ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [7月22日(金)~7月24日(日)]

2016-07-26 23:49:58 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 先週書いた<話題の慰安婦映画>「鬼郷」の続報。「朝鮮日報」(日本語版)の記事(→コチラ)によると、21日の午後どこかのホテルで上映され、「この日設けられた400席は在日韓国人や日本人たちで埋め尽くされた」そうです。上映館を見つけるが難しかったので「共同体上映会」という形をとったとのこと。そういうわけで、観てみたいと思っていた私ヌルボは共同体の外の人間だったため観られず。どこのホテルだったのかもわかりません。東京を含め日本全国13都市を巡回して上映会を開く予定だそうですが、近場ならなんとか情報を仕入れて行きたいものです。(決まったらぜひメールでお知らせを。(→左の<メッセージ>)

 21日に文化村のル・シネマに行きました。実に久しぶり! 少なくともこの6年間は行ってません。それにしても品の良い映画館で、私ヌルボもハイソのキョーヨー人になったような気分。もちろん錯覚以外の何物でもありませんが。で、観た映画がクシシュトフ・キェシロフスキ(←早口でなくてもとちるゾ)監督の「ふたりのベロニカ」(実は初見)。やっぱりこの映画館らしいカクチョー高い作品なのでヌルボごときがコメントできるものでもありません(笑)が、イレーヌ・ジャコブは魅力的! カンヌ映画祭で主演女優賞というのもうなづけます。同じタイプの女優、誰かいるかな?
   
「朝鮮日報」7月22日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)
 「釜山行き」
   ゾンビより怖いのは? 人! ★★★☆


 「教授のおかしな妄想殺人」

   幻想が愛を可能にする ★★★

 「アイスエイジ5:地球大衝突」

   なかなか良いが今イチ ★★☆


 「魔神仔(モシナ)-赤い服の少女の呪い」

   恐怖、君と僕の間にある ★★☆

 「教授のおかしな妄想殺人」は、ウディ・アレン監督のコメディで日本ではすでに6月公開されています。他の3作品はすべて下の記事中で紹介しています。

         ★★★ NAVERの人気順位(7月26日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】

①(1) ライフ・イズ・ビューティフル  9.38
②(2) オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン  9.33
③(3) ベン・ハー  9.25
④(5) 私たち(韓国)  9.20
⑤(8) シーモアさんと、大人のための人生入門  9.17
⑥(-) キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン  9.16
⑦(9) オーヴェという男  9.14
⑧(10) サフラジェット  9.05
⑨(-) バグダッド・カフェ(ディレクターズ・カット)  9.03
⑩(-) 太陽の下  9.02

 ⑥「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」だけが新登場。オナルド・ディカプリオ主演の2002年のアメリカ映画の再上映です。韓国題は「캐치 미 이프 유 캔」。

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) トリコロール 青の愛  9.00(1)
②(2) キャロル  8.96(13)
③(3) ふたりのベロニカ  8.75(1)
③(3) ベン・ハー  8.75(1)
⑤(5) ライフ・イズ・ビューティフル  8.34(8)
⑥(6) グランブルー  8.25(4)
⑦(7) ビフォア・サンライズ 恋人までの距離〈ディスタンス〉  8.25(2)
⑧(8) 哭声(韓国)  8.18(17)
⑨(9) 奇跡〈2011年〉(日本)  7.86(7)
⑩(10) 幻の光(日本)  7.84(8)

 前回と順位・評点ともまったく変わりません。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績7月22日(金)~7月24日(日)] ★★★

         「釜山行き」が記録的動員数でトップに
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(2)・・釜山行き(韓国)・・・・・・・・・・・・7/20 ・・・・・・・・・3,213,824・・・・・・・・・5,315,025・・・・・・・・・43,826・・・・・・1,785
2(1)・・グランド・イリュージョン ・・・・7/13 ・・・・・・・・・・・456,512・・・・・・・・・2,717,033・・・・・・・・・22,179・・・・・・・・648
       見破られたトリック
3(64)・・アイスエイジ5:地球大衝突・・7/20 ・・・・・・・・206,252・・・・・・・・・・・242,706・・・・・・・・・・1,886・・・・・・・・579
4(3)・・ファインディング・ドリー・・・・7/06 ・・・・・・・・・・・163,644・・・・・・・・・2,031,988・・・・・・・・・16,459・・・・・・・・458
5(54)・・劇場版妖怪ウォッチ ・・・・・7/20 ・・・・・・・・・・・119,320 ・・・・・・・・・・138,396・・・・・・・・・・1,064・・・・・・・・402
       エンマ大王と5つの物語だニャン!(日本)
6(4)・・鳳伊 キム・ソンダル(韓国)・・7/06 ・・・・・・・・・・・70,028・・・・・・・・・2,005,966・・・・・・・・・15,907・・・・・・・・399
7(5)・・ロスト・バケーション・・・・・・・7/13 ・・・・・・・・・・・・48,916・・・・・・・・・・・345,716・・・・・・・・・・2,815・・・・・・・・268
8(新)・・富川国際ファンタスティック映画祭・・7/21・・・16,500・・・・・・・・・・・・21,500 ・・・・・・・・・・・129・・・・・・・・・・4
       ファンタスティック短編傑作選1
9(9)・・-僕のサンティアゴ巡礼の道・・7/14 ・・・・・・・・・10,673・・・・・・・・・・・・36,328 ・・・・・・・・・・・285・・・・・・・・・52
10(6)・・グッバイ・シングル(韓国)・・・6/29・・・・・・・・・・・・8,446 ・・・・・・・・・2,103,639 ・・・・・・・・16,879・・・・・・・・129
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「釜山行き」、現時点でもう500万人突破とは何なんだ!? オドロキモモノキです。
 今回の新登場は3・5・8位の3作品。
 3位「アイスエイジ5:地球大衝突」(仮)は、アメリカの人気アニメ「アイス・エイジ」シリーズの5作目。地球上に落下する隕石群から逃れるために奮闘するマンモスのマニーとノスロテリウムのシド、スミロドンのディエゴの3頭の冒険を描く・・・って、隕石群というから恐竜が絶滅した中生代の終わり、つまり2億6千万年前?と一瞬思っちゃいましたが、マンモスが主人公だから更新世すなわち1万年前までのことですよね。その頃そんなすごい隕石群が降ってきたのかな・・・。韓国題は「아이스 에이지: 지구 대충돌」。日本公開は未定のようです。
 5位「劇場版 妖怪ウォッチ:エンマ大王と5つの物語だニャン!」は、日本では昨年12月公開。ほとんど知識のないヌルボ、ストーリーを見てみても全然わからないのだニャン! 韓国題は「극장판 요괴워치: 염라대왕과 5개의 이야기다냥!」です。
 8位「富川国際ファンタスティック映画祭2016 ファンタスティック短編傑作選1」は、7月21日から開催されている今回が第20回目の映画祭中のプログラム。この映画祭にはチャン・グンソクの監督作品が上映されたり、KARAのギュリが開幕式に登場したりといった話題も報じられています。(→コチラ。) 韓国映画オタクのSARUさんは直接観に行ってグンちゃんの写真も撮ってますよ。(→コチラ。)

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・デモリション・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7/13・・・・・・・・・・・・・・・・7,712・・・・・・・・・・・・43,806 ・・・・・・・・・・・・・358 ・・・・・・・・・39
2(31)・・魔神仔(モシナ)-赤い服の少女の呪い・・7/21 ・・・・・・・・4,785・・・・・・・・・・・・・7,212 ・・・・・・・・・・・・・・59 ・・・・・・・・121
3(4)・・バグダッド・カフェ・・・・・・・・・・・・・・・7/14・・・・・・・・・・・・・・・・2,362・・・・・・・・・・・・12,715 ・・・・・・・・・・・・・・94 ・・・・・・・・・30
       (ディレクターズ・カット)
4(6)・・幻の光(日本)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7/13 ・・・・・・・・・・・・・・・1,399・・・・・・・・・・・・14,584・・・・・・・・・・・・・116・・・・・・・・・・21
5(3)・・ベン・ハー ・・・・・・・・・・・・・・・・1972/9/07 ・・・・・・・・・・・・・・・1,098・・・・・・・・・・・・40,490・・・・・・・・・・・・・248 ・・・・・・・・・11

 2位「魔神仔(モシナ)-赤い服の少女の呪い」(仮)だけが今回の新登場です。台湾のホラー映画で、魔神仔(モシナ)とは伝説に登場する妖怪。赤い目に赤い肌で、赤い服を着た子供のような姿をしているとか。山中で人をさらったり、沼に引きずり込んだりして、日本の河童にも相通じるところがあるとのこと。物語の主人公は台北の不動産業で働く青年(ホアン・ハー)。祖母がある日突然行方不明になってから彼の身の回りで不思議な現象が起こり、そこには赤い服の少女がいるのです。DJの恋人(アン・シュー)も番組で情報提供を呼びかけますが、今度は青年もいなくなってしまいます。彼女は捜索隊とともに山に向かいますが・・・。韓国題は「마신자 - 빨간 옷 소녀의 저주」で、それを仮題としました。日本公開は未定。
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韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [7月15日(金)~7月17日(日)]

2016-07-20 17:05:48 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 ちょっと確認したいことがいくつかあったので、19日夜シネマート新宿に「暗殺」を観に行きました。(5月に続き2回目。) すると客席数 335のスクリーン1じゃなくて客席数 62のスクリーン2の方! この小さなスクリーンでこの作品とは魅力半減。横浜のシネマ・ジャック&ベティでの上映日は未定ですが客席数は138(or114)。大田区方面等にお住まいならまずソチラを選ぶ方が賢明かと・・・。

 <中央日報>の記事(→コチラ)等によると、7月21日の東京を皮切りに、日本各地で<話題の慰安婦映画>「鬼郷」が上映されるとのこと。しかし東京での上映会場・時間等は不明のまま。SARUさんのツイッターには「「クローズドな開催なので前売券を一般に販売しているものではない」との回答だったそうで、メールまたは電話による事前予約ということのようです」とか「クローズドという言葉が、部外者お断りとまでの意味ではない様子です」とか書かれていますが・・・。
 上映するとしても、それだけ警戒しなければならない状況が予測されるということでしょう。これまでも何度かありましたが、観もしないで上映を妨害することよりも、ちゃんと観た上で事実と異なる箇所を指摘したり、自分たちの主張を述べるのがまっとうな対応だと思いますけどねー。
 ※右画像は、元慰安婦の姜日出(カン・イルチュル)さんが描いた「焼かれる少女たち」という絵。これに触発されてチョ・ジョンレ監督はこの映画を作ったそうです。(この「大量虐殺」がいつどこで行われたのか、それがどう確認されているのか等々はどうなっているのでしょうか?)
  
