ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国の連座制&遡及法を考える② 韓国内での<パルゲンイ(赤)>狩り

2016-05-30 19:11:07 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 → <韓国の連座制&遡及法を考える① 最近の「親日」論難の事例>

 1つ前の記事(その後の追加・訂正あり)で、韓国内での「親日派」とその子孫の追及が主に政界での反対派に対する攻撃材料として使われている例をあげました。

 ところが、「親日派」批判の声がとくに高まってきたのは軍事政権が倒れて民主化が進んだ1990年代以降のことで、それ以前はもっぱら「反共」が絶大な力を持っていました。反共が「国是」とされ学校でも反共教育がふつうに行われていたために、その威力は現在の「親日」追及よりもずっと強力でした。
 往時の反共教育についての関連記事は→コチラです。そこでも書きましたが、1992年私ヌルボが初めて韓国に行った時たまたま話をした釜山の人が「北韓でもふつうの人々が暮らしているということですよ」と言っていたのは、その少し前までの韓国では、子供ならずとも「北韓」の人間はツノが生えた鬼のようなヤツラと本気で思っていたということだったのでしょう。

 そんな時代(李承晩政権~軍事政権時代)に「パルゲンイ(빨갱이)」は徹底的に排除されました。つまり日本で言うところの「アカ」
 「パルゲンイ」=社会主義者です。しかし38度線の北に自らの意志で行った「越北者(월북자.ウォルブクチャ)」もほぼ同義で用いられるようになってしまいました。その中には李承晩政権を忌避した民族主義者等も含まれているのですが・・・。
 社会主義者や「越北」した人たちの中には、朴泰遠(パク・テウォン)、李泰俊(イ・テジュン)、洪命熹(ホン・ミョンヒ)、林和(イム・ファ)(←松本清張「北の詩人」のモデル)といった作家・詩人や李快大(イ・クェデ)のような画家もいますが、圧倒的に多くの無名の人々がいて、韓国に残されたその家族まで国によって差別された点は、ほぼ<大物>人士に限られる今の「親日」批判どころではない悲劇を生みました。

 韓国の有名人では、作家の李文烈(イ・ムニョル)や映画監督の林権澤(イム・グォンテク)は父親がその「パルゲンイ」だったことが知られています。また「恐怖の外人球団」で有名な漫画家の李賢世(イ・ヒョンセ)は叔父が越北し、朝鮮戦争当時は人民軍の兵士としてやってきたりしたため家族内にも深刻な葛藤が起こったそうです。
 ※李文烈(1948~)の父親は共産主義者で、朝鮮戦争当時独りで越北。彼の小説「若き日の肖像」には苦しかった青春時代が反映されています。その作品中に父親が越北したという人物も登場します。(ヌルボの感想文は→コチラ。)
 ※林権澤(1936~)の家庭については佐藤忠男「韓国映画の精神」(岩波書店)に詳しい。父は左翼の活動家で、→雑誌「新東亜」のインタビュー記事によると日本刀を下げた刑事が家に土足のまま上がってきて家探しをしたこともあったそうです。父はその後病を得て自首し、まもなく世を去ったとのことですが、林権澤は「パルゲンイの息子」と差別され、17歳の時家を出て釜山で靴商売をする等苦労が続いたそうです。こうした彼の経験は、映画「太白山脈」(→コチラ参照)に反映されています。「人民軍部隊が,彼らを歓迎するパルチザンの生存者たちに高圧的な態度を取り、パルチザンを失望させる場面は、朝鮮戦争時代の監督の実体験が反映されているのだそうだ」とあります。
 ※李賢世については→コチラのインタビュー記事(韓国語)参照。
 上記3人は後に世に認められて<有名人>になりましたが、世間から後ろ指をさされるのみならず、公務員になれない等々のハンディを負わされて不遇な人生を送った人は大勢いたと思われます。
 フィクションの世界で思い浮かぶのは、大ヒットしたTVドラマ「砂時計」(1995.SBS)の主人公の1人パク・テス(チェ・ミンス)。陸軍士官学校を受験しますが、亡くなった父親が共産主義者だったことを理由に不合格になり、結局はヤクザになってしまいます。
 小説では、(ヌルボは未読ですが)趙廷来の大河小説「漢江」にもそんな「パルゲンイ」の息子が登場するそうです。

 今は韓国社会も大きく変わり、「パルゲンイ」をことさらにあげつらう人は少なくなりました。とはいえ、今度は「従北(종북.チョンブク)」と名称を変えたラベルが登場し、そのラベルを「活用」した2013年の統合進歩党・李石基(イ・ソッキ)議員に対する国家保安法違反についての有罪判決と翌年の同党強制解散は保守政権下であいかわらず続いています。しかし少なくとも連座はこの従北ではないとみてよさそうです。
 ※その中で、例外的な発言をしているのが1つ前の記事でも名前を出した軍事評論家の池萬元(チ・マンウォン)氏。2008年に非公開で8億5千万を寄付してきたことが報じられて注目された女優ムン・グニョンについて、彼女の祖父(05年死去)が朝鮮戦争の時のパルチザン活動や1971年の統一革命党再建委員会事件に関わって計30年間服役した非転向長期囚であり、彼女が出演したドラマ「風の絵師」や映画「美人図」も背後に何らかの左翼の意図がある、などと主張していたとか。こうしたことに関連して池萬元が「パルゲンイ」の連座制を唱えている・・・というのはホントなんでしょうか? ほとんど「トンデモ論」といった感がありますが・・・。

 次に、現代の「連座制」と「遡及法」といえば(たぶん)ほとんどの人が思い浮かべるのが「例の国」なんですが、それは続きで、ということにします。

 → <韓国の連座制&遡及法を考える③ 北朝鮮の連座制と<成分>、金日成の「輝ける家系」等>
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韓国の連座制&遡及法を考える① 最近の「親日」論難の事例

2016-05-29 09:54:46 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 3つ前の記事(→コチラ)で、映画暗殺」のポイントは「反日」ではなく、「親日」批判だということを書きました。

 それに関連して、この10数年の間の「親日派」をめぐる問題の具体的事例を拾い、考えてみました。とりあえず、それらを時系列で並べてみます。

[2003年]
・国立光州博物館の李健茂(イ・ゴンム)館長を盧武鉉大統領が国立中央博物館長に任命した。すると、彼の祖父の歴史学界の泰斗・李丙燾(イ・ビョンド)の親日行跡議論に関連して批判的な声が上がった。(結局2003~06年中央博物館長在職。)

[2004年]
・当時与党だったウリ党は、野党ハンナラ党の代表となった朴槿恵に対する圧迫手段として、それまで中佐以上とされていた親日真相究明法の対象とされる軍人の階級を少尉以上に引き下げた。これは日本軍の中尉だった朴正煕元大統領をその対象とするのがねらいだった。
・ところが、そのウリ党の議長シン・ギナム議員の父親シン・サンムクはかつては日本名を重光國雄という日本軍憲兵伍長で、その親日行為がメディアで報じられるとシン・ギナムは議長を辞職した。
※シン・ギナム議員の父親の「過去」を明らかにした(保守誌の)「新東亜」の記事(→コチラは現在も読める)、こうした「親日」批判が反対派を攻撃する政治的手段として用いられていることがわかります。

[2005年]
・盧武鉉政権により旧親日派資産を没収するという「親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法」(→ウィキペディア)が制定された。

[2006年]
・上述の李健茂の兄・李長茂(イ・ジャンム)が国立ソウル大学の総長候補となった時も同様の批判が起こった。「オーマイニュース」は<親日派の子孫、ソウル大学総長に任命は正しいのか?>という記事(→コチラ)を載せている。
 ※李長茂・李健茂兄弟の祖父李丙燾(イ・ビョンド.1896~1989)は、早稲田大で津田左右吉の薫陶を受けた歴史学者。戦後はソウル大学教授を長く務め、実証的な研究を旨として韓国の近代的歴史学を主導した人物。(→韓国のウィキペディアを見ると、この一族はスゴイです!)

[2014年]
・女性歴史学者イ・インホが新KBS理事長として選任されると、祖父のイ・ミョンセの親日行跡を問題視して新政治民主連合の議員や市民団体から理事長を辞退すべきだとの声が上がった。祖父は儒学者・企業人であり、太平洋戦争で朝鮮人を動員するために作った団体の創立発起人で親日派の巨頭で、民族問題研究所(編)の「親日人名辞典」にも名前が登載されている人物である。
 イ・インホはそのままKBS理事長として在任。現在に至っています。→「中央日報(日本語版)」の関連記事(→コチラ)の見出しは<時代に逆行する「新連座制の亡霊」>と追及に批判的なのはやっぱり保守紙。

[2015年]
ホン・ヨンピョ新政治民主連合議員の祖父ホン・ジョンチョルは、2009年親日・反民族行為真相究明委員会が発表した日本植民地時代末期親日・反民族行為関係者704人の名簿に含まれた。これに対しホン・ヨンピョ議員は8月10日「親日派の子孫として謝罪する」と公開謝罪文を発表した。
 彼は「司法連座制はなくなったとしても、日帝の植民地支配に対する国民の胸の中の怒りの傷は癒えていないので機会が届くたびに、事実を明らかにして謝罪し反省することが子孫である私の運命だと受け入れています」と強調した。(→コチラ参照。)
チン・ソンホ元セヌリ党議員も、「祖父の日帝強制占領期間での行為を国民に対し申し訳ないと考える」とEメールを送ってきた。
・この2人と対照的なのが金武星(キム・ムソン)セヌリ党代表で、彼は親日行為をした自分の父親の金龍周(キム・ヨンジュ)元全南紡織会長を評伝で愛国の志士として美化している。
 ※上の3人については8月の「ハンギョレ」の記事<親日反民族行為者の父を美化する韓国与党代表>(→コチラ)の記事による。その見出しの文言からもわかるように金武星代表を厳しく批判しているのに対して、2015年10月の「東亜日報(日本語版)」の記事(→コチラ)は<金武星氏、父親の親日批判に「息子として胸が痛む」>と金武星代表に寄り添った内容になっています。このあたりは進歩系新聞と保守系新聞の図式が即座に読み取れますね。
 全体的にみて進歩系の側の「親日派」批判が執拗なのは、先の「暗殺」についての記事にも書いたように、「親日派」批判が現在の保守陣営及び政財界の権力層批判につながるからです。
 「ハンギョレ」の記事は「朴槿恵大統領も父親の朴正煕元大統領の親日行為を謝ったことはない」と批判めいた書き方をしていますが、日本だとこのような本人ではなく父親や祖父の所行をもって非難することは筋違いの中傷とみなされるでしょう。韓国でもそのことは若干は意識されているようで、祖父や父の行ったこと自体ではなく、それに対する本人の見方が問題とことわり書きのような書き方をしている例がいくつもありました。

 また、池萬元(チ・マヌォン)という元軍人の保守系評論家がいて、ときどきお騒がせな発言をしたりしていますが、その彼が2004年「日帝強制占領下の親日反民族行為真相究明に関する特別法」を批判した発言中で「歴史を評価するためには『何が間違っていたのか』を評価すべきで、『誰が間違っていたか』を評価してはならない」と言っている(→コチラ)のは(私ヌルボも含め)多くの日本人が同感するのではないでしょうか?

