ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ⑥「日本軍により3469人が殺された事件」というのは何だ?

2016-10-31 02:23:15 | 韓国映画(&その他の映画)
<多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ)>
 → ①<進歩系>映画と<保守系>映画
 → ②昨年来日本統治期を背景とした作品が増えている
 → ③韓国では、日本統治期の見方が変わりつつある(?)
 → ④判別がむずかしい<史実>と<虚構>の間
 → ⑤韓国でようやく知られ始めた金元鳳(キム・ウォンボン)と義烈団

 映画の中の<史実>と<虚構>を判別することはむずかしいですが、今回の記事のメインは「<史実>として描かれていることがはたして本当に<史実>なのか?」という問題です。

 金元鳳(キム・ウォンボン)が上海にやってきたアン・オギュンと会った時、「<狡兎三窟>というように云々」といった話に続けて、かつて(1920年)間島(カンド.旧満州の朝鮮との国境に近い一帯)方面で繰り広げられた抗日独立軍の戦いと、それに敗北した日本軍が報復として多数の無辜の民間人(朝鮮人)を虐殺したことを語ります。そして彼が「オギュンは、そこにいたのか?」と問うと、彼女は次のように答えます。
 「はい。火で焼かれ釜で茹でられ・・・。27日間で3469人が虐殺されました。・・・私の母も殺されましたが私は生き残りました。」
 ・・・このあたり、セリフがそのまま字幕になっているわけではなく、かろうじて聴き取ったことをメモするにも展開(&言葉)が速いので、かなり大雑把です。
 ※上記の虐殺を行ったのが第19師団で、1920年当時の師団長は高島友武中将でしたが、映画では川口守中将という架空の人物になっています。その息子が川口俊輔(?)大尉で、物語中の悪玉中の1人。オギュンにとってはこの暗殺計画が自身の敵討ちにもなっているというわけです。川口守中将のモデルは、1929~30年の師団長で32~34年には朝鮮軍司令官だった川島義之中将と思われます。名前の最初も「川」だし・・・。このあたりはフィクションと史実が巧妙に接ぎ木されている部分。

 さて本題。
 オギュンの話に出てくる「27日間で3469人が虐殺」という数字は字幕にもそのまま表示されています。しかし、ほとんどの日本人にとっては金元鳳の言うように(?)「誰でも知っていること」ではないですよね。それにしても、「大」虐殺というべきこの事件はそもそも何という事件なのか? (韓国語聴き取り能力がもっとあれば言ってたのかも・・・)
 この数字を手がかりにネット検索に取りかかったところで私ヌルボがぼんやり思い出した本が鄭銀淑「中国東北部の「昭和」を歩く」鄭銀淑(チョン・ウンスク)さん、アチコチのマッコリ酒場を飲み歩いているだけでなく、「昭和」の残影を追って中国東北部まで足を延ばしているんですね。
 この本の中の<琿春の旅>と題された部分に、たしかにこの事件についての記述がありました。琿春(フンチュン.こんしゅん)は、当時は北間島(プッカンド)とよばれた中国・延辺朝鮮族自治州東端、つまり中朝国境の最北東部にあり、ロシアとの国境も至近という都市です。(下の地図参照。)
 【白頭山(長白山)の東の豆満江沿いの地は間島とよばれていたが、後に西の鴨緑江沿いの地が西間島(ソガンド)とよばれるようになるとともに北間島というようになった。】

 で、鄭銀淑さんが琿春を訪れるにあたって、予備知識のような形でこの事件のあらましを次のように記しています。
 ・1920年10月2日未明、400余人の馬賊団が琿春を襲撃、日本領事館や商店等に火を放ち、100人余を拉致し、多くの財物を奪った。これを琿春事件という。
 ・これ以前から間島の地は独立勢力の拠点となり、抗日闘争が展開されていた。琿春事件の3か月前の1920年6月には(洪範図(ホン・ボムド)将軍の指揮する)朝鮮独立軍との鳳梧洞(ポンオドン)戦闘で日本軍は惨敗し大打撃を受けた。
 ・日本は朝鮮人抗日勢力の討伐を図ったが、間島は中国領土なので、軍事作戦を実行するには適当な理由が必要だった。
 ・そんな中で起こった琿春事件は日本にとって絶好の理由となった。「日本人の人命と財産を保護する」という名目で中国との事前交渉や連絡もないまま大規模な兵力を投入した。
 ・この「絶妙のタイミング」ゆえ、韓国ではこの「事件」が日本によって周到に準備されたものであるという説が唱えられている
 ・こうして出兵した日本軍は、琿春の他、延吉、和龍、汪清等4県69の村で3600人余りの朝鮮人を殺害し、3500軒余りの家屋、59の学校、19の教会、5万9900余石の穀物を燃やした。この大惨事を韓国では<庚申年大討伐>(あるいは間島惨変庚申惨変)という。


 日本のウィキペディアでは、<琿春事件>のことは<間島事件>という見出し語の中で説明されています。(→コチラ。) また、韓国のウィキペディア(→コチラ)では間島惨変とされている日本軍の出兵とそれに続く「作戦行動」については単に<間島出兵>という主観を排した(?)見出し語になっています。(→コチラ。)
 また、日韓双方のウィキペディアを読み比べると、まさに対照的な説明に驚くばかりです。日本側の<間島事件>の説明文中には「謀略説」として紹介されている上述の「日本によって周到に準備されたもの」という説が韓国ウィキペディアではそのまま説明の基軸となっています。また、韓国側の<間島事件>の説明文には「罪のない韓国人を大量に虐殺した」こと、そして「10月9日から11月5日までの27日間、間島一帯で虐殺された朝鮮人たちは現在確認されている数だけでも3469人にのぼる」と、「暗殺」のセリフに出てきた数字があげられ、さらに「その他確認されていない数と3~4ヵ月にわたって虐殺された数を合わせると少なくとも数万人に達する」等と記されています。日本側の<間島出兵>の記事には、最後に次のようにサラッと書かれている程度です。
 大韓民国臨時政府の機関紙である『独立新聞』は、1920年12月19日付で、その調査資料によるとして26,265人が虐殺、71人が強姦され、民家3,208軒、学校39校、教会15ヶ所、穀物53,265石が焼却されたと報道した。韓国側では、戦いに敗れた日本軍は独立軍の根拠地を掃討するために朝鮮人を無差別に虐殺し、集落ごと焼き払った「間島惨変(庚申惨変)」を引き起こし、その犠牲者は少なくとも3469人としている。日本側の史料によれば日本軍に反抗した、独立軍の幹部だった等の理由で射殺された朝鮮・中国人の数は500人余りである。
 日韓間の歴史的出来事についての認識の落差は、出兵した日本軍と金佐鎮(キム・チャジン)等が指揮した武装組織が戦った青山里戦闘についても呆れるほど如実に表れています。これについては、<日韓のWikipediaを比較する>という記事(→コチラ)に具体的に書かれています。日本軍の戦死者数が2ケタ違うばかりか、日本軍と独立軍のどちらが勝ったか?からして違うのです。

 琿春事件がはたして日本側が仕組んだものだったか否か? 青山里戦闘は戦死者がどれほどでどちらが勝ったのか? 間島出兵でどれほどの無辜の朝鮮人住民が虐殺されたのか?
 これら対立する説のどちらが本当の<史実>なのか、民族感情や政治的立場等々を排して見極めることは大変むずかしいことだと図書館で関係書籍をいくつか読んで痛感しました。
 たとえば次のような分厚い本2冊。
     

 左は姜徳相(編)「現代史資料 28朝鮮」(みすず書房)、右は佐々木春隆「韓国独立運動の研究」(国書刊行会)。在日の歴史家・姜徳相氏と、陸士卒の元軍人で戦後は自衛隊に入隊し、退官後は防衛大教授となった佐々木春隆氏という2人の経歴だけ見ても、資料の読み方からして違ってくるだろうことはわかります。ただ、どちらも非常に内容の濃い本です。前者は基本的に琿春事件と間島作戦についての日本の公的文書や独立新聞」等の朝鮮側の資料や中国その他の新聞記事等を集成した資料集です。件(くだん)の3469人という犠牲者数も、<臨時政府間島通信員確報>として1920年12月18日付「独立新聞」に掲載された「西北間島同胞の惨状血報」という記事の表にある数字であることがわかります。(下画像)
 
    
 上の2つは表の最初と最後の部分だけです。その間に、たとえばあの詩人・尹東柱(1907~1945)の出生地・明東の明東学校が焼かれたことも記録されています。(彼の詳細な伝記・宋友恵「尹東柱評伝」にもそのことが記されている。)
 これらの資料、とくに「日本軍による蛮行」についての具体的な事例の記事を見ると、たしかにリアリティが感じられます。(・・・ということと数字の信頼性は直結するものではありませんが・・・。)
 もう一方の「韓国独立運動の研究」について。著者の経歴だけで「右翼の妄言」と決めつけるなかれ、です。864ページに及ぶ大著で、19世紀半ばから終戦までの朝鮮の民族運動・独立運動について詳細に記しています。「「併合」は不可であった」とか、「日本と韓国は、未来永劫の隣人である。互いの歴史を踏まえたうえで、未来に思いを寄せねばならないと考える」等々のくだりは、左翼の目からは意外と思われるかもしれません。内容も、独立運動の側や民族主義の立場から書かれた本にはほとんど載っていないような独立運動組織内での内訌や、金日成の本物ニセ者をめぐる件、普天堡(ポチョンボ)戦闘(保田襲撃事件)の事実等々、興味深い記事がいくつもありました。そして肝心の琿春事件についてはいくつかの根拠をあげて謀略説を否定し、青山里戦闘については詳述していますが、間島作戦での「日本軍の蛮行」については何も(!)書いていません。
 
 私ヌルボ、図書館で上記の、ああるいはそれ以外にも何冊かの関係書籍をざっと拾い読みした程度ですが、痛感したことは資料を読み解くことのむずかしさです。どういう立場の誰がどんな状況で書いたものかを常に念頭に置く必要があります。またそれらについて書かれた本、たとえば上記の2冊についても同様で、姜徳相氏による<資料解説>も資料を読み解く手引きであると同時に、もしかしたらミスリードとなっている可能性もなきにしもあらず、です。
 新聞記事も、いつも事実を伝えているとはかぎりません。下の画像は、琿春の日本領事館焼打ち事件を報じた1920年10月4日付の「東京朝日新聞」の紙面です。
 もちろん日本側の謀略の疑い云々が書かれているわけはなく、読者は記事をそのまま事実として受けとめるでしょう。しかし、現在のわれわれは張作霖爆殺事件も柳条湖事件も謀略だったことを知っています。そしてもしかすると上海日本人僧侶襲撃事件(→ウィキペディア)も・・・。そうしたことも考えると私ヌルボ、今のところ琿春事件の謀略説は否定しきれません。
 一方、上の新聞紙面の上に釜山警察署爆弾テロ事件の記事があります。このシリーズの1つ前の記事(→コチラ)で少し書いた義烈団の団員による事件です。この事件について、朴泰遠(パク・テウォンが金元鳳から話を聞いて書いたという「金若山と義烈団」には警察署長はまもなく絶命したとありますが、この新聞記事によると「右膝に擦過傷」と全然違っています。どうもこれは新聞の方が正しいように思われます。
 現代でもメディアリテラシーの重要性は高まるばかりです。新聞の場合でも、取材の不備が誤報を招いたり、記者の願望や読者への迎合が真実を歪めたりということは今もしばしばあり、あるいは政治権力等が政治的意図によって虚偽のニュースを流したり、あるいはメディア自体が特定の方向に国民を扇動したりといったことも過去にあったし・・・。もちろん、昔の新聞を読む時にも細心の注意が必要ということです。

 間島方面での抗日独立運動関係では、文字資料の他に写真資料もいろいろありました。たとえば下の写真。

 これは黒羽清隆・梶村秀樹「日本の侵略・中国/朝鮮 写真記録」(ほるぷ出版)に載っているもので、「処刑される間島の朝鮮人」と下に書かれています。こういう写真も、いつどこで、どういう状況の中で撮られたものか不明確なものは要注意ですが、少なくともどこかこういう所で、このようにして殺された人たちがいたということは確かと思われます。

 いろいろ書き連ねましたが、最初に戻ってアン・オギュン(チョン・ジヒョン)の「火で焼かれ釜で茹でられ・・・。27日間で3469人が虐殺されました。・・・私の母も殺されましたが私は生き残りました。」というセリフについて。私ヌルボ自身の今の所の判断は、「釜で茹でられ」とか「3469人が虐殺」とかについての信憑性については疑問があるものの、多くの家や学校等が日本軍によって焼かれたり、多数の朝鮮人が殺され、その中には単に家の中から抗日のビラが見つかった程度のことでその場で殺された人も相当数いたのは事実なのでは、と思います。そして、そういった程度でも、個人的には高校の歴史でも同時期のシベリア出兵とともに(関連づけて)教えるべきレベルの出来事ではないでしょうか?

