12月28日午後、2017年最後の映画ということで、見逃していた「パターソン」を観に開映2時間前にアップリンクに行ったら「売り切れました」とのこと。ありゃりゃ。で、午前中に渋谷シネパレスで観た「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」が結果的に今年の観納めに。これが17年に劇場で観た101本目。ただし2回観た作品を引き、前後編の作品を1つとして数えると合計98作品となります。うち韓国及び北朝鮮映画が33作品で、全体の3分の1。一昨年(2015年)のようにフィルムセンターでの特別企画もなく、<新大久保映画祭>もなぜかなかったわりにはけっこうたくさん観たと思います。
一方、前年以上に日本映画は減ってドキュメンタリーを除くと10作品も観ていません。本年公開の話題作では「あゝ、荒野(前・後篇)」と「ビジランテ」くらい。予告編観てもほとんどは「なんだかなー」という感じだし・・・。
さて、例年の通りこの記事を書くにあたり参考として「毎日新聞」(12月22日夕刊)の<シネマの週末>欄(→コチラ)に目を通してみました。9人の執筆者が邦画・洋画のそれぞれを合わせて今年のベスト3を選定しているので、のべ54作品。うち複数の執筆者によって選ばれている作品は次の通り。
【邦画】「あゝ、荒野」(4票)・「彼女がその名を知らない鳥たち」(2票)・「幼な子われらに生まれ」(2票)・「三度目の殺人」(2)
【洋画】「ラ・ラ・ランド」(3票)・「パターソン」(2票)・「わたしは、ダニエル・ブレイク」(2票)・「女神の見えざる手」(2票)・「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(2票)
この中で、洋画は上掲の「パターソン」以外は全部観ましたが、3人が1位に挙げている「ラ・ラ・ランド」、そんなに良かったかな? 冒頭のシーンはたしかに印象的。しかし基本的なストーリーラインが昔からあまりにもありきたりな、といった感じだし、現代社会のもろもろを取り込んでないな、というのが私ヌルボの受けた印象でした。
あ、いかん。また前説が長くなりすぎてるぞ。ま、とりあえず2017年のベスト10を・・・。
[2017年]
①わたしは、ダニエル・ブレイク
②あゝ、荒野
③ベイビー・ドライバー
④米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー
⑤抗い 林えいだい
⑥ブレードランナー 2049
⑦みかんの丘
⑧トンネル 闇に鎖された男
⑨新感染 ファイナル・エクスプレス
⑩KUBO/クボ 二本の弦の秘密
[次点] 哭声/コクソン・人生タクシー
[別格(旧作の新版)] アンダーグラウンド完全版・牯嶺街少年殺人事件(デジタル・リマスター版)
※赤色は韓国映画または韓国・北朝鮮に関係する映画です。
以下、ベスト10の各作品についてのコメント。
1位「わたしは、ダニエル・ブレイク」は、観るまではこのタイトルの意味がわかりませんでした。(当然ですけど。) しかし、それがまさに「ここぞ!」というシーンでこのように出てくるとは! 前作の「ジミー、野を駆ける伝説」(2014)の後宣言したはずの引退を撤回してこの作品を撮ったケン・ローチ監督の<気骨>が感じられる感動作でした。
2位「あゝ、荒野」については11月7日の記事で次のように書きました。
前・後篇合計で304分、緊張感が途切れることはありませんでした。とくに菅田将暉は(観てないけど)昨年の「溺れるナイフ」よりもずっとたくさんの主演男優賞を受賞するのでは? (とくにあのブチ切れた時の表情が・・・。) もう1人の主演ヤン・イクチュンは、先週観た「詩人の恋」同様の口数の少ない役柄(って、吃音症なので)で、監督としてだけでなく、俳優としても見直しました。ユースケ・サンタマリアもいい味出してましたね。そうそう、吃音症にボクシングに競馬に、時代は半世紀以上後に設定していてもやっぱり寺山修司です。
その後第42回報知映画賞で作品賞と主演男優賞(菅田将暉)受賞。ナットクです。
・・・この上記2作品のどちらを1位にするか、迷いました。社会性・思想性では前者、映画的感興では後者。両方1位でもいいです。
3位は「ベイビー・ドライバー」。これは迷わず決める。目を瞠るドライブ・テクニックとシャープな音楽の心地良いこと! 銃撃戦の発砲音の3連発が音楽のリズムにピッタリ合ってるとは!(笑)。
4位「米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー」と5位「抗い 林えいだい」は、ともに反骨精神を貫いた瀬長亀次郎(1907~2001)と、林えいだい(1933~2017年)のドキュメンタリー。彼らの主張には賛同しない人でも、人間的魅力を感じるという人はきっと多いのでは?
