ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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[韓国の珍味(というか、なんというか・・・・)]ケブルのすべて(その1)

2015-08-20 12:49:02 | 韓国料理・食べ物飲み物関係
 とりあえずは寿司と刺身の画像をご覧ください。
    

 ネタは何だと思いますか? マグロの赤身、じゃなくて、「もっと表面の肌理が細かく滑らか」「コリッとした歯応え」があって「ほのかな甘み」があり、「海藻のような香り」がして「サクサクとした食感」なのだそうです。
 左の寿司はソウルの寿司屋(すし銀)のものですが、日本ではまず考えられない寿司ネタです。
 
 正解は右の画像なんですが、ちょっと得体の知れない生物でしょ? 私ヌルボ、「なるべく穏当なものを」と思って「海辺にいる生きもの」(永岡書店)に載っている写真を小さめにして載せたんですけどね。

 で、何という生物なのかというと、韓国語でケブル(개불)、日本語ではユムシです。韓国では必ずしも日常的・一般的とは言えず、食べたことがない人もふつうにいるようですが、(たぶん)誰もが知っている食材です。
 ちなみに私ヌルボは食べたことがありません。7、8年前だったかソウルの街歩きをしていた時、海鮮料理の店の前に置かれた水槽で初めて見て、以来ずっと気にはなっていました。
 今月初めちょっとしたキッカケでコイツに再び興味を持ち、いろいろ探ってみました。以下、いくつかの項目に分けてその成果(?)を備忘録的に記してみます。

①生物学上の分類
 ユムシ動物門ユムシ綱ユムシ目ユムシ科の海産無脊椎動物。
 これはスゴいことです。私ヌルボ、遠い昔「生物」を受験科目の1つとして選択していました。当時は生物の分類とかもその暗記項目の中にあって、その系統樹の下位から種・属・科・目・綱・門・界と分類階層が上がっていく、ということも憶えました。
 で、たとえばライオンとかトラとかエラそうにしてますが(笑)、どちらも分類学上は動物界・脊索動物門・脊椎動物亜門・哺乳綱・ネコ目・ネコ科・ヒョウ属に属する動物にすぎないのですね。ようするに下っ端ですよ。(別に彼らを軽蔑してるわけではないが・・・。) その上の上の上(!)に位置づけられるネコは「目」。これでも大したもので、その上に哺乳「綱」。
 つまり、環形動物「門」・軟体動物「門」・節足動物「門」等々に伍して、このチャチな動物だけでもってユムシ動物「門」と堂々たる一家を構えているというわけです。ま、体節がないので環形動物「門」には入れられないし、しかたなく独立させたようでもありますが・・・。(他にも星口動物「門」などというのがあるそうです。)

②名称とその意味
 学名Urechis unicinctusはよくわからんので措くとして、ユムシを漢字で書くと螠虫。ウィキペディア(→コチラ)を見ると、「和歌山ではイイ」とありますが、この読みは中国語の音読みによるもののようです。そもそもユムシというのがイイムシから転訛したものではないか、というのは私ヌルボが今思ったこと。また「九州ではイイマラなどとも呼ばれている」というのはもちろんその形状によるものでしょう。(その昔、東京五輪の際(?)天皇への説明役が「マラソンは・・・」等々と説明していると侍従(?)だかが「陛下に対してそんな品のない言葉を使ってはなりません!」と注意した、というエピソード(笑い話?)を聞いたことがあります。)
 そして韓国語の개불。これは「개」+「불알」の縮約語で、つまりはイヌのナニですなー。
 さらに英語では「fat innkeeper worm」またはpenisfish(!)なんですと。いずれも同じような発想。(笑) なお「penisfish」で検索すると、その2割くらいに「korean penisfish」と「korean」が付いてます。

③日本では主に釣り餌。えっ、平安貴族が食べた!? 北海道でも!?
 日本でこのユムシを見たいという人は、クロダイやマダイ等の釣り餌として用いられるとのことなので釣具店で訊いてみるといいかも・・・。私ヌルボ、釣りのことは全く疎いので、ふつうにあるものかどうかはわかりません。ただ、<釣餌ギャラリー>(→コチラ)というサイトには当然のように載っています。(それにしても、釣りファン以外の者にとってはオゾマシイ画像のオンパレード!) また釣り餌の通販でこのユムシを購入することもできます。→コチラでは1匹150円になってます。
 ところで、今回ユムシに再び関心を呼び起こすきっかけになったのは、8月7日の記事(→コチラ)で日本古代のスプーンの使用に関して横浜市立図書館所蔵の「類聚雑要抄指図巻」を見てみたこと。1116年内大臣藤原忠通の食膳(下左)に上がった料理の中にユムシがあったのです。
    

 飯のすぐ右上。「海月(クラゲ)」、「老海鼠(ホヤ)」の右の「蝙[虫若]」がユムシとのことです。(鈴木晋一「馬琴の食卓」(平凡社新書)参照。) ただ、それが塩辛だったと考えるのが「最も必然性に富む」としながらも「憶測の域を出ない」と記し、和え物等それ以外だったかもしれないとのことです。
 しかして現在。大方の日本人の食生活には無縁のユムシが北海道に一部では食されているそうです。
 石狩市浜益区では、数年に1度という大しけの翌朝海岸に打ち寄せられるルッツすなわちユムシを地元の人たちが拾って調理して食べる。あるいは内臓を取って冷凍保存するそうで、→コチラの記事には拾って→調理して→盛りつける、一連の写真が掲載されています。(キレイに撮られていてエグい写真はない(?)ので安心して見てみてください。)
 この記事によると、調理法は炒める、茹でる、刺身にする等、家庭によりさまざま。青南蛮・麹・醤油を各一升ずつ漬け込んだ三升漬という保存食もあります。
 ※石狩市浜益区のルッツについては2013年1月「北海道新聞」にも大きく取り上げられました。(→コチラ。)
 ※2014年オホーツク海に面した紋別市でもしけの後2度ユムシが大量に浜に打ち寄せられたことが報じられました。→コチラと→コチラ

 とりあえず、日本国内でのユムシ状況を概観してみましたが、はたしてここまで読んでくださった皆さんは「よし、食べてみよう!」と思われたかどうか?(10人に1人くらい?)

 続きでは本論、すなわち本場韓国の状況について書きます。

 → ケブルのすべて(その2)
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