 また、韓国の側に対しても、専門家の間でも見解の分かれるこのような問題についてまぎれもない<史実>として映画で描き、それを観客が観てそのまま受けとめることでますます<史実>として固定化されていってしまうことに懸念を覚えます。この件にかぎらず、日韓の歴史教育のあり方や、ドラマや映画での歴史の描き方がますます双方の歴史認識の差を広げてしまっているようです。

 ※右は延辺人民出版社で刊行された「朝鮮族簡史」の翻訳本の「抗日朝鮮義勇軍の真相」(新人物往来社)。中国東北部で展開された抗日運動を清朝の頃の前史から第2次大戦の終わり頃までのスパンで叙述した本で、韓国の抗日運動史では少ししか(or全然)扱われない左翼系による闘争についてもいろいろ書かれています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [10月21日(金)~10月23日(日)]

2016-10-25 23:50:55 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 川崎市市民ミュージアムは、上映日は土日だけですが、他では観られないような作品をしばしば上映してくれています。(「学生府君神位」を観たのはいつだったかな?) で、22日(土)には「チョンリマ 千里馬」を観てきました。この1960年代の北朝鮮の「発展のようすを描いた」ドキュメンタリーを私ヌルボが最初に観たのはなんと半世紀前! 北朝鮮も韓国も日本も、以後大きく変わり、そしてヌルボ自身のこの映画の受けとめ方もずいぶん変わることだろうなと思いつつ、武蔵小杉まで足を運びました。その感想等は近日中に記事にする予定です。

 23日(日)の夜は、シネマ・ベティで「暗殺」。5月に続いて2度目の鑑賞。どうしても確認したいことがいくつかあったので・・・。まず懸案の<多角的に見る韓国映画「暗殺」>シリーズを完成させなくては・・・。

 以前から、なぜ日本は大方の洋画の公開が韓国より何ヵ月も遅いのか疑問に思ってきました。最近たまたま→コチラの記事を読んでわかりました。その主に理由は次の3つです。
 ①十分な宣伝をするため。 
 ②「全米1位」や「興行収入○○円」等、アピールポイントを作るため。
 ③配給会社の事情。配給契約の金額を決めるためにも、海外での人気(集客状況等)を見る。海賊版の出やすいアジア圏と違って日本は海賊版の流出が少ないため、焦って公開する必要がない。また長期休暇に合わせての公開にしたり、話題作同士がぶつからないように調整する。

・・・というわけです。韓国が早いのではなくて日本が遅いのですね。なるほどですが、では韓国等はこれらの配慮はそんなにしないのでしょうかね?
   
「朝鮮日報」10月21日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)
。)  「歩き王」
   1等でなくても大丈夫 ★★★☆


 「メン・イン・キャット」

   K.スペイシーがネコに ★★★


 「ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring Years」

   愛するしかないあなた ★★★

 「インフェルノ」

    多い言葉につききれず ★★★


 「暴力の法則:悪い血、2番目の話」

    校内暴力? 復讐は君の事 ★★★

 「鬼談百景 劇場版」

   「こんなことが・・・」の恐怖編 ★★


 「ネオン・デーモン」

   様式を追って道に迷う ★★


 「鬼談百景 劇場版」(2015)は小野不由美原作のホラーで10話からなるオムニバスですが、日本でもDVDのみで一般公開されてないようなので認知度はどれほど? 「ネオン・デーモン」(仮)は米・仏・デンマーク合作のスリラー。危険なモデル業界に足を踏み入れることで、自分もまた危険な存在へとなっていく主人公を「マレフィセント」のエル・ファニングが演じています。他の作品はすべて以下の記事の中で紹介しています。

         ★★★ NAVERの人気順位(10月25日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(-) パラノイド・ガールズ  9.67(6)
②(2) フィドルスティックス  9.50(10)
③(1) おばあちゃんの遠い家(韓国)  9.48(112)
④(3) 自白(韓国)  9.40(1,675)
⑤(5) Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~(韓国等)  9.39(76)
⑥(-) 暴力の法則:悪い血、2番目の話(韓国)  9.33(30)
⑦(7) KING OF PRISM by PrettyRhythm(日本)  9.29(1,218)
⑧(8) 私たち(韓国)  9.20(1,000)
⑩(10) 影たちの島(韓国)  9.20(95)

 今回の新登場は、①と⑥の2作品です。
 ①「パラノイド・ガールズ」(仮)は、スペインのコメディ。
主人公のアンナは大都市に上京した女子大生で、ファッションブロガー。彼女が暮らすことになった家の家主ポーラはモデルエージェンシーで働いているということでファッション熱は一段と高まり、結局そこで一緒に働くことに。その後同じ職場で親しくなったベロニカも含めて3人は親友になりますが、ある日アンナはポーラの元カレに会ったらまさに「私のタイプ」。そして他の2人には言えない秘密ができてしまいます・・・。韓国題は「아이엠 어 모델」。日本公開は未定のようです。
 ⑥「暴力の法則:悪い血、2番目の話」は韓国のドラマ。男子高校生ソンジン(キム・ヨンヨン)が学校暴力が原因で自殺してしまいます。その3年後、加害者の1人(?)の女子コ・ヨンジ(ハン・ヨウル)が芸能人としてデビューします。ソンジンの苦痛を悟ってあげられなかった罪の意識に苦しんできたソンジンの兄のソンヒョン(キム・ヨンム)は、コ・ヨンジのことが取り上げられた記事に、ソンジンは自殺ではなく彼女によって殺されたというカキコミがあるのを見つけます。事件の真相を知ったソンヒョンは復讐を始めるのですが・・・。原題は「폭력의 법칙: 나쁜 피 두 번째 이야기」です。

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) キャロル  8.96(13)
②(2) ラヴニール  8.00(6)
③(3) ハドソン川の奇跡  7.75(8)
④(4) アガシ(韓国)  7.68(18)
⑤(5) 自白(韓国)  7.67(10)
⑥(6) 私たち(韓国)  7.66(14)
⑦(8) 密偵(韓国)  7.50(12)
⑧(-) 「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント  7.45(5)
⑨(10) THE NET 網に囚われた男(韓国)  7.25(8)
⑩(-) トンネル(韓国)  7.21(14)

 入れ替わりはありましたが、本ブログ新登場はありません。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績10月21日(金)~10月23日(日) ★★★

         「ラッキー」が快調に400万人を突破
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・・累積収入・・・・上映館数
1(1)・・ラッキー(韓国) ・・・・・・・・・・・・・10/13・・・・・・・・・1,461,931・・・・・・・・・・・4,341,378 ・・・・・・・・35,675・・・・・・・・1,234
2(18)・・インフェルノ・・・・・・・・・・・・・・・10/19 ・・・・・・・・・・349,314・・・・・・・・・・・・・472,658 ・・・・・・・・・3,989・・・・・・・・・・753
3(2)・・ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち・・9/28・・・・109,941 ・・・・・・・・・・・2,666,614・・・・・・・・21,446・・・・・・・・・・468
4(3)・・ドント・ブリーズ・・・・・・・・・・・・・10/05・・・・・・・・・・・・45,141 ・・・・・・・・・・・・・986,337・・・・・・・・・8,342・・・・・・・・・・333
5(29)・・歩き王(韓国)・・・・・・・・・・・・・・10/20 ・・・・・・・・・・・42,163 ・・・・・・・・・・・・・・62,256・・・・・・・・・・・487・・・・・・・・・・462
6(55)・・きみに読む物語・・・・・・2004/11/26 ・・・・・・・・・・・32,172 ・・・・・・・・・・・・・470,017・・・・・・・・・3,128・・・・・・・・・・142
7(4)・・ブリジット・ジョーンズの日記・・9/28 ・・・・・・・・・・・18,996・・・・・・・・・・・・・・803,939・・・・・・・・・6,547・・・・・・・・・・137
       ダメな私の最後のモテ期
8(7)・・自白(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・10/13 ・・・・・・・・・・・15,181 ・・・・・・・・・・・・・・90,473・・・・・・・・・・・715・・・・・・・・・・・87
9(新)・・メン・イン・キャット・・・・・・・・・・10/19 ・・・・・・・・・・・14,307 ・・・・・・・・・・・・・・19,217・・・・・・・・・・・152・・・・・・・・・・241
10(新)・・ハリー・ポッターと死の秘宝PART2・・2011/07/13・・12,754・・・・・・・4,416,035・・・・・・・・34,628 ・・・・・・・・・・24
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は2・5・6・9・10位の5作品です。
 2位「インフェルノ」は、日本でも10月28日(金)公開。諸情報が出ているので説明は省略します。韓国題は「인페르노」です。
 5位「歩き王」は、「怪しい彼女」等のシム・ウンギョン主演の青春ドラマ。活発な女子高生のマンボク(シム・ウンギョン)は、4歳の時に発見された先天的乗り物酔い症候群のためすべての乗り物に乗ることができないず、徒歩で往復4時間かけて通学しています。
何かにつけ「早く!」とか「がんばって!」とか急かされる中で、テキトーに暮らしたいという彼女でしたが、ある日意外な「警報(キョンボ)」が鳴り始めます。彼女の驚くべき通学時間に感心した担任の先生の推薦で「競歩(キョンボ)」を始めることになったのです。勉強は嫌いでも、なぜか運動はやれそう、と思ったらそうは問屋が・・・。はたしてマンボクは競歩を通して新しい自分に出会えるのでしょうか? 原題は「걷기왕」です。
 6位「きみに読む物語」は、2004年公開のアメリカ映画の再上映です。韓国題は「노트북(ノートブック)」です。
 7位「メン・イン・キャット」は、アメリカのコメディ。大企業の社長トム(ケヴィン・スペイシー)は、仕事一筋で家庭をかえりみない傲慢な男。ある日娘の11歳の誕生日プレゼントに嫌々ながら猫を買ったのですが、帰る途中にビルから転落してしまいます。するとその拍子に、なんと彼の意識は猫の体へ・・・。やがて家族にペットとして迎えられる・・・ってどういうふうにケリをつけるのかな? 韓国題は「미스터 캣」。日本公開は11月25日です。
 10位「ハリー・ポッターと死の秘宝PART2」は2011年の旧作の再上映。このシリーズ、私ヌルボは全然観てないのです。韓国題は「해리포터와 죽음의 성물2」です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・自白(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/13 ・・・・・・・・・・・・・・15,181 ・・・・・・・・・・・・90,473 ・・・・・・・・・・・・715 ・・・・・・・・・87
2(新)・・メン・イン・ザ・キャット・・・・・・・・10/19・・・・・・・・・・・・・・・14,307 ・・・・・・・・・・・・19,217 ・・・・・・・・・・・・152 ・・・・・・・・241
3(3)・・殺してくれる女(韓国)・・・・・・・・・10/06・・・・・・・・・・・・・・・・6,591 ・・・・・・・・・・・101,610 ・・・・・・・・・・・・753 ・・・・・・・・・84
4(17)・・ザ・ビートルズ ・・・・・・・・・・・・・・・9/29・・・・・・・・・・・・・・・・6,247・・・・・・・・・・・・・10,758 ・・・・・・・・・・・・・88 ・・・・・・・・150
       ~EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring Years
5(2)・・映画 きかんしゃトーマス・・・・・・10/13・・・・・・・・・・・・・・・・4,711・・・・・・・・・・・・・23,056 ・・・・・・・・・・・・167 ・・・・・・・・119
       勇者とソドー島の怪物(モンスター)