それにしても、こういう<気骨>ある日本人は今いるのでしょうかねー?
6位以降はほとんど同順位です。
6位「ブレードランナー 2049」は、衝撃度では35年前の第1作に及ばないにしても、期待が裏切られることはありませんでした。今や未来をディストピアと視る見方はめずらしくもなく、未来どころかすでにそれが現実化しているのでは?と考えると、虚脱感・倦怠感に囚われるばかりです・・・。
7位「みかんの丘」は、2016年公開作品ですが、佐藤忠男先生が「キネマ旬報」のベスト10に入れていたのを見て初めて知り、3月キネカ大森で「とうもろこしの島」との2本立てで観られたのはホントにラッキーでした。グルジア(今はジョージアと表記)とかアルメニア方面の地理・歴史について、とくにアブハジア紛争というのも実は初めて知りましたが、おそらく多くの日本人も私ヌルボ同様あまりよく知らないのでは? しかし、そういうところでも、現地の当事者の人たちにとっては民族的自尊心や宗教等にかかわる命をかけた戦いが繰り広げられているのですね。しかし、これらの作品はそれを超えた普遍性があり、共感を覚えました。
8位「トンネル 闇に鎖された男」、9位「新感染 ファイナル・エクスプレス」、[次点]の「哭声/コクソン」は順不同。「トンネル 闇に鎖された男」はあのセウォル号沈没事件への寓意が効いています。エンタメとしては「新感染 ファイナル・エクスプレス」が2016年の韓国映画中では1番。その他「お嬢さん」や「密偵」も期待通り。やっぱり韓国映画は観客動員数は作品性をほぼそのまま反映していると言ってよさそうです。なお、あまり話題にならなかった「ありふれた悪事」は思わぬ拾い物感がありました。
10位「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」は、17年に観たアニメのベスト。とくに視覚・聴覚の面で強く印象に残りました。とても精緻な折り紙によるストップモーション・アニメで、それが日本人以上に日本愛に満ち溢れた(!?)物語に直結しています。吉田兄弟の三味線も見事! ラストではジョージ・ハリスンの「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」を弾いています。
[次点]の「人生タクシー」については、5月23日の記事で書いたことを再掲します。
ドキュフィクションというのだそうですが、こんなしたたかな方法で内容のある映画を作っちゃったパナヒ監督はなんとしたたかなことか。そして実の姪のハナちゃんがキャノンの小型カメラを手にいろいろ撮影していて、「学校の課題の短編映画作りのため」というのは事実なのかどうか? またハナちゃんがその映画作成用の「べからず集」を読みながら「見せたくないことをしてるのは自分たちなのに・・・」などとつぶやいたりしてるのは、演技でなければしっかりした子供だし、演技だとすればなかなかの俳優。ベルリン国際映画祭で、出国を禁じられているパナヒ監督の代理として金熊賞のトロフィーを涙を流しながら受け取った彼女の将来に期待。(行く手を阻む者がないように・・・。)
[別格]の「アンダーグラウンド完全版」と「牯嶺街少年殺人事件(デジタル・リマスター版)」は、観ることができてホントによかった! それぞれ旧ユーゴ、台湾の現代史を物語るとともに、映画史の上でも傑作の名に値する作品だと思います。
・・・というわけで、今回のキーワードは<気骨>ということにあいなりました。
次に、とくに記憶に残った俳優について。
男優では、上述の菅田将暉に尽きます。
女優では、年の最後に観た「女神の見えざる手」と「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」の2作品でのジェシカ・チャステイン。異なるタイプのヒロイン2人をちゃんと演じ分ける、それが俳優といえばそれまでかもしれませんが・・・。もう1人は、ソウル旅行からの帰路アシアナの機内で観た「朴烈」のヒロイン金子文子を演じたチェ・ヒソ。(この映画、日本でも公開してくれないかな・・・。)