「朝鮮日報」7月15日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)
 「デモリション」
  壊してこそ見えるモノ ★★★☆
 「エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に」
  遊びまくったその頃へ ★★★☆
 「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」
  次からは観たくないが・・・ ★★☆
 「アイ・イン・ザ・スカイ」
  戦闘なき激情的な戦場 ★★★☆
 「僕のサンティアゴ巡礼の道」
  次の休暇、サンティアゴ? ★★★
 「トリック」
  放送の素顔が窺えるが・・・ ★★☆
 「アイ・イン・ザ・スカイ」は、ケニアを舞台に、無人機ドローンを用いてテロリストの隠れ家を襲うといった現代の対テロ戦争のモラルを問うアメリカの軍事スリラー。日本公開は2017年かな? 他の5作品はすべて下の記事中で紹介しています。

         ★★★ NAVERの人気順位(7月19日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】

①(1) ライフ・イズ・ビューティフル  9.38
②(2) オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン  9.33
③(5) ベン・ハー  9.25
④(-) ボーン・アルティメイタム  9.25
⑤(4) 私たち(韓国)  9.23
⑥(6)アバウト・タイム~愛おしい時間について~  9.19
⑦(-) 鬼郷(韓国)  9.19
⑧(7) シーモアさんと、大人のための人生入門  9.17
⑨(9) オーヴェという男  9.15
⑩(-) サフラジェット  9.10

 ④と⑩の2作品が新登場です。
 ④「ボーン・アルティメイタム」は、マット・デイモン主演で日本でも好評だった2007年のアメリカ映画の再上映。韓国題は「본 얼티메이텀」です。
 ⑩「サフラジェット」は、昨年のロンドン映画祭でオープニング作品として上映されたイギリス映画。洗濯工場の労働者モード(キャリー・マリガン)を中心に1世紀前のイギリスの婦人参政権運動の黎明期を描きます。メリル・ストリープが実在した女性運動家エメリン・パンクハーストを演じています。韓国題は「서프러제트」。日本公開は、そのうち? 確証ナシ。

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) トリコロール 青の愛  9.00(1)
②(2) キャロル  8.96(13)
③(4) ふたりのベロニカ  8.75(1)
③(4) ベン・ハー  8.75(1)
⑤(6) ライフ・イズ・ビューティフル  8.34(8)
⑥(-) グランブルー  8.25(4)
⑦(7) ビフォア・サンライズ 恋人までの距離〈ディスタンス〉  8.25(2)
⑧(8) 哭声(韓国)  8.18(17)
⑨(8) 奇跡〈2011年〉(日本)  7.86(7)
⑩(-) 幻の光(日本)  7.84(8)

 「そして父になる」に代わって同じ裕和監督の⑩「幻の光」がランクインする等の入れ替わりはありましたが、本ブログ新登場の作品はありません。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績7月15日(金)~7月17日(日)] ★★★

         コン・ユ主演の韓国映画「釜山行き」が公式公開日前の<先行上映>で50万人を突破して2位
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(4)・・グランド・イリュージョン ・・・・7/13 ・・・・・・・・・1,080,040・・・・・・・・・1,737,711・・・・・・・・・14,373・・・・・・1,200
       見破られたトリック
2(43)・・釜山行き(韓国)・・・・・・・・・・7/20 ・・・・・・・・・・・559,048 ・・・・・・・・・・561,170・・・・・・・・・・4,881・・・・・・・・431
3(1)・・ファインディング・ドリー・・・・7/06 ・・・・・・・・・・・525,148・・・・・・・・・1,760,508・・・・・・・・・14,365・・・・・・・・969
4(2)・・鳳伊 キム・ソンダル(韓国)・・7/06 ・・・・・・・・・・414,413・・・・・・・・・1,802,713・・・・・・・・・14,378・・・・・・・・811
5(48)・・ロスト・バケーション・・・・・・7/13 ・・・・・・・・・・・158,367・・・・・・・・・・・216,400・・・・・・・・・・1,788・・・・・・・・518
6(3)・・グッバイ・シングル(韓国)・・6/29・・・・・・・・・・・・128,806 ・・・・・・・・・2,038,857 ・・・・・・・・16,396・・・・・・・・538
7(174)・・デモリション・・・・・・・・・・・・7/13 ・・・・・・・・・・・・15,601・・・・・・・・・・・・25,150 ・・・・・・・・・・・207・・・・・・・・196
8(新)・・トリック(韓国) ・・・・・・・・・・・7/13 ・・・・・・・・・・・・14,274・・・・・・・・・・・・30,497 ・・・・・・・・・・・238・・・・・・・・373
9(新)・・-僕のサンティアゴ巡礼の道・・7/14 ・・・・・・・・11,054・・・・・・・・・・・・14,502 ・・・・・・・・・・・115・・・・・・・・・83
10(5)・・ターザン:REBORN ・・・・・・6/29 ・・・・・・・・・・・・10,075・・・・・・・・・・・854,471・・・・・・・・・・7,168・・・・・・・・121
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は2・5・7・8・9位の5作品です。
 2位「釜山行き」は、韓国のアクション・スリラー映画。正体不明のウイルスが全国に拡散し、韓国全土に緊急災難警報令が宣布されます。ただ唯一安全な都市の釜山に向かうためKTXに大勢の人が乗り込みますが、彼らの間で熾烈な死闘が繰り広げられることに・・・。うーむ、いろいろ探してもこれ以上のディテールはわからんゾ。韓国初のゾンビ映画? コン・ユ、チョン・ユミ、マ・ドンソクと、出演陣は人気と実力を備えた顔ぶれ。原題は「부산행」です。
 5位「ロスト・バケーション」は、アメリカのパニック映画。バカンスで秘境の島を訪れ、サーフィンを楽しむ医学生ナンシー(ブレイク・ライヴリー)は、突然の衝撃を受けて脚に怪我を負ってしまいます。彼女は岩場に避難しますが、その周囲を1匹の人食いザメが旋回しています・・・。うーむ、この季節の定番の設定。しかし、あの「ジョーズ」(1975)を凌駕することはどうみても不可能でしょ。韓国題は「언더 워터」。日本公開は7月23日です。
 7位「デモリション」は、妻を亡くした敏腕投資アナリストの苦悩を描いたアメリカ映画です。投資アナリストのデイビス(ジェイク・ギレンホール)は、交通事故で妻を失いますが、その翌日いつもと変わらず出勤した彼を見て、周りの人たちは囁き合います。 何の感情も感じられないように生きていくデイビス。しかし彼はだんだん崩れていきます。 妻を失った日、壊れた病院の自動販売機でお金を失ったデイビスは苦情の手紙を出しますが、そこに誰にも言わなかった自分の胸の内を打ち明けます。ある日午前2時、お客様センターのスタッフのカレン(ナオミ・ワッツ)から電話がかかってきます。「手紙を見て泣きました、話をする人はいますか?」。・・・「何かを直すには、全部分解した後、次に重要なのが何なのかを把握しなければ」。カレンと彼の息子クリスに会ってから出勤もせず街をさ迷ったデイビスは、まるで自分の中を覗き込むように壊れた冷蔵庫やコンピュータ等をバラバラにし始め、ついには妻との思い出が残っている家を分解することに・・・。韓国題は「데몰리션」。日本公開は2017年、かな?
 8位「トリック」は韓国のサスペンス。かつて不良食品の告発を特ダネで報道し、スターPDとして名を上げたソクチン(イ・ジョンジン)でしたが、その後告発内容が誤報だったとの判断を受け、裁判でも無罪判決が出て、PDもやめさせられることになりますた。数年後、教養テレビチャンネルのPDとして復職したソクチンは、新社長から秘密の提案を受けます。それは、創立記念特集として6ヵ月の余命宣告を受けたトジュン(キム・テフン)とヨンエ(カン・イェウォン)夫婦の病床日記のドキュメンタリーを撮影し、高い視聴率がとれたら局長に昇進させるというもの。そのドキュメンタリーは視聴者の涙を誘い、爆発的な人気を得て高視聴率を記録します。しかしトジュンの病状はさらに悪化し、撮影中断の危機に立たされますが、ソクチンは視聴率のためにトジュンの死に際を撮影すると決心し、ヨンエに悪魔のような提案を行います・・・。原題は「트릭」です。
 9位「僕のサンティアゴ巡礼の道」(仮)は、ドイツのコメディ。(実在の)コメディアンのハーペイ・カーケリングさんは2001年37歳の夏、病気などをきっかけに自分の人生を見つめなおそうと、スペインのサンティアゴ巡礼道800kmを歩き通そうと企てます。いろんな出会いがあり居酒屋での大騒ぎ等もありのその42日間の旅日記はベストセラーになり、翻訳書「巡礼コメディ旅日記」(みすず書房)も刊行されました。そして映画化作品がこの作品というわけです。韓国題は「나의 산티아고」。日本公開は未定のようです。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(64)・・デモリション・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7/13・・・・・・・・・・・・・・・15,601・・・・・・・・・・・・25,150・・・・・・・・・・・・・207 ・・・・・・・・196
2(22)・・THE WAVE/ザ・ウェイブ ・・・・・・7/13 ・・・・・・・・・・・・・・・6,899・・・・・・・・・・・・12,526・・・・・・・・・・・・・・99・・・・・・・・・140
3(1)・・ベン・ハー ・・・・・・・・・・・・・・・・1972/9/07 ・・・・・・・・・・・・・・・4,350・・・・・・・・・・・・37,486・・・・・・・・・・・・・220 ・・・・・・・・・58
4(22)・・バグダッド・カフェ・・・・・・・・・・・・・・7/14・・・・・・・・・・・・・・・・4,313・・・・・・・・・・・・・6,500 ・・・・・・・・・・・・・・49 ・・・・・・・・・59
       (ディレクターズ・カット)
5(39)・・エブリバディ・ウォンツ・サム!!・・7/14・・・・・・・・・・・・・・2,373・・・・・・・・・・・・・4,031 ・・・・・・・・・・・・・・33 ・・・・・・・・・61
       世界はボクらの手の中に

 今回は3位以外すべて入れ替わりました。
 1位「デモリション」については上述しました。
 2位「THE WAVE/ザ・ウェイブ」は、フィヨルド地帯を舞台に、岩山崩落による巨大津波の恐怖と家族のドラマを描いたノルウェー映画ですが、すでに6月日本で公開されています。韓国題は「더 웨이브」です。
 4位「バグダッド・カフェ(ディレクターズ・カット)」は、もちろん1987年の名作。韓国題は「바그다드 카페 : 디렉터스컷」です。
 5位「エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に」は、1980年代のアメリカの大学を舞台に、野球部の新入生たちの青春を描いたコメディ。高校を卒業して、大学野球部の宿舎に引っ越してきたイケメン新入生ジェイク(ブレイク・ジェンナー)。全国最高レベルの野球チームのルームメイトたちに交じり、ぎこちなさを感じる暇もなく気持ちが向かう先はむちむちギャルたちの方に・・・。コーチは酒&女の宿舎持ち込み( ?)禁止を命ずるのですが有名無実化? 口にはいつもビール、女性の話98%野球の話2%のおしゃべりと、毎晩楽しいパーティーを繰り広げるのですが・・・。韓国題は「에브리바디 원츠 썸!!」。「サム」は名前ではなく「some」。いい訳し方があるのでは? 日本公開は9月です。
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芥川賞候補・崔実「ジニのパズル」(や、金城一紀「GO」)と、在日の現況とアイデンティティ等々

2016-07-19 20:33:34 | 在日の作家と作品
 今午後6時半。1時間30分前から芥川賞の選考会議が始まっています。
 この記事も同時進行で作成中です。