 今回の新登場は2・4・5位の3作品です。
 2位の「メン・イン・ザ・キャット」については上述しました。
 4位の「ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring Years」は、日本では9月に公開されてます。韓国題は「비틀스: 에잇 데이즈 어 위크 – 투어링 이어즈」です。
 5位の「映画 きかんしゃトーマス 勇者とソドー島の怪物(モンスター)」は、日本では2015年4月に公開されています。韓国題は「토마스와 친구들: 용감한 기관차와 괴물소동」です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ⑤韓国でようやく知られ始めた金元鳳(キム・ウォンボン)と義烈団

2016-10-20 14:04:29 | 韓国映画(&その他の映画)
<多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ)>
 → ①<進歩系>映画と<保守系>映画
 → ②昨年来日本統治期を背景とした作品が増えている
 → ③韓国では、日本統治期の見方が変わりつつある(?)
 → ④判別がむずかしい<史実>と<虚構>の間

 このシリーズの前記事から1ヵ月近く立ってしまいました。初回からは4ヵ月。やれやれ。

 さて、前回の記事ではこの映画「暗殺」に登場する歴史上の人物2人のうち、まず韓国では100%に近い人が知っている金九(キム・グ)のことを書きました。
 今回はもう1人の金元鳳(キム・ウォンボン.김원봉)について、です。金九に比べると、知名度ははるかに低い、いや桁違いに低いと言っても過言ではないほどです。(その理由は後述。)

    
 上左は映画「暗殺」中の金元鳳(チョ・スンウ)。右は実際の金元鳳の写真。なかなか魅力的な風貌ではないですか。

 今回はいつもとは違って、金元鳳がどんな人物なのか、最初から要点をかいつまんで書くことにします。
 とりあえず一言で言うと、彼は抗日テロ組織「義烈団の首領」です。

 以下、彼の生涯を4つの時期に分けてたどっていきます。

[1]10代から武器(爆弾と銃器)による抗日闘争に傾注。

〇1898年密陽で生まれる。
 ※「暗殺」の中でも「密陽の人、金元鳳です」と名乗っている。(字幕では略されているけど・・・。)
〇1910年韓国併合の時、在学していた中学の校長の感化を受けて抗日の気概を抱き、その中学が日帝により閉鎖された後は市街地から離れた表忠寺で1年間生活して「孫子」「呉子」等の兵書を読む。
〇1916年軍事学を学ぶため天津にあるドイツ人経営の徳華学校に入学。

[2]義烈団を創設し、1920年代半ばまで数々の爆弾テロ事件を起こす。

〇1919年パリ講和会議に際し日本の全権西園寺公望の暗殺を謀り旧知の金鉄城を送り込むが穏健派の朝鮮人に武器弾薬を盗まれ未遂に終わる。三一独立運動が勃発したことを中国・済南で知るが、独立宣言書に失望。(武力抗争を伴わなかったため。)

〇同年6~9月西間島の新興武官学校で爆弾製造法等を学ぶ。(※<速射砲>ことチュ・サンオク(チョ・ジヌン)はこの学校出身。
〇同年11月吉林城巴虎門外で13人により義烈団を創設し、団長となる。
〇1920~26年義烈団の団員により次のような事件を起こす。
 ・釜山警察署爆弾事件(1920年9月)・密陽警察署爆弾事件(1920年11月)・朝鮮総督府爆弾事件(1921年9月)・上海黄浦灘事件[陸軍大将田中義一暗殺未遂](1922年3月)・鍾路警察署爆弾事件及び都心(1923年1月)・東京二重橋爆弾事件(1924年1月)・北京スパイ暗殺事件[1](1925年3月)・東洋拓殖会社・殖産銀行襲撃事件(1926年12月)

 ☆ここまでの金元鳳の前半生については、越北作家の朴泰遠(パク・テウォン)「金若山と義烈団」(皓星社.1980.→右画像)に詳述されています。この本によると、義烈団が企図した事件は上掲の事件だけでなく、創設以来1925年までの7年間に数百の事件を計画したとのことです。

[3]本格的な軍事組織確立をめざす。左翼勢力との提携を進める。

〇1926年黄浦軍官学校に入学。上記のような暗殺や破壊活動を続けても独立を勝ち取ることはできず、また民衆を覚醒させることもできなかった、と悟った彼は、本格的な軍事組織結成のための第一歩として選んだ道がこの軍官学校への入学だった。

 ★映画「暗殺」の誤り(その1)
  
つまり金元鳳は1920年代半ばにはすでに爆弾テロの限界を悟っていた。事実1926年に東洋拓殖会社爆破事件以来義烈団は実質的に活動をしていない。映画に描かれた暗殺作戦は1933年なので年代がずれている。


〇1920年代後半からは中国国民党政府(蒋介石)と中国共産党の両方とも手を結んだ。1929年にはソ連のコミンテルンからも支援を受けた。
〇1932年朝鮮革命幹部学校を開設。1935年には独立運動団体5つを合わせて民族革命党を作った。
〇1938年軍事組織の朝鮮義勇隊を結成し中国国民党と連携して活動。
〇1939年民族革命党の臨時政府合流を決め、朝鮮義勇隊の主力軍は光復軍に編入された。〇1940年代金元鳳は光復軍副司令官を経て、臨時政府軍務部長に就任した。
   
【1944年当時の大韓民国臨時政府組織図。軍務部長に金元鳳(朝鮮民族革命党)の名がある。(白凡記念館) 】

 ★映画「暗殺」の誤り(その2)
  映画の最初の方で金九と金元鳳が親しく言葉を交わして連帯意識を示す場面があるが、実際の20〜30年代は強固な反共主義者金九と、左翼勢力のシンパともいえる金元鳳との間は相当に深刻な状態だった。金元鳳が臨時政府の軍務部長に就任した等々も、積極的な協力というよりは日本という巨大な敵の前の呉越同舟体制に過ぎなかった。


[4]戦後は南北統一を目指すも結局は越北し要職に就くが、粛清の嵐の中で自殺?

〇光復(終戦)後臨時政府の要人たちと共に帰国。1945年9月朝鮮人民共和国の軍事副将に選任される。(朝鮮人民共和国は日の目を見ることはなかったが。)
1946年2月民族主義民族戦線の共同議長に推戴された。
〇1947年3月南朝鮮労働党が主導したゼネストに関連して「親日」警察として有名だった盧徳述(ノ・トクスル.映画「暗殺」のヨム・ソクチン(イ・ジョンジェ)のモデルの1人?)に逮捕され、拷問された。
〇1948年、南北分断を避けたい彼は金九等と共に北朝鮮に赴いて全朝鮮諸政党社会団体代表者連席会議に参加したが、会議が成果もなく終わるとそのまま北朝鮮に残り、朝鮮民主主義人民共和国政府樹立に参加した。
〇1948年9月北朝鮮政権が樹立されると、国家検閲相に任命された。以後労働相、朝鮮労働党中央委員会中央委員、最高人民会議常任委員会副委員長等の高い地位を歴任した。
〇1958年誕生60周年を記念して北朝鮮政権から労働勲章を授与された。しかし南労党派・延安派が粛清された時に失脚し、その直後に死亡した。青酸カリを飲んで自殺したとの説も流れる中、死亡した時期や経緯も知られていない。
〇密陽に残された金元鳳の家族たちも「パルゲンイ(=アカ)」の家族として迫害され、兄弟4人は朝鮮戦争の時の保導連盟虐殺事件(→ウィキペディア)で処刑された。

 義烈団以来、部下や仲間たちが数多く死んでいった中、日帝からは最高額の懸賞金が懸けられたという彼が光復の時まで生き延びたのは非常に幸運だったといえるでしょう。しかしそんな彼がその後同じ朝鮮人に逮捕され拷問を受けたり、さらには自ら選んで行った北朝鮮で排斥され死に追いやられたとはなんと皮肉なことか・・・

《付記》 「越北人士」の金元鳳は韓国で長く無視されてきたが、映画「暗殺」を機に地元密陽でも注目
 
 冒頭で、「韓国では金元鳳の知名度は低い」と書きました。上述のように、独立運動家であっても左翼系の人物であれば無視され、歴史教科書にも載らなかったからです。
 私ヌルボも、この金元鳳のことを知ったのは、昨夏の歴史教科書国定化をめぐる問題が大きく取沙汰される中でのニュース記事に出てきてからです。
 たとえば→コチラの東亜日報(日本語版)の柳寛順金元鳳という見出しの社説。主旨は「近年歴史教科書は左派寄りのイデオロギーにより偏向している」というもので、その例として日本でもわりと知られている三一独立運動の際捕らわれて獄死した<朝鮮のジャンヌ・ダルク>柳寛順が教科書8種のうち4種に止まっているのに対し、金元鳳はすべての教科書で扱われていることがあげられています。記事によると、歴史学界では「柳寛順は梨花学堂出身の親日人物が発掘して英雄に仕立てたため教科書に記していない」のだそうです。一方金元鳳はというと「1948年北朝鮮に渡って、北朝鮮で労働相や最高人民会議代議員などの要職を歴任した人物」。つまり<親日>を厳しく糾弾し、北朝鮮に寛容な左派寄りの内容というわけです。同様のニュースは新聞だけでなく、TVでも取り上げられました。

    
 上左は東亜日報の記事より。右はTV朝鮮のニュース映像。画面下のテロップは「‘柳寛順より金元鳳’・・・教科書偏向論議」です。
 ※シリーズ最初の記事で書いたように、東亜日報もTV朝鮮(朝鮮日報の系列)も保守系の代表メディアで、とてもわかりやすい図式です。
 ・・・というわけで、金元鳳はこれまで韓国人の間でも柳寛順に比べると知名度ははるかに低い人物でした。いや、この映画「暗殺」によってはじめて知ったという人が大半のようです。韓国のQ&Aサイトを見ると「金元鳳ってどんな人ですか?」という質問もあるほど。また→コチラの京郷新聞の記事(韓国語)は、彼について年譜付きの詳しい内容で参考になりましたが、その見出しは「映画「暗殺」で再び注目されている若山金元鳳」です。※「若山(ヤクサン)は金元鳳の号。
 「反共」が国是とされ、パルゲンイが絶対悪とされた1980年代頃までと違って、90年代以降は主に左派系勢力によって「親日派の清算」を求める声が強まりましたが、そんな風潮が金元鳳に対する評価の逆転に相応しているというわけです。
 彼の生地密陽でも、少し前まではほとんど知る人もいなかった彼の生家跡一帯は、他の抗日義士の遺跡とともに「ヘチョン抗日運動テーマ街(해천항일운동테마거리)と名付けられて整備が進められているようです。
 ※下の画像参照。あるいは→コチラの記事(韓国語)にたくさん写真が載っています。

  
【金元鳳の生家跡(左)と、ヘチョン抗日運動テーマ街の案内図(右)】

【ヘチョン抗日運動テーマ街には、このような壁画がいくつもある。】

 このシリーズはあと1回続きます。

 → ⑥「日本軍により3469人が殺された事件」というのは何だ?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [10月14日(金)~10月16日(日)]

2016-10-18 23:46:33 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 10月14日の毎日新聞夕刊の「シネマの週末」で、「いまの若い子たちはこんなに窮屈な世界で生きているんだ!とかわいそうになった」というのは「何者」(三浦大輔監督)に対する(山)氏の寸評ですが、これはそのまま「映画「聲の形」」にもあてはまるなーと思いました。ふつうの10代の少年少女たちの間の意思疎通の問題が(無意識下に)まずあって、その集団の中に聴覚障碍者の女の子が入ってきたことによって顕在化するといった感じか? 昨夜午後7時20分からの回で100人をはるかに超える観客の平均年齢をほとんど1人で引き上げていた私ヌルボでしたが(笑)、感動というよりも(山)氏同様ずっとキュークツな思いで観ていました。山田尚子監督作品はこれまでも「映画 けいおん!」も「たまこラブストーリー」も観ていてけっこう好きなんですが、それでも世代間の感覚の違いはいかんともしがたいかな?