[参考]過去10年のベスト10
[2016年]①キャロル②トランボ ハリウッドに最も嫌われた男③この世界の片隅に④ブリッジ・オブ・スパイ⑤ソング・オブ・ザ・シー 海のうた⑥ズートピア⑦インサイダーズ/内部者たち⑧そばの花、運のいい日、そして青春⑨私の少女時代-Our Times-⑩牡蠣工場
[次点] シアター・プノンペン・ハドソン川の奇跡・危路工団
[別格(初見の旧作)] チリの闘い・アルジェの戦い(デジタル・リマスター版)
[2015年]①ボーダレス ぼくの船の国境線②顔のないヒトラーたち③セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター④雪の轍⑤マッドマックス/怒りのデスロード⑥神々のたそがれ⑦幕が上がる⑧海街diary⑨ストレイト・アウタ・コンプトン⑩KANO~1931海の向こうの甲子園~
[次点] バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)・人生スイッチ・恋人たち・傷だらけのふたり・許三観
[別格(初見の旧作)] ショア・裸の島
[2014年]①イーダ②グランド・ブダペスト・ホテル③ジャージー・ボーイズ④罪の手ざわり⑤ソウォン/願い⑥新しき世界⑦ソニはご機嫌ななめ⑧怪しい彼女⑨テロ,ライブ⑩ある精肉店のはなし
[次点] 60万回のトライ
私の少女(扉の少女・ドヒや)・祖谷物語 おくのひと
[2013年]①セデック・バレ②少女は自転車にのって③きっと、うまくいく④もうひとりの息子⑤嘆きのピエタ⑥あの頃、君を追いかけた⑦シュガーマン 奇跡に愛された男⑧ハンナ・アーレント⑨王になった男⑩建築学概論
[次点] 殺人の告白 ・凶悪
[別格] 阿賀に生きる
[多くの人に観てほしい作品] ファルージャ イラク戦争 日本人人質事件…そして
[2012年]①ニーチェの馬②ヒューゴの不思議な発明③プンサンケ(豊山犬)④ワンドゥギ⑤拝啓、愛しています⑥ロボット 完全版⑦桐島、部活やめるってよ⑧三池 終わらない炭鉱(やま)の物語⑨かぞくのくに⑩ピアノマニア 別格:春夏秋冬そして春
[2011年]①サラの鍵②テザ 慟哭の大地③愛する人④彼とわたしの漂流日記⑤アリス・クリードの失踪⑥阪急電車 片道15分の奇跡⑦牛と一緒に7泊8日⑧未来を生きる君たちへ⑨ゴーストライター⑩エンディングノート
[2010年]①息もできない②過速スキャンダル③冬の小鳥④ゲキシネ蛮幽鬼(日)⑤実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(日)⑥告白(日)⑦瞳の奥の秘密⑧飛べ!ペンギン⑨川の底からこんにちは(日)⑩ONE SHOT ONE KILL
[2009年]①グラン・トリノ②ディア・ピョンヤン(日)③妻が結婚した④母なる証明⑤チェイサー⑥チェンジリング⑦劔岳 点の記(日)⑧チョコレート・ファイター⑨戦場のワルツ⑩牛の鈴音
[2008年]①ダークナイト②パコと魔法の絵本(日)③ウリハッキョ(日)④休暇(日)⑤シークレット・サンシャイン⑥ラスト・コーション⑦接吻(日)⑧おくりびと(日)⑨闇の子供たち(日)⑩火垂るの墓・実写版(日)
[2007年]①世界最速のインディアン②パンズ・ラビリンス③キサラギ(日)④ドリームガールズ⑤それでも僕はやっていない(日)⑥夕凪の街 桜の国(日)⑦幸福(しあわせ)のスイッチ(日)⑧檸檬の頃(日)⑨幸福(こうふく)の食卓(日)⑩私たちの幸せな時間
一方、前年以上に日本映画は減ってドキュメンタリーを除くと10作品も観ていません。本年公開の話題作では「あゝ、荒野(前・後篇)」と「ビジランテ」くらい。予告編観てもほとんどは「なんだかなー」という感じだし・・・。
さて、例年の通りこの記事を書くにあたり参考として「毎日新聞」(12月22日夕刊)の<シネマの週末>欄(→コチラ)に目を通してみました。9人の執筆者が邦画・洋画のそれぞれを合わせて今年のベスト3を選定しているので、のべ54作品。うち複数の執筆者によって選ばれている作品は次の通り。
【邦画】「あゝ、荒野」(4票)・「彼女がその名を知らない鳥たち」(2票)・「幼な子われらに生まれ」(2票)・「三度目の殺人」(2)
【洋画】「ラ・ラ・ランド」(3票)・「パターソン」(2票)・「わたしは、ダニエル・ブレイク」(2票)・「女神の見えざる手」(2票)・「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(2票)
この中で、洋画は上掲の「パターソン」以外は全部観ましたが、3人が1位に挙げている「ラ・ラ・ランド」、そんなに良かったかな? 冒頭のシーンはたしかに印象的。しかし基本的なストーリーラインが昔からあまりにもありきたりな、といった感じだし、現代社会のもろもろを取り込んでないな、というのが私ヌルボの受けた印象でした。
あ、いかん。また前説が長くなりすぎてるぞ。ま、とりあえず2017年のベスト10を・・・。
[2017年]
①わたしは、ダニエル・ブレイク
②あゝ、荒野
③ベイビー・ドライバー
④米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー
⑤抗い 林えいだい
⑥ブレードランナー 2049
⑦みかんの丘
⑧トンネル 闇に鎖された男
⑨新感染 ファイナル・エクスプレス
⑩KUBO/クボ 二本の弦の秘密
[次点] 哭声/コクソン・人生タクシー
[別格(旧作の新版)] アンダーグラウンド完全版・牯嶺街少年殺人事件(デジタル・リマスター版)
※赤色は韓国映画または韓国・北朝鮮に関係する映画です。
以下、ベスト10の各作品についてのコメント。
1位「わたしは、ダニエル・ブレイク」は、観るまではこのタイトルの意味がわかりませんでした。(当然ですけど。) しかし、それがまさに「ここぞ!」というシーンでこのように出てくるとは! 前作の「ジミー、野を駆ける伝説」(2014)の後宣言したはずの引退を撤回してこの作品を撮ったケン・ローチ監督の<気骨>が感じられる感動作でした。
2位「あゝ、荒野」については11月7日の記事で次のように書きました。
前・後篇合計で304分、緊張感が途切れることはありませんでした。とくに菅田将暉は(観てないけど)昨年の「溺れるナイフ」よりもずっとたくさんの主演男優賞を受賞するのでは? (とくにあのブチ切れた時の表情が・・・。) もう1人の主演ヤン・イクチュンは、先週観た「詩人の恋」同様の口数の少ない役柄(って、吃音症なので)で、監督としてだけでなく、俳優としても見直しました。ユースケ・サンタマリアもいい味出してましたね。そうそう、吃音症にボクシングに競馬に、時代は半世紀以上後に設定していてもやっぱり寺山修司です。
その後第42回報知映画賞で作品賞と主演男優賞(菅田将暉)受賞。ナットクです。
・・・この上記2作品のどちらを1位にするか、迷いました。社会性・思想性では前者、映画的感興では後者。両方1位でもいいです。
3位は「ベイビー・ドライバー」。これは迷わず決める。目を瞠るドライブ・テクニックとシャープな音楽の心地良いこと! 銃撃戦の発砲音の3連発が音楽のリズムにピッタリ合ってるとは!(笑)。
4位「米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー」と5位「抗い 林えいだい」は、ともに反骨精神を貫いた瀬長亀次郎(1907~2001)と、林えいだい(1933~2017年)のドキュメンタリー。彼らの主張には賛同しない人でも、人間的魅力を感じるという人はきっと多いのでは?
