ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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2012年11月の修能試験(韓国版センター試験)、ちょっと首を傾げた問題も・・・・

2012-11-11 12:12:29 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 11月8日(木)韓国版センター試験ともいうべき修学能力試験(修能)が行われました。
 4Minuteのクォン・ソヒョン、B.A.Pのジョンオプ等のアイドル歌手も受験したことが報じられています。(→コチラ。)

 修能については、以下の本ブログの過去記事でもいろいろ紹介してきました。
・2009年11月15日「11月12日実施 <修能>(センター試験の韓国版)は国家的イベント!」
・2011年1月17日「修能の「日本語」-正解がわからないぞ~」
・2011年11月14日「修学能力試験の「日本語」をやってみました」

 この頃日本のテレビ等でも報道されているように、韓国では日本のセンター試験を上回る一大行事です。交通規制とか、遅れそうな受験生を警察等が受験場に運ぶ等の受験生サービスや、英語の聞き取りテスト中の騒音防止対策等、日本人の常識からみると破格の措置ですが、過去記事で述べたように、昔からの科挙制度の伝統の延長線上で、国家に有用な人材を選抜するという国家的な試験というコンセンサスが公私で共有されているのだと私ヌルボは思っています。

 今回も、コチラのサイトから、その試験問題の中身をちょっと見てみました。

 例年、間違いは許さんぞ、みたいな気持ちで見てしまう「日本語」(→コチラ)は、このところ語学問題といっても日本文化の理解といった性格の問題が出されています。今回は「温泉」についてでしたね。

     
         【「たまごを料理する」というのはちょっと違うような・・・。】

 しかし、この「日本語」の問題には、毎年日本人でも首を傾げる問題が何か1題はあるんですよ。
 今回は明らかに「これはヘンだぞ」という問題はありませんでしたが、日本人でもかなり大勢の人が間違うのでは、と思ったのが次の問題。
    
 「長さ(拍子)が他の4つと異なるものは?」という問題です。
 私ヌルボ、最初は長音がある「人形」「住所」「ニュース」・・・と思ったら、「去年」と「コップ」の2つが余ってしまうではないですか。
 で、問題文中の「拍子」に着目して、リズムを取りながら発音すると、去年は「きょ・ね・ん」、人形は「に・ん・ぎょ・う」、住所は「じゅ・う・しょ」、ニュースは「にゅ・う・す」、コップは「こ・っ・ぷ」で、人形だけ4拍子で他は全部3拍子。で、正解は②人形です。
 言語学者N先生によると、これは「韓国での日本語学習では最初に習う基本事項」なんだそうですが、日本では小学校~高校まで習っていないはず。ハングルサークルの仲間も即正答を出せなかったのもしょうがないな、と思いました。

 「日本語」のその他の問題はまずこんなものでしょうが、けっこうビミョーな問題もありますね。

 他の科目に目を移すと、昨年は例の「独島」に関する問題(もちろん韓国側の見解に立脚した)が出題されて一部で注目されましたが、今回は「国史」の問題で次の問題に目がとまりました。

     

[訳] 
 次の日程表の下線部分の(ㄱ)~(ㄹ)に対する説明として正しいものを下欄の①~⑤から選べ。
  午前 奈良 (ㄱ)法隆寺訪問 
          (ㄴ)曇徴が描いたと伝えられる金堂壁画の復元図鑑賞
          (ㄷ)高松塚古墳観覧
  午後 大阪 (ㄹ)王仁の墓として知られるところを探訪

   ㄱ.(ㄱ)-百済の仏像様式の影響を受けた観音菩薩像がある。
   ㄴ.(ㄴ)-仏経と仏像を持って行き、仏教を初めて伝えた。
   ㄷ.(ㄷ)-水山里古墳の壁画とよく似た壁画が描かれている。
   ㄹ.(ㄹ)-聖徳太子の師となって先進文化を教えた。
 ①ㄱ, ㄴ ②ㄱ, ㄷ ③ㄴ, ㄷ ④ㄴ, ㄹ ⑤ㄷ, ㄹ


 正解は(←範囲指定すると現れる)で一応問題はありません。法隆寺にはたしかに百済観音があります。水山里古墳は日本人には知られていませんが、この文も正しいです。
 しかし、「曇徴が描いたと伝えられる金堂壁画」という部分は日本人にとっては「ウッソー!」です。日本史の教科書には、曇徴は「推古朝に高句麗から来日して紙・墨・彩色の法を伝えた」とありますが、「法隆寺金堂の壁画云々」の記述はありません。日本ウィキの「曇徴」の項目には、「近年韓国では、法隆寺金堂壁画は曇徴の手によるものと主張されることがあり、国定の歴史教科書にも記述されている。しかし、それを支持する史料は一切なく(また現在の法隆寺は7世紀後半に再建されたものである)、空想の域を出るものではない」と書かれています。
 韓国でなぜこのように教えられているのか、よくわかりません。韓国サイトを見ると、ごく一部を除いてほとんどが韓国の教科書をそのまま信じているものばかり。法隆寺を訪れる韓国人観光客もそうした「予備知識」を持って期待感を抱いて来るので、実際に来てからとまどったりしているようです。

※「朝鮮新報」(日本語)にも「法隆寺金堂壁画描いた曇徴」(→コチラ)と題された、まったく疑いを入れない見出しの通りの記事がありました。

 修能のその他の科目も一通り見てみたい気持ちもありますが、時間がかかりそう・・・。
コメント (4)
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