ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国でも「お一人様で外食もOK」の時代に突入か?

2011-06-29 23:50:03 | 韓国の文化・芸能・スポーツ関係の情報
 5月19日の記事<チョン・イヒョン「マイ スウィート ソウル」を読む>の中で、私ヌルボ、次のようなことを書きました。

 以前韓国人の先生から「韓国だと、一人で食堂で食事をしているとヘンだと見られる」という話を聞きました。この小説の登場人物の1人も言います。「俺って、映画館とかマンガ喫茶、銭湯やゲーセンだったら、どこでもひとりで行けるんだけど、レストランだけは、ダメなんだ」。
 レストラン以外はすでにOKになっているというわけです。たぶんレストランも何年か後には「お一人様」をふつうに見かけるようになるでしょう。今の日本のように。


 ・・・と、韓国でもいずれお一人様でふつうに外食をする時代が来るだろうと予言したのです。
 すると、まだ1ヵ月ちょっとしか経っていない6月25日「朝鮮日報」に次のような見出しがあるではないですか。

「나 홀로 밥 먹는 시대・・・ 日에 칸막이 고깃집까지, 한국도 '나 홀로 식당' 증가」
(自分一人でごはんを食べる時代・・・ 日本についたて焼肉屋まで、韓国も「お一人様食堂」増加)


 本文記事は→コチラ。(日本語自動翻訳→コチラ。) 

 新聞記事では、まず東京・上野に最近開業した一人専用の焼肉屋を紹介。読書室の机のような仕切り付きのテーブルが25席。1人分の注文が可能なのも特徴で、厚いカルビは1人前で400円程度。客は若年層中年層までさまざまで、特に女性が多い等々。
 この店は知らなかったので探ってみたら、上野の丸井裏の、その名も「ひとり」という店で、4月14日にオープンしたばかり。(→関係記事)

 一方韓国でも、日本のように完璧な仕切りを置いた店は多くないが、似たような形式の焼肉店やしゃぶしゃぶ店が増えているそうです。
 ソウル新村のある焼肉店では、4〜6人用のテーブルだけでなく、1人で来たお客さんがカウンター式に横に長く座って、客同士が向かい合うことなく食事をすることができる1人用の席を置いているそうで、またソウル三成洞のH食堂も1人用のしゃぶしゃぶを食べることができる席があり、そのレストランの関係者は「もう数年前かお一人様のお客さんが増えており、このような座席が必要だ」と話している、とのことです。

 「マイ スウィート ソウル」は2006年刊行。この5年の間にも、韓国の街も人々の生活様式もどんどん変わりつつあるようです。

 上野の「ひとり」、5月30日の<web1週間>の記事によると「静かに盛り上がっている」そうですが、今後はどうでしょうか? ヌルボ個人としては、あまり積極的に行こうという気にはならないですが・・・。1人でいる時、無性に焼肉が食べたくなるということがそんなにあるかなあ?
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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[6月24日(金)~26日(日)]

2011-06-28 16:14:19 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 いつの間にか正月から半年経過。明後日で今年の前半も終わり。
 何十年か前に読んだ筒井康隆の短編「急流」は時間の進み方が加速度的に早くなる話で、「朝便所に入って出てくるともう夜になっている」等々の末、最後は「2001年から先に、時間はなかった。そこでは時間が滝になって、どうどうと流れ落ちていたのである。」 読んだ当時はハハハと笑っていたのが、今はほとんどリアルな感覚。2001年もとっくに過ぎているし・・・。

 今年上半期でこれまで観た映画の本数は41本。昨年は1年間で60本だから久々に年間3ケタペース。しかし観ようと思って観てないのもいくつか。「マイ・バック・ページ」はいつでも観られると油断したなー。先週金曜の109シネマズMM横浜の最終日は、同じく最終日の「未来の記憶」(atシネマ・ベティ)を優先しちゃったからねー。それはそれで正解だったですが・・・。「見えないほどの遠くの空を」同様、作り手の意欲が感じられる作品で・・・。「見えないほどの・・・」はヌルボが行った翌日に寺脇研さんが観にいったんですねー。「原作、脚本、初監督の榎本憲男さんとは長らくの知り合いだが、今の若者の気分を反映したこんな若々しい映画を作るとは」との感想。
 その寺脇さんのTwitterで済州島四・三事件を扱ったマダン劇「碧に咲く母の花」のことを知りましたが、新宿タイニイアリスの公演は一昨日終わってました。映画鑑賞が増えた分、読書が減ってるし、うー、分身の術を使いたい! ヌルボ№1~№5くらい。ヒマな時には集まって麻雀するとか・・・(笑)。互いの考えてることがわかってゲームにならない?
 あ、ちなみに上半期でとくに印象に残った作品を観た順にあげると、「彼と私の漂流日記」「愛する人」「阪急電車」「昼間から呑む」「下女(1960)」「波瀾万丈」「テザ 慟哭の大地」「未来の記憶」といったところです。ベスト1は「テザ 慟哭の大地」ですね。時代に翻弄されつつも理想を失わず勁(つよ)く主人公。視野の広さ、思索の深さを感じさせます。(佐藤忠男先生による「テザ」についてのコメントは→コチラ)

    ★★★ Daumの人気順位(6月28日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①トゥルー・マッ(味)・ショー (韓国)  9.7(72)
②インサイド・ジョブ  9.4(36)
③サニー(韓国)  9.3(2760)
④未来を生きる君たちへ  9.1(33)
⑤五月愛  8.9(20)
⑥X-MEN:ファースト・ジェネレーション  8.9(676)
⑦法頂和尚の椅子(韓国)  8.8(22)
⑧ごめんね、ありがとう(韓国)  8.8(43)
⑨コパカバーナ  8.7(30)
⑩カンフー・パンダ2  8.7(657)

 新登場は④だけ。今年のオスカーでの最優秀外国語映画賞を見事受賞したデンマーク映画。日本では8月13日公開ということで、ぼちぼち関係サイトで情報が出ています。アフリカの難民キャンプで働く医師の苦悩、デンマークで暮らす彼の息子はいじめの問題に直面したり、・・・と、暴力と復讐をテーマにした作品のようです。英語題は「In A Better World」で韓国題は「인 어 베러 월드(イノベロウォルドゥ)」。

【専門家による順位】

①トスカーナの贋作  8.3(6)
②イリュージョニスト  8.0(6)
②Another Year  8.0(6)
④茂山日記(韓国)  7.9(11)
⑤インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実  7.5(2)
⑥告白(日本)  7.3(9)
⑦SUPER8/スーパーエイト  7.3(6)
⑦X-MEN:ファースト・ジェネレーション  7.3(6)
⑨ママ、ゴゴ  7.3(3)
⑩コパカバーナ  7.0(6)
 
 今回は新登場はありません。
 日本と比べると、韓国ではネチズンも専門家も、「インサイド・ジョブ」の評価が高いですね。ヌルボも観ましたが、とくに意外な事実はなし。ただリーマン危機招来の責任者連中がこんなにオバマ政権の下で復活してきてるとは思いませんでしたが・・・。日本人が鈍感というか、最初からあきらめてるのか・・・。政治家・金融界・学者のワルい人たち、そう思って見るからか、いかにもってご面相だが、多くの有権者市民の皆さんには必ずしもそう映らないのかな? (思い起こせば日本でも90年代規制緩和の大合唱の頃、NHKの番組でほとんど孤軍奮闘の内橋克人先生がやっぱり正しいと思ったヌルボは少数派だったなー・・・。)

   ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[6月24日(金)~26日(日)] ★★★
         「サニー」が驚異の返り咲きトップ!

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・封切り日・・・・・・週末観客動員数累計・・・・観客動員数・・・・上映館数

1・・サニー(韓) ・・・・・・・・・・・・・・・・5/04 ・・・・・・・・・328,955・・・・・・・・・・・・5,727,295・・・・・・・・・462
2・・カンフー・パンダ2・・・・・・・・・・・5/26 ・・・・・・・・・240,472・・・・・・・・・・・・4,829,467・・・・・・・・・491
3・・豊山(プンサン)犬(韓)・・・・・・・6/23・・・・・・・・・・239,729 ・・・・・・・・・・・・・262,200・・・・・・・・・371
4・・X-MEN:ファースト・ジェネレーション・6/02 ・・・228,819・・・・・・・・・・・・2,335,817・・・・・・・・・415
5・・ホワイト 呪いのメロディー(韓)・・6/09・・・・・・・・98,760・・・・・・・・・・・・・・614,314・・・・・・・・・321
6・・SUPER8/スーパーエイト ・・・6/16・・・・・・・・・・・86,831 ・・・・・・・・・・・・・440,118・・・・・・・・・373
7・・リンカーン弁護士 ・・・・・・・・・・6/16・・・・・・・・・・・85,259・・・・・・・・・・・・・・259,041・・・・・・・・・281
8・・レジェンド・オブ・フィスト・・・・・・6/23・・・・・・・・・・・68,188・・・・・・・・・・・・・・・90,113・・・・・・・・・280
怒りの鉄拳
9・・グリーンランタン:・・・・・・・・・・・・6/16・・・・・・・・・・・26,197・・・・・・・・・・・・・・207,612・・・・・・・・・250
    指輪の選択
10・・大切な日の夢(韓) ・・・・・・・・・6/23・・・・・・・・・・・18,617・・・・・・・・・・・・・・・23,417・・・・・・・・・164
                               ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による

 「サニー」はなんと6週間ぶりにトップに返り咲き! 先週から約3万人増というのも驚き! 来週は600万人にとどきそうです。
 新登場は3・8・10位の3作品です。
 3位、キム・ギトク監督3年ぶりの新作。ソウルから平壌まで何でも3時間で配達する男に、北から亡命する高位層幹部の女を配達しろとのミッションが・・・。「豊山犬」は男のニックネームで、北朝鮮に「豊山犬」というタバコがあるという事実を聞いて監督がつけた題名とのこと。本来的には北朝鮮産の名犬。原題は「풍산개」。オダギリジョーが「北朝鮮軍1」として出演とか。
 8位、ドニー・イェン主演の香港製カンフー・アクション。1925年日本をはじめ各国の思惑が入り乱れ、不穏な空気が漂う上海・・・、という時代設定で、昨年の尖閣問題の関係で日本での公開についてはいろいろあった、のかな? しかし9月に武蔵野館等で公開決定。韓国題は「정무문:100대 1의 전설(精武門:100対1の伝説)」。原題は「精武風雲:陳真」。
 10位、企画から11年もかかったという韓国アニメ。韓国初の宇宙飛行士を夢見る少年と、陸上部員の少女の物語だそうです。さるブログでは、実際に観て、「韓国らしいですね。絵が全然、可愛くないあたりが。。。汗;」と記してますが、可愛すぎない方がリアルな感じでいいと思いますよ。予告動画は→コチラ