 キネマ旬報の<オールタイムベスト・ベスト100外国映画編(1999年版)>(→コチラ参照)でヌルボが観てない作品が2割弱。その1つだった「アルジェの戦い」をやっと観てきました。ドキュメンタリーではないものの、史実に即したリアリティが実感される作品で、こういうのを観ると独立運動・抵抗運動を描いた凡百の娯楽作品が色褪せて見えてしまうようです。(別に「暗殺」のことを思い浮かべているわけではありません、とは言えません。(笑)) <NAVER映画>の「알제리 전투(アルジェリ戦闘)」(→コチラ)を見ると、「植民地の痛みを経験した韓国人にとっては格別の映画。韓国の抗日闘争を扱った記録映画も早く出てくればと思うが・・・」というコメントもありました。(どんな映画をイメージしているか、知りたいところです。)

 今月末~11月にかけて<コリアン・シネマ・ウィーク><新大久保映画祭>と続き、ヌルボも一段と忙しくなります。他にもやることがいろいろあるんだけどな。また無料の映画が多いのはいいとしても、横浜からだと電車賃がかさむのがアタマの痛いところ。しかし、10月31日の「キム・ソンダル 大河を売った詐欺師たち」は前売の2千円でも高いのに、その後だと3千円とは!(こりゃあパスだな。) 11月19~27日は<東京フィルメックス>。→公式サイトによるとチケット販売は11月3日から。上映作品は→コチラの記事だと一目でわかります。韓国映画はコンペティション部門ではイ・ヒョンジュ監督「恋物語(연애담)」とユン・ガウン監督「私たち(우리들)」の2作品。特別招待作品ではキム・ギドク監督「THE NET 網に囚われた男(그물)」だけで、計3作品です。

  「朝鮮日報」の「封切映画 ぴったり10字評」は先週も掲載されませんでしたが、どうも2週間ばかり前から「映画200字評」というのが始まったような・・・。(→コチラ。) そこで挙げられている9作品について小見出しと★の数だけ紹介します。
◇ユ・ヘジンのファンならば・・・・「ラッキー」 ★★
◇平凡なアクション・・・・「バスティーユ・デイ」 ★★
◇キム・ギドクの視線が向かう所・・・・「THE NET 網に囚われた男」 ★★★
◇カギ1つの緊張感・・・・「ドント・ブリーズ」 ★★★☆
◇ナルシシズムに陥って暴力だけ残ったが・・・・「阿修羅」 ★★
◇また笑ってしまった・・・・「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」 ★★☆
◇ティム・バートンだからとて残念な・・・・「ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち」 ★★★
◇クラスは永遠だ・・・・「カフェ・ソサエティ」 ★★★☆
◇時代が揺り動かす心たち・・・・「密偵」 ★★★

         ★★★ NAVERの人気順位(10月18日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数

①(1) おばあちゃんの遠い家(韓国)  9.52(107)
②(-) フィドルスティックス  9.50(6)
③(-) 自白(韓国)  9.44(980)
④(-) クロウズ・エッグ  9.39(57)
⑤(2) Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~(韓国等)  9.39(76)
⑥(3) ドロップボックス(韓国)  9.34(92)
⑦(4) KING OF PRISM by PrettyRhythm(日本)  9.33(1,176)
⑧(6) 私たち(韓国)  9.21(957)
⑨(7) ハドソン川の奇跡  9.19(2,148)
⑩(5) 影たちの島(韓国)  9.19(94)

 今回の新登場は、②③④の3作品です。
 ②「フィドルスティックス」(仮)は、ドイツのファイト・ヘルマー監督によるキッズ・ムービー。ドイツのボラーズドルフにはかつていろんな分野で活躍したお年寄りがたくさん住んでいます。ところがある日、消費者調査会社のGKFによってボールラス村がヨーロッパの中心に位置しているという理由だけで<平均の村>に選定され、革新的な新製品のテスト場となります。村の大人たちは政策的に平均を守ろうとして、平均年齢以上の年齢になった高齢者を厄介払いして老人ホームに送り込んでしまいます。そこで幼い孫たち6人はおじいちゃん、おばあちゃんたちを救出しようと作戦を開始します・・・。世界各地の子供映画祭で受賞した作品。韓国題は「우리친구 피들스틱스」。日本公開は未定のようです。
 ③「自白」は、2013年韓国のニュースでかなり大きく取り上げられた<脱北者偽装スパイ事件>をめぐるドキュメンタリー。2012年に脱北した華僑出身のソウル市公務員ユ・ウソン氏は国家情報院によりスパイとして捕まります。国家情報院が出した明確な証拠は妹の自白でした。ところが、もしかして国家情報院が嘘をついているのでは、と疑いを抱いたチェ・スンホディレクターが動き、2015年10月大法院(最高裁)は、ユ・ウソンさんの国家保安法違反の疑いについて無罪を宣告しました。しかし、ただこの事件だけだったのか?と、韓国、中国、日本、タイを40ヵ月間行き来し追跡した末、スパイ操作事件の実体が明らかになります・・・。この事件については→コチラ参照。(かなり<北朝鮮寄り>のブログですが・・・。) 原題は「자백」です。
 ④「クロウズ・エッグ」(仮)はインド(タミル語)のドラマ&コメディ。英題の「Crow's Egg」は「カラスの卵」。貧しいながらもお母さん、おばあちゃんと一緒に楽しく暮らすスラム街の兄弟。ニワトリの卵を買うお金がなくてカラスの卵を拾って食べているので「デカ卵&チビ卵」とよばれています。しかしいつも明るくたくましく日々を送っています。そんなある日、カラスの巣があった木が切られ、そこに夢の食べ物ピザを売る店ができます。ピザを食べるという目標ができますが、兄弟の稼ぎは1日10ルピーだけ。ピザ1枚の300ルピーはあまりにも大きなお金です。30日間の幸せ探しのプロジェクトの結末はいかに? 韓国題は「행복까지 30일(幸福まで30日)」。日本公開は未定のようですが、ヌルボとしてはぜひ公開してほしいところ。

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) キャロル  8.96(13)
②(2) ラヴニール  8.0(6)
③(3) ハドソン川の奇跡  7.86(7)
④(4) アガシ(韓国)  7.68(18)
⑤(-) 自白(韓国)  7.67(10)
⑥(5) 私たち(韓国)  7.66(14)
⑦(6) ドロップ・ボックス(韓国)  7.66(1)
⑧(7) 密偵(韓国)  7.50(12)
⑨(8) ナショナル・ギャラリー 英国の至宝  7.50(4)
⑩(9) THE NET 網に囚われた男(韓国)  7.25(8)

 ⑥「自白」だけが今回の新登場です。この作品については上後述しました。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績10月14日(金)~10月16日(日) ★★★

         <脇役俳優>ユ・ヘジン主演の「ラッキー」が堂々1位に
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・・累積収入・・・・上映館数
1(5)・・ラッキー(韓国) ・・・・・・・・・・・・・10/13・・・・・・・・・1,642,608・・・・・・・・・・・2,002,710 ・・・・・・・・16,728・・・・・・・・1,158
2(1)・・ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち・・9/28・・・・272,252 ・・・・・・・・・・・2,491,687・・・・・・・・20,067・・・・・・・・・・649
3(2)・・ドント・ブリーズ ・・・・・・・・・・・・・10/05・・・・・・・・・・156,813・・・・・・・・・・・・・894,284 ・・・・・・・・・7,571・・・・・・・・・・487
4(3)・・ブリジット・ジョーンズの日記・・9/28 ・・・・・・・・・・・57,034・・・・・・・・・・・・・760,822 ・・・・・・・・・6,220・・・・・・・・・・335
       ダメな私の最後のモテ期
5(新)・・バスティーユ・デイ・・・・・・・・・10/13 ・・・・・・・・・・・54,345 ・・・・・・・・・・・・・・70,034・・・・・・・・・・・568・・・・・・・・・・422
6(新)・・ザ・コンサルタント ・・・・・・・・・10/13 ・・・・・・・・・・・39,218 ・・・・・・・・・・・・・・48,715・・・・・・・・・・・394・・・・・・・・・・375
7(27)・・自白(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・10/13 ・・・・・・・・・・・39,218 ・・・・・・・・・・・・・・48,715・・・・・・・・・・・394・・・・・・・・・・375
8(3)・・阿修羅(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・・・・27,235 ・・・・・・・・・・・2,557,328 ・・・・・・・・20,458 ・・・・・・・・・376
9(6)・・ハドソン川の奇跡 ・・・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・・・・23,161 ・・・・・・・・・・・・・607,850 ・・・・・・・・・5,096・・・・・・・・・・234
10(14)・・劇場版プリバラ ・・・・・・・・・・10/13 ・・・・・・・・・・・13,917 ・・・・・・・・・・・・・・20,934 ・・・・・・・・・・・176・・・・・・・・・・157
       み~んなあつまれ!プリズム☆ツアーズ(日本・韓国)
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は5・6・7・10位の4作品です。
 5位「バスティーユ・デイ」はアメリカ・フランス合作のアクション。パリで爆破事件が発生し、スリの青年が容疑者としてCIAに逮捕されます。無実が証明されますが、さらなる大規模テロの可能性が発覚。スリの腕を買われた青年は、こわもてのCIA捜査官とを組んで捜査協力することになりますが・・・。韓国題は「바스티유 데이」。日本公開は来年3月です。
 6位「ザ・コンサルタント」は、アメリカのサスペンス・アクション。自閉症児と誤解受けたアインシュタイン等と比肩されるほどの数学の天才クリスチャン(ベン・アフレック)は、自分の才能を生かして麻薬組織の黒い金を扱う会計士として暮らしています。そんな中、彼は密かに行ったことによって組織と国双方の標的にされてしまいます。そして今、彼は昼間は会計士、夜には殺し屋だった自分の本性を現わし、同時に彼らと相対することになります・・・。韓国題は「어카운턴트」日本公開は来年1月です。
 7位「自白」については上述しました。
 10位「劇場版プリパラ み~んなあつまれ!プリズム☆ツアーズ」については私ヌルボ書く資格ナシ。このところ新海誠監督とか山田尚子監督作品のことを書いたりしてますが、「プリパラ」はかなーり遠い遠い所にある感じで・・・。この作品、<NAVER映画>では韓国作品になってるのですが、合作? 韓国題は「극장판 프리파라 모두 모여라! 프리즘☆투어즈」です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(8)・・自白(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/13 ・・・・・・・・・・・・・・30,770 ・・・・・・・・・・・・58,244 ・・・・・・・・・・・・460 ・・・・・・・・152
2(1)・・殺してくれる女(韓国)・・・・・・・・・10/06・・・・・・・・・・・・・・・12,705 ・・・・・・・・・・・・83,937 ・・・・・・・・・・・・623 ・・・・・・・・121
3(3)・・ラヴニール ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/29・・・・・・・・・・・・・・・・1,920 ・・・・・・・・・・・・16,751 ・・・・・・・・・・・・132 ・・・・・・・・・19
4(4)・・ロビンソン・クルーソー・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・・・・・・1,202 ・・・・・・・・・・・137,698・・・・・・・・・・・1,059 ・・・・・・・・・17
5(5)・・カフェ・ソサエティ・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・・・・・・1,108 ・・・・・・・・・・・123,025・・・・・・・・・・・1,019 ・・・・・・・・・11

 今回の新登場は1位「自白」だけですが、これについては上述しました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

北朝鮮で禁じられた2つの歌♪♪  ②「われらの願いは統一(ウリエ ソウォヌン トンイル)」

2016-10-14 12:29:12 | 韓国の音楽
 3つ前の記事→<韓国ではだれでも知っている、北朝鮮で禁じられた2つの歌♪♪ ①「朝露(アチミスル)」>の続きです。

 先の記事の「朝露」と比べて、今回の「われらの願いは統一(우리의 소원은 통일.ウリエ ソウォヌン トンイル)」が日本でどれくらい知られているのか、私ヌルボはよくわかりません。ただ、民族学校に通っていた人たちは学校で教わったはずなので皆知っていると思います。また、韓国では初等学校の音楽の授業で長く教えられてきた歌なので、見出しの通り「誰もが知っている」と言ってよいでしょう。
 つまり、この歌は北朝鮮でも韓国でも歌われてきた歌です。※韓国では「われらの願い(우리의 소원.ウリエソウォン)」と短い曲名になっています。

 とりあえず、どんな歌か聴いてみてください。YouTubeにいろいろありますが、とりあえず音楽教材らしいものを貼っておきます。


 これ以外にも、朴槿恵大統領が合唱団の中に入って歌っている動画(→コチラ)等があります。

 一方、この歌は北朝鮮でも歌われてきました。1990年10月10日(朝鮮労働党創建記念日)に催されたマスゲームの動画を見てみましょう。


 この歌を私ヌルボが知ったのは1991年。先の「朝露」の記事で少し書いたように、初めて北朝鮮に行った時のこと。現地に着く前に旅行団中にけっこういた朝鮮総聯関係の人から教わったのか、着いてから案内員氏に教わったのかは思い出せません。とにかく、その時に朝鮮語で教わって覚えたのがこの「われらの願いは統一」です。