 ところで、上記のような「親日」論難の各事例ですが、一般的な日本人の考え方にそぐわないのが「今の価値観を過去に遡って適用する」点と、「悪事を行った者の子孫に責を負わせる」点、つまり「遡及法」「連座制」の問題です。

★「連座」は韓国語では「연좌」。日本の歴史用語では犯罪者の親族に刑を及ぼすのを縁座それ以外の関係者に及ぼすのを連座と呼んで区別していましたが、今では前者も後者の一部として用いられているようです。韓国語だと縁座の読みも連座と同じ「연좌」で、辞書にも両方の漢字語が載っていますが、→韓国ウィキペディアの説明文をはじめ用例をみてみると一般的に両方の意味を含む語として用いられているようです。

 この「連座制」については過去日本にもありました。「連帯責任」といったものは今でも一部に残っていますが、上記の「縁座」は現在ではないのではないでしょうか? ところが韓国や北朝鮮では「親日」問題の他にもあります。
 「遡及法」にしても、現代の基準で過去を測るといった思考法はいろんな例が思い浮かびます。
 つまり、韓国内の「親日」問題を「反日」感情とだけ関連づけて見るのではなく、もっと広く韓国の伝統的な歴史認識・家族&民族観等といった大枠の中で理解する必要があるのでは、というのが(概してひかえめな性格の)私ヌルボの言いたいことです。

洪盛原(ホン・ソンウォン.1937~2008)という作家が1996年に発表した小説「されど」(本の泉社.2010)は、地方の町を舞台に、対立する2つの名望家のそれぞれの先々代が<親日派>だったか<独立功労者>だったかということが、まさに現在の政治に関わる問題として描かれている作品です。しかし、→コチラの記事に書いたように、そうしたレッテルの<貼り方>は問題としていても、レッテルそれ自体の意味は掘り下げられていない点や、50~70年も前の祖父の所業が現代に大きな影響を及ぼしたりしていることを疑問視していない点等々、私ヌルボとしては不満の多い内容でした。

 次回は「親日」以外の材料から考えてみます。

 → <韓国の連座制&遡及法を考える② 韓国内での<パルゲンイ(赤)>狩り>
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韓国内の映画 NAVER映画とシネ21の人気順位 と 週末の興行成績 [5月20日(金)~5月22日(日)]

2016-05-24 20:10:14 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 直前の2つの記事→コチラコチラも韓国映画関連の記事で、<多角的に見る韓国映画「暗殺」と題したシリーズの1&2回目です。「暗殺」に直接関係ないことをいろいろ書いています。目を通していただければ幸いです。

 第69回カンヌ国際映画祭は22日(現地時間)にコンペティション部門授賞式が開かれました。受賞結果一覧は→コチラで見られます。パルム・ドールはケン・ローチ監督「I, DANIEL BLAKE」が受賞しましたが、全体的に記者・評論家たちの評価・予想と相反する結果になったということが話題になっているようです。
 なお、1つ前の記事でも少しふれたように、注目の韓国映画パク・チャヌク監督「アガシ(お嬢さん)」は受賞できませんでした。

 先週18日にシネマヴェーラ渋谷と実に久しぶりの早稲田松竹をハシゴして「風の中の子供」(1937)と、「ひつじ村の兄弟」&「独裁者と小さな孫」の2本立ての計3本を鑑賞。で、一番共感を覚えたのが「風の中の子供」。外から近所の子供が「○○ちゃん、遊ぼ~」と呼ぶと家の中から「あ~と~で~」と答える、そんな光景は私ヌルボの小学生時代(1950年代頃)にもまだ見られました。今の子供たちが観たらどんな感想を持つのでしょうね? 今は映画館に行かなくても、またDVDを借りたりしなくても、戦前の名作映画はほとんど( ?)YouTubeで観られるようになっているのですね。この作品も動画検索すればすぐヒットします。

 「朝鮮日報」の「封切映画 ぴったり10字評」は先週掲載されませんでした。

           ★★★ NAVERの人気順位(5月24日現在上映中映画) ★★★

①(2) 東柱[ドンジュ](韓国)  9.40
②(1) ズートピア  9.39
③(-) ショーシャンクの空に  9.39
④(4) ライフ・イズ・ビューティフル  9.37
⑤(5) 鬼郷(韓国)  9.19
⑥(-) シング・ストリート 未来へのうた  9.16
⑦(-)シーモアさんと、大人のための人生入門  9.15
⑧(3) 私の少女時代 Our Times  9.13
⑨(6) ムーラン・ルージュ  9.12
⑩(7) 太陽の下  9.05

 ③と⑥の2作品が新登場です。
 ③「ショーシャンクの空に」はもちろん1994年公開の名作の再上映。いい映画でしたねー。今その「トリビア21選」という記事(→コチラ)を見たらひとつも知らなかった(笑)。韓国題は「쇼생크 탈출(ショーシャンク脱出)」。←ネタバレ的タイトルでいいのかっ!
 ⑥「シング・ストリート 未来へのうた」については後述します。

           ★★★ シネ21 専門家の平均得点順位 ★★★

①(1) キャロル  9.00
②(3) ライフ・イズ・ビューティフル  8.40
③(2) 哭声(韓国)  8.31
④(4) スポットライト 世紀のスクープ  8.00
④(4) ブルックリン  8.00
⑥(7) ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!  7.60
⑦(8) さざなみ  7.50
⑦(8) クラン  7.50
⑨(-) シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ  7.45
⑩(-) 東柱[ドンジュ](韓国)  7.33
⑩(-) シーモアさんと、大人のための人生入門  7.33

 順位の変動や入れ替わりはありましたが、新登場の作品はありません。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績5月20日(金)~5月22日(日)] ★★★

         「哭声」が早くも400万人を超える
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・哭声(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・5/12・・・・・・・・・・1,333,848・・・・・・・・・4,540,619 ・・・・・・・・37,182 ・・・・・・1,391
2(21)・・アングリーバード・・・・・・・・5/19 ・・・・・・・・・・・248,153・・・・・・・・・・・259,860 ・・・・・・・・・2,005・・・・・・・・658
3(2)・・シビル・ウォー ・・・・・・・・・・・4/27・・・・・・・・・・・・182,666・・・・・・・・・8,553,372 ・・・・・・・・71,703・・・・・・・・517
        /キャプテン・アメリカ
4(99)・・ケチュンばあさん(韓国)・・5/19 ・・・・・・・・・・・168,774・・・・・・・・・・212,616 ・・・・・・・・・1,666 ・・・・・・・・525
5(62)・・シング・ストリート 未来へのうた・・5/19 ・・・・136,694・・・・・・・・・・171,427 ・・・・・・・・・1,438 ・・・・・・・・492
6(3)・・探偵洪吉童:消えた村(韓国)・・5/04・・・・・・・・・82,963・・・・・・・・・1,381,061・・・・・・・・・11,145・・・・・・・・374
7(7)・・私の少女時代 Our Times・・・5/12 ・・・・・・・・・・82,686・・・・・・・・・・・181,145 ・・・・・・・・・1,512 ・・・・・・・・201
8(新)・・ハードコア・ヘンリー・・・・・・5/19・・・・・・・・・・・・22,871・・・・・・・・・・・・37,771・・・・・・・・・・・331 ・・・・・・・・234
9(5)・・劇場版 アンニョン、チャドゥ(韓国)・・5/04・・・・・・9,551・・・・・・・・・・・275,396 ・・・・・・・・・2,102 ・・・・・・・・110
10(新)・・特別捜査:死刑囚の手紙(韓国)・・6/16・・・・・8,174・・・・・・・・・・・・12,164 ・・・・・・・・・・・・98・・・・・・・・・・25
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「哭声(コクソン)」が早くも400万人を突破。今年に入ってのトップはこれまでは「検事外伝」の969万人がダントツでしたが、はたしてそれに届くかあるいは追い越すか、今後に注目。
 新登場は2・4・5・8・10位の5作品です。
 2位「アングリーバード」は、仏・米合作の3Dアニメ。世界で人気もモバイルゲームのキャラクター、というのは知っていても、ゲーム自体はヌルボは知りません。主人公で怒りんぼうのレッドたちがいじわるなピッグたちに盗まれた大切な“たまご“を取り返すために大冒険を繰り広げるお話のようです。韓国題は「앵그리버드 더 무비」。日本公開は10月1日、ってなんでそんなに遅いの !?
 4位「ケチュンばあさん」は、原題は「계춘할망(ケチュン・ハルマン)」。「할망(ハルマン)」というのは標準語「ハルモニ」(おばあさん)の済州島の方言。済州島といえば「あまちゃん」や無形文化遺産関連でニュースでも報じられたりした韓国の海女(ヘニョ)の本拠地。ケチュンばあさんもその1人なんですが、演じる女優が大ベテランのユン・ヨジョン「先生」。物語はというと、6歳の時ソウルでいなくなってしまった孫娘ヘジ(キム・ゴウン)がなんと12年ぶりに戻ってきたのですが、そのようすが何かヘンというか、秘密を抱えているようで・・・。それは一体、・・・と観客の関心を引くのですが、決してミステリーとかではなく、なんか涙腺を緩みっぱなしにさせる感動作のようですよ。
 5位「シング・ストリート 未来へのうた」は、アイルランド・アメリカ・イギリス合作のドラマ&ロマンス。「はじまりのうた」等のジョン・カーニー監督自身の半自伝的ドラマ。14歳の少年コナーを中心に1980年代のダブリンでバンド活動に熱中する少年たち描く・・・ということで、デュラン・デュランやザ・クラッシュ等々当時のヒット曲が満載のようです。原題は「싱 스트리트」。日本公開は7月9日です。
 8位「ハードコア・ヘンリー」は、アメリカ・ロシア合作のSFアクション。アクションといっても、「全編一人称視点アクション」という点が画期的なんだそうです。→コチラでその一部を動画で見ることができますが、要するに「まるでFPSゲームやアクションスターになったかのような臨場感が楽しめる」とのことです。パッと画面が真っ暗になったとおもったら閻魔大王が表われたりして・・・ってことはないか。(笑) 物語は、死からよみがえった主人公のヘンリーが、サイボーグみたいになってさらわれた妻を救い出すべく敵と戦う、ということのようです。韓国題は「하드코어 헨리」。日本公開は未定、かな?
 10位「特別捜査:死刑囚の手紙」は、韓国の犯罪ドラマ。ピルジェ(キム・ミョンミン)は元は模範的警察、今ではよく売れるブローカー(弁護士事務長?)になっていて、切れることのない事件の依頼に「神が下したブローカー」との異名もあります。その彼に ある日、監獄の死刑囚から疑問の手紙が1通届きます。手紙の主は、世間を震撼させた仁川の財閥・大海製鉄夫人殺人事件の犯人スンテ(キム・サンホ)。スンテは、無実の自分の無念を訴えます。ピルジェが探れば探るほど現われてきたのは巨大背後勢力の実体。彼はますます大きくなる事件の背後にあるものを直感します・・・。原題は「특별수사: 사형수의 편지」。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(27)・・シング・ストリート 未来へのうた・・5/19・・・・・・・・・・・・・136,694・・・・・・・・・・・171,427 ・・・・・・・・・・・1,438 ・・・・・・・・492
2(1)・・私の少女時代・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/12・・・・・・・・・・・・・・82,686・・・・・・・・・・・181,145 ・・・・・・・・・・・1,512 ・・・・・・・・201
3(新)・・繕い裁つ人(日本) ・・・・・・・・・・・・・・5/19・・・・・・・・・・・・・・・1,806・・・・・・・・・・・・・2,677 ・・・・・・・・・・・・・・20 ・・・・・・・・・31
4(4)・・さざなみ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/05・・・・・・・・・・・・・・・1,383・・・・・・・・・・・・20,451 ・・・・・・・・・・・・・160 ・・・・・・・・・22
5(3)・・ダイノX探検隊(韓国)・・・・・・・・・・・・・5/04・・・・・・・・・・・・・・・1,080・・・・・・・・・・・・82,740 ・・・・・・・・・・・・・638・・・・・・・・・・12

 1・3位の2作品が新登場です。
 1位の「シング・ストリート 未来へのうた」については上述しました。
 3位の「繕い裁つ人」は、私ヌルボ、どうしようかなと思いつつ未見のまま。6月末に目黒シネマで上映か、うーむ・・・。韓国題は「미나미 양장점의 비밀(南洋装店の秘密)」です。
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多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ②昨年来日本統治期を背景とした作品が増えている

2016-05-24 09:11:54 | 韓国映画(&その他の映画)
 → ①<進歩系>映画と<保守系>映画

 昨年(2015年)から日本の統治期を背景にした韓国映画が目立っています。韓国メディアでも、昨年5月に「中央日報(日本語版)」(→コチラ)、7月に「ハンギョレ(日本語版)」(→コチラ)がそのことを記事で取り上げました。
 具体的には、次のような作品です。※[ ]は韓国での公開月