      
  【ジブリに似てる、なんて言わないでネ。とりあえず観てみたい。】
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[韓国語] 小説「アンニョン、エレナ」と、映画「あなたの初恋探します」の<アンニョン>の訳しかた

2011-06-28 12:20:09 | 韓国語あれこれ
 今年2月1日、韓国文化院のサイトで、韓国文学翻訳院主催の「第10回韓国文学翻訳新人賞 公募」のニュースが載せられていました。
 女性作家金仁淑(キム・インスク)の短編集「アンニョン、エレナ(안녕,엘레나)」中の表題作「アンニョン、エレナ」が日本語部門の課題作品で、私ヌルボ、「当選作品:賞杯、及び賞金五百万ウォン」とあるのを見て、「おっ、応募してみるかな」と思い、購入してなんとか読破。しかし時すでに締切4月11日間近。忙しい時期と重なったし、結局無理と判断。(なんちゃって、実はそれ以前に能力不足という致命的問題が・・・ (汗笑)。)

        

 その後6月3日、その選考結果発表&講評が韓国文学翻訳院のホームページに載っていたので一応目を通しました。

 日本語部門は応募総数85編で7ヵ国中最多。どんな方が審査を担当されているのかと見れば、アラ、あの朴裕河先生(世宗大教授)でないの! そして藤原書店の編集者西泰志氏。

 選評中、ヌルボが注目したのは次の指摘です。
 「表題に用いられている「アンニョン」という単語が作品の中で出会いと別れをともに意味していることも勘案して、そんな部分に対する理解がなされているかも参考にした。」
 そこで最終候補に残った3編の表題を見ると、1つ目は「エレナへの挨拶」。「作品には深い理解を見せているものの、「小説の表題であることを無視した残念な翻訳」との厳しい評です。2つ目の表題は「アンニョン、エレナ」。「誤訳がほとんどなかったが、日本語の助詞や語尾が不自然な点が目についた」とされ2位。上記2編はともに韓国人の方の翻訳。そして当選作は古川綾子さん(漢字は推定)の「さよなら、エレナ」。「表題の翻訳に問題はなくはないが、苦心して直訳を避けた優れた翻訳」として高く評価されました。

 つまり、韓国語の入門者でも知っている「アンニョン」を日本語でどう訳すか? 「こんにちは」でも「さようなら」でもダメな場合もある、ということですね。

 さて、ここで私ヌルボが昨日観た韓国映画「あなたの初恋探します」。十分楽しめましたね。実はそれほど期待していなかったから、その分よけいに(笑)。
 それはそれとして、ラスト近くで「アンニョン、アンニョン、アンニョン」と3回繰り返される場面がありました。で、ヌルボが「あれっ?」と思ったのが(いつもの)根本理恵さんの字幕。順番に「こんにちは」「こんにちは」「さようなら」となっていました。このセリフには伏線もあり、重要なシーンなのでネタバレは避けますが、ヌルボは(理屈っぽく解釈すれば)「サヨナラ、<サヨナラ>(に対して)。(そして)こんにちは!」と思ったのです。少なくとも、3つ目の「アンニョン」は「こんにちは」じゃないとまずいのでは?

 根本さんは絶対的な確信がおありだったのか? もしヌルボが字幕翻訳者だったらどうするか、と考えた結論は、「直接監督に訊く」ですね。逃げじゃなくて常識かも・・・。ということは、根本さんもそうした結果だったんですか?
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[韓国語の新語] チュサパ、主思派? 週4派!

2011-06-27 00:22:56 | 韓国語あれこれ
 <NATE지식(知識)>は<YAHOO!知恵袋>のようなものです。
 その今年2月7日の質問に次のようなものがありました。
Q.신입생인데 주4파가 좋은거에요?
  新入生はチュ4(サ)パがいいのですか?


 以前から韓国の政治・社会に関心を持っている人なら、<チュサパ>といえば<主思派>、すなわち<主体思想派>
 ウィキの説明にあるとおり、1980年代後期の韓国の学生運動の中で、全国大学生代表者協議会(全大協)の執行部を掌握していた主体思想支持派のことです。

 その<주사파>という言葉が近年違う意味で使われているんですね。
 漢字で書くと週四派。つまり大学には週4日行って、1日は自己啓発等、自分の好きなように使うという学生。週3日しか学校に行かない<주삼파=週3派>もいるそうです。

 このNATE知識の質問に対する回答を見ると、「まず授業を大事に」とか「週4派は悪くはないが、1年は大学に適応する必要もあるし、2年からで遅くはない」とか、まず妥当な回答が寄せられています。

 この<週4派>の語がいつ頃から使われているのか、と探ってみたら、2005年10月の「朝鮮日報」に<강정구와 주사파(週四派)>と題されたコラムがありました。
 「韓国戦争(朝鮮戦争)は統一のための内戦で、アメリカの軍政当時、77%の人々が社会主義を支持していた」と主張する姜禎求(カン・ジョング)東国大教授を批判したコラムですが、その最後の方で、ある大学教授が「最近はチュサパといえば<週4派>を意味する」と笑っていたと記しています。「自分磨きにこだわる<週4派>が急速度で20年前の<主思派>押し出している」とも・・・。

 近ごろは、かつての主思派から転向したグループが<ニューライト>として目立った動きをしていることもいろいろ伝えられています。
 70・80年代の懐メロが流行る韓国の今日この頃。とはいうものの、「主思派も遠くなりにけり」とも言い切れないようにも思われますが、どうなのかなー・・・。

 韓国ウィキの<주사파>の項目には、<酒邪派>、すなわち酒癖の悪い学生をからかっていう言葉も紹介されていました(笑)。
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韓国の食文化についての雑考

2011-06-26 22:26:36 | 韓国料理・食べ物飲み物関係
▼1980~90年東京の食糧学院の学生約300名対象のアンケート。全員がキムチを食べたことがあると答えたが、キムチが朝鮮語だと知っている学生はきわめて少なかった。初期の頃には10%を超える学生が知っていたが、徐々に少なくなり、終わりの頃になると2~3%にもならなかった。つまり300名中に7~8名という結果である。(鄭大聲「朝鮮半島の食と酒」(1998年.中公新書))。
ホンマかいな、この数字!?

▼最近、さる高校の先生がラムサール条約の説明で
「湿地が云々」と教えてたら、あとで1生徒が「シッチって何ですか?」と訊いてきたとか。また「租税は昔穀物で納めさせた」ことを理解させようと「木ヘンは植物関係、サンズイは水関係というのは小学生でも知ってるだろうが、禾ヘンはどんな意味があるか、いくつか例をあげて考えてみよう」と言ったところ、1生徒がその前半部分を聞きながら「知らなかった・・・」とつぶやいていたとか・・・。上述のアンケートも、対象者がどんな人たちかによって結果が大きく変わってくるのでは?

▼最近<韓国語食の大辞典>というすごいサイトを発見! 韓国料理、食材、食器等々の用語を分野ごとにカナダラ順に網羅。「魚介類、海藻類」だけでも446語も! なかでも<味覚表現>は貴重간간하다(塩味がきいて口当たりがよい)・감칠맛(食欲をそそる味)・개운하다(さっぱりしている)以下全113語。誰が作成したサイトかと思ったらコリアンフードコラムニスト八田靖史さんだった。ブログの<韓食日記>の方は以前から愛読してましたが・・・。

▼「週刊金曜日」6月24日号。四方田犬彦先生が「レヴィ・ストロースの遺著は日本論」と題した一文を寄せています。5月にパリで開かれたその2冊遺書の刊行記念シンポジウムで、「ひときわ興味深かった」と紹介しているのが、川田順造さんの講演。レヴィ・ストロースの訪日時の思い出話だが、川田さんがドジョウ鍋やコイの洗い等の「癖玉」を次々と投げても平然としていたというレヴィ・ストロース先生、コノワタはどうだと出してみたが、これも「おいしい」といって箸を進めていたとか。

▼そのレヴィ・ストロース先生が後になって告白したのは、どうしても桜肉、つまり馬肉の刺身だけは食べられなかったという事実。「なぜか」と四方田先生の考察。「それはヨーロッパにおいて馬が置かれている文化的位置に関わっている。ここから味覚とは自然のものではなく、文化によって形成されるという真理が浮かび上がる。」 ・・・ま、当たり前といえば当たり前のことですけどねー。ポシンタン(犬鍋)しかり、ポンデギしかり、ケブル(ユムシ)コムジャンオ(ヌタウナギ)に・・・。これらに顔をしかめる日本人(&多くの非韓国人)も、忌避の感情は文化的背景が違うからであって、決して韓国人の嗜好が異常なのではない、ということです、はあ・・・。

▼レヴィ・ストロース先生の遺著の中に四方田先生が見つけたという一節。20世紀初頭の柳宗悦による朝鮮陶磁器の発見は、ピカソの世代がアフリカの彫刻に驚いたのと同時代の現象だ。四方田先生は「わたしはそれだけで新しい思考のヒントを与えられた気になった」とのこと。・・・たしかにおもしろいが、ピカソの発見と柳宗悦の発見がどれほど重なるのかはビミョーだとヌルボは思うが・・・。
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平松洋子「韓国むかしの味」(新潮社.とんぼの本) は韓国各地の食を興味深く紹介してくれる

2011-06-25 09:55:06 | 韓国料理・食べ物飲み物関係
    

 平松洋子「韓国むかしの味」(新潮社)を読了しました。
 <とんぼの本>は内容も装丁も上品で、ヌルボの趣味と人となりにピッタリ、なんてね(汗笑)。
 パラッと開いて見たら、以前の記事で紹介したヨン様の本に載っていた光陽の青梅農園にも行ってるし、平松さんお上品、と思って他のページを見ると、あにはからんや、実にいろんな所に行って、いろんなモノを召し上がっていらっしゃる! 