 歌詞とその日本語訳は次の通りです。
   
 우리의 소원은 통일
 꿈에도 소원은 통일
 이 정성 다해서 통일
 (※北朝鮮では 이 목숨 다 바쳐 통일)
 통일을 이루자

 이 겨레 살리는 통일
 이 나라 살리는 통일
 통일이여 어서 오라
 통일이여 오라
 われらの願いは統一
 夢にも願いは統一
 このまごころを込めて統一
 (※北朝鮮では「この命をすべて捧げて統一」)
 統一を成しとげよう

 このはらからを救う統一
 この国を救う統一
 統一よ早く来い
 統一よ来い

 この歌の作詞者は安碩柱(アン・ソクチュ.1901~50)。号は夕影(ソギョン)で、日本の統治期に挿絵画家等として活躍した人物です。(→コチラの過去記事で少し書きました。)
 そして作曲者が彼の息子の安丙元(アン・ビョンウォン.1926~2015)。1947年当時ソウル大の学生だった彼が3月1日の三一節特集ラジオドラマの主題歌として父親の詞に曲をつけ発表したのがこの歌でした。その時の歌詞は「우리의 소원은 독립 /꿈에도 소원 독립이목숨 바쳐도 독립독립이여 오라 /이겨레 살리는 독립 /이나라 찾는데 독립독립이여 어서오라 /독립이여 오라」というもので、「統一」ではなく「独立(독립)」 を希求する内容になっていて、歌詞も少し違っていました。(当時の南北朝鮮は、それぞれ米ソの軍政下に置かれていた。)
 しかし翌1948年に大韓民国政府が樹立されて南北の分断が既成事実化され、韓国の教科書にこの歌が掲載される時、歌詞が現在のように変わって「私たちの願いは統一と歌われるようになりました。

 以後もっぱら韓国で歌われてきたこの歌が北朝鮮で歌われることになったのは、1989年。全大協(全国大学生代表者協議会)の代表として世界青年学生祝典に参加するため国禁を侵して平壌入りした20歳の女子学生林秀卿(イム・スギョン)(→右画像)が現地で歌ったのが契機になりました。
 ※林秀卿は現在共に民主党の国会議員。彼女についての過去記事は→コチラ

 その後2000年の南北首脳会談の際、金大中金正日が6.15南北共同宣言に署名した後に手をつないでこの歌を歌い、その前月の平壌オリニ(子供)芸術団のソウル公演でも最後に歌われたのはこの歌でした。
 ※2009年8月23日金大中元大統領の国葬でも弔歌の1つとして演奏された。
 ※利川市の青江(チョンガン)文化産業大学大学校に安丙元が直接書いた楽譜と歌詞を刻んだ歌碑が建立されている。

 今年8月初め、このような歴史をもつ歌が北朝鮮で禁止されたというニュースが韓国で大きく報じられました。発信源はアメリカ政府系のRFA(自由アジア放送)。北朝鮮咸鏡北道のある消息通が「人々の疑問が増幅している」という反応とともに伝えた情報(→コチラ参照.韓国語)です。
 
 TVニュースでも、たとえばYTNは上述のようなこの歌の来歴も含めて詳しく報じています。(下の動画)


 放送の中で、禁止の理由として「金正恩の願いは(統一よりも)軍事強国になること」としていますが、これは上のRFA(自由アジア放送)の記事中の「禁止曲選定とともに伝達された金正恩の指示内容にそのように規定されている」とあるのをふまえたものです。そして7月から禁止曲の統制が強化され、これに反した者には厳罰を科すよう指示が下されたということです。
 上の動画の最後、アナウンサーの背後の大きな字「멀어진 소원 ‘통일’」は「遠くなった願い‘統一’」で、アナウンサーも「われらの願いは遠くなったようです」という言葉で締めくくっています。

 ところで、この「われらの願いは統一」は「統一」の部分を別の言葉に変えて歌われることがあります。→コチラの動画は北朝鮮の公式アカウントuriminzokkiriによってアップされたものですが、1番の「統一」に続けて2番は「自主」、3番は「民主」と歌われています。
 →コチラは、この歌についてとても手際よくまとめられた記事ですが、そこでは「統一」を「自由」に置き換えた歌詞が載っています。(うーむ、これはどこかで歌った記憶があるゾ。) もしかして80年代民主化闘争の中で歌われたのかな? その記事に7つ動画が貼ってありますが、その一番下に2012年3月の中国による脱北者強制送還に対する(韓国内の脱北者による)抗議行動の動画があります。そこで彼らが歌っているのは「われらの願いは自由」。(YouTubeは→コチラ。)
 はたして、今北朝鮮内で「われらの願いは自由」と歌われたりしているかどうかはわかりません。しかし、10月12日の毎日新聞の記事「韓国 脱北者、国内在住は3万人突破へ」(→コチラ)によると、脱北者に脱北の理由を訊くと「2001年以前は7割弱が「空腹や経済難」と答えていたが、14〜16年では同じ回答が1割強へと減少。01年以前は1割に満たなかった「自由への憧れ」は3割強に増加した」とのこと。もしかしたら「朝露」を禁止したのと同様に、金正恩や住民の統制担当部署はこの歌自体に<何か危険な要素>を感じたのかもしれません。

 先日、ある脱北者の方に「「ウリエ ソウォヌン トンイル」が北韓で禁止されましたよ」と言ったら、即座に「金正恩は統一を望んでないんですよ。独裁者でいられなくなるから」という声が返ってきました。正鵠を射ている・・・って、もしかして周知の事実かも。昨年あたりからの朴槿恵をはじめとする連中の統一論議は金正恩にとってはやっかいなところでしょうね。

【作曲者の故・安丙元(アン・ビョンウォン)さんの所蔵品】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [10月7日(金)~10月9日(日)]

2016-10-11 23:44:59 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 昨晩はシネマ・ジャック&ベティで深田晃司監督「淵に立つ」を観てきました。先が読めず、緊張の連続で、「エッ!」と驚くシーンがいくつも・・・。第69回カンヌ映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞というのは理解できます。感動するorしない以外にも、映画の価値を測るモノサシはいろいろあるということです。

 そのシネマ・ジャック&ベティでは現在「ダイビング・ベル セウォル号の真実」を上映中。(~14日(金)。) 公式サイト(→コチラ)で今後の上映予定作品をみると、韓国関係では次のようなものがあります。
 「暗殺」(10/22〜)、「将軍様、あなたのために映画を撮ります」(11/12〜)、「華麗なるリベンジ(原題 :検事外伝)」(11/12〜)、「弁護人」(12/3〜)。注目作が次々に上映されます。
 ※まだ全部書き終えていない本ブログのシリーズ記事<多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ)>(直近の第4回は→コチラ。たぶんあと2回続く)を早く仕上げなければ・・・。
 この他に、15日(土)からは「冬の小鳥」のウニー・ルコント監督による「めぐりあう日」、日本の野球を韓国に伝えた在日韓国人選手たちを追ったドキュメンタリー「海峡を越えた野球少年」(2016年内)も上映されます。
 韓国関係映画以外で私ヌルボの期待は、2013年の大感動インド映画「きっと、うまくいく」のラージクマール・ヒラーニ監督による「PK」(10/29〜)と、今夏のシネマカリテの<カリコレ>で見られなかった台湾映画「私の少女時代 Our Times」(年内or来年)。他にもいろいろあります。
 こんなに観たい映画を続々上映してくれる映画館がバイクで10分ばかりの所にあるとは、前にも書いたことがたしかありましたが、ホントにラッキーです。

 最近、今年5月にアップした<北朝鮮の女の子の日常ではなく、北朝鮮当局の「ヤラセ」を暴露してしまったドキュメンタリー「太陽の下」>という記事(→コチラ)の訪問者数が急増したので、その理由を探ると、<YAHOO !ニュース>で→7日と→10日の2回にわたってこの「太陽の下」が「太陽の下で 真実の北朝鮮」との邦題で来年1月21日からシネマート新宿等で順次公開されることが決まったと報じたことと関係があるようです。最近は新聞は購読しないでもっぱら<YAHOO !ニュース>等のネットメディアで情報を得ている人が多いとか。その影響力はたしかに大きいものがあります。

 あっ! 注目の<慰安婦映画>「鬼郷」
の上映情報が出たゾ!(→コチラ。) 11月22日。大阪か、うーむ・・・。批判している人たちも上映の妨害はしないで「ここが違う!」等々、言葉や文字で批判してほしいですね。表現の自由が保障されているというのも<日本の誇るべき美点>なのですから。

 大阪といえば、11月3~5日<第2回 大阪韓国映画祭>が開かれます。詳しくは→コチラ

 「朝鮮日報」の「封切映画 ぴったり10字評」は先週掲載されませんでした。

         ★★★ NAVERの人気順位(10月11日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数

①(1) おばあちゃんの遠い家(韓国)  9.53(92)
②(3) Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~(韓国等)  9.39(76)
③(-) ドロップボックス(韓国)  9.33(91)
④(5) KING OF PRISM by PrettyRhythm(日本)  9.32(1,145)
⑤(4) 影たちの島(韓国)  9.27(92)
⑥(9) 私たち(韓国)  9.21(957)
⑦(7) ハドソン川の奇跡  9.19(1,874)
⑧(10) 一死覚悟(韓国)  9.16(241)
⑨(2) 水の息(韓国)  9.16(62)
⑩(8) ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期  9.16(2,400)

 順位の変動はありましたが、初登場の作品はありません。

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) キャロル  8.96(13)
②(2) ラヴニール  8.0(6)
③(3) ハドソン川の奇跡  7.86(7)
④(4) アガシ(韓国)  7.68(18)
⑤(5) 私たち(韓国)  7.66(14)
⑥(-) ドロップ・ボックス(韓国)  7.66(1)
⑦(6) 密偵(韓国)  7.50(12)
⑧(7) ナショナル・ギャラリー 英国の至宝  7.50(4)
⑨(8) ディーブ  7.35(5)
⑩(-) 網(韓国)  7.25(8)

 ⑩「網」だけが今回の新登場です。この作品については後述します。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績10月7日(金)~10月9日(日) ★★★