[6月]
「京城学校:消えた少女たち」(イ・ヘヨン監督)・・・・1938年京城近郊の寄宿女学校。生徒が一人二人と異常な症状を見せ、そして痕跡もなく消え始める、というミステリー&ホラー。
[7月]
「暗殺」(チェ・ドンフン監督)・・・・独立運動組織メンバーによる「親日派」暗殺計画。
[12月]
「大虎」(パク・フンジョン監督)・・・・1920年代、日本軍高官(大杉漣)の意を受けた最後の朝鮮虎狩猟作戦と往年の名猟師の物話。

 上記の新聞記事は、「日帝強制占領期を背景にした映画は失敗する」という忠武路(映画街)の昔からの俗説をこれらの作品は打破できるか、という点に注目していました。結果はというと、「京城学校:消えた少女たち」の観客動員数は35万人と惨敗。「大虎」は158万人でしたが、チェ・ミンシクを主演に据え、純制作費140億ウォンを投じたことを考えれば期待を大きく裏切る結果となりました。その点「暗殺」は韓国映画歴代5位(→コチラ参照)の180億ウォンという巨額純制作費をかけましたが、損益分岐点の600万人を大きく上回る1270万人動員という大ヒットを達成しました。

 上記のような日本統治期関係の作品公開の背景としては、2015年が1945年の「光復」から70年目の節目に当たるということもあったでしょう。
 しかし、今年(2016年)に入っても、次のような1920~40年代を背景にした作品が相次いで公開されています。

[2月]
「東柱」(イ・ジュンイク監督)・・・・ 28歳で短い生涯を終えた詩人尹東柱(ユン・ドンジュ)の人生をほぼ事実に沿って描く。(一部「誇張」や「独自解釈」もありますが・・・。観客動員数は現在115万人で、興行的にも成功。(私ヌルボも観ましたが、良い作品だと思います。)
「鬼郷」・・・・1943年14歳の時「連行」されていった少女たち。「実話」を基に作られたという話題の「慰安婦」映画。観客動員数300万人をを超えるヒット(現在352万人)となったことはニュースとして報じられました。

[4月]
「解語花(ヘオファ)」(パク・フンシク監督)・・・・タイトルは「言葉がわかる花」の意味で、つまりは妓生のこと。1940年代の妓生養成所の券番で一緒に成長した2人の妓生の歌にかける人生と愛。ハン・ヒョジュチョン・ウヒの共演という点は個人的には惹かれますが、観客動員数45万人で興行的には失敗作。

[6月]
「アガシ」(パク・チャヌク監督)・・・・サラ・ウォーターズの歴史ミステリー「荊の城」の翻案。幼い頃父母を亡くした貴族(日本人)のアガシ(お嬢様)と朝鮮人の下女の話。先日終わったカンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、関係の情報がいろいろ流されていました。その中で、監督が「日本に魅せられた人たちの心理を描いた」と語ったとのこと。(→コチラ参照。) 「反日じゃないですよ」と言いたいのか?とか日本におべっかを使っている?とか勘ぐらず、そのまま受けとめてよさそうです。
 ※この作品の原作(創元推理文庫)はホントにおもしろいです! 未読の方ぜひ読んでみて下さい。(前作の「半身」も。)

[公開日未定]
「密偵」(キム・ジウン監督)・・・・抗日武装団体(「テロ」組織)義烈団が素材。おっ、ソン・ガンホが主演か。
「徳恵翁主」(ホ・ジノ監督)・・・・コチラはソン・イェジンパク・ヘイルが主演。高宗の王女で、旧対馬藩主・宗家の当主宗武志伯爵の夫人となった徳恵翁主(トクヘオンジュ)の悲運の人生を描く。
「鳳梧洞(ポンオドン)戦闘」(キム・ハンミン監督)・・・・鳳梧洞は中国吉林省の地名。1920年の洪範図(ホン・ボムド)将軍が率いる独立軍が日本軍を打ち破った戦闘を描く。
「ハルビン」(ヤン・ユノ監督)・・・・ 伊藤博文を狙撃した安重根の人生を描く。

 ・・・うーむ、こうして見ると、やっぱりほとんどが「悪辣な日帝」と関係ありといってよさそう。大虎が主役(?)の「大虎」も、「京城学校:消えた少女たち」も、日本統治の横暴なこととか「闇の部分」とかが描かれていたりとか? そうじゃなさそうなのは「解語花」くらいかな? 「アガシ」もまあそれほど関係なさそう?(しかし・・・)

 さて、上記のように日本の統治期という時代設定の韓国映画がなぜこのところ目立って増えているのか?ということなのですが、実はここまでの記事はその「本論」の前書きのつもりで書き始めたものなのです。しかしすでに長くなりすぎたのでここでひと区切りつけて、その「本論」は続きで、ということにします。

 → ③韓国では、日本統治期の見方が変わりつつある(?)
 → ④判別がむずかしい<史実>と<虚構>の間
 → ⑤韓国でようやく知られ始めた金元鳳(キム・ウォンボン)と義烈団
 → ⑥「日本軍により3469人が殺された事件」というのは何だ?
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多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ①<進歩系>映画と<保守系>映画

2016-05-22 19:50:31 | 韓国映画(&その他の映画)
 5月9日シネマート新宿の10周年記念・特別先行上映ということで観てきた「暗殺」は、いろんな意味で「注目作」です。
  ※一般公開は7月16日。すでに→公式サイトができています。
 内容をごく簡単に言えば、日本統治期の独立運動をめざす組織による「暗殺」をめぐる物語です。
 なぜ「いろんな意味で」注目なのかというと、チョン・ジヒョンイ・ジョンジェハ・ジョンウといった人気スターが共演していること、もありますけど・・・。
 A.独立運動・抗日闘争等の「歴史的出来事」や主舞台の1930年代京城がどのように描かれているか、といった内容面のこと、
 B.それらの過去をどのように見るか、という(現代の)「歴史認識」の問題
 C.「史実」とフィクションの見きわめ

・・・等々、さまざまな点で興味深いということです。

 今回は、この映画と直接関係なさそうですが、韓国の<進歩系(左派系)>の映画と、<保守系(右派系)>の映画について考えてみます。

 韓国では、内政・外交を問わず諸政策をめぐって進歩系と保守系の両勢力間の対立は厳しいものがあります。日本では、右寄りの人も左よりの人も「自分は左でも右でもない」と言ったり、自分でもそう思っている人が多いのではないでしょうか? 韓国の場合は、総選挙や大統領選挙の結果を見ればわかるように、左右のどちらに属するかがはっきりしていて、中間派はむしろ少ないのが日本とは大きく違うところです。
 メディアも<保守系>の代表ともいうべき「朝鮮日報」と、「中央日報」「東亜日報」のいわゆる「朝・中・東」(조중동.チョチュンドン)の3紙が保守系で、「ハンギョレ」をはじめとして「京郷新聞」とインターネット新聞サイトの「オーマイニュース」のいわゆる「ハンギョンオ」(한경오)が<進歩系>と明確に分かれています。

 <進歩系>と<保守系>の違いは政治面だけではなく、その底には「歴史認識」の対立・葛藤があります。つまり「歴史認識」は日韓間だけの問題ではなく、韓国国内の問題でもあるというわけです。
 この「歴史認識」と関係するのが映画やドラマで、たとえば近現代の描き方は左右で異なったものになるのは当然。日本でもその点は同じで、たとえば最近では百田尚樹原作の映画「永遠の0」などは人によって評価が分かれるところでしょう。(・・・って私ヌルボは観てませんが。)

 韓国映画の<進歩系>と<保守系>の見分け方について。
 ①早い話が、「朝鮮日報」等の保守紙が好意的に評している映画は<保守系>で、「ハンギョレ」等が推している映画は<進歩系>。これはちょっとイイカゲンかな?
 ②<進歩系>の人が多いという映画評論家・記者の評点が(一般のネチズンの評点と比べて)高い映画が<進歩系>。その逆が<保守系>。

 具体的に、その違いが顕著な戦争を描いた作品について見てみましょう。各数値は<NAVER映画>に拠るものです。

 ※青色の数字はネチズン、赤色の数字は記者・評論家の平均評価。茶色の数字はその差で、その数値が小さいものから並べました。

・「小さな池」          6.39 7.56  -1.16
・「JSA」             9.27 9.00  0.27
・「西部戦線1953」       6.39 5.83  0.56
・「トンマッコルへようこそ」  8.93 8.00  0.93
・「高地戦」            8.63 7.34  1.29
・「国際市場で逢いましょう」 9.02 5.81  3.21
・「ノーザン・リミット・ライン 南北海戦」 9.00 4.94 4.06
・「戦火の中へ」         8.23 3.75  4.48


 この8作品の数値を見ると、「高地戦」までの5作品が<進歩系>、「国際市場で逢いましょう」以下の3作品が<保守系>にはっきりと分けられます。
 内容はといえば、「小さな池」は、朝鮮戦争中の老斤里(ノグンニ)事件を映画化した作品。アメリカ軍による韓国民間人の虐殺事件で、この作品については過去記事(→コチラ)で書きました。そして「JSA」~「高地戦」も朝鮮戦争を描いたものですが、何らかの形で韓国と北朝鮮の兵士の間の「人間的な交流」といった場面がある点が共通しています。
 「国際市場~」は戦争映画というわけではありませんが、朝鮮戦争時北朝鮮軍に追われて南に逃げた主人公が後にベトナム戦争に従軍し・・・といった戦争が無批判に描かれ、軍事政権による圧制はまったく抜け落ちている点等に<進歩系>から批判の声が上がりました。「ノーザン・リミット・ライン 南北海戦」は2002年の延坪海戦、すなわちW杯サッカーの最中に起こった南北朝鮮間のすさまじい海戦を描写したもので、南北兵士の「人間的な交流」などが寝言に聞こえるような(?)「現実」の重みはあったとは思います。(私ヌルボが<右>の人間というわけではないですが・・・。)
 ※今韓国で人気のドラマ「太陽の末裔」は韓国軍の海外派兵・国際貢献(!?)を描いた明々白々な<保守系>ドラマ。日本ではいくら安倍政権下でもこういう設定のドラマは作れないでしょう。かつてベトナム戦争の時に韓国軍による民間人虐殺があったベトナムで、このドラマの放映(!)を控えて「現地の記者が韓国軍を広報するドラマが放送されるのは汚辱」という内容の文をフェースブックに投稿し、3日間で9万件近くシェアされるなど、波紋が広がっている」というニュースを「ハンギョレ」が伝えた(→コチラ)のはむべなるかな、といったところ。

 で、戦争映画というわけではないですが「暗殺」の評点はと見ると・・・。
・「暗殺」 8.97 6.57  2.40

 真ん中あたり、と言った方がいいかもしれませんが、ヌルボとしては一応<進歩系>の方に入れておきます。
 それは、上記に数値以外に、「ハンギョレ」に何度も好意的に取り上げられていること、それもとくに「親日」を糾弾する文脈で書かれているという理由からです。

 「暗殺」というからには、この映画では暗殺を企てる者たち(上述のように独立運動組織)とそのターゲットが存在します。物語の主舞台は1933年の京城。つまり日本統治下の朝鮮で、・・・というと日本人としては「反日映画か!?」と思うのではないでしょうか? たしかに悪辣な日本人も登場しますが、それは自明のこと(笑!)で、むしろポイントは主なターゲットが朝鮮人の「親日派」であるということ。
 <NAVER映画>のこの作品に対するネチズンの評点&寸評欄(→コチラ)の最初にも次のような寸評が寄せられていました。

 「日帝強占期の頃日本人より悪辣で惨忍な人間が親日派だったが、そいつらの子孫たちが代々いい暮らしをしているこの世の中が本当に腹立たしい。(以下略)」

 つまり、戦後間もない時期に親日派の清算が進められるかに見えたものの、自分の権力基盤である軍隊や警察に矛先が向けられなるや打ち切ってしまった李承晩と背後のアメリカ。あるいは、日本の陸軍士官学校出の高木正雄中尉こと朴正煕やそれに続く軍事政権と、彼らと結託している財閥等の権力層。こうした勢力の延長線上に今の保守政権がある、ということで「親日派」の問題は現代韓国の政治・社会に直結しているというわけです。

