、以南は朝鮮軍という風に」と、私ヌルボが先の記事で疑問を呈した所説を持ち出しています。

 ヌルボは「良識的社説」とは全然思いません。安倍晋三官房長官の「対北朝鮮先制攻撃論」には断固反対ですが、それは道義的にも政策的・戦略的にも間違っていると考えるからであって、<日本による罪業の負の遺産>とはなんら関係のないことです。

 また<右翼討伐委員会>は「日本が分断されなかったのは終戦の決断時点と米ソの戦局の展開の差による偶然であって、日本の身代わりに朝鮮が犠牲になったといえるのである」等々とも記しています。これは正しいでしょうが、そのような<偶然>の結果(朝鮮の分断)に対して、<偶然>を支配している神になりかわって日本が罪責感を持つのはトンチンカンというものです。

 終戦前後のアメリカやソ連、そして日本も、当然自国のために軍事・外交を展開していたのであって、朝鮮の独立・統一のためでないことはいうまでもありません。そのような中で、朝鮮が統一をなしえなかった責任の所在を外国に求めても「詮無いこと」でしょう。むしろ、朝鮮内部の問題(政治的対立で国論統一ができなかった等)を検証することがもっと重視されるべきだと思います。(「日本人が言うことか!?」という非難は出てきそうですが・・・。)

 今、朝鮮の分断を<偶然>の結果、と記しましたが、この件についてもまた面妖な(?)言説を最近目にしました。その件については次の記事で・・・。

 → 38度線と軍事境界線について(4) 「日本は朝鮮の分断をねらい時期を見計らって降伏した」という説も!
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38度線と軍事境界線について(2) 誰が祖国を分けてしまったの?

2011-01-15 23:27:31 | 韓国・朝鮮関係の知識教養(歴史・地理・社会等)
 12月25日の記事「38度線と軍事境界線について(1)」の最後に次のようなことを書きました。

 「38度線設定の経緯や分断の責任等についてネット上を見てみると、最近(前から?)日本でも韓国でもさまざまな言説が飛びかっています。その中には「あれれ? 違うんじゃないの?」というものも1つ2つではない・・・・」

 まず、最初に38度線が引かれた経緯について、<一応標準的と考えられる説明>を示しておきます。

 1945年8月8日にソ連は日本に宣戦布告、翌9日未明に「満州」に侵攻します。
 対する日本軍は、45年6月関東軍の隷下に入った第34軍が、7月に咸興(ハムフン.朝鮮北部の日本海に面した都市)に集結しましたが、8月13日清津に上陸したソ連軍に対し一部部隊は迎撃したものの、軍主力は交戦することなく終戦を迎えました。
 その後、23日からソ連軍の武装解除を受け、捕虜の大部分はソ連領へ連行されました。
 一方、ソ連の侵攻開始時沖縄に留まっていたアメリカ軍は、ソ連軍が全朝鮮の占領も可能な態勢にあるとみました。
 そこで8月10~11日、急遽国務省・陸軍省・海軍省合同調査委員会(SWNCC)を開き、ソ連に対し半島の分割占領案を提示することを決めました。具体的な分割方法はその場にいた陸軍参謀部のボーンスティル(後に駐韓国連軍司令官)ラスク(ケネディ&ジョンソン政権の国務長官)両大佐に託されました。その結果北緯38度線で分割案が提案されたというわけです。

 この時、できるだけ北の方で降伏を受理すべきだという政治的希望と、米軍進駐の能力の限界を調和させることが要請されました。ラスクたちは米軍占領地域内に首都を含ませることが重要であったので、38度線を提案したとのことです。わずか30分間という短時間で、手元にあった壁掛けの小さな極東地図を利用して、首都ソウルを米占領地区に含む最北の線として選ばれた38度線が、そのまま米ソ分割線になってしまったのです。
 この38度線分割案はトルーマン大統領の批准をへてソ連、中国、英国の同意の下にマッカーサーに伝達され9月2日付「連合国最高司令部一般命令第1号」となりました。北緯38度線についての最初の公式文書です。
 項目の(ロ)に「満洲、北緯三十八度以北ノ朝鮮、樺太及千島諸島ニ在ル日本国先任指揮官竝ニ一切ノ陸上、海上、航空及補助部隊ハ「ソヴィエト」極東軍最高司令官ニ降伏スベシ」とあります。

 およそ、一般的な歴史概説書では上記のような説明がなされています。
 ところが、なぜかネット上で「38度線以北は関東軍司令部の管轄、38度線以南は朝鮮軍司令部が管轄だったのが、1945年の終戦と同時にそのまま北と南に分かれてしまいました」というような記述が非常に多いのです。(たとえば→<常識ぽてち>というサイトの記事)。
 少し歴史を知っている人なら「あれれ?」と思うでしょう。日本の統治時代、朝鮮軍(在朝鮮の日本軍)は朝鮮全土を管轄しているというのが当たり前のことだったわけですから・・・。
 同様の疑問を持った方がいらっしゃいました。まず<板橋村だより>というブログによると、上記の説を「在日北朝鮮のある人から聞かされました」とあります。
 また<葵から菊へ>というブログには、共産党推薦で東京都知事に立候補したことがある政治学者畑田重夫が「38度線以南の部隊は大本営直属、以北の部隊は関東軍直属でした」と書いていたことに疑問を持ち、資料を求めたところ、畑田氏から文献資料のコピーと「朝鮮問題に関心のある者にとっては常識化していることなのです」と書かれた手紙が送られてきたとあります。
 さらに「ぢぢ登場の巻の補足資料」というサイトには、「大東亜戦争の終戦直前である1945年5月30日に日本軍は対アメリカ作戦強化のため、38度線を境にして北は関東軍、南は大本営直接指揮下の戦区と決めたが、戦後の南北分断とは無関係であった」という記載があります。
 しかし、私ヌルボ、日本の軍管区で、朝鮮半島の38度線が何らかの意味をもつものであったという根拠は今のところわからないままです。上記の言説は何を論拠にしているのでしょうか? またそれがなぜ「朝鮮問題に関心のある者にとっては常識化している」のでしょうか?

 戦争末期の朝鮮軍については、たしかに(ウィキペディアによると)1945年2月に朝鮮軍は廃止され、新しく創設された「第17方面軍」が朝鮮方面の守備にあたり、その司令官・参謀長及び参謀副長は朝鮮軍管区の司令官・参謀長及び参謀副長を兼ねた、とのことで、また8月9日、ソ連が対日参戦すると、指揮系統が天皇直隷から関東軍隷下に編入され、終戦を迎えた、とあります。
 しかし、これも38度線の線引きとは直接関係ないことでしょう。
[2021年12月5日の追記] 2019年2月神保町のチェッコリで開かれた慶大名誉教授・小此木政夫先生のトークイベントに参加した折、上述の疑問について直接お伺いしました。すると言下に「ああ、それは間違いです」とのお答えが返ってきました。

 話は少し飛びますが、最近ある板門店ツアーの記録を読んだら、「ガイドは38線(サムパルソン)、休戦ラインを日本の責任として、日韓合併、創氏改名などを例に挙げながら日本植民地歴史の遺産と語る」という記述がありました。

 はてさて面妖な・・・。日本の植民地支配と38度線による南北分断がどのように関連するというのでしょうか?
 ヌルボのようなおじさん世代には懐かしい歌「イムジン河」の2番の歌詞に「誰が祖国を分けてしまったの」という一節があります。
 はたして、祖国を分けたのは誰でしょう? 最初に掲げた<一応標準的と考えられる説明>が正しいとすると、正解は、直接的には、線引きした張本人のアメリカということになります。
 ま、日本がもっと早く、ソ連参戦以前に降伏していたら、とか、逆に本土決戦まで粘っていたら分断はなかっただろうとか、太平洋戦争最後の約1週間前にちゃっかりと参戦しておいしい所を獲っちゃったソ連が悪いんだ、とか、もちろん朝鮮の指導者と人民たちの問題とかについてもいろんな考え方があるのはたしかです。

 中には、さらに面妖な!という諸説もあるのですが、今回はここまでにします。(続く)

[面妖その1の予告編] 韓国のウィキペディアでは、「ラスクは地図を見て目についた38度線を分断線とした、と偽証した。今日ラスクが線を引いた地図が残っているが、そこには10度単位で緯線が引かれていて、38度線は表示されていない」とある。

→ 38度線と軍事境界線について(3) 誰が祖国を分けてしまったの?(続)
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伊集院静「お父やんとオジさん」で知る韓国・朝鮮[2]

2011-01-13 23:49:12 | 韓国・朝鮮に関係のある本
 → 伊集院静「お父やんとオジさん」で知る韓国・朝鮮[1]

 先の記事に記したように、「ボク」の「お父やん」宗次郎も、母要子の父金古昌浩も朝鮮半島南部の村から日本に渡ってきても自らの努力と才覚で地歩を築いていった人物でした。

 金古の日本での生き方と、終戦後の思いは、要子の視点から次のように描かれています。
「二十年、父は日本人とともに生きてきた。朝鮮から大勢の人たちを連れてきて、仕事を覚えさせ、日本の姓名を与え、日本人として生きることを自分にも課してきた。日本人労働者とは、給与、待遇の面で差はあったが、会社側と交渉し少しずつ改善もしてきたし、強制的に労働させたことは一度もなかった。・・・・父は持前の粘りと人柄の善さで理想の職場をつくったと自負があったはずだ。・・・・日本人と諍いを起こしたり、不平不満がある人たちに父はいつも言い聞かせていた。「たしかに最初は属国の民だったが、新しい法律でわしたちは新国民として迎え入れられているんだ。わしは祖国を捨てて服従しろと言ってるんじゃない。日本は東亜をおさめている国だ、ここには祖国と違って仕事がある、家族を持ってもいい、生まれた子供たちは日本の教育も受けられる。わしたちは新しい国民なんだ」

 ・・・このような<光復>以前に日本に来た朝鮮人の苦闘の物語を読むと、「強制連行」とか「親日派」をめぐる議論の底の浅さを痛感します。宗次郎が13歳という若さで日本に来たことは、たしかに「強制連行」ではありませんが、「自由意志で来た」と言う言葉では到底おさまらないものがあります。(すると、当時の朝鮮の農民が貧しかったのは日本の植民地統治のせいか昔からの朝鮮社会の問題なのか、という、さらに不毛な議論が続きそうですが・・・。)
 また、金古が朝鮮人労働者たちに「仕事を覚えさせ、日本の姓名を与え、日本人として生きることを自分にも課してきた」ということをもって、彼を「親日派」として裁断し批判できてしまう人がいるとしたら、その人の感性と歴史認識を疑わざるをえません。

 昭和20年8月15日。天皇の「玉音放送」の後。予期せぬ事態に宗次郎と要子はとまどいます。吾郎は興奮して万歳(マンセー)を叫びます。その後要子の弟吾郎は働きに出ていた軍需工場内で結成された独立解放組織の集会で委員に任命されますが、日本刀を持ったヤクザなどに襲われ、負傷したりもします。
 日本の敗戦に意気上がる塩田の朝鮮人労働者たちは労働条件の改善を求めて立ち上がります。混乱の中で倉庫内の塩を略奪した者もいて会社側は警察を入れましたが、警察は自供した五人をその場で射殺します。金古が労働者たちを煽動しているとみた会社側の男たちが家に押しかけ、乱闘になる中で、宗次郎は拳銃を撃って騒ぎを鎮めます。
 会社は、「新国民と信じていた」金古や部下たちに、終戦後も「反抗すればいつでも殺すことのできる権利を持っている」と言います。
 「敗戦で価値観がかわったのではなく、最初からそういう価値観が存在していたのだ」と悟った金古は、妻と吾郎とともに朝鮮に帰ることを決心します。

※終戦直後、各地で起こった朝鮮人の<騒擾事件>については、ネット上を探索しても、ヒットする記事はほとんど全部が最初から韓国・朝鮮に対する個人的感情(差別・偏見)が先行したものばかり。わかったことは、事実を確認すること自体が非常にむずかしいということです。

 宗次郎は、一緒に帰ろうという金古の誘いにも「あの国に私の帰る場所はありません」と断り、「祖国に帰って新しい国を作る」という吾郎とも一対一で話して、残る道を選びます。
 金古夫婦と吾郎たちは1945年10月25日、同僚、配下の者の家族60余人とともに祖国に向かいました。

 当時すでに朝鮮半島は38度線を境に米ソによって分割占領されていました。
 日本からの帰還者が続々上陸する釜山ではコレラが発生し、1946年秋までに1万人余りが死亡したといいます。朝鮮半島はそんな混乱した状況で、再び日本に戻ってくる者も増えていました。
 日本でも南北朝鮮につながる組織が結成されました。宗次郎はどちらの組織にも入らず、平等につき合いました。
 南北の組織間では「頻繁に衝突が起きていた」とこの小説の文中にありますが、それ以上に具体的なことは書かれていません。あるサイトでは、当時の山口県内の事件として次の2例があげられていました。

・1948年宇部事件・・・・会合中の朝連系約200名が手配中の朝連県本部長の逮捕に反発、奪還すべく警官隊と衝突、双方負傷者がでるが警察側の発砲により鎮圧。
・1949年下関事件・・・・下関市の民団朝鮮人家屋を朝連側朝鮮人200名が襲撃。民団員十数名に傷害を与え家屋を破壊、金品を略奪していった。

 その後、ついに1950年6月25日北朝鮮軍の南侵によって朝鮮戦争が始まります。
 この小説のクライマックスはここからですが、今回はここまで。

 → イザベラ・バード「朝鮮紀行」を読む (予告編)

 → イザベラ・バード「朝鮮紀行」を読む(3) この本は韓国で・・・
 → イザベラ・バード「朝鮮紀行」を読む(4) 断髪令が命取りとなった開化派政権
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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[1月7日(金)~9日(日)]

2011-01-11 19:30:24 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 年が明けてから急に寒くなり、マフラーで覆面しないとバイクはキツくなりました。少し遅い時間にスーパーに行くとおでん、鍋物関係は残りわずか。モランボンの<スントゥブチゲ用スープ>というのがあるんですねー、初めて知りましたわー。
<キムチチゲ用スープ>の方は見た記憶がありますが・・・。(食べたことはないですが。) さて、ここでキムチといえば?
 昨日、新宿のK's cinemaで「食客2 優しいキムチの作り方」を観てきました。首都圏ではここ1館だけ、それも10:40からの1日1回だけの上映です。
 物語には全然ふれないことにして(つまらなかったということではありません)、いろいろ韓国語&食材の勉強になりました。「엄마가 시킨거야?」が字幕で「お母さんの差し金?」と訳してるのはなるほどな~と感心しました。あと「昼耕夜勤(주경야금)」という四字熟語を初めて知ったり、「반건시(半乾柿)」「あんぽ柿」だったり・・・。あ、
「干し柿」
「곶감」です。食材関係については他にもあるので、近日中に別記事にします。

    ★★★ Daumの人気順位(1月11日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①なくな、トンズ(韓国)  9.6(529)
②サミーの冒険  9.3(331)
③劇場版ポケットモンスター  9.3(61)
   ダイヤモンド&パール 幻影の覇者 ゾロアーク(日本)
④瞳の奥の秘密  8.9(56)
⑤ハートビーツ  8.6(29)
⑥ケチなロマンス(韓国)  8.6(1098)
⑦キム・ジョンウク探し(韓国)  8.5(704)
⑧終着駅 トルストイ最後の旅  8.5(37)
⑨ノーウェアボーイ  ひとりぼっちのあいつ  8.3(37)
⑩The Next Three Days  8.2(90)

 初登場はありません。⑩は12月21日の記事で紹介しました。
 
【専門家による順位】

①リミット  7.7(7)
②虹(韓国)  7.0(5)
③クララ・シューマン 愛の協奏曲  7.0(4)
④カフェ・ノワール (韓国)   7.0 (2)
④意外~accident~  7.0(2)
⑥なくな、トンズ(韓国)  7.0(1)
⑦アウトレイジ(日本)  6.7(7)
⑧黄海(韓国)  6.7(5)
⑨瞳の奥の秘密  6.7(4)
⑩ハートビーツ  6.5(2)

 コチラも④「意外~accident~」が7.0(1)→7.0(2)と微かに変わっただけでほとんど変動なし。

   ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[1月7日(金)~9日(日)] ★★★
         「ハロー・ゴースト」と「黄海」が200万人突破

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・封切り日・・・・・・週末観客動員数累計・・・・観客動員数・・・・上映館数