 平松洋子さんが行った所。ソウル広蔵市場のコマキムパプは、先日そごう横浜で八田靖史さんも話していた有名な店。その他、ヌルボも何度か行った武橋洞プゴククチプじゃなく、その隣りの白飯定食だけの小さな店内江や、南漢山城のおにぎり豆腐、ここらへんは「よし、今度行ってみよう」レベル。
 さらには忠北・槐山でオルゲンイ(올갱이.カワニナ科の巻き貝)を食べたり幻の魚ソガリの刺身を味わったり・・・。
 オルゲンイといえば、偉大な韓国オタクブロガーの先達Morris.さんの2010年8月9日の日記に、釜山チャガルチ市場あたりの「朽ちかけた倉庫みたいないい感じの建物」の韓電職員食堂(!)で食べたククの中にオルゲンイを発見し、「カ・ン・ゲ・キッ!!」していらっしゃいます。

※NAVER辞典によると올갱이はタスリギ(다슬기)の方言(江原・忠北)とあります。また上記のMorris.さん、オルゲンイのことをコディ(고디)とも記していますが、これは다슬기の慶尚道方言だそうです。

 そして平松さんが釜山の機張郡で「奇天烈な味に遭遇した」と記しているのは深海魚の一種コムジャンオ(ヌタウナギ)。ご存知ない方は写真を見るとちょっと引いてしまうかも・・・。これを火をつけたワラの中に放り入れ、黒焦げになった皮をぴーっと剥いで、胡麻油をつけて口に放りこむ。噛むと弾力があって、「じわーっとうまみが湧く」、「イカにも似ている・・・モツっぽい感じもする・・・不思議な食感と味」なのだそうですが、ヌルボは未経験。

 これらの他にも江原道から全羅道までいろんな所へ行っていろんなモノを食べて、大した行動力&好奇心です。食べた感想だけでなく、調べた上でちゃんと話を聞いて取材し、詳しく記述している点がよい。
 2006年には「買えない味」でドゥマゴ文学賞を受賞しているんてすね。山田詠美との受賞対談を読むと、山田詠美は「平松さんの文章を読むためだけにdancyuを買いに毎月コンビニに走った。それが書籍になり、この賞の選考とが重なり、本当にラッキー!と思った」と語ってます。

 写真もきれいで豊富。できあがった料理の写真だけでなく、作っているところも撮っていたりして
いるのも○。
 1500円は高いと思うかもしれませんが、内容等を考えると高過ぎることはないと思いました。
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韓国オタク・ヌルボの現況 & 韓国の現況(の、ごく一部分)

2011-06-22 23:57:16 | 韓国関係の雑情報
 以前に比べて、新記事upのペースが落ちてきているのは、ネタがないのではなく、ありすぎで、1つの記事がまとまりきらないうちにどんどん新ネタが溜まってくるからです。
 まあ、軽い記事にしてどんどん処理すればいいんですけどね。

 私ヌルボ、Twitterをやらないのは、1日単位の生活でもせわしないのに、分単位の情報発信となると心も身体もついていけないと思うからです。
 しかしこの際、最近気になっているネタの整理を兼ねて、Twitter風に私ヌルボ及び韓国の現況報告をします。

▼関内駅付近、足下にヤマモモの実(下写真)がたくさん落ちている。以前鎌倉プリンスHの前の道でも見たが、街路樹として首都圏でも時折見かける。郷里徳島では県の木。高知では県花。実は黒っぽくなるほど美味。食べられるということはあまり知られていない。徳島or高知の業者による通販価格はけっこういいお値段。

     

▼韓国語ではヤマモモを소귀나무(または속나무)という。韓国ウィキによると、済州島の漢拏山の南麓くらいしか見られないようだ。しかしウィキの写真のヤマモモは美味しそう。

▼渋谷イメージフォーラムで上映中のエチオピア映画テザ 慟哭の大地(ハイレ・ゲリマ監督)は圧倒的! プログラムにある佐藤忠男先生の文によれば、1984年のアフリカ映画祭の時、委員長だった佐藤先生は、ゲリマ監督の「三千年の収穫」を上映するとともに、彼を日本に招待したそうだ。イメージフォーラムでの上映は24日まで。

▼ヒューマントラストシネマ渋谷。見えないほどの遠くの空をは、20:50からの1回だけの上映だが、60席中の約8割が埋まっている。今どきの若者は人生の第1ハードルあたりでこんなにも右往左往してるのか、なんてことはあえて書かないが、って書いちゃったか。皮肉に非ず。上の世代(私ヌルボも含めて)がこんな世の中にしちゃったんだし・・・。しかし清新さが感じられる映画で○。榎本監督に対するQ&Aの記事もイチイチうなずける。(この映画の作り手やファンの若者たちは「テザ」を観てどう思うのかな? あるいは「鯨とり」等は?)

▼5月11日に初台の東京オペラシティ・アートギャラリーに<李禹煥と韓国の作家たち>を観に行く。「東洋的抽象」を体感。無機的な幾何学的な線や図形の構成でなく、HPにあるように、自然との交感を感じさせる。6月26日まで。徐京植「ディアスポラ紀行」(岩波新書)にも李禹煥(と文承根)のことが記されていた。

「現代詩手帖」3月号「日本・中国・韓国・台湾4誌共同企画 越境するアジア――東アジアの詩は、いま」について。90年代以降韓国の小説が大きく変化してきたように、詩も変わってきた、という当然のことに気づいてなかった・・・。以来、ブログ記事にまとめようと思いつつ、いつしか3ヵ月経過。

▼上の関連で金芝河の現況を調べ始めてつい深入り。日本での知名度1位(たぶん)の韓国詩人金芝河は、10年以上前から東学に没入してウルトラ民族主義者になってることはあまり知られてなさそう。上記「ディアスポラ紀行」に関連記事あり。延世大の金哲教授は金芝河を指してファシストとさえよんでいる

▼5月、「毎日新聞」の連載「戦後日本の青春」(?)で川村湊氏が1967年10月8日の羽田事件で死亡した京大生山崎博昭のことと、彼の大手前高校時代の同窓・佐々木幹郎の詩「死者の鞭」のことを記していた。ちょうど金芝河からの連想で彼のことを調べていた矢先。

▼佐々木幹郎の大手前高校時代、同じマル研に山崎博昭、三田誠広、岩脇正人、岡龍二らがいた。1967年10月8日の羽田事件で山崎博昭が死亡。「死者の鞭」が書かれたのはその1週間後。

▼1973年佐々木幹郎は国分寺市へ転居。近くに中上健次(1946~92)が住んでいて、2人は国立駅北口の白十字でよく会っていた。中上は10.8羽田事件の時弁天橋にいた。

▼中央公論社の元編集者、宮田毬栄(まりえ)は、金芝河が筆禍事件で拘束された時、国際救援活動に乗り出した。あるブログ記事によると、宮田が協力を要請した日本の文学者のうち、「やろう」と同意したのは小田実一人だったという。宮田は「戦友別盃の歌」で有名な詩人大木惇夫の娘。北九州市立松本清張記念館館長。

「傷痕に咲いた花」(2004.毎日新聞社)で金芝河は次のように書いている。
「二人の日本人男女が目の前にはっきりとクローズアップされてきている。」
私の命を救ってくれた恩人、宮田毬栄女史」と「悲しい反逆の生についての貴重な予感を私に与えてくれた小説家、故中上健次氏」。「美しさの極致である毬栄女史被差別民衆出身であり醜さの圧倒的活力である健次氏」。

▼在日の編集者・久保覚(1937~98)は、「中上健次は軽蔑に値する」とまで中上を痛罵している。

▼金芝河は、韓国を代表する大河小説「土地」で知られる女性作家朴景利の娘婿になっている。

▼4月26日午後10時15分頃、韓国KBS1ラジオの「シン・ソンウォンの文化読み」を聴いていたら、「アンケート調査によると、韓国人が一番会いたい国内作家は孔枝泳(コン・ジヨン)、外国作家はフランスのベルナール・ウェルベルだった」というニュースを報じていました。

「女性東亜」6月号は興味深い記事が一杯! 「カンプルの「善良な漫画」熱風 Webから映画へ広がる感動」「映画「トゥルー・マッ・ショー」キム・ジェハン監督」「「私は歌手だ」7人7色、天上の声にうっとり」「感動ヒューマンドキュメンタリー「愛」を制作したイ・モヒョン、キム・インスPD」「夫が願う妻のファッションスタイルは?」「チャン・ドンゴン&コ・ソヨン、三成洞へ引越し」等々。

▼「新東亜」6月号でもキム・ジェハン監督のインタビュー記事を掲載。

※キム・ジェハン監督&「トゥルー・マッ・ショー」、漫画家カンプルについてはそれぞれ別記事で詳述します。たぶん。
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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[6月17日(金)~19日(日)]

2011-06-21 22:00:31 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 横浜みなとみらい地区は私ヌルボの住まいから歩いても行かれる所ですが、何度行っても違和感を感じます。昭和の人間である自分が、なぜこんな「未来の街」を歩いているんだろう? ・・・という感覚ですかね。なんとはなしに、以前読んだ日野啓三の「夢の島」を想い出しました。

   
【今年4月5日撮影。新しいビルが次々に建っていますが、まだ空き地もここかしこに見られます。】

 18日に続いて、今日もこの横浜みなとみらいのビル中にあるブリリアショートショートシアターーへ。<Short Shorts Film Festival & ASIA 2021>なんですが、観られる範囲で観るということで、18日は15:00~の回のみ。その18日に観た中で、印象的だったのはやはりパク・チャヌク、パク・チャンギョン監督の「波瀾万丈」。この作品については、同じ時&場所で観ていたと思われる方の<confuoco Dalnara>というブログに、よくこれだけのことが書けるなあ、という記事がありましたので、ヌルボとしてはさらにつけたすことはありません。
 今日は12:50~と15:10~の2回。後者では、「スマイルバス」を観終わってから、パク・サンジュン監督と少し話しました。といっても、語学力の問題もあるので、感想とかを少しヌルボの方から一方的に話した程度。この作品については、「広報ふじさわ」に関係記事がありました。
 ・・・ということで、ここまでショートショートを15本ばかり観たわけですが、多くの人に強いインパクトを与えるような作品を創ることはとても大変なことなんだなー、ということをあらためて思いました。(漫画や小説、音楽、演劇、美術等々でも同様ですが・・・。) 今回のSSFFでも、上映作は全応募作の数十分の一だし・・・。(アジアインターナショナル部門は応募585作品中17作品、ジャパン部門は応募343作品中16作品を上映。) それでも15分ほどの作品に情熱と100万円とか200万円とかの資金を注ぎ込んで制作するわけですから、シビアな世界であると同時に、それだけ打ち込みがいのある世界ということでしょうね。