 したがって、この映画のキモは「反日」ではなく「反親日」にある、ということです。

 以下、数回続きます。

 → ②昨年来日本統治期を背景とした作品が増えている
 → ③韓国では、日本統治期の見方が変わりつつある(?)
 → ④判別がむずかしい<史実>と<虚構>の間
 → ⑤韓国でようやく知られ始めた金元鳳(キム・ウォンボン)と義烈団
 → ⑥「日本軍により3469人が殺された事件」というのは何だ?
コメント (2)
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韓国内の映画 NAVER映画とシネ21の人気順位 と 週末の興行成績 [5月13日(金)~5月15日(日)]

2016-05-18 10:12:43 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 1週間前の記事で韓国映画「暗殺」についての記事をすぐアップするようなことを書きましたが、資料を集めつつ書き進めるうちに分量が増え手に負えない状態に・・・。3回分くらいに分割しても収まるかどうか。ま、近いうちにこれまたシリーズ化の予定。(って、未完結のシリーズがいくつあることか・・・。)

 横浜市民なのでついズーラシアと言ってしまいそう(笑)ですが、韓国でも2月以来動員数ベスト10内を維持している「ズートピア」を観てきました。1日に何度もある上映の内字幕版は夜遅くの1回だけというのはしかたないか。なかなかおもしろく、ヒットの理由がわかったような・・・。しかし私ヌルボ、ディズニーの長編アニメなんて実に久しぶり・・・って、もしかして幼い頃観た「わんわん物語」以来? このところ年100本近く観てるのに「アナ雪」もスルーしちゃってるしなー。すごく感動した「わんわん物語」は後年考えてみれば野良イヌが彼女への愛のために飼い犬になっちゃった転向映画(笑)でした。この「ズートピア」もヒロインのバニーちゃん(あ、ジュディか)が警察官をめざすというからやっぱり体制派映画か(笑)と思いましたが、アメリカに顕著な善悪二元論的な作品ではなくて多文化多民族共生・価値観の多様化といった現実社会をちゃんと反映した内容になってました。後で<ズートピアのアナ雪を含む10のトリビア&裏話>(→コチラ)という興味深い記事を発見。いろいろ楽しんで作ってたのですね、やっぱり。それにしても、当地の陸運局はホントにあんなに仕事・・が・・遅い・・んで・・す・・・か・・・・・・ね?(笑)

 カンヌ国際映画祭まっただ中。→コチラ等のニュースによると日本初の長編アニメが公式上映されたとか。1945年4月公開の「桃太郎 海の神兵」で、もちろん戦意高揚映画なので松竹の人がどう説明・紹介したのか気になるところ。この作品はYouTubeで観ることができます。(→コチラ。)
 なお、戦争関連アニメでは、日本の誇るべき反戦影絵アニメ「煙突屋ペロー」(1930年.→YouTube)のことも広く世界の人たちに知ってほしいと思います。
 
「朝鮮日報」5月13日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)
 「哭声」
   幻惑されるな。厄介だぞ ★★★★


 「クラン」

   暴力の時代ゆえの怪物・・・ ★★★★

 「ヒア・アフター」

   節制が見せる冷やかさ ★★★☆


 「私の少女時代 Our Times」

   観れば心が温まる時代 ★★★☆

 「サマー・インフェルノ」

   流れ行く流行歌のよう ★★★☆


 「ザ・ファミリー・ファン」

   本当魔大人になる方法 ★★★
 
 「ヒア・アフター」は、2016年スウェーデン・アカデミー賞作品賞等多くの賞を受賞したスウェーデン・フランス・ポーランド合作作品。2年前に静かだった町を騒がせた事件の後、服役を終えて帰ってきた17歳の少年ヨンと、事件のことは忘れても彼を許すことのできない人々の物語を通じて、人間の本性と真の赦しについて問いかける作品。日本公開は未定? 「サマー・インフェルノ」は、スペイン・アメリカの合作ホラー。ヨーロッパのキャンプ場でキャンプ・カウンセラーとして働くことになった4人のアメリカ人。仕事場を下見していた時に犬に噛まれた仲間のひとりが未知のウィルスに感染して凶暴化し、そしてスペイン版「死霊のはらわた」(?)ともいうべき惨劇が・・・。日本では劇場公開はなく7月DVDが発売されるようです。「ザ・ファミリー・ファン」(仮)は、パフォーマンス・アーティストとして有名な両親と2人の子供たちの物語。ファン家のアニー(ニコール・キッドマン)とバクスター(ジェイソン・ベイトマン)の姉弟は幼い頃から<子供A>と<子供B>として両親のアートに参加して育ってきました。その後アニーは俳優、バクスターは作家になりましたが、ユニークな子供時代の影は振り切れないまま。そんな2人が仕事上の行きづまりもあって故郷の家に戻ると、両親は再び団結した家族のパフォーマンスを新たに企画し、2人との葛藤が深まります。そんな中、両親は車で旅に出たまま行方不明に。発見された車には血のりが・・・。しかしそれが本当の事件なのか破格のパフォーマンスなのかはわからず。そんな状況下で2人は両親を必死に捜すということに・・・。日本公開は未定か? 他の3作品は下の記事中で紹介しています。

           ★★★ NAVERの人気順位(5月17日現在上映中映画) ★★★

①(1) ズートピア  9.40
②(2) 東柱[ドンジュ](韓国)  9.40
③(-) 私の少女時代 Our Times  9.39
④(3) ライフ・イズ・ビューティフル  9.37
⑤(5) 鬼郷(韓国)  9.20
⑥(6) ムーラン・ルージュ  9.12
⑦(7) 太陽の下  9.07
⑧(-) 4等(韓国)  8.99
⑨(8) リリーのすべて  8.94
⑩(10) 恋人までの距離〈ディスタンス>  8.94

 台湾映画の③「私の少女時代 Our Times」だけが新登場です。この作品については後述します。

           ★★★ シネ21 専門家の平均得点順位 ★★★

①(1) キャロル  9.00
②(-) 哭声(韓国)  8.55
③(2) ライフ・イズ・ビューティフル  8.40
④(3) スポットライト 世紀のスクープ  8.00
④(3) ブルックリン  8.00
⑥(5) ドリーム ホーム 99%を操る男たち  7.80
⑦(6) ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!  7.60
⑧(7) アノマリサ  7.50
⑧(7) さざなみ  7.50
⑧(-)クラン  7.50

 ②「哭声(コクソン)」と⑧「クラン」が新登場ですが、いずれについても後述します。②「哭声(コクソン)」は、ドキュメンタリー以外の韓国映画では久しぶりの高得点です。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績5月13日(金)~5月15日(日)] ★★★

         今年上半期一番の韓国映画か!? 「哭声」が他を圧倒
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(37)・・哭声(韓国)・・・・・・・・・・・・・・5/12・・・・・・・・・・1,829,720・・・・・・・・・2,315,488 ・・・・・・・・19,124 ・・・・・・1,481
2(1)・・シビル・ウォー ・・・・・・・・・・・4/27・・・・・・・・・・・・527,628・・・・・・・・・8,235,632 ・・・・・・・・69,119・・・・・・・・887
        /キャプテン・アメリカ
3(2)・・探偵洪吉童:消えた村(韓国)・・5/04・・・・・・・・226,181・・・・・・・・・1,204,132・・・・・・・・・・9,782・・・・・・・・519
4(113)・・アリージェント part1 ・・・・5/12 ・・・・・・・・・・・・59,705 ・・・・・・・・・・・76,049 ・・・・・・・・・・・615・・・・・・・・392
5(3)・・劇場版 アンニョン、チャドゥ(韓国)・・5/04・・・・・43,220・・・・・・・・・・・263,613 ・・・・・・・・・2,013 ・・・・・・・・320
6(55)・・猟奇的な彼女2(韓国) ・・・5/12 ・・・・・・・・・・・・38,589・・・・・・・・・・・・56,189 ・・・・・・・・・・・448 ・・・・・・・・385
7(78)・・私の少女時代 Our Times・・5/12 ・・・・・・・・・・36,556・・・・・・・・・・・・46,545 ・・・・・・・・・・・393 ・・・・・・・・128
8(5)・・ズートピア・・・・・・・・・・・・・・・2/17・・・・・・・・・・・・・19,938 ・・・・・・・・・4,694,845 ・・・・・・・・37,016 ・・・・・・・・179
9(6)・・ウォーキング with ダイナソー・・5/04・・・・・・・・13,345・・・・・・・・・・・106,928 ・・・・・・・・・・・818・・・・・・・・・158
10(4)・・魔法の筆 ・・・・・・・・・・・・・・5/04・・・・・・・・・・・・・13,106・・・・・・・・・・・166,556・・・・・・・・・・1,259 ・・・・・・・・173
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の注目は何といっても「哭声(コクソン)」。公式公開4日で観客動員200万人を突破という動員力の勢いだけでなく、内容的にも今年に入って一番の韓国映画との声が上がっています。冒頭に書いた期待作「アガシ」が来月初めに公開されるので、実際に一番のままでいくのかどうかはわかりませんが・・・。(もう1つの期待作コン・ユとチョン・ユミ共演のアクション・スリラー「釜山行」は7月公開。)
 新登場は1・4・6・7位の4作品です。
 1位「哭声(コクソン)」は、韓国のミステリー&スリラー&ドラマ。他所から1人の見知らぬ<外地人>(國村隼)が現れてから、村では謎の連続殺人事件が発生します。警察は野生毒キノコの集団中毒と結論を下しますが、<外地人>がすべての事件の原因との噂が村に広がります。警察官のジョング(クァク・ドウォン)は事件現場を目撃したという女性ムミョン(チョン・ウヒ)に会い、<外地人>に対する噂に確信を持ち始めます。そのジョングの娘ヒョジン(キム・ファニ)にも事件の被害者たちと似たような症状が出始めると、切羽詰まったジョングは<外地人>を訪ねて乱暴を働き、呪術使(シャーマン)のイルグァン(ファン・ジョンミン)を呼び入れるのですが・・・。本当に原因は毒キノコなのか、それとも・・・。この作品は土俗信仰やカトリックといった宗教ともからみ(最初に提示される聖書の中のキリスト復活の時の言葉=「なぜおじ惑っているのか。どうして心に疑いを起すのか・・・」が意味ありげ?)、夢と現実の交錯、反転に次ぐ反転で観客を幻惑する内容で、観る人によって異なる解釈もあるようで、それもナ・ホンジン監督のねらいのような・・・。原題は「곡성」です。
 4位「アリージェント part1」は、アメリカの人気作家ベロニカ・ロスのベストセラーが原作のSFファンタジーアクションの「ダイバージェント」シリーズ。本作は第3部前編にあたります。100年後のシカゴが舞台で、そこは住民を5つの派閥に振り分けて維持されているディストピア社会ですが、主人公の少女トリス(シェイリーン・ウッドリー)はどの派閥にも属さないダイバージェント(異端者)。今作は、「シカゴを囲い込むフェンスの外ではダイバージェントが必要とされている」と告げたビデオ映像が人々に大きな衝撃を与える中、シカゴの指導者となったイヴリン(ナオミ・ワッツ)はフェンスに殺到する人々を兵士を用いて食い止め、自らの支配下に置こうとします。トリスとフォーは新しい共同体で指導的地位に就くようイヴリンに迫られ危機に陥っていたところ、謎の武装集団に誘拐(救出?)されます。その集団がアリージェントで、彼らはこれまでの生活を維持するためイヴリンに反旗を翻すのですが・・・。韓国題は「다이버전트 시리즈: 얼리전트」。日本公開は未定のようです。
 6位「猟奇的な彼女2」は、もちろんあの2001年の大ヒット作の続編。といっても主演の1人チャ・テヒョンだけが同じでヒロインも監督も違います。運命的な思っていた長い髪の「あの」猟奇的な彼女は突然尼になって消え(エッ!?)、その後失恋+失業+お金の3苦に苦しんだキョヌ(チャ・テヒョン)の前に現れたのは、子供の頃の初恋の相手で中国に行っていた彼女(ビクトリア)。ひたすら彼と結婚するため山を越え川を渡って来た大陸の娘「彼女」。「「まさか結婚て、聞き違い?」・・・と言いつつも転がり込んできた幸運をサッと捕らえるフツーの男キョヌ(←ナサケな~い)。ところがこの「彼女」、初代より殺伐として、より猟奇的とは! また、夜はより殺伐として昼はより猟奇的で・・・って一体何なんだ! こうした設定だけで最低評点1をつけた多くのネチズンの気持ちがわかります(泣)。原題は「엽기적인 그녀 2」。
 7位「私の少女時代 Our Times」は、昨年台湾で大ヒットした90年代の青春ラブストーリー。今年3月の<大阪アジアン映画祭>でも上映されました。主人公の林真心はごく平凡な女子高生。イケメン男子に片思いしてますが、その彼がアイドル女子と付き合っていると勘違いして2人を別れさせる作戦に出ます・・・。この作品については一青妙さんがご自身のブログで詳しく書いていらっしゃいます。(→コチラ。)
http://ameblo.jp/hitototae/entry-12070752510.html
それによると、コックリさん、アイドルのキーホルダーにブロマイド、不幸の手紙等々が登場するそうで、日本の女生徒とずいぶん似ているなあと思います。(そこらへんを学問的に研究している人はいるのかな?) 原題は「나의 소녀시대」。日本での一般公開は今年10月の予定です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・さざなみ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/05・・・・・・・・・・・・・・・3,030・・・・・・・・・・・・16,479 ・・・・・・・・・・・・・130 ・・・・・・・・・36
2(新)・・クラン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/12 ・・・・・・・・・・・・・・・2,496・・・・・・・・・・・・・4,260 ・・・・・・・・・・・・・・34 ・・・・・・・・・56
3(5)・・神は死んだのか 2 ・・・・・・・・・・・・・・4/07・・・・・・・・・・・・・・・2,326・・・・・・・・・・・・31,765 ・・・・・・・・・・・・・230・・・・・・・・・・・8
4(4)・・シーモアさんと、大人のための人生入門・・4/07・・・・・・・1,158・・・・・・・・・・・・17,608 ・・・・・・・・・・・・・142・・・・・・・・・・・9
5(2)・・ビートルズがやって来る ・・・・・・・・5/05 ・・・・・・・・・・・・・・・1,116・・・・・・・・・・・・・7,024・・・・・・・・・・・・・・・56・・・・・・・・・・30
         ヤァ!ヤァ!ヤァ!

 2位の「クラン」が新登場。80年代初頭アルゼンチンを震撼させた 多額のを要求した4件の身代金目当ての誘拐・殺人事件に基づいたアルゼンチンの犯罪スリラーです。原題の「El clan」とは一族の意味で、ここではブエノスアイレス州北部の上流階級のプッチオ一家。模範的な夫婦と仲のいい5人の子供の団欒に満ちた家族です。しかし、そこには 決して口にしてはならない秘密が隠されていたのです。 恋人も友人も同僚も、誰も疑わなかった。それだけに衝撃も大きかったその恐ろしい秘密とは・・・。韓国題は「클랜」。日本公開は未定のようです。
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3冊(+α)チェーンリーディング① 卞宰洙(ピョン・ジェス)「朝鮮半島と日本の詩人たち」

2016-05-15 23:19:53 | 韓国・朝鮮に関係のある本
 チェーンリーディングという言葉がどれくらい一般的かわかりませんが、同じ著者の本を続けて読んだり、あるいは読んでいる本に載っている人物や事柄で興味を持ったことがあればその関連書を次に読み、さらにその次も、とチェーンスモーキングのように続けていくこと。
 考えてみれば私ヌルボ、読書歴を振り返ってみるとそういう傾向が強いなと思います。
 最近もそう。 まず発端は4月27日中野にセウォル号関係のドキュメンタリー映画「ダイビング・ベル」を観に行ったのがそもそもの発端。※この映画については→コチラの記事に説明と監督インタビューあり。
 で、その場で配られたチラシの中に、この新刊書(今年2月刊)の広告があったのです。

 卞宰洙(ピョン・ジェス)「朝鮮半島と日本の詩人たち」(スぺース伽耶)。明治時代~現代の日本の詩人・歌人たち90人の、朝鮮・韓国をテーマとした作品を集めたものです。
 この卞宰洙さんの本は、2006年1月から隔週で<朝鮮新報>で114回にわたって連載されていた〈朝鮮と日本の詩人〉シリーズをもとにまとめられたもので、そのウェブサイトで観ることができるので、私ヌルボもこれまで全部ではないものの、しばしば目を通してきました。(実は今も読めます。記事一覧のベージは→コチラ。要会員登録。)
 ※シリーズは初回のアイサツと1人のダブリを除いて112人分。その中になくて本のみに掲載の詩人も若干いるので、本には載っていない詩人も30人近くいます。

 90人の顔ぶれを見ると、A=石川啄木高村光太郎といったチョー有名な人から、B=名前だけは知ってるレベルの人、そしてC=私ヌルボがぜ~んぜん知らなかった人までいろいろ。で、Cがおよそ4割くらい。うーむ・・・。
 ※「アンタが知らんだけやろ」と言われそうなので、9n-1番目の10人拾ってみました。→鹿地亘・新井徹(内野健児)・沢村光博・吉野弘・栗原貞子・関根弘・柾木恭介・鈴木比佐雄・濱口國雄・結城哀草果
 また、有名人でも抒情詩人もいればプロレタリア詩人もいて実に多様。卞宰洙さんは執筆にあたっていろんな詩集・全集・同人誌等を渉猟したそうで、なるほど、その苦心が推察される内容です。
 全体的な紹介は<朝鮮新報>のサイトにある佐川亜紀さんの記事(→コチラ)と、<レイバーネット>の牧子嘉丸さんの記事(→コチラ)を参照されたし、ということにします。

 で、肝心のこの本なのですが、どうも版在庫切れのようで、アマゾン等でも入荷時期未定が続いています。さいわい図書館にあったのでさっそく借りてきてイッキ読みしました。一言で言って、良い本だと思います。これまでに類書も(たぶん)ないし、たくさんの詩人・歌人のたくさんの作品と出会って新鮮な気持ちを味わえます。

 多様なのは作者の顔ぶれだけではなく、作品も同様。
 あの石川啄木
  地図の上
  朝鮮国にくろぐろと
  墨をぬりつつ秋風を聴く

とか、中野重治「雨の降る品川駅」のようなよく知られた詩は当然収録されていますが、著名な詩人にもこんな詩があったのか、という意外なものも少なからずあります。
 たとえば三好達治「丘上吟」(→コチラ.彼も扶余に行ったことがあるのか)とか、萩原朔太郎が関東大震災の時の体験を基に書いた「近日所感」という三行詩(→コチラ)。
  朝鮮人あまた殺され
  その血百里の間に連なれり
  われ怒りて視る、何の惨虐ぞ


 通読してヌルボが感じたことを略述すると・・・

①日本の統治期や(韓国の)戦後の軍事独裁の時期を批判する内容のものが多い。朝鮮総聯の機関紙<朝鮮新報>としてプロレタリア詩人多く取り上げているのは当然ですが、それ以外の詩人の作品も含めて。以前→コチラの記事で紹介した「朝鮮風土歌集」(1935年刊)の生活感や自然情緒に満ちた短歌の雰囲気とはエライ違いです。(社会意識とかイデオロギーとかのなんと厄介なことか・・・。)
②上記のような「植民地」朝鮮の自然と風土の中で「ふつうの」日本人として育った人が敗戦後日本の統治の実態を知って罪責感を持つようになったのは理解できるような・・・。そうでなくても、1950(~60?)年代までの戦後民主教育を受けた世代も贖罪意識を抱いている人が多いように思われます。
 シリーズ最後の記事(→コチラ)で卞宰洙さん自身が「114編すべての詩に通底しているのは、各詩人によって深浅の差はあるものの、日帝の朝鮮侵略に対する悔恨の情と罪己の念であり、圧政に苦しむ朝鮮民衆への同情と友誼の意志である」と書いていますが、相当程度までは意図的にそういった作品を集め、またある程度までは朝鮮をテーマにした作品を集めるとそうした傾向を帯びたものが多くなるということでしょうか。
 ③より<朝鮮新報>らしい点は「金日成主席賛歌と朝鮮への共感、在日同胞の帰国運動の支持を明示した作品」が12編収められていること。
 たとえば真壁仁「ペクトゥの峰」(→コチラ)は次のような詩句で始まります。
 白頭の峰は雪にかがやき/けだかい白銀の頭を/三千里江山にめぐらしているだろうか/私はその峰があなたの顔に重なって見える/それはどんなに離れていても見える高さだ/あの山ふところが国土をうるおす水のみなもと (以下略)
 これには「金日成首相還暦慶賀詩」という献辞が付されています。
 あるいは、金日成が還暦を迎えた年に15人の短歌を集めて「万壽無彊」という文集が出版されとのことですが、その中の結城哀草果の作品が次の3首を含む9首(→コチラ。)
  世界平和の為六十年前昇りし太陽常若く今朝も輝く金日成首相
  金日成首相の還暦よろこぶ歌合唱が世界の山河大きくゆすぶる
  還暦の首相の額なごましく民族愛に蔭一つなし

 ・・・このような作品が、「皇国日本」の時代の天皇を称揚する詩歌とどう違うのか、私ヌルボにはわかりません。半世紀あるいはそれ以上前、このような作品を発表した人たちは今存命ならどのように振り返っているのでしょうか? あるいは、厳しい言い方ですが卞宰洙さんは(本心では)どのように思っておられるのか? 何の疑問も抱いていないのなら問題だし、本心を偽っているのならそれも問題です。

 上述した以外に、個人的に興味を持った詩人その1は郡山弘史(1902~66)。(→コチラ。)
 横浜生まれで、1924年東北学院専門部英文科を卒業後に朝鮮京城府立第一普通高等学校教師となる(~1928)。その間1926年詩集「歪める月」出版。1930年代にプロレタリア詩人として活躍。・・・ということですが、横浜の図書館にも関係の書籍・資料は未だ見つからず。
 2人目の詩人は中浜哲なのですが、彼については続きで書くことにします。

☆この本の90人の中で、ヌルボが好きな詩の1つが吉野弘「韓国語で」(→コチラ)です。冒頭部分は次の通りです。

  韓国語で
  馬のことをマル(말)という。
  言葉のことをマール(말)という。
  言葉は、駆ける馬だった
  熱い思いを伝えるための-。

  韓国語で
  目のことをヌン(눈)という。
  雪のことをヌーン(눈)という。
  天上の目よ、地上の何を見るために
  まぶしげに降ってくるのか。


 「素直な疑問符 吉野弘詩集」は横浜市立図書館ではティーンズ向けの書架にある本ですが、平易な表現の中に深い思索と豊かな感性が込められた作品集です。
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韓国内の映画 NAVER映画とシネ21の人気順位 と 週末の興行成績 [5月6日(金)~5月8日(日)]

2016-05-10 23:51:59 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 先週アップした「太陽の下」(韓国題:태양 아래.英題:Under the Sun)のアクセス数が数日前から急増したのでなぜか思ったら、5月5日に朴槿恵大統領が脱北者約50人を招待してソウル市内の映画館でこのドキュメンタリーを鑑賞したとのことでした。この頃TVをほとんど見ないので、情報感度が鈍ってきているようです。そういえばNHKで一昨日放映していたというドキュメンタリー「(韓国の)“絶望ラジオ”の若者たち」のことも今日知ったからなー。

 昨日はシネマート新宿の10周年記念特別先行上映という「暗殺」を観に行ってきました。いろいろネタを仕入れるとともに、考えたこともいくつかあるので、ソチラを先に記事にまとめようと書きは自他のですが、まだ途中。明日(11日)中にはアップします。ちょいと予定の項目(の一部)だけ挙げておくと、①「反日映画」でなく「反‘親日’映画」 ②史実とフィクションの間 ③最近目立つ日本統治期を描いた映画と、そのイメージの変化 ④「進歩系」の映画と「保守系」の映画 等々です。
 
「朝鮮日報」5月6日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)
 「探偵 洪吉童:消えた村」
  シリーズにしてほしい ★★★☆
 「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」
  ビートルズが「別に」って ? ★★★☆
 「さざなみ」
  45年にして女は未知 ★★★☆
 「超人」
  かわいく瑞々しい。青春 ★★★
 「超人」は韓国のロマンス。学校で問題を起こし、罰として図書館で仕事をすることになった体操選手のトヒョン(キム・ジョンヒョン)は、そこで毎日本を借りに来る少女スヒョン(チェ・ソジン)と出会います。スヒョンの勧められてトヒョンは生まれて初めて本を読み始めるうちに、彼はスヒョンに初めて心のトキメキを感じるようになりますが・・・。他の3作品は下の記事中で紹介しています。

           ★★★ NAVERの人気順位(5月10日現在上映中映画) ★★★

①(1) ズートピア  9.40
②(2) 東柱[ドンジュ](韓国)  9.40
③(3) ライフ・イズ・ビューティフル  9.37
④(5) 時をかける少女(日本)  9.26
⑤(9) 鬼郷(韓国)  9.20
⑥(-) ムーラン・ルージュ  9.12
⑦(-) 太陽の下  9.08
⑧(-) リリーのすべて  8.95
⑨(-) 恋人までの距離〈ディスタンス>  8.94
⑩(-) あらしのよるに(日本)  8.92

 入れ替わりはありましたが、新登場の作品はありません。新作では⑦「太陽の下」がこのランキング初登場。

           ★★★ シネ21 専門家の平均得点順位 ★★★

①(2) キャロル  9.00
②(4) ライフ・イズ・ビューティフル  8.40
③(7) スポットライト 世紀のスクープ  8.00
③(7) ブルックリン  8.00
⑤(10) ドリーム ホーム 99%を操る男たち7.80
⑥(-)ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!  7.60
⑦(-)アノマリサ  7.50
⑦(-)さざなみ  7.50
⑨(-)シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ  7.45
⑩(-)東柱(韓国)  7.33
⑩(-)シーモアさんと、大人のための人生入門  7.33
⑩(-)トランボ ハリウッドに最も嫌われた男  7.33

 前週までランクインしていた作品の半数の上映が終わったため大幅に入れ替わりました。
 ⑤「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」は1964年のビートルズ初主演映画。2001年に原題通り「ハード・デイズ・ナイト」のタイトルで再上映されました。韓国題は「비틀즈: 하드 데이즈 나이트」です。
 ⑦「さざなみ」は、日本ではすでに4月9日公開されています。韓国題は「45년 후」。
 上記2作品以外は本ブログで紹介済み。大人向きアニメ⑦「アノマリサ」は日本で一般公開はないのか再確認したら、6月にDVDがでるような・・・。動画検索すると、1 :49だけ観られます。いや、<無料で配信!31日間は見放題!>というのもありますよ。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績5月6日(金)~5月8日(日)] ★★★

         「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」が勢い持続
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・シビル・ウォー ・・・・・・・・・・・4/27・・・・・・・・・・1,586,340・・・・・・・・・・7,342,009 ・・・・・・・・61,574 ・・・・・・1,771
        /キャプテン・アメリカ
2(35)・・探偵洪吉童:消えた村(韓国)・・5/04・・・・・・・508,215 ・・・・・・・・・・792,512 ・・・・・・・・・6,516 ・・・・・・・・761
3(26)・・劇場版 アンニョン、チャドゥ(韓国)・・5/04・・・117,105 ・・・・・・・・・・213,496 ・・・・・・・・・1,639 ・・・・・・・・490
4(104)・・魔法の筆 ・・・・・・・・・・・・・5/04・・・・・・・・・・・・・69,957・・・・・・・・・・・148,441 ・・・・・・・・・1,126 ・・・・・・・・431
5(3)・・ズートピア・・・・・・・・・・・・・・・2/17・・・・・・・・・・・・・65,546 ・・・・・・・・・4,666,380 ・・・・・・・・36,791 ・・・・・・・・305
6(39)・・ウォーキング with ダイナソー・・5/04・・・・・・・47,540・・・・・・・・・・・・90,759 ・・・・・・・・・・・699・・・・・・・・・300
7(新)・・ダイノX探検隊(韓国) ・・・・5/04 ・・・・・・・・・・・・35,267・・・・・・・・・・・・75,462 ・・・・・・・・・・・586・・・・・・・・・306
8(2)・・時間離脱者(韓国)・・・・・・・・4/13・・・・・・・・・・・・・17,942・・・・・・・・・1,191,297 ・・・・・・・・・・9,647 ・・・・・・・・161
9(10)・・ブルックリン ・・・・・・・・・・・・4/21・・・・・・・・・・・・・・6,732 ・・・・・・・・・・・38,219・・・・・・・・・・・・309・・・・・・・・・・29
10(9)・・太陽の下・・・・・・・・・・・・・・・4/27・・・・・・・・・・・・・・6,071 ・・・・・・・・・・・20,894・・・・・・・・・・・・140・・・・・・・・・・58
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」が前週に続き突出している中で、「探偵洪吉童:消えた村」がけっこう善戦しているかな? 5日は韓国も子供の日。それがベスト10にも反映されています。
 今回の新登場は2・3・4・6・7位の5作品です。
 2位「探偵洪吉童(ホン・ギルドン):消えた村」は、韓国のドラマ&アクション。探偵ホン・キルドン(イ・ジェフン)は人探しのプロ。ただそんな彼にも20年間探しても未だ見つけられない人が1人、母を殺した恩讐の相手キム・ビョンドク(パク・クニョン)がいた。ようやくビョンドクを見つけるが、間一髪の差で誰かにビョンドクが拉致されてしまった後だった。 孫のドンイ(ノ・ジョンイ)とマルスンだけが残されていたビョンドクの家。祖父を探してくれとすがるドンイとマルスンを連れ、消えたキム・ビョンドクの手がかりを探しているうちに、ホン・キルドンは国家を飲み込む黒い巨大組織クァンウン会の実態に直面することに・・・。原題は「탐정 홍길동:사라진 마을」です。
 3位「劇場版 アンニョン、チャドゥ」は、韓国のアニメ。1978年~1980年代初頭、ソウルの冠岳区黒石洞(現・銅雀区)に暮らす小学生の少女チャドゥの平凡な家庭を作者イ・ビン自身の思い出に基づいて描いた人気漫画(現在まで23巻刊行)が原作で、それが2011年以降SBSでアニメとして放映され、今回初めて映画化されたものです。日本でいえば「ちびまる子ちゃん」あたりかな? 子供の日、家族と一緒に遊園地に遊びに来たチャドゥでしたが、遊んでいて急にトイレに行きたくなり、ある建物に入るとそこに古い童話本があります。チャドゥがその本を開いた瞬間、なんとチャドゥは本の中に入ってしまいます・・・。韓国題は「극장판 안녕 자두야」。
 4位「マジックブラシ」は、中国アニメ。韓国題は韓国題は「매직브러시(マジックブラシ)」なので、床を磨くブラシかと思ったら筆なのですね。 金でも木でも猫でも、必要な物を描くがままに作ることができるのがこの魔法の筆。これをねらって欲張りの黒将軍がひまわりの里にやってきます。これを知った魔法筆の神・白導師は、絵師を夢見る少年ヒロに魔法の筆を渡して村を守るよう告げます。ヒロはその筆で絵の友人を作って村を守りますが、魔法の筆は黒将軍に奪われてしまいます。筆を取り戻すため、ヒロの冒険が始まります・・・。これって中国の有名な同名の絵本とちょっと関係ありそうかも・・・。
 6位「ウォーキング with ダイナソー 白亜紀の恐竜大百科」(仮)は、2013年の前作に続くイギリスのアニメシリーズ第2弾。7000万年前、暖かいアラスカに住んでいた恐竜パキの家族。寒い冬を避けて多くの恐竜たちと暖かい南に大移動を開始します。ところが、 地上の強敵だけでなく、海の支配者や、空を飛ぶ竜など見たこともない恐竜の襲撃を受ける等々の危機の連続。はたしてパキの家族の運命は? 韓国題は「다이노소어 어드벤처 : 백악기 공룡대백과」。第1作は日本でも公開されましたが、今作については未定のようです。
 7位「ダイノX探検隊」は、韓国のドキュメンタリー・アニメ。朝鮮半島で最初に発見された保存状態の良い謎の化石を、韓国一の恐竜の権威イ・ユンナム博士はダイノXと名付けます。博士を筆頭に組織された国際恐竜探検隊は1億年前の朝鮮半島に生きていたダイノXの秘密を探すため、恐竜の化石の宝庫ゴビ砂漠へと向かいます。探検隊は徐々にその真実を知るようになりますが・・・。原題は「다이노X 탐험대」です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・さざなみ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/05・・・・・・・・・・・・・・・5,765・・・・・・・・・・・・・9,766 ・・・・・・・・・・・・・・79 ・・・・・・・・・42
2(36)・・ビートルズがやって来る ・・・・・・・・5/05 ・・・・・・・・・・・・・・2,636・・・・・・・・・・・・・4,610 ・・・・・・・・・・・・・・38 ・・・・・・・・・38
         ヤァ!ヤァ!ヤァ!
3(1)・・はなちゃんのみそ汁(日本)・・・1・・・4/27・・・・・・・・・・・・・・・1,902・・・・・・・・・・・・12,484 ・・・・・・・・・・・・・・95 ・・・・・・・・・29
4(4)・・シーモアさんと、大人のための人生入門・・4/07・・・・・・・1,583・・・・・・・・・・・・15,559 ・・・・・・・・・・・・・126・・・・・・・・・・11
5(5)・・神は死んだのか 2・・・・・・・・・・・・・・・4/07 ・・・・・・・・・・・・・・1,395・・・・・・・・・・・・28,828 ・・・・・・・・・・・・・213・・・・・・・・・・・5

 1・2位の2作品が新登場ですが、いずれについても上述しました。
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韓国内の映画 NAVER映画とシネ21の人気順位 と 週末の興行成績 [4月29日(金)~5月1日(日)]

2016-05-03 23:46:27 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 4月27日に韓国で世界初公開されたドキュメンタリー「太陽の下」(韓国題:태양 아래.英題:Under the Sun)について書き始めたところ、長くなりすぎたので1本の記事として→1つ先にアップしました。

 27日シネマート新宿で「ノーザン・リミット・ライン 南北海戦」鑑賞。その2日前に観た「西部戦線1953」とはいろんな点で対照的です。興行成績(観客動員数)は前者の約600万人に対し、後者はその1割の約60万人。質的にそんなに大差はないと思うのですが、①軍隊関係団体等の動員力 ②概してリアリティに欠ける「左派系」戦争映画(それも半世紀以上前の朝鮮戦争)に対し、「ノーザン・・・」は2002年の延坪海戦を事実に即して描いた生々しさがある ③延坪海戦は折しもワールドカップで韓国とトルコの3位決定戦が行われていた最中のことで、当時サッカーに夢中になっていた多くの人たちに罪責感のようなものがある( ??) ・・・といったことで差がついたのかも・・・。その6月29日、北朝鮮の警備艇2隻が黄海の北方限界線(←北朝鮮側は認めていない)を侵犯し、韓国海軍も哨戒艇2隻を派遣して計4隻の艦艇が接近した時北朝鮮側が発砲し、双方の間で銃撃戦が展開されて韓国側は6人が死亡、北朝鮮側は死亡13人というのがこの海戦のあらましです。私ヌルボとしても、「左」「右」を問わず、やはり事実の重みを痛感しました。ただし、境界をめぐる紛争は双方に相容れない「言い分」があるから起きるわけで、それを解決しないと同じような悲劇は繰り返されるでしょう。

 同じ27日の夜はなかのZERO小ホールで例の「ダイビングベル」の上映会。やはりセウォル号事故には韓国の諸問題がいろいろ重なり合っています。(「左右」を問わず。) とくにこのドキュメントからは大手メディアのいかがわしさが読み取れました。 ※日本のメディアの問題については、4月30日から3回にわたって<国連特別報告者が見た日本>を連載したのは時宜を得たものでした。→(上)報道の独立性に危機・→(中)押し返す力が弱体化・→(下)政治的意図、教科書に

 29日は想田正弘監督の‘観察映画’「牡蠣工場」。いやー、これは良かった! ほとんど働いている人たちをただ撮っているだけなんですけどね。撮影地の岡山県・牛窓(今は瀬戸内市の一部)といえば韓国オタクとしては朝鮮通信使由来の唐子踊りのことくらいしか知りませんでしたが、牡蠣が有名な所なんですね。
 
「朝鮮日報」4月29日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)
 「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」
   鬼才マーベル、進化・変身! ★★★★


 「太陽の下」

   笑えないトゥルーマン・・・ ★★★☆


 「はなちゃんのみそ汁」

   生き抜く力、結局は家族 ★★★

 「貪欲の星」

   最高潮の場面で興ざめ ★★★


 「タンブルダウン」

   流れ行く流行歌のよう ★★☆

 「シークレット・アイズ」

   原作を再読するとよい ★★☆
 
 「貪欲の星」は韓国のドキュメンタリー。1997年のIMF通貨危機以後 約300兆ウォンもの利益を外国資本が韓国から持ち出しているとは! 以後外国投資家が儲ける間にも韓国では仕事は減り、生活は貧しくなっていき・・・。他の4作品は下の記事中で紹介しています。

           ★★★ NAVERの人気順位(5月3日現在上映中映画) ★★★

①(2) ズートピア  9.41
②(1) 東柱[ドンジュ](韓国)  9.41
③(3) ライフ・イズ・ビューティフル  9.37
④(-) 言えない秘密  9.27
⑤(-) 時をかける少女(日本)  9.26
⑥(-) おまえ うまそうだな(日本)  9.25
⑦(4) シザーハンズ   9.25
⑧(5) Bleak Night(韓国)  9.20
⑨(6) 鬼郷(韓国)   9.20
⑩(8) エディー・ジ・イーグル  9.14

 ○印の右の( )は前週の順位ですが、(新)なのか(11位以下)なのかよくわからないので(-)としました。そして原則として本ブログ初登場の作品についてのみ説明を付けることにします。
ということで見てみると、今回の(-)印の3作はいずれも旧作の再上映。(⑤「時をかける少女」は2006年の細田監督によるアニメ版です。)
 ずっとこのような旧作優位が続くのでしょうか? 私ヌルボまだよくわからず。

           ★★★ シネ21 専門家の平均得点順位 ★★★

①(1) 男たちの挽歌II  10.00
②(2) キャロル  9.00
③(3) ヘイトフル・エイト  8.60
④(4) ライフ・イズ・ビューティフル 8.40
⑤(5) 黒衣の刺客  8.29
⑥(6) エターナル・サンシャイン  8.25
⑦(7) スポットライト 世紀のスクープ  8.00
⑦(7) ブルックリン  8.00
⑨(9) HUNGER/ハンガー  7.88
⑩(10) ドリーム ホーム 99%を操る男たち  7.80

 今回の順位変動はありません。コチラは再上映の旧作が①④⑥の3作品です。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績4月29日(金)~5月1日(日)] ★★★

         「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」がスクリーンを席捲!
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・シビル・ウォー ・・・・・・・・・・4/27・・・・・・・・・・2,731,018・・・・・・・・3,934,248 ・・・・・・・・32,779 ・・・・・・1,990
        /キャプテン・アメリカ
2(1)・・時間離脱者(韓国)・・・・・・・・4/13 ・・・・・・・・・・・・86,661 ・・・・・・・1,130,023 ・・・・・・・・・9,161 ・・・・・・・・447
2(4)・・ズートピア・・・・・・・・・・・・・・・2/17 ・・・・・・・・・・・・76,372・・・・・・・・4,541,639 ・・・・・・・・35,797 ・・・・・・・・400
4(3)・・偉大な願い(韓国)・・・・・・・・4/21 ・・・・・・・・・・・・30,542 ・・・・・・・・・286,561 ・・・・・・・・・2,281 ・・・・・・・・370
5(5)・・解語花(韓国)・・・・・・・・・・・・4/13 ・・・・・・・・・・・・18,883 ・・・・・・・・・460,653 ・・・・・・・・・3,586・・・・・・・・・225
6(4)・・私に、会いに来て(韓国)・・・4/07 ・・・・・・・・・・・・18,631 ・・・・・・・1,051,405 ・・・・・・・・・8,743 ・・・・・・・・242
7(8)・・ライフ・イズ・ビューティフル・・1999/3/06・・・・・10,449 ・・・・・・・・・104,031・・・・・・・・・・・715・・・・・・・・・・94
8(新)・・シークレット・アイズ・・・・・・4/27・・・・・・・・・・・・10,227・・・・・・・・・・・15,634・・・・・・・・・・・118・・・・・・・・・186
9(新)・・太陽の下・・・・・・・・・・・・・・・4/27・・・・・・・・・・・・・6,759 ・・・・・・・・・・・10,212・・・・・・・・・・・・71・・・・・・・・・120
10(14)・・ブルックリン ・・・・・・・・・・・4/21・・・・・・・・・・・・・6,702 ・・・・・・・・・・・24,311・・・・・・・・・・・192・・・・・・・・・・36
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 何と言っても「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」のスクリーン占有率は圧倒的です。これでは2位「時間離脱者」も10万人に達しないのも当然。とくに独立系の作品の上映機会が狭まるのが気懸りです。今年に入ってからだけでも「検事外伝」と「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」の時に同様のスクリーン寡占状態となりました。以前はそれほどでもなかったと思いますが・・・。
 今回の新登場は1・8・9位の3作品です。10位「ブルックリン」については前回の記事で紹介済みです。
 1位「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」はアメリカのアクション・エンターテイメント。日本でも4月29日公開されているので、説明は省略します。韓国題は「캡틴 아메리카: 시빌 워」です。
 8位「シークレット・アイズ」は、第82回アカデミー外国語映画賞を受賞した2009年のアルゼンチン映画「瞳の奥の秘密」をリメイクしたサスペンススリラー。舞台は2002年のロサンゼルス。FBI捜査官のレイ(キウェテル・イジョフォー)が殺人事件発生の報を受けて現場に駆けつけると、被害者は同僚で親友でもある捜査官ジェス(ジュリア・ロバーツ)の娘。捜査に乗り出したレイと検事補クレア(ニコール・キッドマン)はやがて容疑者を特定しますが、FBI内部の事情によって真相は闇に葬られてしまいます。ところがそれから13年後、事態は急展開を迎え、驚きの真実が浮かび上がります・・・。韓国題は「시크릿 인 데어 아이즈」。日本公開は6月10日です。
 9位「太陽の下」(仮)については、記事冒頭で記したように、1つ前の記事で詳述しました。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(27)・・はなちゃんのみそ汁(日本)・・・・・・4/27・・・・・・・・・・・・・・・4,742・・・・・・・・・・・・・7,426 ・・・・・・・・・・・・・・55 ・・・・・・・・104
2(新)・・タンブルダウン・・・・・・・・・・・・・・・・・4/27・・・・・・・・・・・・・・・3,816・・・・・・・・・・・・・7,019 ・・・・・・・・・・・・・・51 ・・・・・・・・143
3(2)・・トランボ ハリウッドに最も嫌われた男・・4/07・・・・・・・・・・1,994・・・・・・・・・・・・59,058 ・・・・・・・・・・・・・464・・・・・・・・・・22
4(4)・・シーモアさんと、大人のための人生入門・・4/07・・・・・・・1,940・・・・・・・・・・・・11,768 ・・・・・・・・・・・・・・94・・・・・・・・・・17
5(3)・・神は死んだのか 2・・・・・・・・・・・・・・・4/07 ・・・・・・・・・・・・・・1,460・・・・・・・・・・・・26,565 ・・・・・・・・・・・・・198・・・・・・・・・・13

 1・2位の2作品が新登場です。
 1位「はなちゃんのみそ汁」はあらすじを読んだだけでも涙が出てきそうです。ヌルボは観てませんが、笑いの要素もあるとのこと。韓国のネチズンの平均評点も9.28の高ポイントです。韓国題は「하나와 미소시루」。
 2位「タンブルダウン」(仮)は、アメリカ・カナダ合作のロマンス。天才ミュージシャンと呼ばれた夫ハンターが世界から消えた後、ハンナ(レベッカ・ホール)は平和な田舎の村で1人暮らしています。ある日、ハンターの未知の生活について文章を書くために作家のアンドリュー(ジェイソン・サダイキス)がニューヨークからやってきます。2人の最初の出会いは楽しいものではなかったものの、2人は一緒にハンターの伝記を書くことに決め、たがいに反発しながらも決まった時間を共にすることになります。そして彼が去るのですが、彼が最後に残した歌を発見した瞬間、彼女は懐かしさと新しいときめきを覚えます・・・。韓国題は「사랑과 음악 사이(愛と音楽の間)」ですが、原題「Tumbledown」を仮題としました。日本公開は未定のようです。
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北朝鮮の女の子の日常ではなく、北朝鮮当局の「ヤラセ」を暴露してしまったドキュメンタリー「太陽の下」

2016-05-03 23:32:15 | 韓国・北朝鮮に関係する映画
 4月27日、韓国でロシア・ドイツ・チェコ・ラトヴィア・韓国合作のドキュメンタリー太陽の下(韓国題:태양 아래.英題:Under the Sun)が世界で初めて公開されました。
 ロシアのヴィタリー・マンスキー監督が北朝鮮の8歳の女の子ジンミとその家族の日常>(??)を撮ったドキュメンタリーで、1ヵ月ほど前に開かれた<香港国際映画祭2016>のヤング・シネマ・コンペティション部門で審査員賞を受賞した作品です。ところが、その内容というのが北朝鮮当局の露骨な<ヤラセ>をそのまま映し出したものとなって話題となり、また問題にもなっています。
 私ヌルボ、昨年12月の<デイリーNK>の記事(→コチラ)を読んでこのドキュメンタリーのことを知りました。最近では、公開前日の4月26日の<聯合ニュース>にも記事(→コチラ)が載っていました。また、いつも重宝している<海から始まる!?>の記事(→コチラ)にもこの作品について詳しく記されています。
 これらを総合するとおよそ以下の通りです。
 ドキュメンタリーの(本来の)内容は、上記のように女の子ジンミちゃんとその両親という「平壌では一般的な」家庭の日常を描くというもの。ジンミが共産主義青年団に入り、太陽節(金日成の誕生日)の行事を準備する過程等が撮影されるというものだったのですが・・・。(※ある記事では光明星節(金正日の誕生日)の行事とありましたが、違うみたいかな?)
 マンスキー監督と北朝鮮当局の共同制作で、台本は北朝鮮が自由に変更できるようにし、ロケの場所も当局が選定して関係者の指導のもとに撮影され、すべて検閲を受けることとして撮影スタート。
 しかし問題は映画の全シーンが北朝鮮当局により演出されたもので、ジンミの父親が縫製工場の技術者、母親が豆乳工場の労働者という<模範的労働者>というのはウソジンミ一家が住んでいる平壌の新しいマンションも当局が用意した偽物。おいしそうな夕食ははたして<日常>なのか?
 監督は平壌に1年間滞在する中で徐々に考えが変わり、そして「ある手法」を使ってすべてを暴露することを決意します。その手法とは「カメラの録画スイッチを入れたまま放置する」こと。その結果、シーンの中に唐突に当局の人間だかが登場して撮り直しを要求する場面も映し出されています。あるいは出演者のセリフ、座る場所、微笑むタイミングなどを事細かく指導しているシーンなども。
 また、北朝鮮の担当者が金日成と金正日の銅像に捧げられた花を無造作に撤去するという舞台裏まで暴露したのは彼にとって「処刑されかねない」大問題、というのはマジでその通りでしょう。監督は、「真の北朝鮮の姿を込めた映画を撮りたかったが、あの国には我々の考えるような日常の風景は存在せず、あったのは『日常の風景というイメージ』だけだった。そこで私たちはその『嘘の真実』を映画にした」と述べたそうです。
 この作品の上映については当然北朝鮮が反対し、また資金を提供したロシアからも抗議が出ているそうです。

 これまでの北朝鮮のもろもろから考えると、とくに意外なこと・驚くことでもなく、「やっぱりなー」といったところです。しかし、慣れっこになってしまってはいけないと思います。公開処刑等々、かの国では「当たり前」になっているようなことでも、大多数の国同様に許してならないことは許してはならないのですから。

 ポーランドのアンジェイ・フィディック監督によるドキュメンタリー「金日成のパレード 東欧の見た“赤い王朝”」が注目されたのは1989年でしたが、この「太陽の下」は直接北朝鮮の体制の問題点を映し出している点がキモですね。
 日本でも上映してくれないかな?