         3ヵ月ぶりに外国映画「ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち」が首位に
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・・累積収入・・・・上映館数
1(2)・・ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち・・9/28 ・・・・660,699 ・・・・・・・・・・・1,998,121・・・・・・・・16,216・・・・・・・・・・899
2(8)・・ドント・ブリーズ ・・・・・・・・・・・・・10/05 ・・・・・・・・・・392,348・・・・・・・・・・・・・568,012 ・・・・・・・・・4,896・・・・・・・・・・671
3(1)・・阿修羅(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・・・207,424 ・・・・・・・・・・・2,471,744 ・・・・・・・・19,663 ・・・・・・・・・721
4(3)・・ブリジット・ジョーンズの日記・・9/28 ・・・・・・・・・・138,793 ・・・・・・・・・・・・・625,206 ・・・・・・・・・5,142・・・・・・・・・・449
       ダメな私の最後のモテ期
5(16)・・ラッキー(韓国)・・・・・・・・・・・・10/13・・・・・・・・・・・125,949 ・・・・・・・・・・・・・142,690・・・・・・・・・1,240 ・・・・・・・・・・345
6(4)・・ハドソン川の奇跡 ・・・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・・・・97,942 ・・・・・・・・・・・・・532,973・・・・・・・・・4,538 ・・・・・・・・・・460
7(5)・・密偵(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・・56,433 ・・・・・・・・・・・7,458,877・・・・・・・・60,974・・・・・・・・・・386
8(51)・・殺してくれる女(韓国) ・・・・・・10/06 ・・・・・・・・・・・32,470 ・・・・・・・・・・・・・・43,976・・・・・・・・・・・342・・・・・・・・・・313
9(58)・・網(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/06・・・・・・・・・・・・27,177 ・・・・・・・・・・・・・・35,378・・・・・・・・・・・281・・・・・・・・・・381
10(7)・・ピートと秘密の友達・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・・・・18,184・・・・・・・・・・・・・・88,276・・・・・・・・・・・707・・・・・・・・・・138
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 前週1位の「阿修羅」はもう勢いがなくなって後退し、3ヵ月ぶりに外国映画がトップに立ちました。
 今回の新登場は5・8・9位の3作品です。
 5位「ラッキー」は、日本映画「鍵泥棒のメソッド」を原作にした韓国のコメディ。冷酷な殺し屋りヒョンウク(ユ・ヘジン)は、偶然立ち寄った銭湯で石鹸を踏んで転倒し、過去の記憶を失くしてしまいます。一方、人気も生活の意欲もなく死ぬことを決心した無名俳優のジェソン(イ・ジュン)は身辺整理のために立ち寄った同じ銭湯でヒョンウクを見かけ、自分と彼のカギを取り替えて逃げます。以後ヒョンウクは自分がジェソンだと思ったまま、俳優として成功するために努力しますが・・・。.銭湯のカギのために運命が変わってしまった(!?)2人、結局どうなる? 原題は「럭키(ラッキー)」なのですが、英題は「LUCK-KEY」。なるほどね。
 8位「殺してくれる女」は、韓国のドラマ。鐘路一帯で老人を相手にかろうじて生計を立てている65歳のソヨン(ユン・ヨジョン)は老人たちに人気のバッカスハルモニ(公園等で客を誘う中高年の売春婦)。トランスジェンダーである家主ティナ、障害を持つ貧しい成人フィギュア作家ドフン(ユン・ゲサン)、性感染症治療のために立ち寄った病院で会って連れてきたコピノ(フィリピン人との混血)の少年ミノ等、隣人と共に大変ながらも平和な日々を過ごしている中、ある日脳卒中で倒れたかつての常連客ソン老人から自分を殺してくれという切なる願いを受けて、ソヨンは葛藤の末殺してしまうことに・・・。それ以来、生きるのが辛くて死にたいという客たちからの依頼が続き、ソヨンは混乱に陥ってしまいますが・・・。ということで、韓国の今の社会問題を反映した作品のようですね。おっ、あの全茂松(チョン・ムソン.75歳)も出演してるのか!(→コチラ参照。) 原題は「죽여주는 여자」です。
 9位「網」は、今年のベネチア国際映画祭でワールドプレミアとして初上映されたキム・キドク監督作品。船が網に引っ掛かったため、北朝鮮の漁師チョルウ(リュ・スンボム)は、やむなく1人で南北の境界線を越えてしまいます。韓国側の情報要員は、チョルウを怪しく思い、監視し始めます。韓国での熾烈な1週間を耐えぬいて、チョルウははたして北に残された家族のもとに戻ることができるのか・・・。原題は「그물」です。この作品は、今年のフィルメックスでは開幕作として上映されることが決まっています。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(22)・・殺してくれる女(韓国) ・・・・・・・・10/06 ・・・・・・・・・・・・・・32,470・・・・・・・・・・・・43,976・・・・・・・・・・・・・342 ・・・・・・・・313
2(16)・・デシエルト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/05 ・・・・・・・・・・・・・・・4,586・・・・・・・・・・・・10,916・・・・・・・・・・・・・・84 ・・・・・・・・113
3(5)・・ラヴニール ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/29・・・・・・・・・・・・・・・・3,028 ・・・・・・・・・・・・12,376・・・・・・・・・・・・・・98 ・・・・・・・・・28
4(6)・・ロビンソン・クルーソー・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・・・・・・2,806 ・・・・・・・・・・・136,382・・・・・・・・・・・1,049 ・・・・・・・・・37
5(2)・・カフェ・ソサエティ・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・・・・・・2,634 ・・・・・・・・・・・120,297 ・・・・・・・・・・・・997 ・・・・・・・・・31

 今回の新登場は1位と2位の2作品です。
 1位「殺してくれる女」については上述しました。
 2位「デシエルト」(仮)はメキシコ・フランス合作作品。タイトルの「DESIERTO」はスペイン語で「砂漠」の意味。アメリカとメキシコを隔てる国境付近の砂漠が物語の舞台です。その一帯では、違法に国境を越えてアメリカ国内に入るメキシコ人の移民の問題が存在しています。そんな不法移民たちが「」をを描いたサスペンス映画が「Desierto」です。国境を越えて息子に会うために密入国しようとするモーセもその1人。ところが、彼らが殺伐とした国境地帯を越えた時、狩猟で糧を得ながら怒りと被害意識を抱いて生きているアメリカ人の殺し屋サムに仲間たちが無惨に撃ち殺されていきます。最後に生き残ったモーセは、自分をねらう殺し屋の銃口を避けようと隠れ場所を探すのですが・・・。国境警備を名目にターゲットにされ、射殺される人間狩りの恐怖。トランプ氏は高い壁を築くことを主張していますが、それで解決する ?? 韓国題は韓国題は「디시에르토」です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハングルが読めなくてもわかる、北朝鮮の教科書の特色

2016-10-10 13:57:17 | 北朝鮮のもろもろ
 10月1~2日、グローバルフェスタというイベントに行ってきました。
 場所はお台場センタープロムナード。・・・って、どこなんだか私ヌルボはわかりませんでしたが。最寄り駅のりんかい線東京テレポート駅(orゆりかもめ青海駅)も初めてだし、このイベントも初めて。
 国内最大級の国際協力のイベントで、毎年NGOやNPOのほか、JICAや大使館など250以上の団体が出展しているとのことなんですが、このイベントの認知度はどれくらいなんすかねー?
 実際行ってみると、1日はどんよりとした空模様でとりおり小雨も降るという、行楽には向かない天気。しかし意外なほどの人出。2日は晴れたといっても蒸し暑い一日。しかしその後の情報では両日で来場者は約10万人に上ったとか。いやー、そんな催しが以前から続いていたんですねー。(一昨年までは日比谷公園で開催)

 さて、私ヌルボのお目当ては北朝鮮難民救援基金のブース。公式サイト(→コチラ)の出展者紹介のページには「北朝鮮人権侵害の実態を示す、体験者によるイラスト画の展示、日本に定住した元脱北者の体験談、教科書の展示」とあります。
 行ってみると、さして広くはない(というより狭い)空間内にいろいろ興味深い展示物がありました。
 で、今回はその中で北朝鮮の学校で用いられている教科書について紹介します。

          

 左から小1の数学、中学の英語、小3の自然。一見してわかることは、紙質の悪さ。印刷のレベルも低く、いくら実際に用いられたものにしても、日本人の基準では半世紀以上も前のものといった感じ。多くは(全部?)21世紀に入ってからのものなんですけどね。

★私ヌルボのただし書き・・・・この記事は決して北朝鮮を見下したり、からかったりするような差別的意図で書くものではありません。要は正確な北朝鮮の現実を認識し、それを多くの皆さんと共有するのが目的です。教科書の紙質や印刷のことをすぐ上で書きましたが「これはひどい!」という感想も「日本人だからそう思う」ので、「北朝鮮のような社会で生まれ育った人はそれが標準」です。このような双方のモノサシの大きな差異は、諸製品や技術等のレベルに限らず、一般的な知識や価値観等についても当然あるわけです。かの国の政府や人々と接する場合もそうしたことを念頭に置く必要がある、ということです。

 さて教科書の表紙をめくると・・・。


 そして表紙をめくると・・・。

     

 左は(上左の)小1数学、右は(上中の)中学英語です。それにしても、このねずみ色の紙、数回消しゴムでこすると穴が空きそうです。

 また、このページを見て気づくのは、文章の最初の方に太字の部分があること。(どの教科書も同様です。)
 何が書いてあるか、具体的に見てみます。



 これは小1数学の冒頭の4行。

 偉大なる領導者金正日元帥様は次のようにおっしゃった。
 《数学を知らなくては科学技術分野で現れる問題を正しく解き明かすことができません。》


 つまり、「金正日」という文字と、彼の「お言葉」の部分が太字になっています。


 こちらは中学英語です。

               まえがき
 偉大なる領導者金正日元帥様は次のようにおっしゃった。
 《外国語は理解することに留まるのではなく、活用できるように学習しなければなりません。そうするとなると練習をたくさんしなければならなりません。たくさんの練習を経て、熟練した外国語の知識だけが活用できるのです。》
 敬愛する父金正日元帥様が外国語学習をするにあたって下さったお言葉を深く承って、2学年英語教科書は聞いて話すことを主としつつ、読みと作文を適切に取り合わせるという原則で構成した。


 これも同様。他の教科書もみな同じ。あ、「金正日元帥様」の前に「敬愛する首領金日成大元帥様」の「お言葉」が入っているものもありましたね。

 また、教科書だけでなく、あらゆる分野の書物や、博物館等の施設の説明文にも必ず同じような形式の「お言葉」が冒頭部分に掲げられています。どれも上のような太字で記されているので、ハングルが読めなくても「例のアレだな」とすぐわかります。

  記述内容については、ここでは深入りしません。ただ、中学英語の最初の章のページと、高等中学美術の数ページだけ紹介します。


 せめて英語くらいは外の世界に開かれた内容を期待したいところですが、それは望むべくもありません。 タイトルからして「偉大な指導者金正日元帥の健康を祈る!」ですから。その下の絵は白頭山で「白頭山秘密キャンプの偉大なる指導者金正日元帥の生地」と記されていますが、「白頭山生まれ」というのは「金正日神話」の1つで、少なくとも外国ではよく知られた「虚構」です。※実は極東地方生まれで、この密営という丸太小屋も1987年に造られたもの。

     

 高等中学校の美術の教科書の第一印象は、印刷が悪いこと。キレイな印刷を求められるはずの美術教科書なのに、他の教科書以下のようにも思えます。人物画のページ(右)の変に赤みがかった色はいくらなんでも原画の色調ではないでしょう。印刷が「悪い」というより「ひどい」レベルです。※ちなみに、描かれている人物は左ページ上が祖国解放戦争の時期の遊撃闘争中に敵に逮捕され死刑に処せられる最後の瞬間まで屈することなく戦った趙玉姫(チョ・オッキ)英雄の闘争を描いた作品。また右ページ上は「将軍様の戦士「柳京洙(リュ・ギョンス)先生様」(部分)。柳京洙は朝鮮戦争開戦時の北朝鮮軍の第105戦車旅団長。他の絵は自画像等です。

 美術の教科書の内容面での特色は、日本ではよく知られているヨーロッパの名画が全然ないこと。レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ミレーやゴッホ、ピカソ等々。ざっと見たところ、私ヌルボの知っている画家では、朝鮮王朝後期の絵師金弘道(キム・ホンド)の風俗画がページの下の方に小さく載っていたくらいでした。
 そしてもう1つの特色は、宣伝画に4ページものページを割いていることです。

       

 宣伝画といっても商品や催し等の宣伝ではありません。章の初めには、宣伝画が大衆に対する宣伝・扇動事業に重要な位置を占めること等が記されています。(上左) その下の、銃剣を高く掲げた4人の絵には青字で大きく「われわれは勝つ!」、そして絵の上には「偉大なる将軍様がいらっしゃれば」と書かれています。
 その右のページ(上右)も銃を持った兵士の絵。「党中央を決死擁衛(護衛)する銃・爆弾になろう!」というスローガンが入っています。※「党中央」は金正日とほとんど同義。
 その下右の絵だけは作画技術についての説明。これだけ異質な感じです。

       

 さらに宣伝画の中から2つピックアップして紹介します。
 左は「米帝を追い出して祖国を統一しよう!」というスローガンが記された絵(部分)。いかにも、という感じです。米軍兵士がひっくり返っていますが、「こうした敵愾心をあおるような教育があっていいのか!」という国際標準的疑問は、この国には遠くの雑音か、それ以下のものでしかなさそうです。
 右の絵は、書かれた文字とその背景の意味がわからなければ単に「かわいいウサギの絵」と思ってしまうかもしれません。ところが、赤い大きな字は「より多くのウサギを育てよう!」、そして右上の黄色い字は「学校で家庭で」なのです。この宣伝画が書かれたのは「主体69年(西暦1980年)」ですが、それ以前(1960年代初め?)から北朝鮮では金日成大元帥様の指示で始められたのがウサギ飼育の奨励(というか強制というか・・・)でした。「軍や党の運用資金を補う」のがその目的で、とくに小中学校の子供は夏休みの宿題でウサギの皮3~5枚提出というのがあったりして大変だったようですよ。詳しくは→コチラの記事を参照してください。