    ★★★ Daumの人気順位(6月21日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①トゥルー・マッ(味)・ショー (韓国)  9.7(58)
②インサイド・ジョブ  9.4(31)
③サニー(韓国)  9.4(2565)
④茂山日記(韓国)  8.9(27)
⑤X-MEN:ファースト・ジェネレーション  8.8(578)
⑥法頂和尚の椅子(韓国)  8.8(22)
⑦ごめんね、ありがとう(韓国)  8.8(42)
⑧鞭(むち)(韓国)  8.8(201)
⑨コパカバーナ  8.7(30)
⑩Source Code  8.7(685)

 新登場はありません。⑩については5月10日の記事で紹介しました。
 ⑦は動物保護がテーマの4話からなるオムニバス。予告編はコチラ

【専門家による順位】

①トスカーナの贋作  8.3(6)
②イリュージョニスト  8.0(6)
②Another Year  8.0(6)
④茂山日記(韓国)  7.9(11)
⑤インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実  7.5(2)
⑥告白(日本)  7.3(9)
⑦SUPER8/スーパーエイト  7.3(6)
⑦Source Code  7.3(6)
⑦X-MEN:ファースト・ジェネレーション  7.3(6)
⑩ママ、ゴゴ  7.3(3)\t
 
 ②「イリュージョニスト」と⑦「SUPER8/スーパーエイト」が初登場。
 ②は3月に日本公開されています。シルヴァン・ショメ監督の味わい深いアニメ(って、私ヌルボは「ベルヴィル・ランデブー」を観ただけですが・・・。)
 ⑦「SUPER8/スーパーエイト」は後述。

   ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[6月17日(金)~19日(日)] ★★★
         「サニー」は500万人を超え、今年の韓国映画トップに

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・封切り日・・・・・・週末観客動員数累計・・・・観客動員数・・・・上映館数

1・・カンフー・パンダ2・・・・・・・・・・・5/26 ・・・・・・・・・279,168・・・・・・・・・・・・4,500,315・・・・・・・・・582
2・・サニー(韓) ・・・・・・・・・・・・・・・・5/04 ・・・・・・・・・271,300・・・・・・・・・・・・5,185,828・・・・・・・・・485
3・・X-MEN:ファースト・ジェネレーション・6/02 ・・・261,751・・・・・・・・・・・・1,962,964・・・・・・・・・474
4・・SUPER8/スーパーエイト・・・6/16・・・・・・・・・・234,982 ・・・・・・・・・・・・・273,778・・・・・・・・・493
5・・ホワイト 呪いのメロディー(韓)・・6/09・・・・・・・155,087・・・・・・・・・・・・・・450,807・・・・・・・・・404
6・・グリーンランタン:・・・・・・・・・・・6/16・・・・・・・・・・119,270・・・・・・・・・・・・・・142,963・・・・・・・・・423
    指輪の選択
7・・リンカーン弁護士・・・・・・・・・・・6/16・・・・・・・・・・・92,834・・・・・・・・・・・・・・110,565・・・・・・・・・299
8・・モビー・ディック(韓) ・・・・・・・・・6/09・・・・・・・・・・・50,162・・・・・・・・・・・・・・383,473・・・・・・・・・337
9・・Something Borrowed ・・・・・・・6/16・・・・・・・・・・・40,611・・・・・・・・・・・・・・・57,711・・・・・・・・・259
10・・パイレーツ・オブ・カリビアン・・5/19 ・・・・・・・・・・22,365・・・・・・・・・・・・3,110,024・・・・・・・・・166
        /生命の泉                  ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による

 「サニー」はなんと3位から2位に再浮上。「朝鮮名探偵:トリカブトの秘密」479万人を抜いて今年の韓国映画の動員数トップに立ちました。
 新登場は4・6・7・9位の4作品です。
 4位、「スティーブン・スピルバーグ×J.J.エイブラムスが贈る全世界注目の極秘プロジェクトムービー!」というふれ込みで日本でも今週24日から公開で、映画関係サイトに情報は当然載ってますが、核心部分は観なければわからない。これも当然ね。韓国題は「슈퍼 에이트」。
 6位はアメリカン・コミックの実写版の3Dアクション。宇宙人から特殊な指輪を授けられ、超人グリーンランタンに変身した主人公が宇宙の平和を守るため、悪い宇宙人と戦うお話。韓国題は「그린랜턴: 반지의 선택」、日本公開は未定です。<スーパー・ヒーロー>グリーン・ランタンの日本での知名度は低いですが(ヌルボも知らなかった)、初代は1940年に登場。スーパー・ヒーローの原点のスーパーマンは1938年からだから、グリーンランタンも相当に古いです。しかし、スーパー・ヒーローはどれもこれもスーパーマンの亜流に見えるぞ。そこらへん、どーなの? ・・・ってウィキの<スーパー・ヒーロー>の項目を見ると、すごいすごい!
 スーパーヒーローの歴史だの、コスチュームの特徴だの、実に説明が細かく記されています。「亜流で何が悪い?」と堂々と居直ってる感じ。また1970年代以降は<脱構築化されたスーパー・ヒーロー>が登場するようになったとか。「超越的な能力を持つ人間ならば、その能力を正義を追求する利他的な目的に使うに違いないという信念や、あるいは人間の精神には本質的に犯罪を滅ぼそうとする衝動が備わっている筈だという信念が失われた、1980年代のシニシズム」と結び付けて考えている批評家もいるそうで・・・。
 7位、マイクル・コナリー「リンカーン弁護士」(講談社文庫)が原作の犯罪スリラー。「リンカーン」は大統領の名前ではなくて高級車の方。その後部座席をオフィス代わりにしている中年弁護士ハラー、日頃はロスを舞台に、主に麻薬がらみの依頼人たちを相手に稼いでいるが、資産家の息子の暴行事件に対する弁護依頼が舞い込み、意気込んで調べに乗り出すが・・・。韓国題は「링컨 차를 타는 변호사(リンカーン車に乗る弁護士)」。
 9位、親友の婚約者を好きになってしまった女性のジレンマを描いた、ハリウッド製のラブコメ。韓国題「러브 앤 프렌즈(ラブとフレンズ)」。日本公開は未定です。
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60年安保闘争、韓国の6月民主抗争等、6月はデモの季節?

2011-06-20 23:54:37 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 昨日6月19日桜桃忌。私ヌルボの高校生時代は、文芸部の連中は大半が太宰にかぶれていた感じでした。今はどうなんでしょうね? マスコミでは恒例のように報道してますが・・・。私ヌルボは特に思い入れはないです。たまにトカトントンという音が聞こえないでもないですけどね(笑)。

 しかし、6月19日で太宰治を思い浮かべる人と、6月15日樺美智子を思い起こす人とはどちらが多いのでしょうか? (どちらも少ないって?)

 その樺美智子さんが犠牲となった1960年6月の安保闘争のことは、ここでは略して、今のことを書くと、6月11日に全国各地で行われた反原発デモ。「週刊文春」6月23日号の<新聞不信>欄によると、各新聞で「極端に報じ方が分かれた」とのこと。「朝日新聞」が1面と38面で「主催者かと思うほど、好意的な報道」であったのに対し、「産経、読売に至っては、全くといっていいほど報じていない」そうです。記事は続けて、「しかし、二万人(主催者発表)が集まったデモ行進を無視するのはいかがなものか。もし批判的であれば、建設的な意見を呼びかけてこその新聞だろう」と書いているのは正論。

 日本の2万人デモをちゃんと報じない「読売」は、なぜかその前日の韓国の、<ソウルのデモ、5千人規模に…大統領退陣訴え>という記事は載せているのは、どういうモノサシを使っているのでしょうか?
 このソウルのデモは、大学の授業料(韓国では登録金(등록금) )をめぐるもので、「毎日新聞」の記事によると、韓国の国公立大の平均授業料は443万ウォン(約33万円)、私立大は768万6000ウォン(約56万6000円)だが、物価を考慮すれば米国に次いで高い水準だそうで、このため、アルバイトによる成績低下、学資ローンの返済滞納などが問題化し、「大学生の多重債務者、4年間で38倍」(朝鮮日報)という事態になっているとのこと。
※アメリカの借金に苦しむ学生の問題は堤未果「ルポ貧困大国アメリカⅡ」参照。これもひどいもんです。

 韓国では、この大学授業料問題に対して、当ブログで何度も紹介している漫画家カンプルが闘争支援の漫画(下参照)を発表し、ネチズンの話題になっているそうです。大学3年の朴某君、奨学金を受け、アルバイトをしても授業料に足りず、1000万ウォンも借金をしているのだとか・・・。

【光州事件の犠牲者の遺児たちが成長して「仇」の全斗煥を狙う漫画「26年」を書いたカンプル、反権力の旗幟鮮明。】

 <Innolife>の記事によると、検査院(「検事院」じゃないでしょ)が教育財政に対する監視に着手することにしたり、大学側も奨学金の拡大案を検討しているようですが、今後どういうことになるのか・・・。

 さて、ここで私ヌルボがふと思ったのは、どうも6月はデモの季節なのかもしれない、ということ。
 <韓国戦後史年表>などによれば、1964年6月3日、ソウルでは学生1万人に市民の一部も加わって日韓条約反対のデモが繰り広げられました。デモ隊は警察側のバリケ-ドを次々に突破して中央庁に乱入し、市内の警察派出所は学生や市民に占拠され、大統領官邸に向う学生は軍隊により阻止されるという事態に、政府は非常戒厳令を公布し1200名を逮捕したそうです。(6.3事態)

 ちなみに、当時高麗大学校総学生会長代行だったのが李明博現大統領で、この闘争を主導した学生の1人。これにより国家内乱扇動の容疑で逮捕され、最高裁で懲役3年・執行猶予5年(西大門刑務所に3ヵ月服役)の判決を受けました。これにより彼は「民主化の一世代」といわれるようになったとのことです。