 今回の候補作は今村夏子「あひる」・高橋弘希「短冊流し」・崔実「ジニのパズル」・村田沙耶香「コンビニ人間」・山崎ナオコーラ「美しい距離」の5作品。
 この中で私ヌルボが読んだのは崔実(チェ・シル)という在日3世の女性が書いた「ジニのパズル」だけなので、受賞作予想については何も言えません。
 ただ、作者が在日ということと、群像新人賞の選評で「超新人(ドラゴン)の出現!」と!マーク付きで大絶賛の辻原登をはじめ5人が満場一致で受賞作に決まったとのことで、発行の少し後「群像6月号」掲載のこの作品を読んでみました。(候補作中これだけが7月初めに単行本化されてるということは、それだけ話題性があり注目度が高いということか?)
 私ヌルボの感想等は後回しにすることにして、2ちゃんねるの<芥川賞・直木賞 文学賞受賞作予想スレ16>(→コチラ)を見てみると「芥川賞取りそうな順で言うと ナオコーラ>村田沙耶香>崔実 の順かね?」といった感じ。本命とはいえないまでも、有力候補なのだそうです。
 強く推す声もあります。
 「ジニのパズル」に作者の井戸の深さを感じる。又吉に授賞なら崔実は文句なしだろう。作品の完成度よりも作者の才能を第一の物差しにするべき。(村上龍が受賞したように)「ジニのパズル」は翻訳すれば世界に通用する。芥川賞をやりそこねたら、村上春樹や吉本ばななに授賞しそこねたのと同じことになってしまう。」とか。
 また、<芥川賞・直木賞 文学賞受賞作予想スレ15>(→コチラ)の「確かに題材勝ちで、このようなテーマを持ってこられると、今の日本人は太刀打ちできないジニwというカキコミには、以前ある在日韓国人(朝鮮人?)に友人(日本人)が「在日の人生には物語があってうらやましい」と語ったという内容の記事をよんだことをなんとなく思い出しました。これはかなり前からの芥川賞だけではない日本の近年の純文学のあり方の問題かも。私ヌルボ、きのう宋基淑「光州の五月」という小説をイッキ読みしましたが、こういう社会的なテーマ(光州事件とその後)を扱った純文学は近年の(・・・って、この30~40年?)日本ではホントに少ないからなー・・・。
 そこいくと、なるほど「ジニのパズル」は<社会的な問題>もたしかに含まれてはいます。主人公のジニは在日の女の子で、日本人が通う小学校で差別を受け、中学からは朝鮮学校に通うが・・・、という設定。しかし、差別とか民族学校のことはあくまでも素材。崔実さん自身も「朝日新聞」のインタビュー(→コチラ)で語っているように、差別や暴力への憤りや悲しみが色濃くにじむ物語になったが「何かを社会に訴えるために書いたわけじゃない」とのこと。たしかにそのとおり・・・。むしろ在日としてのアイデンティティ(←ベンリ&安易な言葉)といった内面的な問題に取り組んでいます。その点は同じ在日の高校生を描いた金城一紀「GO」(2000年)とは対照的。「GO」の方は直木賞受賞作だけあって明確なエンタ。主人公杉原はケンカも強いし恋愛もあったりして楽しめます。彼女に在日であることを打ち明けられないといった悩みも描かれていますが・・・。(読書に楽しさを求める方には「ジニ~」よりゼッタイこちらがオススメ。)  翌2001年にさっそく映画化された(窪塚洋介&柴咲コウ主演)のもむべなるかな、です。
 ※「GO」の方は小・中学が民族学校で高校から一般の日本の私学。「GO」も「ジニのパズル」も、主人公の小学校~高校の経歴は作者とおおよそダブっています。(参照→金城一紀ロングインタビュー)

 さて、この「ジニのパズル」の受賞を明らかに望んでいないのが朝鮮学校と朝鮮総聯でしょう。
 「GO」の杉原少年のような痛快な(?)暴力とは全然違うものの、ジニが朝鮮学校でしでかしたことも、もしかしたらそれ以上に「過激」なことです。それは、その学校社会の中での黙契(「約束事」)を打ち破る行為。具体的には、最高尊厳の御真影を毀損し、その虚構に対し抗議すること・・・というと、およそ見当がつきますよね。
 この「事件」の結果学校にはいられなくなってアメリカへ・・・。で、この作品はそのアメリカの場面から始まっています。(∴最初はわかりにくい。)
 ・・・私ヌルボ、ちょっと考えたのは、もしこれが受賞して(しなくても)映画化でもされたら「そのシーン」はどう撮るのか?ということ。
 昔はすごかった(?)朝鮮総聯の威光も今は見る影もないからどう撮ってもOK?
 日本人のアナタ(って、ヌルボも日本人ですが)にお聞きしますが、映画の中で「国民統合の象徴」の写真が毀損されるシーンはありえますか? 戦前・戦中ならもちろんダメですよね。では現代では? 外国の国王や元首だったら?
 いずれにしろ、この小説について今朝鮮学校の側(&支援者)がコメントすることがあるとしたら、「遺憾な内容を含んでおり、これに関連して学校や生徒たちに対する非難や差別があってはならない」といったあたりでしょうか。
 もっと強気なら(受賞した場合)「このような作品を受賞作とすることに強く抗議する」と言いたいところでしょうが・・・。(弱気なら「これは個人的な作品であり異議を唱えるものないが・・・」。)
 ヌルボは北朝鮮政府や朝鮮総聯については総体的に批判している立場ですが、ヘイトスピーチはもちろん反対。しかしこの作品はヘイトに結びつく要素はないのでは?と思います。
 それよりも、日頃思うのは、在日の現況についてあまりよく知られていないのでは?ということ。
 たとえば、在日の何割くらいが韓国語を話せるか?とか、在日の多くは韓国(朝鮮)・日本にどれだけ愛着を持っているか?とか、在日の何割くらいが「差別を受けている」という認識をもっているか等々。一言で言えば、「一言では言えない」ということなんですけどね。(笑) 韓国・朝鮮人の血を引く人たちにも国籍は朝鮮(←「北朝鮮」ではない)・韓国・日本とさまざまだし、また国籍や民族に自身のアイデンティティを置いている人もいれば「関係ない」と思っている人もいるし・・・。
 したがって、限られた小説や映画に登場している在日韓国・朝鮮人だけで在日全体を判断しないことです。

 この記事の見出しで「在日の現況とアイデンティティ」などと書きましたが、そこまで書くと長くなりすぎるし、「ジニのパズル」とはどんどん離れてしまうので、それらはまた別記事に回すことにし、ここまでで一区切りつけることにします。

 あっこの記事を仕上げる前に<芥川賞に村田沙耶香氏の「コンビニ人間」>というニュースが!
 むむっ、遅れをとってしまったか!
 (まあ朝鮮学校関係者はホッとしてる、かな?)  

[2016年12月14日の追記]
 在日作家の作品ではありませんが、やはり在日のアイデンティティを扱った小説に藤代泉「ボーダー&レス」があります。日本人の側から、日本人としての問題意識を掘り下げている点が注目される作品です。2009年第46回文藝賞受賞作で、同年の第142回芥川龍之介賞候補作です。
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東京韓国人学校の<問題になり方>自体に問題がありそうだゾ・・・・

2016-07-15 21:42:35 | 韓国・朝鮮と日本の間のいろいろ



 上の画像はソウル日本人学校。今年4月1日(金)、空港鉄道デジタルメディアシティ駅から少し離れた韓国映像資料院に行った時、街の地図を見てその数百m北に日本人学校があることに気づき、7、8分ほど歩いて見てきました。
 外に生徒たちの姿は見かけず、校庭に通じる門も閉まっていて、掃除(?)の人たちがいただけでしたが、ずいぶんきれいでリッパな校舎(5階建て)だなあという印象を受けました。
 その時、すでに東京都の韓国人学校の移転先が都政で問題になっていたことは、帰ってきてから知りました。
 
 関連記事にいろいろ目を通してみましたが、あいかわらず威勢ばかりよくて中身がカラッポの記事が多い中で、読むに値する記事はとりあえず2つ。
 その1は、あの「産経新聞」の黒田勝弘産経新聞ソウル駐在支局長の連載コラム[ソウルからヨボセヨ]の3月26日の記事。(→コチラ。)
 「産経新聞」そして黒田記者といえば、韓国メディアではしばしば(それ以上か?)「日本の代表的極右言論(人)」とよばれています。私ヌルボは極右とは思いませんが・・・。(ふつうの右派でしょ。)
 その黒田氏が「日本人学校移転 韓国の世話になった過去も」と題し、1972年創立以来の歴史と「新しい学校用地はソウル市が元の学校の土地と交換する形で提供してくれた。元の地域は地価が高騰していたため、差額で最先端の新校舎も建てられた。最初の土地購入は韓国政府のお世話になっている」といった「世話になった」ことを記し、次のような文で締めくくっています。

 最近、東京の韓国人学校の移転先に都立高校跡地を提供する計画に反対、批判の声が出ているとの記事が本紙に出ていたが、こうした反対はまずい。ソウル日本人学校もお世話になっているのだから、ちゃんと実現してほしい。

 私ヌルボ、左派右派と関係なく、傾聴すべき意見を述べる人もその逆の人もいると思っていますが、黒田氏の記事はもちろん前者。韓国メディアも、韓国に対する豊富な知見に基づいて本音で韓国を批判しているからこそ「極右」と言いつつも耳を傾けるのでしょう。
 まあ、この問題については産経の方針にそぐわないためか紙面ではその後ずっとスルーされてるようですが・・・。

 さて、都有地の韓国人学校への貸し出しに反対する人たちが挙げている理由は次のようなものです。
  ・保育園などの「都民のための施設」を優先すべき。
  ・定員割れしていて必要もないのに、増設を希望している。
  ・韓国人学校だけ優遇されている。
  ・外国人学校の整備は都の長期ビジョンに掲載されていない。都はもともと課題として認識していなかったにも関わらず、韓国人学校の建設が進められている。
  ・学校のために特別支援学校の建設が中止になった。
  ・増設は韓国の高額な接待によって決まった。

 これらの「理由」のそれぞれに対し、具体的根拠を示して反論しているのが読むに値する記事の2つ目。「「韓国人学校は優遇されている」は本当か?――都有地貸し出しをめぐる誤認」と題した、吉田悠子さんという方がシノドスに書いた記事です。(→コチラ)
 たとえば、東京都は過去フランス政府からの強い要請によって、フランス人学校建設のため都立高校の跡地を売却したとのこと。「用地を有償で貸与するのか売却かという点を除けば、今回の韓国人学校をめぐる議論と同じである。しかしこの件でフランス人がヘイトスピーチの対象になっただろうか?」と吉田さんは問いかけています。(長い記事なので、内容はリンク先を直接見てください。)

 今回の都知事選には在特会の桜井会長も立候補していて、(当選したら)韓国人学校への敷地貸与中止は、彼としては当然。ところが自民党系の都知事候補2人(増田&小池氏)とも中止とは言わないまでも白紙化表明ねー。大体この問題一帯にプンプンたちこめているヘイトの臭いを自らすすんで浴びようという感じで、これは都民の皆さんナメられてるような・・・。もっとも、革新系統一候補の鳥越氏もこの問題については「具体的に知りません。それについて明確な答えは持っていないが、(知事の)任にあたることになったら、東京都民に納得いただける策を打ち出したいと思います」とナサケナイ発言。宇都宮健児氏は次のように記者の質問に答えていましたが・・・。
 韓国人学校に都の土地を利用させるのはけしからんという意見について、「韓国人学校だから」という点については、私は問題があると思っております。なぜなら、東京都は今から10年ぐらい前にフランス人学校に用地を貸し与えているんです。フランス人学校はよくて、韓国人学校はけしからんというのは、民族差別ですよ。ヘイトスピーチ対策法ができたばかりでしょ? ただ、そこの土地が韓国人学校に貸与するのに相応しい土地かどうか、片方で保育所とか特別養護老人ホームの建設のための用地が必要なのは間違いないことなので、その土地がそれに相応しいかどうかというのは検討する余地があると考えております。ただ一方的に韓国人学校の貸すのはけしからんという民族差別的な考え方には同意できません。
 ・・・と、少なくともこの問題についてはまともな主張をしていた宇都宮氏でしたが、下りざるをえなくなっちゃったんだよなー・・・。

 アラ、続けて<芥川賞候補作・崔実「ジニのパズル」と2000年の直木賞受賞作・金城一紀「GO」>とか、<最後まで出自を隠し通したやしきたかじん>とかについて書くつもりだったのが、例によって長くなりすぎなのでここまででオシマイにします。

 うーむ、本ブログとしてはめずらしく政治的意見(だろうな?)を鮮明に出しちゃったような・・・。

※公式サイト
  → ソウル日本人学校 ・・・・ほー、小6の修学旅行は雪岳山公園方面か。
  → 東京韓国学校
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韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [7月8日(金)~7月10日(日)]