※この映画の予告編がYouTubeにあったので貼っておきます。


2016年8月26日の追記
 本作品が「太陽の下で -真実の北朝鮮-」という邦題で2017年新春シネマート新宿等で公開されることが決まりました。

2016年10月11日の追記
 「太陽の下で 真実の北朝鮮」が2017年1月21日から東京・シネマート新宿、大阪・シネマート心斎橋ほか全国で順次公開されることが決まりました。。
コメント (2)
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韓国オタク、7泊8日のクイズ形式旅行記録⑦ 5日目(後編)=とことん過酷な博物館巡り(涙)

2016-05-02 20:47:25 | 韓国旅行の記録
 → 韓国オタク、7泊8日のクイズ形式旅行記録① 1~2日目=国立外交院、徳寿宮周辺等
 → 韓国オタク、7泊8日のクイズ形式旅行記録② 3日目=「あの」島と、仁寺洞の有名なマッコリ酒場
 → 韓国オタク、7泊8日のクイズ形式旅行記録③ 4日目(前半)=ソウル大学校を散策(?)
 → 韓国オタク、7泊8日のクイズ形式旅行記録④ 4日目(後半)=広大なソウル顕忠院を散策(??)
 → 韓国オタク、7泊8日のクイズ形式旅行記録⑤ 5日目(前編)=釜山の40階段がこんなに短い階段だったとは!
 → 韓国オタク、7泊8日のクイズ形式旅行記録⑥ 5日目(中編)=偶然目にした韓国独自の球技の名は?

 行く先々での見落とし・見過ごし・見逃しが何度あったことか。すべて後の祭り。今回の記事もまた同様です。やれやれ。

○3月29日(火) 午後1時30分~

 昼食をはさんで、臨時首都記念館の次にY氏と私ヌルボが向かったのは朝鮮通信使歴史館。地下鉄でトソン(土城)駅からチャチョン(佐川)駅へ。と、ここからしてすでに間違い。朝鮮通信使歴史館については、→公式サイト(日本語)をはじめ、→プサンナビや→トラベルJPといった懇切な記事がありますが、どれも最寄駅はポミル(凡一)駅となっています。佐川駅からは直線距離は同じようなものの、線路を跨ぐ道路(子城路.チャソンノ)に上がったり、歩道橋を渡ったりしなければなりません。その間違いのモトはN氏が持参していた「地球の歩き方」。佐川駅周辺と凡一駅周辺の地図が別々になっていて、朝鮮通信使歴史館は前者にしか載っていないのです。またその間違いに気づかないまま「地元の人はどうしてるんかな?」とチラとは考えたものの、帰途も同じ佐川駅に行ってしまったのが間違いその2でした。凡一駅だったら階段を上り下りすることはなかったし、凡一駅方面の市場や店等も見られたのに・・・

     
  自らの間違いにも気づかないままたどりついた釜山鎮支城(子城台.チャソンデ)西門(左)と、釜山鎮支城の案内図(右)。
 間違いその3は、案内図右下の=西門から右上の=朝鮮通信使歴史館まで最短距離を歩き、帰りはまた同じ道を戻ったこと。つまり子城台公園の内部は行かなかった!のです。私ヌルボ、1992年に1度来たことはありますが、当時は歴史館はなく、現在は当然ようすが変わっているはずなのですが・・・。
 子城台は、文禄の役(壬辰倭乱)で日本軍が釜山鎮を陥落させた後の1593年に、毛利輝元がその東南側に支城として築いた城です。[問1] この地の戦いで指揮を執った武将の名は? 加藤清正と先鋒を争い、平壌まで攻略したキリシタン大名で、ジュリアおたあを連れ帰った人物でもあります。 [答]→小西行長
 ※たまたま最近読んだ卞宰洙(ピョン・ジェス)「朝鮮半島と日本の詩人たち」(スぺース伽耶)という本に鈴木比佐雄という詩人の「子城台の春」という詩が載っていました。その全文は→コチラ参照。

     
 西門から歴史館に行く途中に展示されていた1905年の子城台の写真。説明文によると、「1895年の乙未改革以降釜山鎮城は機能を失い、崩れ落ちた建物に代わって民家が城内に入ってきた姿が見られる」とのこと。民家の藁屋根の重なりが異様な感じです。ただ、→コチラの記事(日本語)には大勢の人々の姿が写っていて、「釜山鎮市場の賑わいが分かります」という説明がついています。当時の城の領域は現在よりずっと広く、現在の子城台公園はこの写真の奥の丘のあたりだけになっているので、手前の民家が密集している所は公園のずっと西側の釜山鎮市場一帯ということなのですね。
 画像上右は1876年当時の海岸線と子城台周辺の歴史遺跡地図。とくに注目は子城台の北の広大な黄土色の部分。1917~19年凡一洞一帯に建設が進められ、21年に操業を開始した朝鮮紡織の4万8千坪(約16万㎡)にも及ぶ敷地です。朝鮮内での木綿栽培・綿糸の生産と販売を行っていた三井系の大会社です。数千人もの女性労働者が働き、昭和前期には労働争議も起こったりしましたが、日本の敗戦後は韓国に引き継がれました。
 ※朝鮮紡織については→コチラの記事参照。
        
 1968年朝鮮紡織はなくなりました。しかし今も<朝紡路(조방로.チョバンノ)>という道路名が残っています。上左の画像の地図中赤い線で示した道がその朝紡路で、昔の朝鮮紡織の敷地を斜めに貫いています。(緑のは子城台公園。) 「ああ、それで」と後でナットクしたのが、この近辺(釜山鎮市場一帯)で衣料関係の店がたくさん目についたこと。上中の画像は衣料関係の露店。上右は、チマチョゴリの色合いが気に入ったので撮った結婚式用の貸衣装店のショーウィンドウです。
 ※釜山名物の1つナクチポックム(タコ炒め)の伝統店の店名にも「チョバン(조방)」の字が用いられたりしています。「元祖」の店も凡一洞にありす。(→コチラ参照。)

 うわ、まだ歴史館に到達していないのに、もう書き過ぎ! 後は駆け足で・・・。
     
 朝鮮通信使歴史館(上左)。こじんまりとした建物ですが、興味深い展示物がいろいろ。しかし、研究者N氏の言の通り江戸時代の通信使に限定されていること。15世紀前半(世宗の時)に始まる前史の部分は抜けているのはたしかに問題。日本で朝鮮通信使のことは知っている人でも、その多くは「江戸時代の・・・」と思っているのではないでしょうか?
 上右は、朝鮮内の通信使の経路。漢陽→忠州→( X )→安東→永川→密陽→釜山[問2] ( X )に入る地名は? 鳥嶺(새재.セジェ)という険しい峠がある要害の地で、ソウルと釜山を結ぶ直線のほぼ真ん中(少しソウル寄り?)に位置する都市です。 [答]→聞慶(ムンギョン) →コチラの記事参照。私ヌルボも3年前に行ったことがあります。
 次に日本に着いてからの通信使一行を描いた絵を2つ。
 「朝鮮通信使御座根船図屏風」。大坂に着いた通信使一行は、幕府が用意した川御座船に乗り換えて淀川を上ります。
 朝鮮人街道を行く朝鮮通信使一行。将軍専用の道とされ、参勤交代での大名の使用も認められていなかった道でしたが、将軍以外では朝鮮通信使だけが通行を認められていたため、「朝鮮人街道」と通称されるようになった道です。[問3] この朝鮮人街道は何県にある? [答]→滋賀県 この絵図は円山応雲が描いた琵琶湖図」(1824)。場所は現在の大津市石場付近とのことです。

     
 朝鮮通信使の一行の中で、日本人たちの間でとくに人気があったのが馬上で逆立ちをしたり横になったまま早駆けしたりといった曲乗りをする( Y )で、それを行う人を( Y )人といいました。上左はそれを描いた絵で、右は金属製の像です。[問4] ( Y )にあてはまる言葉は? ヒント:「馬上〇」。〇は漢字1文字です。 [答]→馬上才 そういえば、以前紹介した辻原登「韃靼の馬」(→コチラ参照)にも出てきましたね。

 朝鮮通信使歴史館の次は、・・・え、また博物館だって!?
     
 釜山博物館は、地下鉄テヨン(大淵)駅から歩いて10数分。着いた時刻が午後4時10分前。もう十分に疲れています。
 展示は先史時代から現代まで。その他民俗関係等々の展示室もあります。おおよその紹介は→プサンナビに任せます。

     
 展示物の中でちょっと気になったのが上画像のタル(仮面)タルチュム(仮面舞)で用いられるものですが、この顔に斑点のあるものはムンドゥンイの面。右の画像にあるようにハンセン病者です。彼らを芸能の中で取り上げる問題については→過去記事で書いたことがありますが、韓国では現在でもとくに問題とはされないのでしょうか?(こうした展示も含めて。)

     
 近代に入ると、私ヌルボの興味・関心を引く展示物がいっぱい! 「日帝強占期の教科書」(左)は、上左の「帝国讀本」等々読んでみたい・・・って、あ、「日本教科書大系」に入ってますね。(と、今ちょっと読んでみました。(at 図書館。内容はいずれ。) 上右は「사정한 조선어 표준말 모음(査定した朝鮮語標準語集)」というハングルの正書法のテキストです。右画像は1920年代の釜山駅の模型です。 

        
 なんといっても、ヌルボの大きな関心事は映画関係。上右の国境」(1939)崔寅奎(チェ・インギュ)監督の監督デビュー作。左のソンファンダン」(1939)と右の巨鯨伝」(1944)という方漢駿監督の2作品については、今→ウィキペディアて初めて見ました。
     
 左は李銘牛監督「洪吉童伝」(1936)洪吐無監督薔花紅蓮伝」(1936)のポスター。右は「洪吉童伝」の撮影風景です。
 [問5] 「薔花紅蓮伝」の原作は薔花(チャンファ)と紅蓮(ホンニョン)の姉妹と継母の間の葛藤を描いた朝鮮の伝承物語です。これを現代に翻案してイム・スジョンムン・グニョンが姉妹を演じた2003年公開の韓国映画のタイトルは? [答]→「箪笥」 オタクっぽい問題だなー。
    
 左は1930年代初めの映画「守一(スイル)と順愛(スネ)」の一場面。右は映画ではなくて、有名な舞踊家崔承喜(チェ・スンヒ)の公演のポスターです。
 [問6] 「守一と順愛」は、大変有名な日本の演劇を翻案したもので、韓国でも韓国併合直後の頃から現代まで演劇・映画で親しまれてきました。では元になった日本の演劇作品のタイルは? [答]→「金色夜叉」 →コチラの過去記事参照。これまたオタクっぽい問題です。

 この日も重いバッグを持ってあちこち歩き回り、疲れました。ところが翌日も翌々日も朝早く起きてスケジュールぎっしりの1日になるのです。しかも、その2日間が今回の旅行のメインとは・・・。ここまでの5日間だけでも十分すぎるほど過酷だっのに・・・。

 ふー、やっと3月29日の分がおしまい。今回の記事を仕上げるのもけっこう過酷でした。(涙笑)
コメント
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