 時代は下って1987年。ソウル五輪の前年の6月は<6月民主抗争>がありました。
 この年1月、ソウル大言語学科の学生会長だった朴鍾哲(パク・ジョンチョル)が公安当局による拷問で殺されたことに対して抗議の声が高まり、6月9日の集会で戦闘警察による催涙弾で後頭部を撃たれた延世大の李韓烈(イ・ハニョル)は7月5日死亡します。
 ※彼については、さるブログに<1987年、李韓烈くんの葬列デモ(ビデオ付き)>という記事がありました。
 その9日以降連日非常に多くの学生・市民が集会・デモを繰り広げ、20日には光州で20万人がデモに参加し、80年5月の「光州事態」が再現される決起大会が開かれたそうです。26日にはソウルで100万人の大集会。
 結局盧泰愚大統領候補は、前日の全斗煥大統領との協議を経て、29日に大統領直接選挙制と言論の自由化を認めた「6.29民主化宣言」を発表し、ようやく事態は鎮静化します。
 この経緯を<韓国戦後史年表>で日を追って読み進むと、いろんなことが想起されます。
 またYouTubeで、当時のソウルの状況を見ることができるのですね。この記事をいろいろ調べながら書いていて、初めて見ました。
 ※日本の60年安保関係の動画もあります。

【市民たちが「愛国歌」(国歌)を歌っていますね。この動画は1/8で、8/8まで続きます。】

 しかし、「6月はデモの季節」かな、と思ったのは、たまたま6月のデモだけ拾ったからでしょうか? あるいは実際にそうなのか? もしかして蒸し暑い天気と関係があるのか、などと考えると、話がどんどん逸れていってしまいそう・・・。
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往年の韓国映画ファンによる「韓国映画ベスト12」と、懐かしの「アジア映画劇場」(NHK教育TV)

2011-06-19 17:57:33 | 韓国映画(&その他の映画)
 今月8日の記事で、熱海に向かう車中飲み仲間のH島先輩(ソンベ)ニムからメモを渡されたことを記しました。
 そのメモこそ、往年の韓国映画ファンである先輩ニム選定の「韓国映画ベスト12」のリストだったのです。
 その内容は次の通りです。

①あの島へ行きたい(1993)  監督:朴光洙(パク・クァンス)
②風の丘を越えて 西便制(1993)   監督:林権澤(イム・グォンテク)
③八月のクリスマス(1998)  監督:許秦豪(ホ・ジノ)
④神様こんにちは(1987)  裵昶浩(ペ・チャンホ)
⑤灼熱の屋上(1995)  監督:李珉鎔(イ・ミニョン)
⑥祝祭(1996)  監督:林権澤(イム・グォンテク)
⑦鯨とり(1984)  監督:裵昶浩
⑧太白山脈(1994)  監督:林権澤
⑨追われし者の挽歌(1990)  監督:朴光洙
⑩春の日は過ぎゆく(2001)  監督 許秦豪
⑪大統領の理髪師(2004) 林讃賞(?)(イム・チャンサン)
⑫男と女の青空市場

 案の定、韓国映画が続々と公開される契機となった「シュリ」(2000年日本公開)以前の作品がズラ~っと並んでいます。

 さて、本ブログでも以前<ヌルボの韓国映画の思い出&★韓国映画ベスト12★>と、その改訂版の<150本の中から選んだ・・・★韓国映画ベスト20★>を載せましたが、私ヌルボと上記H島先輩ニムのリストで共通する作品が②③④⑤の4つで、半分も重なってませんが、気持ちはわかる、って感じですねー。つまり一昔二昔前のまだ伝統(というか因襲というか)が息づいていた頃の、人情の厚い愛すべき韓国人の世界ですよ。
 そういえば、以前<浪花の歌う巨人 パギやん>こと趙博さんが<歌うキネマ>(←これはオススメ!)で「神様こんにちは」をやった時聞きに行ったのですが、バギやん自身の感動作=推薦作としてあげていたのがたしか「神様こんにちは」「風の丘を越えて」「灼熱の屋上」の3つだったですね。

 「灼熱の屋上」は、タイトル通りすごく暑苦しく、かつ韓国のオバサンたちのパワーも熱い映画です。ヌルボはTVの録画ビデオで見ましたが、DVDが中古雑誌の付録として出てます。アマゾンだと今2000円前後のようですね。

 さて、H島先輩ニムのベスト12の中で、ヌルボが観てないのが①⑨⑫の3つ。①⑨はおなじみの韓国映画関係サイトでおおよそ内容等はわかりますが、以前からお手上げ状態なのが⑫の男と女の青空市場。ググって唯一ヒットした<allcinema>によると、「劇場未公開・NHK教育で放映 監督:イ・ヨンスク 出演:イ・チョンナム 出演:キム・ヒラ」とあるので、キム・ヒラの過去の出演作103本(!)を確かめてみましたが(!!)、それらしいものもなし。監督のイ・ヨンスク(女性?)やイ・チョンナム??も不明。うーむ。どうしようもない、困ったなー。誰か「男と女の青空市場」について知ってる人、教えてください!

 ・・・いやいや、その前に、考えてみればこの12の作品の多くは以前NHK教育テレビで佐藤忠男先生の解説付きで放映されていたアジア映画劇場でやっていたものなんですね。

 <NHKアーカイブズ>「衛星映画劇場」のウィキによると1988年10月22日中国映画「渡河」から始まったとありますが、NHKのサイトの別記事を見ると、アジア映画劇場は1991~2000年となっています。

 ネット検索すると、この<アジア映画劇場>の影響力は非常に大きかったことがわかります。
 ペ・チャンホ監督の「ディープ・ブルー・ナイト」で「アジア映画に目覚めた」という人、カンボジア映画「戦争の後の美しい夕べ」が最も面白かったという人、「風の丘を越えて 西便制」でパンソリを初めて知ったという人、台湾映画「魯冰花(ルービンファ)」は涙なしでは観れない名作、という人、貴重なラオス映画という「レッドロータス」のことを記している人、「鯨とり・コレサニャン」が初めて観た韓国映画という人、「北京好日」はしばらく心にズーンと残る名作、という人等々、実に多くの人が今もそれらの映画の印象を記し、あるいはDVDを探したりしています。

 ヌルボ個人として印象に残っているのは、インドネシア映画の「青空がぼくの家」。韓国映画では「我らの歪んだ英雄」「チルスとマンス」も録画しました。

 幸い近くに図書館があるので、いつどんな映画が放映されていたか調べてみました。すると1988年から2002年3月までにNHK総合(1988~90.土曜14:00頃~)・NHK教育(1991~2003.日曜15:00頃~)で放映された作品数は約130。(若干不正確) 佐藤忠男先生がいつからいつまで解説を担当していたかは不明です。
 その中で、韓国映画だけ拾うと次の表の通り。ヌルボが(TV以外で観たものも含めて)見たのは16作品中11です。

放映年.月.日 「作品名」(製作年) 監督
1989.2.4 「離婚旅行(KBSドラマ)
1991.10.13「旅人は休まない」(1987)李長鎬(イ・ジャンホ)
1992.4.19 「追われし者の挽歌」(1990)朴光洙(パク・クァンス)
1993.1.24 「チルスとマンス」(1987)朴光洙(パク・クァンス)
1993.7.18 「鯨とり コレサニャン」(1984)裴昶浩(ペ・チャンホ)
1994.3.13 「神様こんにちは」(1987)裴昶浩(ペ・チャンホ)
1995.1.22 「われらの歪んだ英雄」(1992)朴鐘元(パク・ジョンウォン)
1995.3.12 「キル・ソドム」(1985)林権澤(イム・クォンテク)
1995.8.13 「風の丘を越えて 西便制」(1993)林権澤(イム・クォンテク)
1996.9.8 「あの島へ行きたい」(1994)朴光洙(パク・クァンス)
1997.7.20 「ディープ・ブルー・ナイト」(1985)裴昶浩(ペ・チャンホ)
1998.3.1 「離れの客とお母さん」(1961)申相玉(シン・サンオク)
1998.9.20 「灼熱の屋上」(1995)李珉鎔(イ・ミニョン)
1999.2.7 「祝祭」(1993)林権澤(イム・グォンテク)
1999.10.10「接続・ザ・コンタクト」(1997)張允鉉(チャン・イニョン)
2000.9.24 「八月のクリスマス」(1998)許秦豪(ホ・ジノ)

 ・・・で、懸案の「男と女の青空市場」はこれでも見つからず。見落としたのかな?
 ・・・で、昨日サークル仲間と飲みに行った時(H島先輩ニムはいない)、同じく昔の韓国映画ファンのお酒の好きなTヒョン(兄)に尋ねると、TVを録画したビデオを持っているとのこと。そればかりか、内容まで具体的に話してくれました。車で雑貨の行商をしているボンゴという男が、人寄せのための女(芸人? 娼婦?)を身請けしたが、あるインテリ男が彼女に接近、一緒に逃げようと誘い、彼女もその気になりかけるが、最後には結局・・・という物語だそうで、約20年も前というのにTヒョンの何という記憶力! ただの酒飲みではないです。記憶力のいい酒飲みです。・・・ということで、この作品についてのデータは実際に録画を観てから、ですね。


[「アジア映画劇場」放映作品全リスト]

 → <アジア映画は名作・秀作の宝庫  付録:NHKアジア映画劇場 放映作品リスト(1)>

 → <90年代、ブーム以前の珠玉の韓国映画がいっぱい!  付録:NHKアジア映画劇場 放映作品リスト(2)>

 → <[アジア映画]知られざる名作がこんなにも!  付録:NHKアジア映画劇場 放映作品リスト(3)>

[2019年9月4日の追記]長い間よくわからなかった「男と女の青空市場」のことがおおよそ判明しました。KBSの<TV文学館>というドラマシリーズ中の1作で1987年2月7日放映された「外村場紀行」というドラマです。元はといえば、金周榮(キム・ジュヨン)という作家の同名の短編小説が原作です。その探索の過程や、その小説の内容、実際読んだ感想等は→コチラに始まる3本の記事をご参照下さい。
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文芸誌「新潮」の日韓中小説競作プロジェクトを読む(下) 日本を追っておもしろくなくなる? 韓国の純文学

2011-06-17 20:17:47 | 韓国の小説・詩・エッセイ
1つ前の記事の続きです。)