それにしても、こういう<気骨>ある日本人は今いるのでしょうかねー?
6位以降はほとんど同順位です。
6位「ブレードランナー 2049」は、衝撃度では35年前の第1作に及ばないにしても、期待が裏切られることはありませんでした。今や未来をディストピアと視る見方はめずらしくもなく、未来どころかすでにそれが現実化しているのでは?と考えると、虚脱感・倦怠感に囚われるばかりです・・・。
7位「みかんの丘」は、2016年公開作品ですが、佐藤忠男先生が「キネマ旬報」のベスト10に入れていたのを見て初めて知り、3月キネカ大森で「とうもろこしの島」との2本立てで観られたのはホントにラッキーでした。グルジア(今はジョージアと表記)とかアルメニア方面の地理・歴史について、とくにアブハジア紛争というのも実は初めて知りましたが、おそらく多くの日本人も私ヌルボ同様あまりよく知らないのでは? しかし、そういうところでも、現地の当事者の人たちにとっては民族的自尊心や宗教等にかかわる命をかけた戦いが繰り広げられているのですね。しかし、これらの作品はそれを超えた普遍性があり、共感を覚えました。
8位「トンネル 闇に鎖された男」、9位「新感染 ファイナル・エクスプレス」、[次点]の「哭声/コクソン」は順不同。「トンネル 闇に鎖された男」はあのセウォル号沈没事件への寓意が効いています。エンタメとしては「新感染 ファイナル・エクスプレス」が2016年の韓国映画中では1番。その他「お嬢さん」や「密偵」も期待通り。やっぱり韓国映画は観客動員数は作品性をほぼそのまま反映していると言ってよさそうです。なお、あまり話題にならなかった「ありふれた悪事」は思わぬ拾い物感がありました。
10位「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」は、17年に観たアニメのベスト。とくに視覚・聴覚の面で強く印象に残りました。とても精緻な折り紙によるストップモーション・アニメで、それが日本人以上に日本愛に満ち溢れた(!?)物語に直結しています。吉田兄弟の三味線も見事! ラストではジョージ・ハリスンの「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」を弾いています。
[次点]の「人生タクシー」については、5月23日の記事で書いたことを再掲します。
ドキュフィクションというのだそうですが、こんなしたたかな方法で内容のある映画を作っちゃったパナヒ監督はなんとしたたかなことか。そして実の姪のハナちゃんがキャノンの小型カメラを手にいろいろ撮影していて、「学校の課題の短編映画作りのため」というのは事実なのかどうか? またハナちゃんがその映画作成用の「べからず集」を読みながら「見せたくないことをしてるのは自分たちなのに・・・」などとつぶやいたりしてるのは、演技でなければしっかりした子供だし、演技だとすればなかなかの俳優。ベルリン国際映画祭で、出国を禁じられているパナヒ監督の代理として金熊賞のトロフィーを涙を流しながら受け取った彼女の将来に期待。(行く手を阻む者がないように・・・。)
[別格]の「アンダーグラウンド完全版」と「牯嶺街少年殺人事件(デジタル・リマスター版)」は、観ることができてホントによかった! それぞれ旧ユーゴ、台湾の現代史を物語るとともに、映画史の上でも傑作の名に値する作品だと思います。
・・・というわけで、今回のキーワードは<気骨>ということにあいなりました。
次に、とくに記憶に残った俳優について。
男優では、上述の菅田将暉に尽きます。