 以上、6、7冊ほどの教科書をざっと見て、そのうわべと中身について少しだけ書きましたが、それでもこれだけの分量になってしまいました。

 教科書に限らず、北朝鮮の文物を直接見たりすることはめったにないでしょうが、そんなことがあった時の参考にしていただければと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [9月30日(金)~10月2日(日)]

2016-10-05 13:45:32 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 3日ヒューマントラストシネマ渋谷で「隻眼の虎」(原題「대호(大虎)」)鑑賞。やっぱり、今ひとつ焦点が絞り切れていなかったような・・・。なお、前にも書きましたが、「韓国の虎はなぜ消えたか」の著者遠藤公男さんによると、「1922年に慶尚北道・慶州の大徳山で捕まったのを最後に、韓国からトラが消えた」とのこと。日本人巡査が数百人を指揮してトラを追いつめて射殺、毛皮は日本の皇族に献上されたとか・・・。(→<聯合ニュース>の記事(日本語)参照。)

 <コリアン・シネマ・ウィーク 2016>の情報は韓国文化院のサイトで見られます。(→コチラ)。全5作品、先行上映の「キム・ソンダル 大河を売った詐欺師たち」(→コチラ参照)も入れて6作品ですが、今回は率直に言ってあまり期待感がわかない感じ。たぶん一番評価が高い「王の運命-歴史を変えた八日間-」はすでに一般公開で観たし、国策映画っぽい「ノーザン・リミット・ライン 南北海戦」も観たし、それ以外はどうも韓国でもさほど話題にならなかった作品のようで、なんだかなー、といったところ。まあ(抽選に当たれば)無料なので行くかもしれませんが・・・。

 11月3~7日の<新大久保映画祭>。先週→公式サイトのトップページを見て「8作品中6作品はもう観てるし、云々」と書きましたが、そのスケジュールのページ(→コチラ)を見ると「7ヶ国15作品が見られる!!」とあります。で、目に留まったのが「危路工団」。女性労働者問題をテーマにしたドキュメンタリーで、韓国の映画サイトで高評価を得た作品です。おっ、これも含め韓国文化院で上映の5作品は無料か!(チケットは必要) 他には、うーむ、なんとも見づらくわかりにくいページじゃのう・・・。

 10月6~15日釜山国際映画祭。釜山市側と映画関係者とが対立して一時は開催が危ぶまれましたが、なんとか実施にこぎ着けましたね。しかし問題が解消されたわけではありません。日本語記事では→コチラの「西日本新聞」の記事を参照されたし。上映作品等内容についてはまたいずれ。
   
「朝鮮日報」9月30日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)
。)  「ラヴニール」
   喪失・亀裂に対する姿勢 ★★★★


 「ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち」

   まさにティム・バートン ★★★☆


 「ハドソン川の奇跡」

   正直で温かで羨ましい ★★★


 「リップヴァンウィンクルの花嫁」

   誰もがさびしいと叫ぶ ★★★


 「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」

   ゴールドミスの全願望 ★★★


 「阿修羅」

   強さばかりなので単調 ★★☆


 上掲の作品はすべて以下の記事の中で紹介しています。

         ★★★ NAVERの人気順位(10月4日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(-) おばあちゃんの遠い家(韓国)  9.69(61)
②(-) 水の息(韓国)  9.67(42)
③(1) Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~(韓国等)  9.39(76)
④(2) 影たちの島(韓国)  9.36(90)
⑤(3) KING OF PRISM by PrettyRhythm(日本)  9.30(1,098)
⑥(-) ミッドワイフ  9.25(4)
⑦(-) ハドソン川の奇跡  9.23(1,2447)
⑧(-) ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期  9.22(1,596)
⑨(4) 私たち(韓国)  9.21(946)
⑩(-) 一死覚悟(韓国)  9.16(240)

 めずらしく半数以上が入れ替わりましたが、本ブログの初登場は①②⑥の3作品です。
 ①「おばあちゃんの遠い家」は、2015年の第41回ソウル独立映画祭で観客賞を受賞した作品。イ・ソヒョン監督が自身の祖母を撮ったドキュメンタリーです。就活中だったある日、「私」は93歳の祖母が自殺をしようとしたという話を聞きます。自分が集めたお金30万ウォンを化粧台の上に置き、病院でもらった睡眠薬を集めて飲んで・・・。子供の頃両親の代わりに自分を育ててくれた祖母の自殺の知らせは孫娘の「私」には青天の霹靂でした。「私」は祖母のそばにいて世話をすることにしました。そして祖母を記憶するための準備を開始します。「おばあちゃん、私、映画をがんばって撮るから全部見る前に逝かないでね」・・・。祖母と孫娘の心温まる日常を通して、生と死、家族の大切さなど、誰でも共感できるテーマについて話題を提示し、深い感動を伝える作品とのことです。原題は「할머니의 먼 집」です。
 ②「水の息」も韓国のドキュメンタリー。昔から有名な済州島の海女を、済州島出身のコ・ヒヨン監督が7年間も長期にわたり50人にのぼる海女たちに密着取材して撮った作品です。厳密にいえば済州島ではなく、その東の牛島(ウド)という小島。風の島と呼ばれるほど風が強く、土地がやせていて作物が育ちにくい所で、それが海女の発祥地となった背景のようです。多くの人が知らないことは、海女社会に上軍(サングン)・中軍(チュングン)・下軍(ハグン)という3つの<階級>が存在するということ。それを分けるのは海中で息を止められる長さです。それにより潜ることができる海の深さが変わり、獲れる魚介類が変わって収入が違ってくるのです。その海女たちの息の長さは生まれつきのものなので、下軍の海女がいくら努力しても上軍にはなれないそうです。しかし、自分の息の限界ギリギリまで潜りたい欲望は誰しもあり、あるいはそれを超えたいとさえも・・・。その限界を超えて最初に吸うのがタイトルの「水の息」です。欲望の象徴であり、海女たちが最も恐れているものだそうです。原題は「물숨」です。
 ⑥「ミッドワイフ」(仮)は、フィンランド・リトアニア合作のドラマ。1944~45年のラップランド戦争の頃のフィンランドを舞台にした恋愛物語です。フィンランドは第2次世界大戦ではソ連と対抗するため枢軸国側について戦い、ソ連相手に善戦するものの結局は1944年ソ連と休戦し、その条件として国内に駐留するドイツ軍を駆逐するために戦います。これがラップランド戦争です。フィンランド人女性のヘレナはドイツ軍兵士のヨハネスに会って恋に落ち、看護師に偽装してヨハネスがいる陣地で働き始めます。その後爆撃に巻き込まれて陣地を出た2人は、もし離れ離れになってもそこで再び会おうとを固く約束します。・・・で彼女、もしかして待ち続けるの? ミッドワイフ(midwife)とは助産師のことなんだけど・・・。ネチズンのコメントを見ると、「枢軸国の人間同士の恋愛」という理由だけで最低評価(1点)を付けてた人がいたな。韓国題は「미드와이프」。日本公開はなさそう、かな?

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) キャロル  8.96(13)
②(-) ラヴニール  8.0(6)
③(-) ハドソン川の奇跡  7.86(7)
④(2) アガシ(韓国)  7.68(18)
⑤(3) 私たち(韓国)  7.66(14)
⑥(4) 密偵(韓国)  7.50(12)
⑦(5) ナショナル・ギャラリー 英国の至宝  7.50(4)
⑧(6) ディーブ  7.35(5)
⑨(7) トンネル(韓国)  7.21(14)
⑩(8) ウルフパック  7.20(5)

 ②「ラヴニール」(仮)だけが今回の新登場です。女優出身のミア ハンセン・ラヴ監督によるフランス映画。パリの高校で哲学を教える50代の女性ナタリー(イザベル・ユペール)は2人の子供の母親として、1人の男の妻として、そして母親の娘として忙しくとも幸せな日々を過ごしています。そんなある日、思いもよらぬ夫の告白により彼女の平和な生活が揺れ始めます・・・。突然の喪失感と向き合い、その後新たに自分だけの幸せを探していく旅を盛り込んだ、フランス映画らしい繊細な作品、なのかな? 原題「L’avenir」は<未来>の意。韓国題は「다가오는 것들」です。日本公開は未定のようです。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績9月30日(金)~10月2日(日) ★★★

         「密偵」の後は「阿修羅」 韓国映画のトップが続く
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・・累積収入・・・・上映館数
1(16)・・阿修羅(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・1,068,582 ・・・・・・・・・・・1,803,090 ・・・・・・・・14,080 ・・・・・・・・1,278
2(新)・・ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち・・9/28・・・595,717 ・・・・・・・・・・・・・742,526 ・・・・・・・・・5,904・・・・・・・・・・810
3(7)・・ブリジット・ジョーンズの日記・・9/28 ・・・・・・・・・・208,129 ・・・・・・・・・・・・・333,917 ・・・・・・・・・2,701・・・・・・・・・・509
       ダメな私の最後のモテ期
4(6)・・ハドソン川の奇跡 ・・・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・・・185,761 ・・・・・・・・・・・・・293,265・・・・・・・・・2,499 ・・・・・・・・・・573
5(1)・・密偵(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・181,320 ・・・・・・・・・・・7,292,550 ・・・・・・・・59,647・・・・・・・・・・522
6(2)・・ベン・ハー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・・41,432 ・・・・・・・・・・・1,343,018 ・・・・・・・・10,975・・・・・・・・・・276
7(36)・・ピートと秘密の友達・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・・・・34,847・・・・・・・・・・・・・・39,792 ・・・・・・・・・・・322・・・・・・・・・・163
8(新)・・ドント・ブリーズ ・・・・・・・・・・・・10/05・・・・・・・・・・・・29,448・・・・・・・・・・・・・・33,807 ・・・・・・・・・・・289・・・・・・・・・・304
9(78)・・すすめ! オクトノーツ シーズン4・・9/28 ・・・・・・・・22,958・・・・・・・・・・・・・・25,455 ・・・・・・・・・・・152・・・・・・・・・・158
        :湿地探検船K
10(新)・・白雪姫:消えたお父さんを探して・・9/29 ・・・・・22,364 ・・・・・・・・・・・・・・23,703・・・・・・・・・・・・186 ・・・・・・・・・209
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 7月22~24日の「釜山行き」以来韓国映画のトップが続いています。700万人を超えた「密偵」が後退した後、今度は「阿修羅」が他を引き離して1位の座につきました。
 今回の新登場は1・2・7・8・9・10位の6作品です。
 1位「阿修羅」は、韓国の犯罪・アクション。殺人・強盗・レイプ・拉致・放火・麻薬等の凶悪犯罪を扱う<強力系刑事>のハン・ドギョン(チョン・ウソン)は、悪徳市長のパク・ソンベ(ファン・ジョンミン)から金を受け取ってソンベが利権のために犯す犯罪の後始末をしています。ドギョンが悪の道に入ったのは末期癌の妻の病院費を得るため。そんなドギョンの弱点をつかんだ検事のキム・チャイン(クァク・ドウォン)と検察捜査官のト・チャンハク(チョン・マンシク)はドギョンを脅迫・利用し、ソンベの悪事を明らかにしようとします。ソンベと検察との間に挟まれたドギョンは、自分を兄のように慕っているムン・ソンモ(チュ・ジフン)をソンベの手下として送り込みますが・・・。原題は「아수라 」です。
 2位「ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち」は、ランサム・リグズの同名小説を奇妙な(?)作風のティム・バートン監督が映画化したアドベンチャー・ファンタジー。(原作小説は「ハヤブサの家」の邦題で東京創元社から刊行。) 大好きだった祖父の凄惨な死。少年ジェイコブはその祖父の最期のことばを果たすべくウェールズの孤島を訪れます。そこで彼が見つけたのは廃墟となった屋敷と、そこで暮らす不思議な能力を持った住人。やがて屋敷に恐ろしい危機が迫り、ジェイコブは住人たちととともに怪物と戦うことに・・・。→トレーラー見たらたしかに奇妙。韓国題は「미스 페레그린과 이상한 아이들의 집」。日本公開は2017年です。なんでそんなに遅い?
 7位「ピートと秘密の友達」は、日本では劇場未公開に終わったディズニーの実写映画「ピートとドラゴン」1(977)のリメイク。6年間森で暮らしてきた少年ピートが発見されるところから物語が始まります。ピートの唯一の友だちがエリオットなのですが、「彼」はドラゴンで透明になる能力があり、ピートが困った時にいつも助けてくれます。そんな2人(?)の友情を描いた作品のようです。前作では、エリオットはいかにもアニメっぽい2Dだったのが、今作では最新の映像テクノロジーで比較にならないほどリアルになってます。韓国題は「피터와 드래곤」。日本公開は12月23日です。
 8位「ドント・ブリーズ」(仮)は、アメリカのスリラー。10代の空き巣ねらい3人組は最底辺の生活を清算するために 盲目の老人を狙った最後の犯行を結構します。老人が寝ている間に巨額の現金を手に入れたと思った瞬間、老人は目を覚まします。暗闇の中、右往左往する彼らを盲目の老人は即座に見つけ出し、老人とは思えないほどの動きで返り討ちにとりかかります。360度、どこから攻撃されるかわからない暗がりの中の恐怖を観客も実感 !というのがミソか。韓国題は「맨 인 더 다크」。日本公開は未定のようです。
 9位「すすめ! オクトノーツ シーズン4:湿地探検船K」は、英BBC制作の子供向き人気アニメシリーズ第4作。韓国でも放映されておなじみ。オクトノーツはいろんな動物のメンバーで構成されるエージェント集団で、タコ状の乗り物に乗って海中の生き物たちのピンチを救うべく出動します。今回はフロリダの湿地公園に行って外来種の生物を見つけて救出。あれ、湿地からくっついてきた赤ちゃんワニを連れて海に行っちゃう? 韓国題は「바다 탐험대 옥토넛 시즌4: 늪지탐험선K」。日本公開はなさそうな・・・。
 8位「白雪姫:消えた父さんを探して」は、中国の3Dアニメ。お父さんと2人きりで幸せに暮らしていたハンナ。しかしある日突然お父さんが何も言わずいなくなってしまいます。ハンナは子犬のローバーと一緒にお父さんを探しに家を出ます。その途中ハンナは白雪姫と7人の小人たちに出会い、彼らの助けを借りますが、森の中で兵士たちの攻撃を受けたりして・・・。あまり中国らしくなさそうというか、絵柄を見るとあのアナ雪等々どこかで見たようなキャラクターだぞ。(そこが中国らしい?) 韓国題は「백설공주 : 사라진 아빠를 찾아서」。日本公開はないでしょう。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・アイアムアヒーロー(日本)・・・・・・・9/21・・・・・・・・・・・・・・17,828・・・・・・・・・・・201,147 ・・・・・・・・・・1,712 ・・・・・・・・129
2(2)・・カフェ・ソサエティ・・・・・・・・・・・・・・・9/14 ・・・・・・・・・・・・・・・7,042 ・・・・・・・・・・111,798 ・・・・・・・・・・・・927 ・・・・・・・・・47
3(18)・・リップヴァンウィンクルの花嫁(日本)・・9/28 ・・・・・・・・・5,815 ・・・・・・・・・・・・9,674・・・・・・・・・・・・・・78 ・・・・・・・・・85
4(11)・・Bringing Tibet Home・・・・・・・・・・9/01 ・・・・・・・・・・・・・・・4,010 ・・・・・・・・・・・14,592・・・・・・・・・・・・・114 ・・・・・・・・・・2
       ~故郷を引き寄せて~(韓国等)
5(30)・・ラヴニール ・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/29・・・・・・・・・・・・・・・・3,585 ・・・・・・・・・・・・5,757 ・・・・・・・・・・・・・・44 ・・・・・・・・・27