 韓国作品は、中国に比べ心理描写が繊細で、よくも悪くも文学っぽい。<文学は面白いのか(仮題)>というサイトの評に私ヌルボも同感したのは、キム・ヨンスのレトリックには、(作家紹介にあるカフカというよりも)村上春樹の影響がうかがわれるということ。
 チョウ・ヒョンは、2008年「東亜日報」の新春文芸に当選したということは、純文学の王道で登壇したわけですが、この「ゴッホとの一夜」は、時は22世紀(?)、体外離脱した実験者の意識がプルキネ次元を通じて連結された世界は、実は並行宇宙で、以後タイムトラベルの技術が発達、イエスが十字架に架けられる場面を見たり、モーツァルトの音楽会に参席もできる等々・・・、日本だとこの作品はレッキとしたSFですね。
 この韓国ではこの10年くらいの間で急速に多様な小説ジャンルが登場してきたので、まだSFやミステリー等々各ジャンルの受け皿が整ってないのかな?
 パク・ミンギュの作品も、(今は懐かし)サイバーパンクというやつじゃないの? この作品も読みづらさでは「ニューロマンサー」レベルか。昨年の李箱文学賞受賞作「朝の門」はSFではありませんが、どうも今までの韓国文学の概念を打ち破るぞ、という意識過剰で(?)、力が入りすぎてる感じを受けますが・・・。

 日本の作品がおもしろくないのは、90年代以降の芥川賞作が念頭にあるので予測通り。ミニマリズムがさらに先鋭的(?)になってるようで、たとえば柴崎友香の作家紹介(佐々木敦)にはこう書かれています。

 劇的な展開が殆ど無く、作者と同世代の人々の「日常」をおおらかな筆致で描く柴崎友香の作品は、ともすればストーリーテリングへの配慮をやり過ごし、社会的な問題意識とも懸け離れた、とりわけ二〇〇〇年代に入ってから頻出してきた、呑気で安穏な「何も起こらない」小説(と思われているもの)の代表格として遇されてきた。しかし・・・・ネガティヴな感情の滲出を・・・意識的無意識的に退けて、・・・「今、ここ」の微かな幸福を捉えようとする、・・・このささやかで毅然とした「日常」に対する戦闘意欲こそが、柴崎友香を、凡百の他の若い小説家から決定的に違えているのだと思う。

 柴崎の原作と知らずに観た映画「きょうのできごと」はそれなりに好印象をもちました。しかし、この芥川賞候補作(!)「ハルツームにわたしはいない」はどーもなー・・・。上掲の<文学は面白いのか(仮題)>でも指摘されてましたが、駅構内で新幹線の領収書を失くしたと友人が言った矢先、一男性が落とした領収書を偶然「わたし」が見つけて指さすと、拾った友人「おおっ、ビンゴや」と二人して喜び、って、そらよくないよなー。
 「わたしが見ているものを、目の前にある世界を、ここに、そこにある世界を、あるように書きたい」という柴崎さんの言葉があるブログで紹介されてましたが、目の前だけでなく、その向こう側の人間も「風景」の構成物じゃなくて生身の人間なんだからちゃんと想像力を働かしてくださいねー、と言いたくなります。
 この作品が昨年第143回芥川賞の候補作になったんですからねー。

 ストーリー性がないといえば江國香織「犬とハモニカ」も同様。成田空港にそれぞれいろんな事情を持った人々が下りたって来たところでおしまい。芝居だったら主な登場人物がそろって、さあこれからどんな物語が始まるのかな、と期待を持たせたところで幕が下りるという感じで、たぶん中国だったら、お客さんたち「金返せー!」と騒ぐんじゃないかな。
※大分前の豊崎由美との対談で大森望は次のようなことを語っていました。

大森:江國さんの短篇って、だいたい30枚くらいなんですよ。だからなかなか枚数がたまらなくて、担当編集者は困ってるみたいだけど。「どうしても30枚で終わっちゃうんだよねえ」って。まあ、ストーリーを排除して書けるのが、そのくらいの枚数ってことなんだろうけど。


※音楽でいえば、ストーリーにあたるのがメロディーラインでしょう。最初にミニマル・ミュージックの代表というべきライヒの作品(→YouTube)を聴いた時は、メロデイーなしの単調なリズムの繰り返しの微妙な変化に、新鮮な驚きを感じましたが・・・。

 今日本でたとえばチョン・イヒョンを知ってる人は1000人中でも何人もいないと思いますが、逆に韓国の読書を趣味とする人の間で江國香織を知らない人はないでしょう。長い間約20年遅れで日本の後を追ってきた韓国の社会が、近年かなり日本に接近してきているということでしょうか。

 日本の作家の中で1人だけ抜群におもしろかったのが町田康「先生との旅」。「日本中世におけるポン引きと寺社権門」なんてテキトーな題で「即位式」の講演を引き受けた「私」、推挽してくれた初対面の先生と名古屋駅で落ち合ってタクシーで会場に向かうのですが・・・。
 この作家特有の文体とディーテイルの可笑しさ、最後にオチまでついて笑えます。
 しかし、町田康の次のような文章は韓国語では一体どう訳すんでしょうねー?

・その瞬間、私は、なんかしてけつかんのじゃど阿呆、と思った。
そんなポコペンな、と怒り狂おうかな、と一瞬は思ったがよくよく考えれば向こうはお旦でこっちは芸人、家と言われれば言わなくちゃしょうがないので向鉢巻きで熟考した。
・人々が様々な方向に向かいて交錯、互いに譲り合わなければ激突することが必定なれど、そのような意識を持たぬ者の多い構内を、うわうわうわ。あ。痛て。わっぴゃぴゃん
一度「子音と母音」で確認したいと思います。(よくわかりませんが、中国語への翻訳も大変そう・・・。
 主人公の名前の間穵田考も何と読むんだか。マアツダコウ? ホントに翻訳者泣かせ。いや、これを訳しきるのが翻訳者の醍醐味?

 これまで長々と書いたように、(主にストーリーテリングの)おもしろさの順番では中国→韓国→日本の順ですが、これは作家だけでなく、現代の3国それぞれの社会のダイナミズムの差の反映であり、またそこで生活をしている人々のこれまでの体験の質の違いの反映でしょう。
 たとえば今3ヵ国の60歳の人が自分の半生を語るとして、聞いておもしろそうなのはやはり中国→韓国→日本の順になるのではないでしょうか? 
 今の日本人の多くは、(幸か不幸か)語るに値する人生を生きていないし、社会全体も70年代以降ずっとマッタリ状態。だから、何か物語を背負っていそうな在日の友人に「うらやましい」と言ったりする日本人もいるそうで・・・。ホントにそんな社会になっちゃってるんですかね。

付記。これまでの18作品を読んで気づいたのは、国際結婚だの、海外出張だの、という国境を越えた人物が登場する作品が国を問わず3分の1程度あること。作家たちが「国際」を意識した結果か、フツーにそういう時代になってるのか? たぶん後者、ですか?
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文芸誌「新潮」の日韓中小説競作プロジェクトを読む(上)  断然おもしろいのは中国!

2011-06-17 20:15:07 | 韓国の小説・詩・エッセイ
 「毎日新聞」で4月4日から毎週木曜日連載してきた<新世紀 世界文学ナビ>。先週「韓国編」が終わり、昨日から「中国編」に。第1回は蘇徳(スードォ)という29歳の女性作家。私ヌルボは初めて知った名前です。記事は→コチラ
 ナビゲーターの桑島先生、彼女の作品「エマーソンの夜」について決定的なネタバレ書いちゃってて、これは作者&翻訳者にメイワクですよ。・・・って、ご自身が訳されてるわけね、なーんだ。
 ・・・ということはおいといて、記事にもあるように、この蘇徳さんも本ブログ先々週の記事でちょっとふれた東アジア文学フォーラム2010と、その前の同2008に連続して参加してるんですね。ということは、次回以降もこれに参加した作家たちが主に取り上げられるのかも・・・。

 さて、日本・韓国・中国の文学交流といえば、私ヌルボ、近年はめったに月刊文芸誌を手に取ることもなくなったのですが、たまたま「新潮」6月号にこの3国の作家たちの小説競作プロジェクトが載っていることを教えられ、読んでみました。
 韓国の文学と人文を扱う季刊誌「子音と母音」(イルム出版社)と、中国の文芸誌「小説界」(上海文芸出版社)との提携の下に文學アジア3×2×4と銘打って始められたプロジェクトで、実は昨年の6月に第1回がスタートしていて、以後第2回が昨年12月号、そして今回の号が第3回なんですね。

      
      【韓国の季刊文芸誌「子音と母音」は1100ページで、この厚さ!(7㎝)】

 3ヵ国の作家が、毎回に割りふられたテーマに沿って各2人ずつ短編を掲載し、それを4回続ける、ということで3×2×4ということです。
 これまでのテーマは、第1回=「都市」、第2回=「性」、第3回=「旅」でした。
 この機会に、ざっと3国の文学の現況を概観してみるかなと思って、第1回と第2回の掲載号は図書館で借りて約1週間で3×2×3の計18編を読んでみました。
 作家・作品は以下の通りです。

第1回 2010年 6月号 テーマ「都市」
日本①島田雅彦「死都東京」 
韓国①イ・スンウ「ナイフ」
中国①蘇童「香草営」
日本②柴崎友香「ハルツームにわたしはいない」
韓国②キム・エラン「水の中のゴライアス」
中国②于暁威「きょうの天気は」

第2回 2010年12月号 テーマ「性」
日本③河野多惠子「緋」
韓国③チョン・イヒョン「午後4時の冗談」(訳:金明順)
中国③葛水平「月明かりは誰の枕辺に」(訳:桑島道夫)
日本④岡田利規「耐えられるフラットさ」
韓国④キム・ヨンス「4月のミ、7月のソ」(訳:崔真碩)
中国④須一瓜「海鮮礼賛」(訳:堀内利恵)

第3回 2011年 6月号 テーマ「旅」
日本⑤江國香織「犬とハモニカ」
韓国⑤チョウ・ヒョン「ゴッホとの一夜」(訳:金明順)
中国⑤叶弥「もう一つの世界で」(訳:垂水千恵)
日本⑥町田康「先生との旅」
韓国⑥パク・ミンギュ「ロードキル――Roadkill」(訳:渡辺直紀)
中国⑥徐則臣「グスト城」(訳:上原かおり)