女優では、年の最後に観た「女神の見えざる手」と「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」の2作品でのジェシカ・チャステイン。異なるタイプのヒロイン2人をちゃんと演じ分ける、それが俳優といえばそれまでかもしれませんが・・・。もう1人は、ソウル旅行からの帰路アシアナの機内で観た「朴烈」のヒロイン金子文子を演じたチェ・ヒソ。(この映画、日本でも公開してくれないかな・・・。)
[参考]過去10年のベスト10
[2016年]①キャロル②トランボ ハリウッドに最も嫌われた男③この世界の片隅に④ブリッジ・オブ・スパイ⑤ソング・オブ・ザ・シー 海のうた⑥ズートピア⑦インサイダーズ/内部者たち⑧そばの花、運のいい日、そして青春⑨私の少女時代-Our Times-⑩牡蠣工場
[次点] シアター・プノンペン・ハドソン川の奇跡・危路工団
[別格(初見の旧作)] チリの闘い・アルジェの戦い(デジタル・リマスター版)
[2015年]①ボーダレス ぼくの船の国境線②顔のないヒトラーたち③セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター④雪の轍⑤マッドマックス/怒りのデスロード⑥神々のたそがれ⑦幕が上がる⑧海街diary⑨ストレイト・アウタ・コンプトン⑩KANO~1931海の向こうの甲子園~
[次点] バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)・人生スイッチ・恋人たち・傷だらけのふたり・許三観
[別格(初見の旧作)] ショア・裸の島
[2014年]①イーダ②グランド・ブダペスト・ホテル③ジャージー・ボーイズ④罪の手ざわり⑤ソウォン/願い⑥新しき世界⑦ソニはご機嫌ななめ⑧怪しい彼女⑨テロ,ライブ⑩ある精肉店のはなし
[次点] 60万回のトライ
私の少女(扉の少女・ドヒや)・祖谷物語 おくのひと
[2013年]①セデック・バレ②少女は自転車にのって③きっと、うまくいく④もうひとりの息子⑤嘆きのピエタ⑥あの頃、君を追いかけた⑦シュガーマン 奇跡に愛された男⑧ハンナ・アーレント⑨王になった男⑩建築学概論
[次点] 殺人の告白 ・凶悪
[別格] 阿賀に生きる
[多くの人に観てほしい作品] ファルージャ イラク戦争 日本人人質事件…そして
[2012年]①ニーチェの馬②ヒューゴの不思議な発明③プンサンケ(豊山犬)④ワンドゥギ⑤拝啓、愛しています⑥ロボット 完全版⑦桐島、部活やめるってよ⑧三池 終わらない炭鉱(やま)の物語⑨かぞくのくに⑩ピアノマニア 別格:春夏秋冬そして春
[2011年]①サラの鍵②テザ 慟哭の大地③愛する人④彼とわたしの漂流日記⑤アリス・クリードの失踪⑥阪急電車 片道15分の奇跡⑦牛と一緒に7泊8日⑧未来を生きる君たちへ⑨ゴーストライター⑩エンディングノート
[2010年]①息もできない②過速スキャンダル③冬の小鳥④ゲキシネ蛮幽鬼(日)⑤実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(日)⑥告白(日)⑦瞳の奥の秘密⑧飛べ!ペンギン⑨川の底からこんにちは(日)⑩ONE SHOT ONE KILL
[2009年]①グラン・トリノ②ディア・ピョンヤン(日)③妻が結婚した④母なる証明⑤チェイサー⑥チェンジリング⑦劔岳 点の記(日)⑧チョコレート・ファイター⑨戦場のワルツ⑩牛の鈴音
[2008年]①ダークナイト②パコと魔法の絵本(日)③ウリハッキョ(日)④休暇(日)⑤シークレット・サンシャイン⑥ラスト・コーション⑦接吻(日)⑧おくりびと(日)⑨闇の子供たち(日)⑩火垂るの墓・実写版(日)
[2007年]①世界最速のインディアン②パンズ・ラビリンス③キサラギ(日)④ドリームガールズ⑤それでも僕はやっていない(日)⑥夕凪の街 桜の国(日)⑦幸福(しあわせ)のスイッチ(日)⑧檸檬の頃(日)⑨幸福(こうふく)の食卓(日)⑩私たちの幸せな時間