1・・ラスト・ゴッドファーザー(韓)・・12/29 ・・・・・・・397,330 ・・・・・・・・・・・・1,898,874・・・・・・・519
2・・心臓が脈打つ(韓)・・・・・・・・・・・1/05 ・・・・・・・320,303 ・・・・・・・・・・・・・・454,694・・・・・・・505
3・・ハロー、ゴースト(韓)・・・・・・・・12/22 ・・・・・・・306,456 ・・・・・・・・・・・・2,262,613・・・・・・・434
4・・黄海(韓) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・12/22・・・・・・・・152,846 ・・・・・・・・・・・・2,100,205・・・・・・・415
5・・ハリー・ポッターと ・・・・・・・・・・12/01・・・・・・・・・96,564 ・・・・・・・・・・・・2,760,490・・・・・・・291
    死の秘宝 PART1
6・・サミーの冒険・・・・・・・・・・・・・・12/16・・・・・・・・・90,484 ・・・・・・・・・・・・・・901,609・・・・・・・243
7・・トロン:レガシー・・・・・・・・・・・・・12/30・・・・・・・・・54,059 ・・・・・・・・・・・・・・395,284・・・・・・・276
8・・劇場版メタルファイト ・・・・・・・・・1/05・・・・・・・・・41,549 ・・・・・・・・・・・・・・・49,544・・・・・・・150
    ベイブレードVS太陽(日)
9・・劇場版ポケットモンスター・・・・12/23・・・・・・・・・32,085・・・・・・・・・・・・・・・339,306 ・・・・・・・95
    ダイヤモンド&パール 幻影の覇者 ゾロアーク(日)
10・・泣くな、トンズ(韓)・・・・・・・・・・・9/09・・・・・・・・・17,780・・・・・・・・・・・・・・・303,786・・・・・・・・94

 「ケチなロマンス」に続いて2週目の「ハロー、ゴースト」、「黄海」が200万人の大台を越えました。次週は「ラスト・ゴッドファーザー」も、ですね。2位の新作も含め、1~4位まで韓国映画が占める。こんなことは昨年はなかったですね、未確認ですけど。すごい大ヒットとまでいかなくても、韓国映画が健闘しています。
 初登場は2位と8位。
 2位、死にそうな娘を救うため、心臓を手に入れようとするヨニ(キム・ユンジン)と脳死状態に陥った母を看病しようと孤軍奮闘する息子フィド(パク・ヘイル)の対決を描いた作品。ちょっと私ヌルボには苦手なテーマかも。ふとマイケル・サンデル教授の本を思い出したぞ。原題は「심장이 뛴다」。
 8位、昨年8月公開の日本アニメ。このジャンル、ヌルボおじさんにはよくわからんです、はい。
 10位、なんというしぶとさ・・・・。
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伊集院静「お父やんとオジさん」で知る韓国・朝鮮[1]

2011-01-11 16:12:09 | 韓国・朝鮮に関係のある本
 暮れに「お父やんとオジさん」を読みました。
 伊集院静が自身の父親を主人公として書いたこの小説は、姜尚中「母-オモニ-」とともに在日の著者が肉親のことを書いた小説として昨年注目されました。

 この本の小説としての読み応え、たとえば侠気(おとこぎ)あふれる主人公宗次郎(=お父やん)の魅力と、彼が朝鮮戦争のさなか義弟(=オジさん)を救うため朝鮮半島に渡って活躍する後半部分のドキドキハラハラ感、そして著者自身も語っている家族愛の深さ等々については、すでに多くのブログで感想が書かれているので、私ヌルボとしては、「オススメの本ですよ!」とだけ言うにとどめておきます。

 ・・・で、このブログでは、この本の中から韓国・朝鮮にかかわる事柄をいくつか拾ってみました。

 伊集院静は1950年2月の生まれ。朝鮮戦争勃発のわずか4ヵ月前ですから、いくら自分に直接関わる内容とはいえ、また作家としての想像力を働かせても、この小説のメインの部分の戦争末期~朝鮮戦争当時について書くのは大変だったと思います。
 事実、作中の彼自身(「ボク」=直治)も、「父のもとで働いた人に話を聞いたとき、最初は信じられなかった。なぜ、仕事も家庭も順調な人が、妻のために命の危険を冒したのかと。韓国にも取材へ行きました。雑木林や松林の続く山並みは中国山地と似ている。でも、簡単に歩ける場所ではなかった」と記しています。
 したがって、資料として読む場合、事実とフィクションの境を念頭に置く必要はあります。とくに、朝鮮半島内での叔父(吾郎)や父の単独行動の部分は、どんなに綿密・周到な取材をしたにしても、大部分は作家としての想像力に追っているところが大きいと思われます。

 まず、小説の舞台、伊集院静の生地の山口県防府(三田尻)について。
 朝鮮半島に近く、戦前から関釜連絡船が運航していることもあって、山口県は以前から在日朝鮮・韓国人が多い所です。現在も人口10万あたりの在日韓国朝鮮人の占める比率は大阪・京都・兵庫・東京・愛知に次いで全国6位です。
 防府市も、当時(戦時中)港湾や塩田の労働者として多くの朝鮮人が働いていたことがわかります。
※三田尻塩田は1959年まで存続しました。

 朝鮮人労働者たちがどのような経緯で日本にやってきたか、小説の中から拾ってみます。
 「ボク(直治)」の「お父やん」高山宗次郎は、朝鮮半島南部の村(現慶尚南道泗川(サチョン)市昆陽面)の貧しい農家の三男でした。子供の頃から近所の小作農の手伝いに出されたりしていました。食べていくのがやっとの暮らしの中で、13歳の時に親から片道切符を持たされ、先に日本に来ていた次兄を頼って日本に渡ります。訪ねていった門司の工場にすでに兄はいませんでしたが、宗次郎は懸命に働き続けます。監禁同様の状態で働かされた炭鉱から命からがら脱出したこともあり、そして15歳になった時人の紹介で三田尻に来て沖仲士をするようになります。
 宗次郎は、まだ女学生だった要子を見染めて積極的に父の金古昌浩に働きかけ、条件とされた運転免許を得て廻船問屋の定職に就き、結婚を成就させます。この要子が「ボク」の「お母やん」で、4姉妹と2兄弟の6人の子をもうけることになります。

 宗次郎が要子に求婚した頃、要子の父・金古昌浩は塩田で働く労働者たちを束ねていました。
 彼もやはり慶尚南道の三千浦出身の朝鮮人です。例の<三千浦にそれる>の三千浦で、現在は宗次郎の出身地と同じ泗川市ですが、入江を挟んで東側に位置しています。
 彼は若い時から朝鮮と日本を往来し、労働者の斡旋もするようになります。そして大正の終わり頃幼い要子たちを連れて日本に渡ってきます。また、彼の「人柄を頼って、大勢の労働者が朝鮮や九州各地からこの町に移ってきた」そうです。父の方針で、要子は女学校に、弟の吾郎は名門中学に通いますが、半島の出身で日本の学校に通う子どもはこの町には他にいませんでした。

 終戦直後から、三田尻の朝鮮人たちは大きな歴史の波に巻き込まれていきます。
(以下続く。)

※付記]上記のことと関連して、同じ防府出身の作家高樹のぶ子の祖父のこと
 直木賞作家(&選考委員)伊集院静の出身高校は県立防府高校(1965年入学)です。同高校の4年先輩に芥川賞作家(&選考委員)の高樹のぶ子がいます。彼女が自身の防府で過ごした少女時代の経験を基に書いた自伝的小説「マイマイ新子」に、終戦以前は不在地主だった祖父のことが記されています。ほぼ同内容の記述が「朝日新聞」2003.1.5の記事「時代の風、平壌宣言は一瞬の夢か」にありました。防府の朝鮮人に関する部分を紹介します。

 平壌宣言がなされた時、私は祖父のことを思いだした。旧制中学の教頭をしていた祖父は昭和十年代近隣のアジア諸国から日本に留学した学生たちの父親がわりとして、彼らを上の学校で勉強させる援助をしていた。中国、台湾、朝鮮半島からの学生が、常時二、三人我が家で寝起きしていたという。 
 その中の一人、劉さんは韓国に帰り、やがて石炭公社総裁や関釜フェリーの初代社長になって、私が中学生のころ、新聞記者を引き連れ、たくさんの土産と共に祖父を訪ねてきた。このときのことは「寒雷のように」という小説に書いたが、まさに寒雷のような出来事だった。
 宴の中で劉さんは祖父への感謝の言葉と共に、日本のせいで韓国の発展は50年遅れましたと言った。そのときの祖父の複雑な表情を思い出す。
 祖父が預かった学生の中で一番優秀だったのは、金シンゲンという朝鮮半島北部から来た青年だった。彼は祖国の発展のために人生を捧げます、と言って北に戻っていった。
 二人は掃除の合間にハタキをズボンのベルトに差し、チャンバラごっこをしては祖父に叱られていたそうだ。


 → 伊集院静「お父やんとオジさん」で知る韓国・朝鮮[2]
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[韓国語] <クィチャニスト>はわかりやすい新造語