※韓国作家中、キム・エラン、チョン・イヒョン、キム・ヨンスについては上記の「毎日」のシリーズでも取り上げられ、パク・ミンギュについては本ブログ昨年3月8日の記事で紹介しました。

 さて、全体を通しておおよそいえることは、中国の作品がおもしろくて、日本の作品がおもしろくないこと。
 ただし、これは必ずしも文学としての評価とは一致しませんので、あしからず。
※たとえば長塚節「土」のように感動的なまでに「おもしろくない小説」もあります。この件については昨年11月12日の記事に書きました。

 中国の小説が「おもしろい」理由は、ストーリーが「この先どうなるんだろう?」という興味津々の展開になっていること。于暁威の「きょうの天気は」は、刑務所から仮釈放された男、今一緒に歩いている兄貴分はまた良からぬことを企んでいる。自分は兄貴には逆らえない。しかし今度捕まるとホントにヤバい。どうしよう・・・、という話。
 それから変貌しつつある社会の中で、俗世間の人たちのくり広げる悲喜交々の人間臭い話の魅力ですね。たとえば蘇童の「香草営」。患者たちの評価も高い梁医師は病院の近くに女性薬剤師との密会の場として家を借りたのだが、なんか変な物音が・・・、という話。
 また、精霊とか幽霊等、現代でも「唐代伝奇」「聊斎志異」等の世界がちゃんと受け継がれているようです。以前鄭義の「神樹」や莫言の作品を読んだ時にも思ったのですが・・・。
 それぞれにおもしろかった中国作品中で、とくに1つあげると須一瓜「海鮮礼賛」。主人の留守中にテレビドラマに熱中したり、盗み食いもひどい家政婦の少女がカワイイ。

<(下) 日本を追っておもしろくなくなる? 韓国の純文学>に続く
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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[6月10日(金)~12日(日)]

2011-06-14 17:24:10 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 11日(土)に、韓国文化院で第三回歴史映像シンポジウム「映画で語る韓日関係の深層II」と題して、林権澤監督「族譜」(1978)今井正監督「望楼の決死隊」(1943)の上映とシンポジウムが開かれました。(詳細は→コチラ) 私ヌルボは、私用のため「望楼の決死隊」を観ただけで出てこざるを得ませんでしたが、戦時中に作られた「国策映画」とはいえ、いろいろと見どころも多く、「収穫」の大きかった映画でした。
 1935年頃、鴨緑江付近の町・満浦鎮の国境警備隊駐在所の日本人巡査と朝鮮巡査たちが力を合わせ、命を賭して「匪賊」の襲撃から町を守る、という物語です。内容詳細は→コチラ。(ネタバレもいいところです。)
 以下、いろいろ関連事項を書き始めたら長くなりそうな様相を呈してきたので、いずれ別記事にします。しかし、今の鴨緑江の両岸の子どもたちは、冬凍結した川でスケート遊びなんかやってるのかなー?
 またいずれ、といえば、先週「往年の韓国映画ファンの先輩ニム選定のベスト12」について「次の記事にします」と書きっぱなしにしたままだったですね。今回はホントに次の次の記事で書きます。(汗笑)

    ★★★ Daumの人気順位(6月14日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①召命3:ヒマラヤのシュヴァイツァー(韓国)  9.9(23)
②トゥルー・マッ(味)・ショー (韓国)  9.9(43)
③サニー(韓国)  9.4(2454)
④インサイド・ジョブ  9.3(29)
⑤茂山日記(韓国)  9.0(26)
⑥X-MEN:ファースト・ジェネレーション  8.9(478)
⑦逮捕王(韓国)  8.9(687)
⑧法頂和尚の椅子(韓国)  8.9(21)
⑨鞭(むち)(韓国)  8.9(189)
⑩コパカバーナ  8.8(29)

 「番人」と「世界で一番美しい別れ」が消えて⑨⑩が入りましたが、どちらも既出です。

【専門家による順位】

①トスカーナの贋作  8.3(6)
②Another Year  8.0(6)
③茂山日記(韓国)  7.9(11)
④インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実  7.5(2)
⑤告白(日本)  7.3(9)
⑥Source Code  7.3(6)
⑥X-MEN:ファースト・ジェネレーション  7.3(6)
⑧ママ、ゴゴ  7.3(3)\t
⑨ジェイン・エア  7.2(4)
⑩コパカバーナ  7.0(6)
 
 こちらも新作はありません。

   ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[6月10日(金)~12日(日)] ★★★
         「サニー」は500万人にとどきそう

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・封切り日・・・・・・週末観客動員数累計・・・・観客動員数・・・・上映館数

1・・カンフー・パンダ2・・・・・・・・・・・5/26 ・・・・・・・・・535,184・・・・・・・・・・・・4,106,082・・・・・・・・・744
2・・X-MEN:ファースト・ジェネレーション・6/02 ・・・371,695・・・・・・・・・・・・1,548,978・・・・・・・・・589
3・・サニー(韓) ・・・・・・・・・・・・・・・・5/04 ・・・・・・・・・310,413・・・・・・・・・・・・4,722,788・・・・・・・・・505
4・・モビー・ディック(韓)・・・・・・・・・6/09・・・・・・・・・・205,305・・・・・・・・・・・・・・253,022・・・・・・・・・518
5・・ホワイト 呪いのメロディー(韓)・・6/09・・・・・・・194,928・・・・・・・・・・・・・・214,224・・・・・・・・・398
6・・パイレーツ・オブ・カリビアン・・5/19・・・・・・・・・・・91,304・・・・・・・・・・・・3,051,876・・・・・・・・・360
     /生命の泉
7・・プリースト・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/09 ・・・・・・・・・・55,183・・・・・・・・・・・・・・・66,019・・・・・・・・・282
8・・スクリーム 4・・・・・・・・・・・・・・・・6/09 ・・・・・・・・・・23,550・・・・・・・・・・・・・・・30,888・・・・・・・・・209
9・・ママ(韓) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/02 ・・・・・・・・・・17,910・・・・・・・・・・・・・・213,200・・・・・・・・・201
10・・トゥルー・マッ(味)・ショー(韓)・・6/02・・・・・・・・・・・1,763・・・・・・・・・・・・・・・・4,747・・・・・・・・・・21
                              ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による

 1~3位は先週と同じ。「サニー」は今年韓国映画トップの「朝鮮名探偵:トリカブトの秘密」479万人を追い抜きつつあります。
 新登場は5・7・8位の3作品。いずれもスリラー(だか、ホラーだか)で、もうそんな季節になってきた、ということか。
 5位、「ホワイト」という歌で人気を獲得したガールズグループ・ピンクド-ルズですが、メインボーカルの座をめざして、メンバー間の嫉妬と競争はますます激しくなってゆく中でメンバーが次々と怖ろしい「事故」に襲われて・・・、というあたりで先ごろの例の選挙のことなんか思い出したヌルボであります。韓国版予告編は→コチラ。いきなり怖いですよ、ハハハ。
 主演はT-araのメンバーのハム・ウンジョン。ピンクドールズ内でいじめられながらも、呪いの秘密を明かす役どころだそうです。(ウンジョンのファンの皆さん、彼女のTwitterはフォローしてますか?) 映画の原題は「화이트: 저주의 멜로디」。「저주」は一見してわからず、辞書を引くと「詛呪(そじゅ)」という漢字語でした。「呪詛」とは言うけどねー。
 7位、アメリカのアクション・ホラーですが、原作は韓国人漫画家ヒョン・ミヌ(형민우)の同名SF漫画(下写真参照)。物語は100年後の未来世界。人間とヴァンパイアが戦いを繰り広げている。主人公の元戦士プリースト(神父)は、ヴァンパイアにさらわれた姪を救おうと旅立つのだが・・・。日本公開は9月23日。韓国題は「프리스트」。予告編は公式サイト(→コチラ)で見られます。怖いというよりアクション系のようですね。

         
  【アメリカ映画「プリースト」の原作は韓国人漫画家ヒョン・ミヌのコミック。】

 8位は90年代の人気ホラー映画久々(11年ぶり)のシリーズ第4作。日本公開は未定。シドニーに現れた例のお化けマスクの殺人鬼・・・。予告編は→コチラで。
 注目作「トゥルー・マッ(味)・ショー」がコチラのランクでも10位に入りましたが、9位の1割弱の数字でベストテン入りというのは負け越したのに十両入りしたお相撲さんみたい、ってちょっと違うか・・・。

 短時間で恐怖を体験するなら予告編ですね。スリラー映画の予告編集成なんて、探せばあるかな?
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韓国映画「小さな池」のビミョーな感想 -ネチズンは10点と0点の両極化

2011-06-12 23:52:54 | 韓国映画(&その他の映画)
 先日新宿K’s cinemaで観た4本の韓国映画はそれぞれにおもしろかったですが、いろんなブログで感想を見ると、ホントに各人各様。たとえば私ヌルボが「わりといいじゃん」(←一瞬のハマっ子)と思った「ささやきの夏」に対しても「出演者や監督が有名な訳でもなく、韓国で高い評価を受けたわけでもないのに、どうして選ばれたのか。他にも紹介すべき作品はいくらでもあるだろうに。きっとこの作品のことはすぐにタイトルすら思い出せなくなってしまうだろう(笑)」と歯牙にもかけない評もあったり・・・。

 そして今回とりあげる小さな池。副題に「1950年・ノグンリ虐殺事件」とあるように、朝鮮戦争勃発(1950年6月25日)の翌7月26~29日、忠清北道老斤里で起こった米軍による一般住民大量射殺事件です。

 本記事のタイトルに、<ビミョーな感想>とあるのは、この事件と、この映画の製作に至るまでのモロモロが関わっているので、そこらへんについて長くなりますが前置き(?)として書いておきます。

 まず、この事件の概要について。この映画を観ていない方は→コチラを参照されたし。

 米軍の避難勧告にしたがって避難の途についた一般住民が、老斤里にある京釜線の鉄橋に集合していたところ、米軍の戦闘機の機銃掃射を受け、約300名(?)の老人や子ども、女性を含む人々が犠牲となったという、なんともひどいとしか言いようのない事件です。
 ※老斤(노근.ノグン)は里(리.リ)と続けて発音するとノグンニとなります。

 しかし、この事件が広く知られるようになったのは1994年に虐殺事件で幼い息子と娘を失った鄭ウニョン氏が本を出版してからです。
 それまでは、アメリカ及び在韓米軍と親密な関係を持つ韓国の軍事政権下で、「都合の悪い」事実は隠蔽されてきたというわけです。
 その後反政府系の「ハンギョレ新聞」や雑誌「マル」などがこの事件を取り扱うようになったものの、大きな関心を引くまでには到らず,政府の反応もありませんでした。
 それが注目されるようになったのが1999年。アメリカで朝鮮戦争関係の秘密文書がマル秘扱いを解かれ、その中にこの虐殺事件関係のファイルが発見されて、これをAP通信が「ノグン里の鉄橋」という記事で事件を報道し、現場取材、加害者たちとのインタビューなどを実施して、米軍が行った虐殺だという事実を暴露したのです。それによると、1950年7月26日米軍25師団長ウィリアム・B・キーン少将が発した「戦闘地域を移動するすべての民間人を敵とみなし、発砲せよ」という命令による射撃だったということです。

 韓国では2004年には事件の犠牲者の名誉を回復するノグン里事件特別法が出席議員全員の賛成で国会を通過・成立しました。
 この間、在韓米軍をめぐる事件や問題が次々と起こり、民族主義の色濃い韓国の左派勢力はその都度ローソクデモ等で反米運動を推進してきました。具体的には、2000年京畿道華城郡梅香里(メヒャンニ)の米軍射爆場で流れ弾や誤爆、不発弾などにより13人が死亡した事件、2002年6月京畿道楊州郡で2人の女子中学生が米軍装甲車にひかれ、死亡するという事故、2003年以降の京畿道平澤(ピョンテク)米軍基地の拡張反対運動などです。

 そして老斤里虐殺事件の真相究明や謝罪・補償を求める運動も、そのような運動の一環として展開されてきました。※日本でも、すでに2002年「老斤里から梅香里まで 駐韓米軍問題解決運動史」という本が訳出され刊行されています。(下写真)

     

 この映画も、そうした流れの中で作られるに至った作品です。
 端役として出演したソン・ガンホ、ユ・ヘジン、ムン・ソリ、パク・ウォンサン、パク・ノシク、ムン・ソングン、カン・シニル等々、俳優142人がノーギャラで出演し、家族とともに出演した俳優もいます。スタッフ229人もノーギャラで参加しました。
 支援する人々もフィルムプリント代金を賄うための「フィルム購入キャンペーン」に何千人も参加したそうです。
 タイトルの「小さな池」の原題は「작은 연못(小さな蓮池)」ですが、これは作曲家(フォーク歌手)のキム・ミンギが有名な「朝露(アチミスル.아침이슬)」(1970年)を作曲した翌々年に作った歌のタイトルです。彼は自身のすべての音楽を著作権料なしで使用することを認め、また自分でもこの映画を宣伝して回ったそうです。
 私の好きな漫画家カンプルも映画を観て感激し、漫画に描いています。(下参照)

      

※6月3日の「東亜日報」のコラム「横説竪説」は、<映画界左派>と題して仁荷大チョ教授の次のような分析を紹介し、「チョ教授の懸念は深刻に受け入れなければならない」と(保守紙らしく)同調しています。
 「映画界は、文化芸術界では左派が主導権を掌握した代表的な分野であり・・・・」「金大中・盧武鉉政権で彼らが主流勢力となり、・・・・映画振興委員会を掌握し、3000億ウォンの予算を一方的に執行した。」「(最左派の)民主労働党党員のパク・チャヌク監督やポン・ジュノ監督は"映画と政治的志向は別物"と主張しているが、このような左派が大韓民国の自由民主主義的なアイデンティティを否定する集団の力として作用して、これを牽制する中心がない」。

 さて、やっと私ヌルボの感想に入ります。

 この映画は、まず、多くの人に、こうした事件があったことを知らせるという点で意義があったといえます。それも、住民の視点で、政治的主張は感じられないほど自然な描き方をしています。
 しかし、それゆえに、なぜこんな悲惨なことが起きてしまったのか、ほとんどわからないままに終わってしまっています。
 したがって、直接の加害者=米軍に対する憤りが当然募ってきます。そこで、親米右派の立場からは、「それを意図したのだろう」という見方が出てくるのも無理からぬところで、実際に<DAUM映画>でネチズンの評点を見ると、「本当に胸が痛みます」等の言葉とともに10.0満点をつけた人が7割ほどを占める中で、0.0も決して少なくはなく、その理由に「従北の左翼のヤツラ(종북 좌빨새끼들)が汚い扇動映画を作ったねー」とか「その時米軍がいなかったら今われわれは金正日の下で飢えに苦しんでいただろう。また当時北韓軍による虐殺に比べれば、これはごくわずかな犠牲だ」等々。
 両極端に分かれた評点の中で、ごく少数派の5.0をつけた人の感想に注目すると「映画が政治的論争から自由ではないようです。現実に大韓民国がこのように2つに分かれていることが悲しいです」とあります。
 肯定派の人で「この映画を政治的に見たりしないで、犠牲となった人々の冥福を祈ってほしいです」と書いているのは、私ヌルボも6~7割方は同感。
 しかし、あえて厳しく言えば、戦争自体の不条理についてもっと掘り下げ、右派の人たちをもうならせるような、より普遍的な描き方をしてほしかったと思います。

 上述の「小さな蓮池」の歌をヤン・ヒウンが歌っている動画がYouTubeにありました。→コチラ歌詞と楽譜は→コチラです。
 歌詞の内容は、「昔深い山奥に小さな池があって、2匹のフナが棲んでいたが、ある夏の日に2匹がケンカをして池の外に跳び出して死んでしまい、池も濁ってしまった」というものです。南北分断の寓意が込められているのかもしれませんが、今の韓国の中も左右両派に大きく分断されていると言わざるをえませんね。

 10年ほど前に「鬼が来た!」「ノー・マンズ・ランド」を観て以来、骨のある反戦映画を近頃観ていないなあという気がします。
 その点、「小さな池」はそれらと比べると、反戦映画だというには描き方が素朴すぎます。だから反米映画だと見られてしまう弱点は否めません。(それとも、やっぱり反米映画なの?)

 先に「戦火の中へ」を観た時にも思ったのですが、朝鮮戦争を描いた映画の共通の課題は、韓国の人たちの朝鮮戦争に対する見方が四分五裂で、その最大公約数からして見つけるのが困難な点にあると思われます。
 最初に攻撃をしかけた金日成が悪いのか、それとも李承晩が悪いのか、「アメリカが介入しなければ民族は統一していた」とアメリカを非難するのか、ソ連を中心とする共産主義が悪いのか、そもそも、南北分断の原因と責任はどこにあるのか等々・・・。

 今こそ硬直化したイデオロギーを超えて、民族や国家をも1度突き放して、朝鮮戦争や南北分断の問題と真っ向から取り組んでくれることを期待したいものです。
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「毎日新聞」の <新世紀 世界文学ナビ [韓国編]>の最終回は、今年他界した作家・朴婉緒

2011-06-09 23:58:38 | 韓国の小説・詩・エッセイ
 「毎日新聞」で4月4日から毎週木曜日連載してきた「新世紀 世界文学ナビ」 韓国編」は、今日の10回目で今年1月22日に世を去った女流作家・朴婉緒(パク・ワンソ)を取り上げたのを最後に<韓国編>を終えることになりました。

 本ブログの1週間前の記事で「私ヌルボ、キリのいいところで10回まで続けるのかな、と何となく思ってましたが、この際もっと続けて、心おきなく大勢の韓国作家を紹介してくれることを期待しましょう」と書いたんですがねー。

 このシリーズに登場した10人の作家を列挙します。

第1回・金愛爛((キム・エラン)、第2回・金英夏(キム・ヨンハ)、第3回・金衍洙(キム・ヨンス)、第4回・申京淑(シン・ギョンスク)、第5回・孔枝泳(コン・ジヨン)、第6回・金薫(キム・フン)、第7回・チョン・イヒョン、第8回・殷熙耕(ウン・ヒギョン)、第9回・林哲佑(イム・チョルウ)、第10回・朴婉緒(パク・ワンソ)

 最終回で朴婉緒さんを取り上げたのはちょっと意外でした。ごく最近亡くなったとはいえ故人ですから・・・。
 彼女については、本ブログでも2月5日の記事<韓国作家・故朴婉緒(パク・ワンソ)さんのこと ※動画はぜひ見て!>で記しました。そこにも書いたように、自伝的小説「그 많던 싱아는 누가 다 먹었을까」は、私ヌルボも「新女性を生きよ」(梨の木舎.1999年)というタイトルになっている翻訳書で読んで大きな感銘を受けました。(「싱아」は正確にはどう訳すのか疑問でしたが、きむふなさんは「オヤマソバ」と訳してますね。この植物名は知りませんでした。) その他、「두부(豆腐)」という随筆集も以前読んだことがあります(韓国書)。

 この「毎日」の記事で、しめくくりの言葉の中できむふなさんは次のように書いています。
 「日流」が言われる韓国では、年間数百の日本文学が翻訳されています。対して、日本に紹介された韓国文学は年に10作ほどです。韓国の人々の深い息遣いが感じられる文学作品が、より多く日本の読者に届くことを願っています。
 ・・・これはヌルボとしてもまったく同感です。この件については、2010年9月12日の記事<諸外国で読まれている日本の絵本-とくに韓国で!>でもふれましたが、そこでヌルボが参考にしたのが舘野さん(日本出版文化国際交流会理事)の記事。戦後の韓国・北朝鮮の文学作品の翻訳状況を具体的に記した<日本における韓国文学書の翻訳出版——刊行状況と課題をめぐって>、そして、現代の両国の出版状況を記した<なぜ韓国で日本の小説はよく読まれるのか――日韓の出版事情を比較する>を読むと、両国間の文学書翻訳の極端な<落差>を痛感せざるを得ません。

 残念ながら10回で終えたこのシリーズですが、それでもこれまでほとんど関心を持たれなかった隣国の文学に興味を向ける役割を果たしたとすればけっこうなことです。

 次は「中国編」。これも日本ではまだまだ知られていないですね。本ブログ関連記事(→コチラ)
を参照されたし。あ、「今アジアでノーベル賞に最も近いといわれる」莫言(モー・イェン)や、女流作家残雪のことを全然書いてなかったなー・・・。
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