2016-07-13 11:22:24 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
     

 シネマリンに「ひと夏のファンタジア」を観に行ったら、地元(五條)の撮影地マップ等の他に柿のお菓子をくれました^^。(上画像) 「かむほどに広がる 完熟柿の自然な甘み」なんて「カム(감)」が韓国語で柿ということを意識したわけではないですよね、もちろん。
 で、この映画ですがほぼ予測通りですがいろんな点で特異というか微妙というか・・・。監督が行き当たりばったりで仕上げた作品のようで、「巧んで」巧まざる映画らしく撮ったようにも思えるし、観る側も時に気になるような登場人物間の会話の「間」のぎこちなさを「自然な感じ」として肯定的に受けとめる(多くの?)人もいればその逆の人もいるようだし・・・。私ヌルボの個人的感想はその中間でした。<NAVER映画>で関連映画として「恋人までの距離〈ディスタンス〉」を挙げていたのは「なるほどねー」です。

 「暗殺」は7月16日から公開。康熙奉氏等による対談記事は→コチラ。本ブログのシリーズ記事<多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ)>は③(→コチラ)で止まったままになっちゃってますが、15日までには続きを書かなければ・・・。

 韓国では最近是枝裕和監督が注目されているようで、「奇跡〈2011年〉」、「そして父になる」に続いて7日からは「幻の光」の上映が始まりました。そういえば上記シネマリンでも「海よりもまだ深く」が上映中ですね。まだ観てないので行ってこようかな? あ、予告編でファン・ジョンミン主演の「ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~」をやってたな。7月30日~とのこと。
 
「朝鮮日報」7月8日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)
 「ファインディング・ドリー」
   心に欠落感を持つ皆に ★★★☆

 「ハンズ・オブ・ラヴ」

   どんな愛であれ正しい ★★★


 「ナイス・ガイズ」

   荒っぽいが憎めぬ奴ら ★★★

 「鳳伊 キム・ソンダル」

   まるで詐欺、騙されるな ★★

 「ハンズ・オブ・ラヴ」は、10年ちょっと前のアメリカの実話に基づく物語。長年刑事として働いてきた女性ローレル(ジュリアン・ムーア)はステイシー(エレン・ペイジ)という若い女性と出会って恋に落ち、その後2人は一緒に暮らし始めます。ところがローレルは末期がんを患い、余命は半年。彼女はステイシーに遺族年金を遺そうと思いますが、同性のパートナーには受給の権利はないとして認められません。そこでローレルは病と闘いながらこの既存の制度との闘いを始めます・・・。日本公開は11月26日。「ナイス・ガイズ」はアメリカの犯罪アクション・コメディ。1970年代のロスを舞台に、腕力で事件を解決する示談屋ジャクソン・ヒーリー(ラッセル・クロウ)と、シングル・ファーザーの私立探偵ホランド・マッチ(ライアン・ゴズリング)がポルノスターの死に関連した法務局長の娘の失踪事件に取り組むことに・・・って、銃撃戦あり、ヴァイオレンスありの上なんでお笑いまであるんですかねー? 他の2作品は下の記事中で紹介しています。

         ★★★ NAVERの人気順位(7月12日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】

①(1) ライフ・イズ・ビューティフル  9.38
②(2) オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン  9.33
③(-) 雨に唄えば  9.27
④(3)私たち(韓国)  9.24
⑤(-) ベン・ハー  9.23
⑥(4)アバウト・タイム~愛おしい時間について~  9.19
⑦(5) シーモアさんと、大人のための人生入門  9.16
⑧(-) 許されざる者  9.15
⑨(6) オーヴェという男  9.14
⑩(-) 小さな恋のステップ(韓国)  9.14

 ③⑤⑧⑩の4作品が新登場ですが、どれも旧作の再上映。これで新作は④⑦⑨の3作品だけになってしまいました。
 ③「雨に唄えば」は1952年公開のジーン・ケリー監督・主演のミュージカルの傑作。韓国題が「사랑은 비를 타고(愛は雨に乗って)」とは知りませんでした。
 ⑤「ベン・ハー」はアカデミー賞11部門受賞の1959年公開の歴史スペクタクル。韓国題は「벤허」です。
 ⑧「許されざる者」は1992年クリント・イーストウッド監督・主演の西部劇。韓国題は「용서받지 못한 자」です。
 ⑩「小さな恋のステップ」は、原題の「아는 여자(知ってる女性)」を見てわかりませんでした。2004年のチョン・ジェヨンとイ・ナヨン共演のラブコメ。私ヌルボは観てませんが、なかなか好評だったようですね。

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) トリコロール 青の愛  9.00(1)
②(2) キャロル  8.96(13)
③(3) ピアニスト  8.75(1)
④(4) ふたりのベロニカ  8.75(1)
⑤(-) ベン・ハー  8.75(1)
⑥(5) ライフ・イズ・ビューティフル  8.34(8)
⑦(6) ビフォア・サンライズ 恋人までの距離〈ディスタンス〉  8.25(2)
⑧(7) 哭声(韓国)  8.18(17)
⑨(8) 奇跡〈2011年〉(日本)  7.86(7)
⑩(9) そして父になる(日本)  7.82(10)

 新登場は⑤「ベン・ハー」だけです。これについては上述しました。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績7月8日(金)~7月10日(日)] ★★★

         日本より10日早く公開のアニメ「ファインディング・ドリー」が1位
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(23)・・ファインディング・ドリー・・7/06 ・・・・・・・・・・852,109・・・・・・・・・1,015,094・・・・・・・・・・8,432 ・・・・・・1,091
2(21)・・鳳伊 キム・ソンダル(韓国)・・7/06 ・・・・・・・779,201・・・・・・・・・1,048,391・・・・・・・・・・8,461・・・・・・・・942
3(1)・・グッバイ・シングル(韓国)・・6/29・・・・・・・・・・652,626 ・・・・・・・・・1,732,612 ・・・・・・・・13,978・・・・・・・・771
4(新)・・グランド・イリュージョン・・6/29 ・・・・・・・・・・196,987・・・・・・・・・・・197,970・・・・・・・・・・1,722・・・・・・・・412
       見破られたトリック
5(2)・・ターザン:REBORN ・・・・・6/29 ・・・・・・・・・・・119,796・・・・・・・・・・・813,365・・・・・・・・・・6,851・・・・・・・・481
6(6)・・死霊館 エンフィールド事件・・6/09・・・・・・・・・87,708 ・・・・・・・・・1,900,513 ・・・・・・・・15,533・・・・・・・・176
7(4)・・インデペンデンス・デイ・・6/22・・・・・・・・・・・・・34,005 ・・・・・・・・・1,488,415・・・・・・・・・12,678・・・・・・・・262
8(5)・・ジャングル・ブック・・・・・・・6/09 ・・・・・・・・・・・・27,603 ・・・・・・・・・2,530,972 ・・・・・・・・21,469・・・・・・・・201
9(59)・・残穢〈ざんえ〉 ・・・・・・・・・6/01 ・・・・・・・・・・・・24,774・・・・・・・・・・・・34,917 ・・・・・・・・・・・290・・・・・・・・280
       -住んではいけない部屋-(日本)
10(10)・・(500)日のサマー・・2010/1/21 ・・・・・・・・・・・23,159 ・・・・・・・・・・252,736 ・・・・・・・・・1,999・・・・・・・・127
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は1・2・4・9位の4作品です。
 1位「ファインディング・ドリー」は、2003年に日本公開され、大ヒットしたディズニー・アニメ「ファインディング・ニモ」の続編。前作では父マーリンがわが子ニモを捜す物語でしたが、今作は前作で活躍した忘れん坊のドリーがわずかに残る記憶をもとに生き別れた両親を捜すためニモとマーリン親子の協力を得て冒険の旅に出ます。が、人間に捕まって研究所に連れて行かれてしまい・・・。韓国題は「도리를 찾아서」。日本公開は7月16日です。
 2位「鳳伊(ポンイ) キム・ソンダル」は、韓国のアクション・コメディ時代劇。天才的な知力にルックスまで備えた詐欺師キム・ソンダル(ユ・スンホ)は、変装専門のポウォン(コ・チャンソク)と占い料強奪専門のユン・ポサル(ラ・ミラン)、有望な詐欺師の卵キョニ(シ・ウミン)と共にさまざまな奇想天外な詐欺行為を繰り返し、全国に名声を轟かしていました。ところが、朝鮮一の値打ち物のタバコを奪い取る準備をしていたソンダルたちは、その背後に権力者ソン・デリョン(チョ・ジェヒョン)がいることを知り、彼を騙すため大勝負を仕掛けます・・・。原題は「봉이 김선달」です。
 4位「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」は、「グランド・イリュージョン」(2013)の続編。前作で登場した凄腕マジシャンたちの“フォー・ホースメン“はイリュージョンショーで人を欺き、不正に搾取された金だけを奪い続ける集団でした。今回はラスベガスでショーを披露しつつ、はるか離れたパリの銀行から大金を強奪してみせる・・・。この驚くべき犯罪にFBIとインターポールは目をつけ、捜査を開始しますが・・・。韓国題は「나우 유 씨 미 2」。日本公開は9月1日です。
 9位「残穢〈ざんえ〉-住んではいけない部屋-」は、小野不由美の山本周五郎賞受賞ホラー小説が原作。好きな作家ですが未読で、映画も観ていないので、まずは図書館で本を借りて・・・と思いましたが、うげ、予約してる人が約80人も・・・。韓国題は「잔예 - 살아서는 안되는 방」です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・ベン・ハー・・・・・・・・・・・・・・・1972/9/07 ・・・・・・・・・・・・・・・7,099・・・・・・・・・・・・28,868・・・・・・・・・・・・・138 ・・・・・・・・・92
2(新)・・言の葉の庭(日本) ・・・・・・・2013/8/14・・・・・・・・・・・・・・・4,086・・・・・・・・・・・・58,762・・・・・・・・・・・・・422・・・・・・・・・・35
3(新)・・幻の光(日本)・・・・・・・・・・・・・・・・・7/07・・・・・・・・・・・・・・・・3,599・・・・・・・・・・・・・6,589 ・・・・・・・・・・・・・・52 ・・・・・・・・・36
4(2)・・私たち(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/16 ・・・・・・・・・・・・・・・2,658・・・・・・・・・・・・29,530・・・・・・・・・・・・・228 ・・・・・・・・・38
5(1)・・ボーン・トゥ・ビー・ブルー・・・・・・・・6/09 ・・・・・・・・・・・・・・・2,575・・・・・・・・・・・・85,952・・・・・・・・・・・・・695 ・・・・・・・・・18

 今回の新登場は、1・3位「ベン・ハー」については上述しました。
 3位「幻の光」は冒頭にも書きましたが最近韓国で人気の是枝裕和監督作品。韓国題は「환상의 빛(幻想の光)」です。←語感がちょっと違うんだよなー。
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北朝鮮レストラン従業員集団脱北その後 ②脱北者団体から逆に「究極の選択」を迫られた進歩系弁護士組織

2016-07-11 14:30:52 | 北朝鮮のもろもろ
1つ前の記事の続き。6月以降、事態はさらに「ややこしく」なってきました。

 ※青字の部分は新聞記事(日本語)の要約。黒字部分は私ヌルボの補足・感想等です。

【6月21日~その1】
 ★(進歩系弁護士組織の)民主社会のための弁護士会(民弁)が求めていた女性従業員12人に対する人身保護救済審査請求裁判が中止となった。ソウル中央地裁は女性従業員12人を出頭させるよう国情院に出席命令召喚状を送っていたが国情院は代理人の出席を主張しこれを拒否。裁判所は女性従業員が出頭しなくてもかまわないと態度を一変させた。
  この日女性従業員12人は法廷に出席せず、法定代理人である弁護士が出席した。民弁の弁護士らも法廷に出たが裁判所は審理の非公開を宣言、また録音や速記録の作成も禁止した。その状態で審理を終えようとしたが、民弁の弁護士らは「公開裁判の原則を破った」としてその場で忌避申立を行って対抗した。(参照→6月21日付「ハンギョレ」6月22日付「朝鮮新報」)
 ★民弁は、会見の場で「人身保護裁判は本来、公開して行われるものであるため、改めて公開裁判を要求する」との考えを示した。さらに「政府の方から(元従業員らが柳京食堂で働いていた)事実を先に公表しておきながら「裁判をすれば身元が明らかになる」などと今になって主張するのはおかしい」とした上で「(北朝鮮に残る)家族らが危険な状況に追い込まれるとすれば、これは韓国政府が責任を取るべき問題だ。家族が危険になるのは(元従業員たち)本人も甘受しているだろうが、本人の意志とは関係なく、帰順の事実が公表されることまでは甘受していなかったはずだ」と主張した。(参照→6月21日付「朝鮮日報」)

 ・・・・極力自分の主張は抑え気味で書くように努めているヌルボですが、この民弁の会見内容が事実だとすればオドロキです。「家族が危険になるのは本人も甘受しているだろう」などと平然と(?)発言していますが、娘の言動によってその家族が危険にさらされること自体がいかに人権をふみにじり民主社会に反することかという認識が欠落しているのでしょうか? 脱北した黄長燁(ファン・ジャンヨプ)元朝鮮労働党書記の家族は11親等の遠い親戚まで処刑あるいは収容所に収監されたそうですが、そんな前近代的な連座制を法の専門家としてどう考えているのか? 「家族の安全はわれわれが北朝鮮当局に強く働きかけて請け負うから」とは言えないだけでもナサケナイのに、家族に危害が及ぶことがあってもそれは韓国政府の責任とは無責任極まりない・・・って、もしかして保守紙「朝鮮日報」の伝え方の問題ですか?

【6月21日~その2】
★韓国政府当局者は北朝鮮レストランから脱出した13人の保護を決めたことを伝えた。
 これにより13人は脱北者の定着を支援するハナ院には行かず、保護施設に残り韓国社会への適応教育を受ける。
  脱北者は通常70日間保護施設に滞在した後ハナ院に移り12週間の教育を受けるが、今回の保護決定によって13人は通常の脱北者よりも保護施設の滞在期間が最長で6ヵ月長くなる見通しだ。※保護施設はハナ院よりもセキュリティー水準が高い。(参照→6月21日付「聯合ニュース」)

 ・・・・この「特例措置」を脱北者たちの保護とみるか、政府・国情院による監禁・事実の隠匿とみるか? なんという大きな認識の相違でしょうか? 国情院といえば数々の拷問や冤罪事件で怖れられたあの朴正煕時代のKCIA(中央情報部)→全斗煥時代の安全企画部の後継組織で、今ではずいぶん変わったとはいえ、進歩系の人たちにとっては依然として陰で暗躍して保守政権を助ける機関といったイメージが強いということもあるかもしれません。(あながち否定もできない?)

【6月21日~その3】
 ★与党(セヌリ党)の鄭鎮碩院内代表は党の会合で「民弁の主張は、北朝鮮によって完全に利用されたものだ」とした上で「(陳述の内容によっては)北朝鮮に残る家族たちが大きな危険にさらされる恐れがある」と指摘した。民弁が米国在住の親北韓国人ノ・ギルナム氏を通じ、元従業員らの家族から委任状を入手したプロセスについても問題視し、政府当局に対して徹底した捜査を行うよう求めた。野党・共に民主党はプレスリリースを通じ「中国の北朝鮮レストランからの集団脱北事件については徹底した検証が必要であり、外交統一委員会次元で多角的な努力を進めることにした」と明らかにした。(参照→6月22日付「朝鮮日報」)

 ・・・・ネタ元の「朝鮮日報」の見出しには「与野党議員が舌戦」とありますが、野党(共に民主党)の方は本文記事にもあるように「当面は今後の行方を見守るという意味合いに解釈できそう」ということですね。おそらく、党内にも親北朝鮮の色合いの濃淡があるのでは? (「色濃い人たち」の集まりだった統合進歩党は2014年12月解散させられてしまった前例もあるし・・・。)

【6月23日】
 ★複数の脱北者団体は記者会見を開き、民弁による人身保護救済審査請求は「従業員に対する干渉だ」と非難し、それは脱北者や北の住民たちの人権を助けるどころか、北に残っている家族の身体の自由、良心の自由、意思表明の自由を抑圧するものだと主張した。記者会見終了後、脱北者の人権を脅かしているとして、民弁をソウル中央地検に告発した。
  脱北者団体は告発状で「民弁は韓国の国家機関やその関連者の活動に対しては無条件に極度の疑いを持ちながらも、北の当局が介入した行為に対しては少しの疑いも提起しない偏向的で矛盾した行動を見せている」と主張した。(参照→6月23日付「聯合ニュース」)

 ・・・・いよいよここから新たな展開が始まりました。
 韓国にはすでに約3万人もの脱北者がいますが、北朝鮮での一般常識や生活様式と大きく異なる韓国社会では就職も困難で多くが厳しい生活を強いられています。そればかりか、以前(10数年くらい前まで?)はとくに北朝鮮を好意的に見る(主に進歩系の)人たちからは「北朝鮮で犯罪を犯して逃げてきたのでは?」とか「裏切り者」と見られたりしたこともあったそうです。(今も心の中でそう思っている人が相当数いるのか・・・。) そんなまさに人権の保護が必要とされる脱北者の団体が「民主社会のための」弁護士会を相手取って「人権を脅かしている」と告発するとは意外に思う人もいるかもしれませんが、以前からの韓国ウォッチャーにしてみれば「やっぱりなー」といったところです。
 ※在日2世で1960年「帰国船」で北朝鮮に渡り、2003年に脱北に成功した鈴木栄子さんはこの民弁の集会で発言したこと等を→コチラの7月4日付の記事<”民弁”の脱北者人身救済請求、このまま置くべきか>で記しています。「質疑応答の時間に発言権を得た私は北朝鮮は人権について口を開けるような国ではないし、北朝鮮とつながっている民弁もとんでもないことに手を貸していると話した」とのことです。また「もしも脱北してまだ何ヶ月にもならない人たちの家族の再会が論じられるならば北朝鮮帰国事業で北朝鮮へ行った人たちは55年が過ぎた今日までもどうして日本への往来が認められず、親兄弟にも会えないで死んでいっているのか?」とも。
 ※自身脱北者でもある「朝鮮日報」姜哲煥客員記者は、6月22日付「朝鮮日報」で<脱北従業員の人権を蹂躙する韓国の「民主派」弁護士団体>と題した記事(→コチラ)で、「13人の元従業員たちも平壌に残る家族を思えば当然夜も寝られないだろう。・・・金正恩政権は彼女らのこのような感情を悪用し、家族を逆に前面に出すことでその気持ちに揺さぶりをかけようとしているのだ。これは故・金正日総書記の時代には行われなかった手口だ」とし、「この国の一部の弁護士たちが、彼女らを法廷に立たせて真実を明らかにするなどと口にしている。これこそまさに人倫に反する極悪な犯罪行為に他ならない」と民弁を厳しく批判しています。

【7月1日】
 ★脱北者のグループが北朝鮮の強制収容所などに収監された家族らの救出を求め、裁判所に人身保護救済請求を求める文書を提出した。
  また朝鮮戦争の際に北朝鮮に連行され、最近になって生存が確認された被害者の家族も、同様の保護請求を求める計画だ。拉致被害者家族会は「政府が公式に認めた拉致被害者516人も全員が対象で、まずは平壌に住んでいることが確認された21人について請求を行いたい」と述べた。
  家族会などはこの日、民弁に今回の訴訟の弁護を要請したことも明らかにした。「民弁は韓国政府が脱北者を拉致したなどとして人身保護を請求したが、それなら逆に北朝鮮による拉致が正式に確認された被害者の弁護も当然引き受けるべきだ」と主張している。(参照→7月2日付「朝鮮日報」)

 ・・・・「朝鮮日報」の記事の見出しは<脱北者ら、韓国の民主派弁護士団体に意趣返し? 民弁に「北朝鮮の政治犯収容所にいる家族の救済」を要請>となっています。近頃の日本人でも知らない人がふつうにいそうな「意趣返し」といった言葉を使うとは、「朝鮮日報」にはなかなかの日本語の熟達者がいるものです。
 たしかに、韓国に拉致された(?)人たちの人身保護を請求するのであれば、脱北者たちの家族の身辺の安全を求めるのも正当な請求であり、また「(拉致された?)彼らを北朝鮮に返せ」というなら「北朝鮮に拉致された人たちを韓国に返せ」という要求を退けるわけにはいかないでしょう。とはいうものの、民弁の立場としては・・・。

 この記事の見出しで<逆に「究極の選択」を迫られた・・・>と書きました。
 究極の選択その1は、これまでの記事でもふれましたが具体的に書くと今回の脱北者(拉致被害者?)たちが直面した次のようなものです。
 彼女たちが公の場(法廷)で「自分の意志で脱北しました」と言えば北朝鮮の家族たちが危険にさらされ、(家族を救おうと)「拉致されて(orだまされて)来ました」と言えば(意に反して)自分が北朝鮮に戻らざるを得なくなる、ということ。
 この究極の選択その1は国情院の強権(?)により阻まれましたが、民弁は全然別の究極の選択2がわが身に降りかかってくることは予測していなかったのではないでしょうか?
 はたして民弁が家族の安否を心配する脱北者たちの要求を受け入れ、彼らの家族の人身保護請求を提出したり、拉致被害者の送還を求めるといった北朝鮮当局を困らせることができるでしょうか?
 それができればリッパだとヌルボは思いますが、できない(やらない)でしょう、たぶん。北朝鮮にとっては「裏切り者」の脱北者の弁護を引き受けると、民弁も(意に反して)北からは「裏切り者」になってしまいます。しかし脱北者や拉致被害者家族の要求を退けると「なんで拒否するのか?」との非難は当然出てくるわけで、その場合どんな理由づけをするのかがむずかしいところ。

 私ヌルボ、民弁の弁護士たちが望んでいた「かくあるべき展開」は次のようなものだと推測します。
  (1)12人の脱北従業員女性たちが「私たちは意に反して連れて来られた」と証言する。
  (2)この「拉致事件」は、総選挙で与党が有利になる材料とするため国情院が仕組んだ「企画脱北」であることが明らかになる。
  (3)従業員女性たちは北朝鮮に戻り、家族たちと喜びの再会を果たす。
 ・・・これでめでたく一件落着。
 もしかして、「この想定のどこが間違っているのか?」と本気で問い返す人は少なからず(4、5人に1人くらい???)いるかもしれません。
 要は、今の保守政権&国情院と北朝鮮のどちらがより信じられるか?といった点に帰着するのでしょうか?

 私ヌルボとしては、これまで何度か書いてきたことですが、韓国の進歩系の人たちの北朝鮮認識は相当に甘いと思っています。
 本ブログ6月24日の記事(→コチラ)で紹介した「国連北朝鮮人権報告書」は韓国では本になっていないし、その報告をまとめた国連北朝鮮人権調査委員会のマイケル・カービー委員長(当時)も北朝鮮の人権問題に対する韓国の無関心について講演・記者会見等の場で嘆きを込めて語っています。(→コチラの記事参照)

 以上、日本語の記事を中心に亡命事件(拉致事件?)のその後をたどってきました。私ヌルボの見解は上述のように民弁や進歩系メディアに批判的、いや、それ以上に「これはひどい!」とさえ思います。
 しかしそれはそれとして、本来的に正義感の強いと思われる進歩系の人たちがなぜそのように考えるのか?ということも冷静に探ってみたくて、いろいろ韓国の記事も読んでみました。たとえば、「朝鮮日報」の記事1つ1つに具体的に反論している「オーマイニュース」の記事(→コチラ)等。

 今後のことですが、もしかして、左右両派間で少なくとも韓国・北朝鮮を問わず拉致・監禁や連座処罰等のないようにすることを確認しあうとか、家族が圧力や干渉等を受けず彼らだけで会えるよう第三国に場所を設定する等の合意はできないものでしょうか?(それでさえも不安は残りますが・・・。) もっとも、双方とも相手を信頼していないし、一般に韓国では「妥協=敗北」という感覚があるようなので、実現可能性はゼロに誓いでしょうが・・・。
 とりあえずは究極の選択の逆襲を受けた民弁の判断に注目。すでに7月8日には脱北者団体の会長を含む3人と面談をしたことまでは報じられています。
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北朝鮮レストラン従業員集団脱北その後 ①「拉致」の可能性? 本人の意志確認をめぐりまたも左右の確執が激化

2016-07-09 23:08:33 | 北朝鮮のもろもろ

 このテーマで私ヌルボが長々しく、それも2回に分けて書く記事を、「こんなクダクダしい文章を読む気にはならない」と思われる方は、<livedoor'NEWS>に「北朝鮮レストラン従業員亡命劇、韓国メディアで論争=「政治的思惑」の疑念消えず」という見出しの実にサラ~と手際よくまとめた記事(→コチラ)があるので、せめてそちらの方でも目を通してて下さい。

 4月7日中国・寧波の北朝鮮食堂の支配人(男性)と12人の女性従業員が韓国に亡命したことは日本の主要紙でも報じられましたが、4月9日の「朝日新聞」(→コチラ)等、国際面に2~3段程度の小さな扱いでした。一方、「朝鮮日報」は上画像のように9日1面トップで大きく報道しました。(2面トップにも。) 他紙は見ていませんが、代表的保守紙ということで大きく載せたのかもしれません。これだけの大人数がまとまって脱北したのは異例のことでしたが、この「事件」をめぐるその後の北朝鮮の反応もあり、また韓国内では例によっての進歩陣営と保守陣営間の対立が深刻化し、それぞれのメディアだけでなく脱北者団体等も登場し、政治の場でも問題化しつつある状態に至っています。
 以下、何がどう問題になっているか、彼等13人の韓国入国から今までの経緯を日を追って見ていきます。
 ※青字の部分は新聞記事(日本語)の要約。黒字部分は私ヌルボの補足・感想等です。

【4月7日】
★2日前(5日)、中国の浙江省寧波にある北朝鮮レストラン・柳京食堂から脱出した従業員13人(女性店員12人、男性支配人1人)が集団亡命し、4月7日韓国に入国した。


 ・・・・翌8日統一部(省に相当)がこれまでの慣行を破り、脱北者の入国直後事実を公表したことについては、4月13日の総選挙で政権側(保守陣営)が有利な材料となることをねらったものという見方がある。進歩系メディアだけでなく、保守系の「中央日報」も6月21日の社説(→コチラ)で批判しています。また4月11日には2015年5月にアフリカ駐在の北朝鮮外交官一家4人、同年7月に北朝鮮の偵察総局出身大佐が韓国に亡命していたことを記者会見で明らかにしています。(参照→4月11日付「ハフィントンポスト」吉野太一郎氏の記事)
 ※選挙前にしばしば流される北朝鮮に否定的なニュースは「北風」とよばれ、北朝鮮に厳しい姿勢をとる保守陣営に有利に働くと見られてきました。しかし今回の総選挙の結果は大方のメディアの予測に反して保守陣営(セヌリ党)の敗北に終わりました。
 なお、この集団脱北以前に韓国に亡命した北朝鮮レストランの女性従業員は過去2人いました。1人目は2004年母・妹の3人で脱北し、ポペラ歌手として知られるミョン・ソンヒ(명성희)さん。(彼女がTV番組中で歌った場面は→コチラ。) 長春の北朝鮮食堂で歌手として働いていたことがあったとか。そして2人目は、上海の北朝鮮食堂元従業員で、ソウル大出のエリート社員と熱愛の末脱北したXさん。私ヌルボ、たまたま最近「新東亜」の6月号を読んでいたら彼女のインタビュー記事があって知りました。脱北の時期も本名もその記事では伏せています。

【4月21日】
北朝鮮赤十字社中央委員会が13人の送還を求めた。特に必要ならば北朝鮮の家族を板門店またはソウルに派遣して亡命者と会わせると明らかにした。また「我々の正当な要求を拒めば、集団誘引拉致行為を自ら認めることになるだろう」と主張した。柳京食堂で一緒に働いていた20代の女性従業員7人は、この日放映されたCNNインタビューで「仲間は支配人にだまされて韓国に連行された」と主張した。首席従業員チェ・ヘヨンさんは「韓国で苦労する仲間のことを考えると胸が張り裂ける」と涙を流した。CNNは18日平壌・高麗ホテルで彼らに会ったと報じた。 (参照→4月22日付「中央日報」)


 ・・・・このあたりまでは「想定内」ですね。ある韓国記事には、「上海の北朝鮮食堂で従業員が1人いなくなったが、店長は上部に報告せず必死で探している」といったことが書かれていました。もし韓国で13人の集団脱北が報道されなければ、北朝鮮が事実を知ったとしてもこのようなメディアを通じての抗議をやったでしょうか?

【5月3日】
平壌で脱北した従業員の同僚や残された家族による合同記者会見が開かれた。元従業員は「今回の事件は南側(韓国)が計画した組織的な拉致行為」などと訴え、事件の朝、韓国側が仕向けた「誘拐バス」から間一髪で逃れた場面まで描写して見せた。また家族たちは、「すべては保衛指導員(秘密警察)の監督不行き届きのせいだ」として当局を強く非難した。(参照→5月4日付「デイリーNK日本」の記事・→5月13日付「デイリーNK日本」・高英起氏の記事)


 ・・・・元従業員の発言の中に、「食堂の支配人がバスに乗ってきた連中の1人に近寄って「国情院チーム長と呼びながらぺこぺこするのを直接目撃することになった」とか「(国情院の)要員らは、バスに乗った友だちだけを連れてあわただしく逃げた」などとあります。以前延吉で食堂を運営していた時から支配人と謀議をこらしていた人物とのことですが、それが事実だとすると、かなり早い段階から国情院(韓国国家情報院)が関わっていたということになり、それはたしかに問題を含んでいそうです。
 しかし、北朝鮮が「拉致」を非難するとは、多くの日本人にとっては「一体どの口が言ってかだ!?」といったところですね。元同僚の女性たち、これまで12人の数十倍もの韓国人・日本人等が北朝鮮によって拉致されていることを知ったらどう思うでしょうか?
 北朝鮮がこのようにメディアに脱北者の家族等を登場させて韓国側を非難するということはしばらく前から行われてきました。あるいは、1度は脱北した人が再び北に戻り、TVで「南朝鮮はひどいところだった」と語る等々。ただ、そこには北朝鮮当局がなんらかの脅し(「家族の安全」とか)をかけてそのように言わせたり、本人が状況を把握し、そう語ることによって保身を図ったり、といったことも十分考えられるので、話された内容がどこまで真実かは疑問。

【5月19日】
★アメリカ市民権を持つ親北朝鮮的な在米韓国人ノ・ギルナム氏が、自身が運営するニュースサイト「民族通信」で脱北ウェイトレスたち12人の顔写真・実名・生年月日を公開した。また同通信は「この中のソ・キョンアさんが「家族のもとに返して欲しいとのハンガーストライキを行う中で、死亡したことが確認された」と報じている。
 同通信によれば、北朝鮮に残された家族たちは韓国の民主社会のための弁護士の会(民弁)に本人たちとの接見を委任したが、国情院はその接見要求を拒否しているという。(参照→ 「デイリーNK日本版」)


 ・・・・ノ・ギルナム氏(72?)は北朝鮮を60回以上訪問したという親北人士で、2008年には金日成大学で博士号を取り、2014年には金日成賞を受賞したとのこと。同年10月の「東亜日報」の記事(→コチラ)では、「脱北者を含めた金正恩政権の人権弾圧には、なぜ目をつむるのか」との質問に対し「北朝鮮にはなんら人権問題など無い」と答えています。
 もしソ・キョンアさんが「民族通信」の報じるようにハンストの末に死亡したとするとゆゆしき問題です。しかし、韓国メディアも(たぶん)知り得ないことがなぜ「わかる」のでしょうか? なお、→6月20日付「朝鮮日報」は、大韓弁護士協会が推薦した国情院人権保護官の弁護士パク・ヨンシク氏の「従業員たちは北朝鮮に残してきた家族や自分たちの安全を懸念し(個人情報や発言内容が)外に出ることを絶対に望んでいない」、(従業員の一部がすでに死亡したとのうわさについて)「そんなデマを信じるのか」、「13人は全員が健康に過ごしている。そのことだけは明確にしておきたい」という発言を伝えています。
 上記のように、北朝鮮と直接パイプを持つノ・ギルナム氏を通じて民弁が北朝鮮の家族たちから委任を受けること自体も問題のタネになりそう・・・どころか、この後実際に問題とされています。

【5月24日】
★民主社会のための弁護士会(民弁)は、北朝鮮離脱住民保護センターに収容されている女性従業員たちとの面会を求めてきたが、センターを管轄する国情院はこれを拒否してきた。そこで民弁はこの日女性従業員の家族から委任を受け、ソウル中央地裁に女性従業員12人に対する人身保護救済請求を行った。その家族からの委任状は、前述のように米国在住のノ・ギルナム氏を通じて入手したものである。
 ※「人身保護救済審査請求」とは、違法な行政処分や他者の意志によって不当に施設などに収容された被害者の基本権を保障するため、裁判所に被害者の救済を求める手続き。(参照→6月22日付「朝鮮新報」その他)


 ・・・・「朝鮮新報」は、朝鮮総聯の機関誌だけあって、記事の見出しからして「集団拉致事件、女性従業員の裁判が中止に/国情院、裁判所の出頭通知を拒否」ですからね。

 さて、ここまでが4月の事の発端からの3ヵ月の前半部分。後半の6月以降は、さらにドラマチックな展開になっていきます。

 上掲の「新東亜」6月号のインタビュー記事で、今回の出来事の感想を問われた元従業員のXさんは、「家族のことが一番気懸り」、「13人が一緒に大胆な決断をした点については釈然としない、何かウラがある」、そして「メディアに脱北の事実を公開したのは本当に政府の誤り。北に残された家族が被害を受けるのです」と答えています。
 私ヌルボも同感で、最初に政府が大きなミスを犯し、その上に進歩系弁護士団体(とメディア)がどんどん事態を悪化させているように思われます。

☆直接上記の記事内容とは関係ないことですが、日本・韓国の記事で美人従業員」という言葉を用いているものが多いことが気になりました。いかにも「男目線」です。単に「女性従業員」でいいではないですか。

 → 北朝鮮レストラン従業員集団脱北その後 ②脱北者団体から逆に「究極の選択」を迫られた進歩系弁護士団体
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韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [7月1日(金)~7月3日(日)]

2016-07-06 15:05:49 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 1つ前の記事→<2016年版 韓国の映画ファンが選んだ「好きな俳優」「演技力のある俳優」のベスト5>にもちょいと目を通してみて下さい。

 シネマ・ベティで観た「王の運命-歴史を変えた八日間-」(原題:「思悼(サド)」)は至極まっとうな歴史劇でした。「ハッタリがない」ということ。韓国の歴史ドラマファンにはおなじみの例の思悼世子の米びつ閉じ込め事件を扱ったものなので、もしかしたらまた老論vs少論の党争がグジャグジャと展開されるのかと思ったら、それよりも父・英祖(ソン・ガンホ)と思悼世子(ユ・アイン)父子間の心理的葛藤に主軸が置かれていて、後でちょっと調べたら、党争よりもむしろこうした解釈の方がこの頃優勢のようなんですね。また、思悼が子供の頃の父とのやりとり等々のディテール(ex.「絹はぜいたくで・・・」)も史料にちゃんと載っていることだとは・・・。※ネタ元はいつもの→<ナムウィキ>です。

 「ひと夏のファンタジア」、ユーロペースは21:00~の1回だけだし、どうしたもんかなーと思っていたら、関内の横浜シネマリンで7月9日(土)から上映とはラッキー! コチラは10:30~。
 
「朝鮮日報」7月1日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)
 「グッバイ・シングル」
   家族の誕生、まずは慶祝 ★★★


 「ターザン:REBORN」

   傷はないけど興もない ★★★

 「ハングリー・ハーツ」

   俳優の演技が欠点隠す ★★★


 「私たちの恋愛の履歴」

   ヘビンの魅力が花開く ★★☆

 「狩り」

   面白くもない追跡劇 ★★


 「セル」

   別に怖くないゾンビ物 ★★

 「ハングリー・ハート」は、2014年の東京国際映画祭で上映されたイタリア映画。ニューヨークを舞台に子育てをめぐって葛藤する夫婦の姿を描いた作品。詳細は→コチラ「私達の恋愛の履歴」は韓国のラブロマンス。再起を願う女優ヨニ(チョン・ヘビン)と映画監督志望の演出助手ソンジェ(シン・ミンチョル)は別れた後も同僚&友人として関係を続けます。その後2人が共同で制作したシナリオが映画化される機会が訪れますが、そこで2人の関係は予想もしなかった危機にぶつかります・・・。「セル」は、スティーブン・キングの同名の原作(新潮文庫)の映画化。ボストンのある秋の日の午後、謎の強力な電波によって、携帯電話を使用していたすべての人々が一瞬にして怪物へと変貌してしまいます。クレイ(ジョン・キューザック)は、離れ離れになった家族と再会するために危険な旅に出ます・・・。の3作品は下の記事中で紹介しています。

         ★★★ NAVERの人気順位(7月5日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】

①(1) ライフ・イズ・ビューティフル  9.38
②(2) オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン  9.33
③(-) 私たち(韓国)  9.26
④(-)アバウト・タイム~愛おしい時間について~  9.19
⑤(4) シーモアさんと、大人のための人生入門  9.16
⑥(5) オーヴェという男  9.12
⑦(6) ムーラン・ルージュ  9.12
⑧(7) 太陽の下  9.05
⑨(8) シング・ストリート 未来へのうた  9.03
⑩(-) ルーム  8.99

 入れ替わりがありましたが、今回も新登場の作品はありません。今回も新作と旧作はちょうど半々。

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) トリコロール 青の愛  9.00(1)
②(2) キャロル  8.96(13)
③(3) ピアニスト  8.75(1)
④(4) ふたりのベロニカ  8.75(1)
⑤(6) ライフ・イズ・ビューティフル  8.34(8)
⑥(7) ビフォア・サンライズ 恋人までの距離〈ディスタンス〉  8.25(2)
⑦(8) 哭声(韓国)  8.18(17)
⑧(-) 奇跡〈2011年〉(日本)  7.86(7)
⑨(-) そして父になる(日本)  7.82(10)
⑩(10) ひと夏のファンタジア(日本・韓国)  7.79(12)

 新登場は⑧「奇跡〈2011年〉」だけです。同じ是枝裕和監督作品でも、⑨「そして父になる」と比べると評価は今イチだったような・・・。ヌルボも観てません。韓国題は「진짜로 일어날지도 몰라 기적(本当に起こるかもしれない奇跡)です。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績7月1日(金)~7月3日(日)] ★★★

         キム・ヘス主演のコメディ「グッバイ・シングル」が1位
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(38)・・グッバイ・シングル(韓国)・・6/29・・・・・・・・・652,626・・・・・・・・・・・908,630・・・・・・・・・・7,333・・・・・・・・839
2(新)・・ターザン:REBORN ・・・・6/29 ・・・・・・・・・・・405,824・・・・・・・・・・・552,175・・・・・・・・・・4,697・・・・・・・・593
3(新)・・狩り(韓国) ・・・・・・・・・・・・6/29・・・・・・・・・・・・298,678・・・・・・・・・・・533,397・・・・・・・・・・4,047・・・・・・・・690
4(1)・・インデペンデンス・デイ・・6/22・・・・・・・・・・・・189,964 ・・・・・・・・・1,392,681・・・・・・・・・11,917・・・・・・・・508
       :リサージェンス
5(2)・・ジャングル・ブック・・・・・・・6/09 ・・・・・・・・・・・179,335 ・・・・・・・・・2,477,629 ・・・・・・・・21,041・・・・・・・・588
6(4)・・死霊館 エンフィールド事件・・6/09・・・・・・・・・86,127 ・・・・・・・・・1,813,466 ・・・・・・・・14,828・・・・・・・・353
7(3)・・特別捜査 死刑囚の手紙(韓国)・・6/16・・・・・81,278 ・・・・・・・・・1,198,139・・・・・・・・・・9,595・・・・・・・・409
8(5)・・アガシ(韓国)・・・・・・・・・・・・6/01 ・・・・・・・・・・・・61,558・・・・・・・・・4,215,244・・・・・・・・・34,642・・・・・・・・361
9(7)・・ミー・ビフォア・ユー ・・・・・・6/01 ・・・・・・・・・・・・44,155 ・・・・・・・・・・870,393 ・・・・・・・・・7,069・・・・・・・・184
10(19)・・(500)日のサマー・・2010/1/21 ・・・・・・・・・・・38,771 ・・・・・・・・・・201,577 ・・・・・・・・・1,567・・・・・・・・156
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は1・2・3・10位の4作品です。
 1位「グッバイ・シングル」は、人気断トツの(※1つ前の記事参照)キム・ヘス主演のコメディ。トップスターのチュヨン(キム・ヘス)は数々のスキャンダルの主。(チュヨンという名前は<主演>と同じ。) しかし次第に落ちていく人気とボーイフレンドの裏切りにショックを受け、永遠の味方を作るため立てた計画というのが→なんと妊娠発表。全国民的なこの独身スターのスキャンダルに、チュヨンの親友でありスタイリストのピョング(マ・ドンソク)と所属事務所のスタッフは後始末に追われます・・・。肩の凝らない楽しい映画のようですね。原題は「굿바이 싱글」です。
 2位「ターザン:REBORN」は、あのターザンの「その後の物語」か。ジャングルで動物たちに育てられたターザンですが、英国貴族として裕福な暮らし送っていたところ、政府の命により外交のため故郷へ戻ることに。しかしそれが罠だったとは・・・。それにしても、最初のターザン映画が1918年ということは第1次大戦の頃。1世紀も前なんですね。有名なターザン俳優ワイズミューラーは1930年代か。たしか映画「風の中の子供」(1937)もあの叫び声を上げていたような・・・。そして60年代の子供も。(今の子供はどうなのかな?)韓国題は「레전드 오브 타잔」。日本公開は7月30日です。
 3位「狩り」は韓国のアクション。人気の少ない山で金脈が発見され、金が出たという話を偶然聞いたドングン(チョ・ジヌン)は怪しい猟師を連れて山に登ります。人生大逆転の機会を迎えた喜びもつかの間、そこの土地の持ち主の老婆が現れ、口論の果てに老婆は崖から転落してしまいます。一方、過去の炭坑崩壊事故の後遺症に悩まされていたキソン(アン・ソンギ)は、それでも毎日のように山に入って猟をしていましたが、ある日山崩れのために入山禁止となっている山で怪しい猟師の姿を発見し、後を追うと・・・。そう、偶然その転落事故現場を目撃することに・・・。原題は「사냥」です。
 10位「(500)日のサマー」は、2010年のアメリカ映画の再上映。韓国題は「500일의 썸머」です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・ボーン・トゥ・ビー・ブルー・・・・・・・・6/09 ・・・・・・・・・・・・・・・4,611・・・・・・・・・・・・80,467・・・・・・・・・・・・・648 ・・・・・・・・・33
2(3)・・私たち(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/16 ・・・・・・・・・・・・・・・3,961・・・・・・・・・・・・23,722・・・・・・・・・・・・・183 ・・・・・・・・・41
3(2)・・炎のランナー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/16 ・・・・・・・・・・・・・・・3,783・・・・・・・・・・・・33,227・・・・・・・・・・・・・215 ・・・・・・・・・36
4(4)・・シング・ストリート 未来へのうた・・5/19・・・・・・・・・・・・・・・1,691・・・・・・・・・・・556,515 ・・・・・・・・・・・4,458 ・・・・・・・・・17
5(新)・・ガラスの花と壊す世界(日本) ・・・4/21・・・・・・・・・・・・・・・1,556・・・・・・・・・・・・・8,028・・・・・・・・・・・・・・・50・・・・・・・・・・2

 今回の新登場は、5位「ガラスの花と壊す世界」だけです。この【多様性映画】には日本アニメ枠といったものがありそう。つまり確固たるファン集団がいるということ。この作品、ヌルボは予告編しか観てないので(例によって)コメントする資格ナシ。韓国題は「유리의 꽃과 부수는 세계」です。
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2016年版 韓国の映画ファンが選んだ「好きな俳優」「演技力のある俳優」のベスト5

2016-07-05 19:41:13 | 韓国映画(&その他の映画)
 2011年7月の<韓国の映画ファンが選んだ「好きな俳優」「上手い俳優」「優れた監督」のベスト5を見て・・・・>(→コチラ)と、2014年5月の<2013年版 韓国の映画ファンが選んだ「好きな俳優」「上手い俳優」「優れた監督」のベスト10>(→コチラ)の後続記事です。2014年「朝鮮日報」の関係記事を探したものの見当たらなかったのですが、最近になって映画専門メディアのマックスムービーと「朝鮮日報」が共同主催して毎年この調査を続けていることを知りました。

 さて、この2016年版ですが、2015年5月~2016年4月の1年間で1回以上映画館での観覧経験のある観客を対象に5月9~15日メールアンケートを実施し、10,286人の観客の回答の結果をまとめたもの、とのことです。

  好きな俳優
男優   ※元記事は→コチラ
 1位 ファン・ジョンミン 13.7%
 2位 ソン・ガンホ     12.2%
 3位 ハ・ジョンウ     10.8%
 4位 カン・ドンウォン   6.1%
 5位 イ・ビョンホン    4.0% 
女優  ※元記事は→コチラ 
 1位 キム・ヘス     25.9%
 2位 チョン・ジヒョン   12.8%
 3位 チョン・ウヒ     11.5%
 4位 チョン・ドヨン     6.8%
 5位 ソン・イェジン    5.4%

  演技力がある俳優
男優  ※元記事は→コチラ
 1位 ソン・ガンホ     24.1%
 2位 ファン・ジョンミン  17.6%
 3位 チェ・ミンシク     8.6%
 4位 イ・ビョンホン     8.3%
 5位 ハ・ジョンウ      7.2%  
女優   ※元記事は→コチラ
 1位 キム・ヘス      25.5%
 2位 チョン・ドヨン     19.8%
 3位 チョン・ウヒ      12.6%
 4位 ユン・ヨジョン     4.7%
 5位 チョン・ジヒョン    4.3%  

 以下、私ヌルボの補足&感想。
 
 【好きな俳優】【演技力がある俳優】《男優》は、至極当然の顔ぶれ。中でもファン・ジョンミンは「国際市場」(2014)以後「ベテラン」(2015)・「ヒマラヤ」(2015)・「検事外伝」(2016)・「哭声」(2016)と驚異の連続大ヒットですからね。ハ・ジョンウの連続ヒットもファン・ジョンミンには及ばすといったところ。【好きな俳優】部門でトップを続けていたソン・ガンホもファン・ジョンミンにその座を奪われたとはいえ演技力は誰もが認めるところで、今回で3年連続1位。「王の運命-歴史を変えた八日間-」(原題:「思悼(サド)」では、英祖の<威厳ある王>と<息子の教育に悩む父>という両面をさすがの風格で演じていました。
 おなじみのイ・ビョンホンは「インサイダーズ/内部者たち」(2015)、カン・ドンウォンは「検事外伝」(2016)という大ヒット作が多くの映画ファンの印象に残ったのでしょうね。(前者は日本でも公開されましたが、おもしろかったにもかかわらずさほど話題にならなかったのが残念でした。)
 好きな俳優の6~10位は、6位がチョ・ジヌン。彼も2015年の「チャンス商会」「暗殺」、今年に入って「アガシ」等、注目作に続けて出演しています。続いてコン・ユ、チョン・ウソン。コン・ユは今年2月チョン・ドヨンと共演した「男と女」が公開されました。そして若手のユ・アインとソン・ジュンギ。ユ・アインは「ベテラン」、「王の運命-歴史を変えた八日間-」と続けて精神に変調をきたして目が泳いでいる若者を演じていました。その印象が強くて、ヌルボとしては5年前の「ワンドゥギ」の彼のことが思い出せません。(笑) ソン・ジュンギは今話題のドラマ「太陽の末裔」で人気沸騰のようですね。映画では今ファン・ジョンミンやソ・ジソプも出演する「軍艦島」の撮影中だそうです。(公開は2017年。) なお、チョ・ジヌンとユ・アインは演技力の部門でもベストテン入りしているようです。あとドラマ「未生」で注目されたイ・ソンミンも。

 《女優》では、両部門でトップ、それも他の追随を許さないほどのキム・ヘスの強さが目立っています。とくに【好きな俳優】部門では4年連続。ただ、私ヌルボは彼女の映画は「2階の悪党」等少ししか観てなく、あまり印象に残ってないのですが・・・。彼女は映画もさることながらドラマによく出ていて、とくに今年1~3月tvNで放映された「シグナル」は相当な人気だったようで、そこらへんがこの高順位の理由かも・・・。
 あいかわらずベテラン女優の名前が目につきますが、その筆頭は演技力がある俳優中のユン・ヨジョン先生。最近では日本でも最近公開された「チャンス商会 ~初恋を探して~」(2015)で堂々の主演。またホン・サンス監督の「今は正しいがその時は間違いだ」にも出演していました。
 チョン・ドヨン、ソン・イェジンと共に10年以上前からおなじみのチョン・ジヒョンは、2015年は何といっても「暗殺」のヒロインを演じて人気が再燃しましたね。
 そんな30代以上のベテラン女優がずらっと並ぶ中、例外ともいえる若手女優で両部門3位にランクインしたのがチョン・ウヒです。
 彼女に関するニュースで思い出すのが2014年12月の青龍映画賞の授賞式。「ハン・ゴンジュ 17歳の涙」というマイナーな映画に出演した彼女が‘破格中の破格’で女優主演賞を受賞し、「感激のあまり号泣!」したというもの。(→コチラ参照。)※右画像は韓国映像資料院の「ハン・ゴンジュ 17歳の涙」関係の展示物。今年に入ってからは「解語花」、「哭声」と注目作に相次いで出演し、1年余りの間にすっかりメジャーの人気女優になりましたね。
 なお、演技力がある俳優部門で昨年まで3年連続1位だったチョン・ドヨンは、昨年~今年は出演作の興行成績が伸びなかったことが響いたようだ、との分析です。

 キム・ヘスの突出した人気以外は総じて想定内の結果と言っていいでしょう。ただちょっと残念に思ったのは、人気監督の部門が探しても見当たらなかったことです。

★「朝鮮日報」の関連記事<韓国の映画館でも増える「お一人様」映画鑑賞>は→コチラ。上記のアンケート調査についても概観しています。
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3冊(+α)チェーンリーディング② 大正時代の詩人アナーキスト中浜哲が朝鮮に行った理由

2016-07-03 16:16:52 | 韓国・朝鮮に関係のある本
         

 5月15日の記事(→コチラ)で卞宰洙(ピョン・ジェス)「朝鮮半島と日本の詩人たち」(スぺース伽耶)を紹介しました。その本で取り上げられている詩人90人の中で、名前からして知らなかった約40人中の1人が中浜哲です。

 その本に掲載されている詩は「何處へ行く?」と題された詩の一部です。

  髭の凍る冬の晨だつた
  京城の裏長屋を借りて住んで居た
  『久さん』は漢江へスケートと魚釣りを見に出掛けた
  『鐵』は朝鮮芝居の楽屋へ潜り込んで行つた
  『大さん』は辦當を携へて圖書舘へ通つた

  オンドルは無かつたが
  アンカは有った
  三人は其日の収穫を語り合つた
  朝鮮の夜は重苦しかつた

   (※文字の表記は上右画像の「中浜哲詩文集」(黒色戦線社.1992年刊)に拠る。)

 つまり、この詩の一節は中浜哲が自身を含め3人で朝鮮・京城にいた時のことを回想したものです。
 この詩についての記事は→コチラの<朝鮮新報>のサイトで読むことができます。
  ※題の「何處へ行く?」が「何故へ行く?」になっていたり、「『大さん』は~」の1行が抜けているので要注意。
 その説明にもあるように、『久さん』は和田久太郎、『鐵』は中浜哲(本名:富岡誓(ちかい)、『大さん』は古田大次郎です。(大二郎も誤り。)
 では、中浜たちは何のために朝鮮に行ったのでしょうか?

 卞宰洙さんの説明文には彼らが「1920年代の無政府主義者」だったこと、そしてこの詩の一節は「朝鮮に身を避けていた時期を描いたもの」とは記されていますが、一体何から身を避けていたのか書かれていません。もう少し詳しく知りたいと思い、図書館で関連書を探してみると、意外なほど多くの本が出ていました。

 たとえば竹中労「黒旗水滸伝 大正地獄篇(下)」(皓星社)には、かわぐちかいじによる次のような挿画がありました。
      
 ちょうど上掲の詩に相応するような中浜・古田・和田の3人が京城の街を歩いている絵です。描いたのは(あの「沈黙の艦隊」の)かわぐちかいじです。ただ、「朝鮮憲兵隊司令官」福田雅太郎という肩書は間違いだし、彼を暗殺するべく海を渡ったというのも事実とは異なるのですが・・・。
 この本のキャッチコピーを見ると「あの竹中労と若き日のかわぐちかいじが描く! 革命家、美女・妖女、テロリスト、大陸浪人、快人・怪人が織りなす大正アナキズムの世界。」とあります。私ヌルボ、竹中労の本を読むのは何年ぶりか・・・。いやあ、やっぱり情熱とパワーのこもった本です。この下巻は、歴史教科書の見出しにふつうにある「大正デモクラシー」という微温的な(?)言葉からイメージされる大正後期の社会とは違い、テロが頻発する殺伐とした時代像を描き出しています。(竹中労は、60年代後期の学生・労働者運動の高揚と、この大正時代後期を重ね合わせていたのですね。)
 ★テロ事件の例 1921(大正10)年 9月28日 国粋主義者朝日平吾により安田善次郎暗殺。
              同年11月 4日 中岡艮一により原敬首相暗殺。
         1923(大正12)年12月27日 社会主義者難波大助皇太子・摂政宮(後の昭和天皇)を狙撃。(虎ノ門事件)
                     ※この事件は、ちょうど中浜や古田が京城に来ていた時に起こった。

 基本的なことですが、彼らが属していた組織は1922年中浜哲が中心になって結成したfont color="scarlet">ギロチン社という組織です。なんとも穏やかではないこの名は「首になった人間の集まりだから」(「中浜哲詩文集」中の倉地啓司「ギロチン社」)という意味とのことです。ギロチン社について高校日本史の教科書には載っていません。中浜哲が1922年10月古田大次郎たちとともに結成した無政府主義の結社です。中浜はすでに単独で同年4~5月来日中のイギリス皇太子の暗殺を計って御殿場・岐阜・京都・神戸とピストルを持って追うものの機を逸して失敗しています。

 私ヌルボ、このギロチン社関係の本をいろいろ漁ってみて知ったのは、中浜哲以外にも優れた文才・詩才を示したメンバーが実に多かったこと。古田大次郎は後に死刑に処せられる前に遺書として書いた「死の懺悔」が数十版を重ねるベストセラーとなり、和田久太郎は飄然とした俳句を作る人で、松下竜一「久さん伝」(講談社)や正津勉「脱力の人」(河出書房新社)等で好意的にとりあげられています。
 ※これらの人々については「日本アナキズム運動人名事典」にかなり詳しく説明されています。また→コチラのサイトは日本(&朝鮮)のアナキズム関係の人物・運動・組織について驚くほど多くの情報を提供しています。

 ギロチン社の資金源は、いわゆる<リャク>でした。掠奪の「掠」。つまり大会社に対する強請(ユスリ)で、とくにハッタリが強く弁舌に巧みな中浜が指南役となり、三井・岩崎・古河・安田等の富豪や三越・高島屋等の百貨店、満鉄・芝浦製作所・日本ビール等の大会社から平均20~30円程度、多い時には200~300円をせしめていました。ただ、そのほとんどは生活費と遊興費に費消されたのですが・・・。
 このような<リャク>の時も、またメンバーたちが私娼窟に繰り出す時も仲間に加わらなかったのが古田大次郎でした。早稲田大出身(中退)でテロリストの道を自ら選びながらもまじめでピュアな一面を持ち合わせていた人物で、対照的な性格の中浜とは無二の親友といった間柄でした。そんな彼が関東大震災が起こった翌月の1923年10月はからずもギロチン社による最初の(そして最後の)殺人にはからずも手を染めてしまったのは皮肉なことでした。
 それは古田が小川義雄、内田源太郎とともに大阪の第十五銀行玉造支店小坂派出所で現金運搬の行員を襲った事件で、彼らは現金の奪取に失敗したばかりか古田が銀行員をはずみで刺殺してしまったというものです。
 古田等は逃走し、彼が事件の主犯ということも知られませんでした。しかし「この事件が彼らの運命を決定した。古田大次郎は強盗殺人の現行主犯となり、中浜鉄はその教唆主犯となった。もはやあとがえりできぬ地点を、彼らは踏みこえてしまったのだ。」(平野謙「さまざまな青春」)・・・というわけで、古田は「内地にウロツイていては危険だという中浜の心配からしばらく朝鮮にでも遊ぶということとなった」(古田大次郎「死刑囚の思い出」)のです。

 ・・・これが古田等が朝鮮に渡った理由その1です。
 そして2つ目の理由は爆弾や拳銃の入手。仲間の逮捕に対する報復や脱獄の計画、あるいは(大杉グループの)和田久太郎や村木源次郎が企てている大杉栄虐殺に対する復讐計画への協力のために必要という中浜と古田の判断でした。

 まずその年(1923年)11月半ば過ぎに古田が中浜の友人で朝鮮に詳しい高島三次を「お守役兼案内者」として朝鮮に渡ります。
 2、3日後内地に帰った高島に変わって中浜がやってきます。その後金策のため古田は12月末に内地に戻り、1月末に和田久太郎とともに再び朝鮮に渡ります冒頭の詩の一部分は、この1924年2月の3人の京城での生活の一コマです。彼らの当地での生活やそこで見聞したこと等は古田大次郎「死刑囚の思い出」(「日本人の自伝8」(平凡社)所収)にいろいろ具体的に記されています。その内容はなかなか興味深いことが盛りだくさん。

 また、朝鮮で爆弾や拳銃を入手するといっても中浜等には成算はあったのか? なんらかの伝手(つて)があったとしたら、それはどのようなものだったのか? これも関連書を20冊ばかり読むうちに見えてきました。

 ・・・どうもチェーンリーディング(1冊→1冊)というよりも1冊→3冊→9冊という核分裂型リーディングになって収拾がつかなくなってしまいました。次回は中浜等の京城体験か、彼らと朝鮮独立をめざすテロ組織との接点についてのいずれかについて書きます。
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