2011-01-09 23:09:47 | 韓国語あれこれ
 2010年は海外ミステリー大豊作の年だったと「このミス」等々で多くの人が書いてました。
 しかし、一昨年「深海のYrr」(←おもしろい!)を読んで以来、久しく大部のミステリーやSFを読んでいなかったので、順序にしたがって<今世紀に入ってからのベスト1>と定評のあるスティーグ・ラーソンの「ミレニアム1:トラゴン・タトゥーの女」を暮れから読み始めたのですが、期待にたがわず! で、一気に読了。続いて「ミレニアム2:火と戯れる女」も昨日読み始めて今日読み終えました。

 韓国関係ブログのタテマエ上、韓国ではこの本どんなものかなと、教保文庫のサイトをちょっと見てみました。
 すると「ミレニアム1」は「밀레니엄. 1: 여자를 증오한 남자들(ミレニアム1:女を憎悪する男たち)」というタイトルで2008年7月に刊行。あら、日本より5ヵ月早かったんだ。副題も違ってますが、韓国版の方が原題そのまま。「ミレニアム2・3」も韓国の方が早かったんですね。それだけ<ジャンル文学>の読者が増えているということか。
 読者のレビューを見るとたいてい★5つで、「일요일 오후에 이 책을 손에 들지 마라(日曜の午後にこの本を手にとるな)」などと書かれてます。睡眠不足で月曜の朝つらいですからね。
    
   【日本版(左)と韓国版(右)。著者ラーソンの表記は、ハングルでは라르손(ラルソン)です。

 ・・・と、例によって以上は長~い前説。横浜市立図書館でこの「ミレニアム2」を読みながらも「新東亜」1月号と最近の「朝鮮日報」をななめ読みしておもしろそうな記事をコピー。
 さらにその合間に見た「韓国人生活情報」でたまたま目に入った言葉が今回のテーマです。
 その言葉は<귀차니스트(クィチャニストゥ)>
 「<귀차니스트>のための化粧法」という見出しに用いられています。
 辞書にない言葉でも、すぐ意味の見当がつくものもあります。これもその1つ。
 「귀찮다(クィチャンタ.面倒くさい)」という言葉を知っていれば、これと英語の「~ist」を合成した言葉だな、とわかります。つまり<面倒くさがり屋>という意味ですね。
 韓国googleで<귀차니스트>を検索すると61万以上もヒット。わりと一般的に使われているようです。さらに<귀차니즘(クィチャニズム)>という語については韓国ウィキに説明がありました。
 それによると、この語が大衆化したのはウェブ漫画の「スノーキャット(스노우캣)」(2001年単行本刊行)からだそうです。また、同様の単語としては「게으르다(ケウルダ.怠ける)」に「~nism」をつけた<게으르니즘(ケウルニジュム)>、日本の<이타이 이타이 병(イタイイタイ病)>の音に由来する<이따가이따가병(イッタガイッタガビョン.あとであとで病)>がある、とつけ加えられています。
 2004年の「週刊京郷」の「面倒くさがり屋向け商品」の記事中には<게으르신(ケウルシン.怠け神)>や<다음증후군(タウムチュンフグン.こんど症候群)>という言葉も出てます。

 他にも何か「韓国語+ist」という新造語があるだろうと思って探したら、<라메니스트(ラメニストゥ)>というのがみつかりました。googleのヒット数は1100くらいだから全然一般的ではないのですが、なぜかNAVERやDAUMの国語辞典にもありました。その意味は「맛있는 라면을 파는 집을 찾아다니면서 라면 맛을 보는 사람(おいしいラーメン店を訪ねてラーメンの味をみる人」。さらに次のような説明をつけ加えています。「일본에는 이런 라메니스트들이 부지기수다. 4년간 무려 3천 그릇의 라면을 먹어 보고 ‘식후감’을 발표한 전설적인 라메니스트도 있다(日本にはこんなラメニストが数知れずいる。4年間になんと3千杯のラーメンを食べて<食後感>を発表した伝説的ラメニストもいる)」。

 そういえば、日本にも倉橋由美子の小説で「スミヤキストQの冒険」というのがありましたね。
 <ガンバリスト>という言葉はわりと一般的、かな? <フンバリスト>はどうですか?
ずーっと以前、友人と「やっぱりわれわれは(ブリーフ派じゃなくて)デカパニストだよなー」などと話した記憶がありますが(デカブリストのもじり、のつもり?)、今現在デカパニストのgoogle検索の結果は1件だけ。そんなもんですか・・・。
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