 今回の新登場は3位と5位の2作品です。
 3位「リップヴァンウィンクルの花嫁」は私ヌルボは未見。気にはなっていたのですが結局見逃してまいました。韓国題は「립반윙클의 신부」です。
 5位「ラヴニール」については上述しました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国ではだれでも知っている、北朝鮮で禁じられた2つの歌♪♪  ①「朝露(アチミスル)」

2016-10-04 16:56:56 | 韓国の音楽
 1つ前の記事で過去100年の日本・韓国・北朝鮮で主に時の政治権力によって禁止された歌について書かれた田月仙(チョン・ウォルソン)さんの著書「放送禁止歌」を紹介しました。

 その本の中に「朝露(アチミスル.아침이슬)」のことが書かれています。ご存知の方も多いと思いますが、1970年に当時大学生だった金敏基(キム・ミンギ)が作詞・作曲し、翌年レコード化された歌。1973年政府から健全歌謡に選定されますが翌74年には禁止されます。朴正熙大統領の軍事政権に抗する民主化闘争の中で学生たちの間に広がり、愛唱される歌になっていたから。「長い夜を明かし・・・」や「太陽墓地の上に、赤く昇り・・・」といった歌詞中の長い夜墓地は軍事政権下の韓国のことで赤く昇る太陽とは金日成を意味しているのだろうというのがその禁止理由でした。しかし、この歌はその後80年代の全斗煥政権下でも民主化闘争を象徴する歌として歌われ続け、そして1987年の盧泰愚の民主化宣言後ようやく解禁されました。

 この「朝露」について、本ブログでは2011年にけっこうくわしい3回連続の記事を書いたことがありました。その<その1>(→コチラ)で楊姫銀(ヤン・ヒウン)のファースト・アルバムの動画(といっても静止画像と歌だけ)を貼ったので、今回は金敏基の歌を貼っておきます。背景の動画は1987年7月9日李韓烈(催涙弾の直撃を受け死亡した延世大の学生)の<民主国民葬の時のようすです。

 ところで、上記過去記事の<その3>(→コチラ)の最後の方に、私ヌルボが1991年8月北朝鮮に行った時のエピソードを少し書きました。北朝鮮の対文協(対外文化連絡協会)(?)との交歓を兼ねたディナーの際の出し物で、当方の団体から1人の男性が持参したギターを弾きながら歌った歌がこの「朝露」でした。が、反応はゼロ。いや、マイナスと言った方がいいくらいかも。当時北朝鮮ではこの歌を知っていた人は、いたとしても職務で韓国を「注視」しているごく限られた人だけだったのではないでしょうか? また韓国の歌自体歌うことは厳禁だし・・・。そして日本からのこの旅行団の参加者100人中でも何人くらいの人が知っていたか?(10人くらい??) とにかく(たぶん)朝鮮総聯の人が歌って会場がすごく盛り上がった「朝鮮八景(조선팔경)」(1936年.→YouTube)とは対照的な雰囲気でした。
 ところが「禁じられた歌」には、この「朝露」が「北朝鮮版カラオケに登場する」と書かれています。田月仙さん自身の経験として次のように記されています。
 その映像は驚くべきものだった。数えきれないほどの北朝鮮の出演者たちが、韓国の学生や労働者に扮し、韓国で反体制デモを行っている様子を演出しているのだ。
 そして彼女は、このビデオを制作したディレクターにも直接話を聞いているのです。その彼の言。
 「当時、北朝鮮の金策(キムチェク)工業大学の学生を集めて撮影されたものです。北朝鮮で『朝露』はとても人気があるのですよ。」
 田月仙さんは、この映像をビデオに録画し、金敏基に手渡したとのことです。(金敏基と田月仙さんとのやりとり等々については省略。)
 「禁じられた歌」でこのような「朝露」にまつわる話を読み進んで、実は私ヌルボ、最後に肩すかしをくらった感じでした。なぜかというと、上述の北朝鮮でのエピソード(1995、6年?)の少し後の1998年にこの歌が北朝鮮で禁止曲になったことが書かれていないからです。ヌルボさえも先の過去記事(その3)で書いていたのに・・・。
 しかし、考えてみれば過去記事のネタ元の<DailyNK>の記事(→コチラ)の配信2008年4月ということは、禁止されたのが1998年でもそれが韓国に知られたのはその10年後ということなのでしょう。「禁じられた歌」刊行は2008年2月なので、わずかの差で田月仙さんはその情報を知りえなかったということになります

 上記の<DailyNK>の記事を読むと、北朝鮮でこの歌が1996年に初めて歌われた理由と、98年に禁止された理由をおよそ次のように次のように記しています。

 当時の北朝鮮は300万人(?)が飢え死にしたという<苦難の行軍>の時代。北朝鮮の宣伝当局はそれを政権の過ちではなくアメリカ帝国主義をはじめとする反動の反共和国策動のためとし、宣伝・教育活動を展開した。その一環として韓国国内の反米運動と関連づけて北朝鮮の歌手イ・キボクが歌うこの「朝露」のテープを作成した。
 ところが、この歌が広まるにつれ住民たちはこの歌の中に、社会に対する抵抗意識があることを感じるようになり、ますます歌われるようになった。北朝鮮政府はそれに気づき、1998年に「朝露」を歌うことを禁止し、テープもすべて回収した。「朝露」を歌って捕まった者は政治犯扱いされて労働鍛錬隊に送られた。ただ、その一方で政府は韓国の人と接触する海外の北朝鮮食堂や金剛山観光、開城観光の案内員にはこの歌を歌うように奨励した。そこには「わが民族同士力を合わせて米帝と戦おう」という意図があった


 いやー、北朝鮮当局の「苦慮」や「狡知」がうかがわれます。かなり「善意」に解釈すれば、取り締まる側も人々の心情がわかるからこそ取り締まることができるということでしょうか。韓国で「朝露」の含意を<邪推>した人たちと相通ずるものがあるかも・・・。

 私ヌルボ、今回の記事を書くにあたってまた韓国の記事をいろいろ漁ってみたところ、おー、その北朝鮮のビデオ動画と思しきものがYouTubeにあるではないですか! 歌手はたしかにリ・キボクです。(北朝鮮では李は「リ」と表記・発音する。)

 フォークよりも歌曲のような感じでずいぶん端正な雰囲気で歌ってますね。実際の韓国の街並みや人々のようすを用いていないのは、それを見て北朝鮮の住民が「ずいぶん車も多いしにぎやかじゃないか」とか「いい服を着ているな」等々と思う<危険性>があるためですね。
 2010年2月にアップロードされた動画ですが、この「朝露」が北朝鮮で禁止されたということはまだ韓国では周知のこととはなっていなかったのか、最近でもメディアで取り上げられたりしています。
 たとえば昨2015年8月の<TV朝鮮>。→コチラ(韓国語)によると、「耳慣れない発音、白いチョゴリに黒いチマを着た女性の行動も何となくぎこちないです」等々と語りつつこの動画を流し、禁止されるまでの経緯とともに、2011年に脱北した人の次のようなコメントも入れています。
 「南朝鮮で主体思想を信奉する人々が闘争しながら歌った歌だとのことで、その歌を歌えば南朝鮮の青年学徒のような感じなのでカッコよく見えて・・・

 そして今月(2016年9月)5日、「東亜日報(日本語版)」にも「北朝鮮の禁止曲「朝露」と題したコラム(→コチラ)が載っていました。やはり「南北当局がいずれも住民が相手に染まることを恐れて禁止したとは、実に数奇な歌だ」といったことが書かれています。そして北朝鮮で友人と「朝露」を歌ったという「金日成大学出身の本紙のチュ・ソンハ記者」の「歌の中に隠れている抵抗の精神が私たちの胸の中に眠っていた内在的な反抗意識を呼び起こしたのではないか」というこの歌に魅了された理由も紹介しています。記事末尾の「北朝鮮で「朝露」を密かに歌って新しい世の中を夢見る人々が最近増えたという」という一文は、どこまでが事実で、どこまでが「期待」なのか・・・。
 ※このコラム中のチュ・ソンハ記者による「我々は「朝露」を歌って平壌を守った」と題した記事(韓国語)は→コチラ

 以上、「禁じられた歌」をキッカケに私ヌルボが「朝露」について知っているor新たに知ったことをあれやこれや書きました。決して政治的主張が具体的に盛り込まれていないこの歌が、このように長い間人々に愛唱されるばかりでなく社会を変える大きな力を持ったのも、多くの人たちの言葉同様ヌルボも歌自体の力として納得できます。
 そしてこれまでさまざまな物語を生んだこの歌の物語はまだ終わっていないのだというのが今の実感です。

 この記事の続きは、もう1つヌルボにとっては思い出の、最近北朝鮮で禁止された歌についてのことです。(※これだけで何という歌かわかる人もいらっしゃるでしょう。)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする