ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

アートとしてのハングル 書家・韓泰相の試み

2010-07-31 23:59:43 | 韓国の芸術
 月刊誌「pen」7月号の特集<書のチカラ>中に、「世界を席巻する、日・中・韓の現代書家」という記事があることを教えられ、目を通してみました。
 日本の柿沼康二には<自分の魂と戦う、書の格闘家>とあり、中国の李強には<勇壮で典雅な、中国書壇の風雲児>、そして韓国の韓泰相(한태상.ハン・テサン)には<"書"を超えた、ハングルの造形美>と、各々見出しが付けられています。
 このブログの主旨に沿って、韓泰相氏の書に絞って見てみます。

 韓国では書道のことを書芸(서예)といいます。
 仁寺洞などに行くと、墨・硯・筆・紙の<文房四宝>を売っている店があったり、書芸の作品を展示・販売している店もあることは知っていましたが、私ヌルボ、これまで購入はもとより、じっくり作品を鑑賞するということはありませんでした。
※あるサイトでは、「筆や硯は、中国で見つけた方が面白いし、墨は日本のものの方が上質…。結局、お薦めは韓紙かな、と思います」と記されてましたが・・・。
 ただ、漢字だけでなく、ハングルについても、主に伝統を感じさせる書法で書いたものは伝統茶の店や食堂等に貼ってあるもの、包み紙等々でしばしば目にしてきました。
 ところが、「pen」に載っている韓泰相の5作品は、伝統的な書とは別の現代アートといった趣き。(柿沼、李強の作品も同様。) ソウル教育大学校美術科教授という彼の肩書きにも関係するのでしょうか?
 この雑誌掲載の作品はネット上を探してもないようなので、韓国サイト等で拾ったものを下に掲げます。

    
       【韓泰相「문자이야기 08-Ⅲ」

 また「週刊韓国」のサイトに、「韓泰相ソウル教育大学校美術科教授"ハングル書芸の絵画化実験"」という記事が見つかりました。作品を背後に彼自身が写っている写真が付いています。

       
  【韓泰相は、このようなふつうの(?)作品も書いています。

 さらに2008年6月の「女性新聞」の記事で<ハングルカリグラフィTシャツ>というTシャツが発売され好評を博しているというものがありました。発売元ティウムのサイトは→コチラ。ハングルをデザイン化したいろんな商品があります。

 韓泰相と、趙盛周(조성주)余泰明(여태명)の3人の書家の字をあしらったもので、とくに趙盛周が書いた「山有花(산유화.金素月の詩)Tシャツ」はTVドラマで俳優が着たりして話題になっている、と記されています。
 趙盛周や余泰明の書も、いくつか見てみました。たしかに、元来幾何図形的なハングルは、より美術との親近性が強いと言えるかもしれません。

    
    【趙盛周の書による「山有花Tシャツ」

  
  【趙盛周「흙에서 자란 내 마음(土で育った私の心)」

      
  【余泰明「梅の花よりもっと美しいあなた」】
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

野口孝行「脱北、逃避行」を読む ・・・いろんなオドロキ

2010-07-29 20:57:57 | 北朝鮮のもろもろ
       

 野口孝行「脱北、逃避行」(新人物往来社)を2日間で読了しました。
 4月発行ですが、6月22日に著者の野口さんが「毎日新聞」の<ひと>欄で紹介されていたのを読んで知った本です。

 野口さんは北朝鮮難民救援基金というNPOのメンバー。
 脱北して中国内に隠れ住む元・在日を無事国外に脱出させ、日本に帰すという任務に実際に関わった際の記録です。

 読んでみて、驚いたこと、初めて知ったことがいろいろありました。
 前述の「毎日」の記事で「無事帰国の姉妹からは詳しく書きすぎだと言われた」とありますが、ホントにここまで手の内を明かしていいの?・・・という感じです。中国内の協力者やシェルター(庇護を受ける家)のこと、国外脱出のルート等々・・・。

 驚いた点を列挙します。

・野口孝行さん自身のこと。1971年生まれで30代。商社にサラリーマンとして勤めていたが、
 「脱北者を救うために自分自身が具体的に行動を起こしたいという思いに駆られ、いつでも海外に出ていける日雇いの仕事(主に医薬品の販売促進)をするようになっていた」。
 ・・・この直情径行というか、軽挙妄動(?)というか、ご両親は当然反対。そりゃそうでしょうねー・・・。
 自身の生活もあえて不安定な道を択んでまで、逮捕・投獄の危険、もしかしたら生命の危険さえあるかもしれない仕事をやろうというわけですから・・・。さらには、うまくいったからといってそれが大きな収入につながるわけでもなし。
 しかし、こういう人がいるからこそ、危機的な状況から救われる人もいるということですね。

・野口さんは、中国語は多少の意思疎通は可能のようですが、朝鮮語はできないし、最初の救出任務にあたった2003年には上海も初めてで、ベトナム国境付近も同様でした。そういう人に重大な任務を任せる組織については少し疑問も感じましたが、それでも大丈夫(?)なほどいろんな機関・組織や、現地協力者等とのネットワークがしっかり組まれている、ということかもしれません。

当の脱北者、あるいは現地協力者が、読んでいてハラハラするほど無警戒・無防備な場面がしばしばあります。ついその場には不自然な言葉(日本語や朝鮮語)で話をしていたり等々。
 この本に登場する現地協力者の女性は、兄嫁が脱北者で、兄と兄嫁は<基金>の支援で日本に渡り暮らしているとのこと。ところがこの崔さんという女性、乗ったタクシーが高い料金をふっかけてきたと運転手に対して声を荒げてやりあったりもしています。日本円にすればほんの小銭程度なのに・・・。

・脱北者をめぐる悲劇の第一原因は北朝鮮政府にあることはいうまでもありませんが、この本を読んで痛感したのが中国公安の厳しさ。脱北者だけが対象というわけではないかもしれませんが、身分証やパスポートの提示を求められることはないか、不断の注意が必要なんですね。
 中国の公安関係者はどんなつもりで職務を遂行しているんだろう、という疑問にかられますが、たぶん彼らのみならず、中国では人権についての認識が日本とはかなり違いがあるようです。
 この本の後半は、ベトナムとの国境近くの町のホテルで公安に踏み込まれて拘束され、さらにその後243日間の看守所(未決囚収容所)で生活したの記録ですが、その中で取り調べに際して通訳を担当している中国人女性が、それまで中国の悪口を一度も言ったことのない野口さんに尋ねます。
 「野口さんは、どうして中国がそんなに嫌いですか?」 野口さんが「どうして私が中国のことを嫌いだと思うのですか?」と聞き返すと、彼女は答えます。
 「だって、中国に来て、法律を破って、そのことさえも認めないで公安に反抗しているじゃないですか? それはやっぱり中国が嫌いということでしょう。中国のどこがそんなに嫌いですか?」
 ・・・中国南部ではふつうに蛇飯をたべたり、看守所で野口さんを含む未決囚たちがやったように犬をツブして食ったり、その他こっそりと(?)サルを食ったりというような食文化や、生活文化の違いもいろいろ承知しておく必要があるわけですが。日本人にとっては常識的な思考回路もどこでも通用するものじゃないということも再認識しました。

聞きしに勝る、と思ったのが「地獄の沙汰も次第」という中国社会北京駅ではなんと駅員自身がダフ屋をやってたりします。看守所内でも金さえ払えば冷たいビールも飲めるし、甚だしくは獄中生活を送るべき未決囚が所外で安楽な日々を過ごしていたり、ここらへんはよくわかりません。

・金といえば、この脱北者問題自体が多くの人と金を引き寄せる大きなネタになっているわけで、その実態も想像以上のものがあるようです。
 これだけ多くの北朝鮮住民がいるとなると、脱出の手引きをするブローカーの他、人身売買の組織等もあるようだし・・・。また中国国外へのある脱出ルートが注目されるようになると(たとえばモンゴル・ルート)公安は当然取締りを強化するから別のルートを開拓しなければならず、すると人も金も移動していくということで、状況は常に流動している、という感じです。

・看守所内での中国人未決囚たちのようす等々、他にも興味深い記述はあるのですが、すでに長々と書き連ねましたので、最後に北朝鮮難民基金関係のサイトを紹介して終わりにしておきます。

北朝鮮難民救援基金HP
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[7月23日(金)~25日(日)]

2010-07-27 21:28:23 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 7月に入って観た映画は7本。しかし韓国映画はゼロ。「グッドモーニング・プレジデント」は近々観にいこうかなと思っているのですが・・・。
 これという映画をやってない時は、旧作をレンタルで借りて観るか、ということで観たのが「家族の誕生」。2007年「グエムル~漢江の怪物」等々のヒット作を抑えて大鐘賞映画祭最優秀作品賞を受賞した映画です。映画館でも1度観たのですが、地味な映画で、今ひとつ高評価の理由がわかりませんでした。肝心な場面を半睡状態で見逃したかも、と気になっていたので、DVDで観なおしたというわけです。
 で、その結果いろんなことがわかり、ナットクしました。「家族の誕生」というタイトルには、最近韓国では伝統的な家族の形が急速に変貌(もしくは崩壊)している、という社会背景が背景にあるようですね。また、もしヌルボが大鐘賞の審査員だったとしても、「グエムル~漢江の怪物」ではなく(迷いつつも)コチラに票を投じたかもしれない、とも思いました。
 なお、「グッドモーニング・プレジデント」で女性大統領を演じているコ・ドゥシムさん、「家族の誕生」では何ともパッとしないおばさん役で登場。いやー、役者やねー。またムン・ソリさんについては改めていうまでもないですが、<韓国映画スタッフブログ>が大注目の若手女優で、最近「僕のヤクザみたいな恋人」で主演したチョン・ユミも再確認。彼女はこの作品で青龍賞女優助演賞を受賞してるんですね。
 「家族の誕生」の内容は<Innolife>の記事か、ネタバレOKなら、<Kaiのネタバレ映画館><韓国映画レビュー100作以上>を参照されたし。とくに後者はこの映画を絶賛しています。

   ★★★ Daumの人気順位(7月27日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①裸足の夢(韓国)  9.6(625)
②ゴッドファーザー  9.4(152)
③ヒックとドラゴン  9.4(675)
④名探偵コナン:天空の難破船(日本)  9.3(131)
⑤聴説  9.3(175)
⑥詩(ポエトリー)(韓国)  9.1(470)
⑦マウミ 2(韓国)  8.9(97)
⑧インセプション  8.9(774)
⑨ナイト&デイ  8.5(641)
⑩大いなる静寂  8.2(41)

 ④、⑦、⑧が新登場です。
 ④、やっぱり日本映画はこのジャンルですかねー。日本では4月公開。
 ⑦は2006年の<マウミ>の第2作。第1作は去年衛星劇場でやってたようです。<マウミ(마음이)>は犬の名前。日本語だと<ココロ>ですね。やはり動物映画は夏休みの定番ですか。内容は<Innolife>の記事で・・・。→第1作。→第2作
 ⑧は日本でも先週23日に公開、ということでコメント省略。

【専門家による順位】

①白いリボン  8.8(5)
②ゴッドファーザー  8.6(6)
③詩(韓国)  8.5(10)
④インセプション  7.8(6)
⑤ハハハ[夏夏夏](韓国)  7.7(10)
⑥ヒックとドラゴン  7.6(9)
⑦大いなる静寂  7.5(2)
⑧ゴーストライター  7.3(8)
⑨パンジャ(房子)伝(韓国)  7.0(7)
⑩裸足の夢(韓国)  6.7(5)

 今週もあまり変化なし。
 ④が新しく入って、以下1つずつずれました。

   ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[7月23日(金)~25日(日)] ★★★
         韓国映画「苔(こけ)」2週で200万人を超える

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・封切り日・・・週末観客動員数累計・・・・観客動員数・・・・上映館数

1・・インセプション・・・・・・・・・・・07/21・・・・・・・・・934,699・・・・・・・・・・・・・・1,239,450・・・・・・・581
2・・苔(韓)・・・・・・・・・・・・・・・・・・07/15・・・・・・・・・596,299・・・・・・・・・・・・・・2,216,508・・・・・・・667
3・・魔法使いの弟子・・・・・・・・・07/21 ・・・・・・・・256,755・・・・・・・・・・・・・・・・343,829・・・・・・・370
4・・マウミ2(韓)・・・・・・・・・・・・・・07/21・・・・・・・・・200,160 ・・・・・・・・・・・・・・・277,629・・・・・・・304
5・・名探偵コナン・・・・・・・・・・・・07/21・・・・・・・・・178,395・・・・・・・・・・・・・・・・226,194・・・・・・・291
    天空の難破船(日)
6・・エクリプス・・・・・・・・・・・・・・・07/07・・・・・・・・・111,189・・・・・・・・・・・・・・2,032,587・・・・・・・345
    トワイライト・サーガ
7・・シュレック・フォーエバー・・・07/01・・・・・・・・・110,905・・・・・・・・・・・・・・2,095,456・・・・・・・289
8・・砲火の中へ(韓)・・・・・・・・・・06/16・・・・・・・・・・37,342・・・・・・・・・・・・・・3,334,482・・・・・・・226
9・・ナイト&デイ ・・・・・・・・・・・・・・06/24・・・・・・・・・・32,580・・・・・・・・・・・・・・2,256,382・・・・・・・211
10・・破壊された男(韓)・・・・・・・07/01・・・・・・・・・・・・3002 ・・・・・・・・・・・・・・1,018,541・・・・・・・・49

 1・3・4・5位の4作品が新登場。
 3位「魔法使いの弟子」はディズニー実写版で日本では8月13日公開予定。魔法使いの師をニコラス・ケイジが演じてるんですね。(彼がF.コッポラ監督の甥ということを最近になって知りました。)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

申京淑「どこかで私をよぶ電話が鳴って」激動の時代、傷みを抱えた青春像を描く

2010-07-24 23:40:26 | 韓国の小説・詩・エッセイ
        

 申京淑がこの5月に刊行した小説「どこかで私をよぶ電話が鳴って(어디선가 나를 찾는 전화벨이 울리고)」は、期待を裏切りませんでした。
 あまりネタバレにならないよう心しつつ紹介します。

 大学の教室の外から集会の音声が聞こえてくる。授業の終わり際、窓の外を見つめていたユン教授はふり向いて学生たちに問う。「君たち、クリストフという人物の話を聞いたことがあるか?」。 
 女子学生チョン・ユンは「ジャン・クリストフ」は読んだことがあったが、教授の語ったクリストフは、キリスト教伝説中のクリストフだった。
 カナーン出身の大男クリストフは、真に仕えたいと思う人物に巡り合えぬまま、川べりに家を建て、旅人を無償で向こう岸に背負って渡すことを始めた。ある夜、一人の子どもの頼みで、その子を背負って川に足を踏み入れる。ところが、軽いはずの子どもがだんだん重みを増し、ついには異様な重さとなってクリストフは川に流されて死ぬかも知れないとまで思う。
 やっとの思いで対岸にたどり着くと子どもは消え、眼前にイエスが現れ、そして言う。  「クリストフ、おまえが今背負ったのは子どもではなく私、キリストだ。おまえが川を渡った時背負っていたのはこの世のすべてだったのだ」。
 語り終えてしばし沈黙した後、ユン教授はふたたび口を開く。
 「では、ここでひとつ質問をする今ここにいる君たちはクリストフなのか? 背に負われた子どもなのか?」

 ユン教授の原稿のタイピングを志願したチョン・ユンは、教授の研究室で男子学生イ・ミョンソと、その女友だちユン・ミルを知る。あとでわかるのだが、2人は幼なじみで、少し前までミルの姉も含め3人で同居していた・・・。
 チョン・ユンにもタニという名の気心の知れた幼なじみの男友だちがいる。

 ・・・・この4人が主な登場人物です。

 地方出身のチョン・ユンは自分の住むトンスン洞のオクタプパン(屋塔房)を起点に、ソウルの街ここかしこを日々歩いて廻る。しかしある日、集会・デモの鎮圧に巻き込まれ、鞄も靴もなくして途方に暮れていると、思いもかけず「チョン・ユン!」と呼ぶ声が・・・。


 この偶然を契機に、主人公たちのコミュニケーションが深まってゆき、また彼らの過去も徐々に明らかになっていきます。

 小説はチョン・ユンの視点から描かれていて、その中にミョンソの手記が挟まれているという体裁で、政治的・社会的背景は詳しく書き込まれてはいませんが、申京淑自身が学生だった当時、すなわち80年代の民主化闘争の時代状況が色濃く感じられます。
 その中で、青春期真っ只中の男性2人女性2人。当然恋愛の要素もありますが、それがメインというわけではありません。ある書評には「青春小説であり、成長小説であり、恋愛小説である・・・」とありました。
 物語は、彼らの大学時代だけでなく、その何年も後まで描かれているという重層的な構えになっています。

 この本の帯に記されている文芸評論家シン・ヒョンチョルの評を引用します。
 「自身の生を、同僚の死を、さらには共同体の運命を背負わなければならなかった一時代の<クリストフ>たちがここにいる。4人の青春が、ガラス瓶に入れて流された手紙が今の青年たちの心に無事に届くように。彼らのつらい時間に戻るのではなく、そのつらさを忘れることなく、ついにはつらさのない時間の方へ歩んでゆくために。」

 申京淑はこの本のあとがきでも、また「東亜日報」のインタビュー記事でも、90年代以降の韓国の若者が主に日本の小説を読んで成長してきたという現実を口惜しく思って、「青春の感受性を代弁する、品格ある韓国小説を作るため文章もできる限り韓国語の美しさを生かして、正確に書こうと念を入れた」と述べています。

 少し前、このブログで「韓国は日本の24年遅れ」という俗説(?)を開陳したところ、さる方から「韓国人の友人たち(30代)が育ってきた環境、傾向がどうも私の両親の世代(今の50代)と似ている」とのコメントをいただきました。
 たしかに、この小説を日本の全共闘世代が読むと遠い40年前のもろもろを、さまざまな感情を伴いつつ思い起こすのではないでしょうか? ただ、韓国の386世代と比べると学生時代ははるか昔だからかなり風化しているかもしれませんが・・・。

 さて、申京淑が若い世代に投じたこの小説、反響はどうでしょうか? ヌルボの感想は、なんともまあ、重い直球で勝負したなあ、ということ。日本の作家が読まれているのは、その軽さとエンタテインメント性ゆえ。それを知りつつ、20数年前の感性を霧消させることなく、その後の省察を加えてよく作品化したものです。したがって、「重い」です。先に掲げたクリストフの物語のように、当時の青年たちは時代の重さを背負わざるを得なかった、あるいは自ら背負おうとしたわけですから・・・。
 実際、YES24等のサイトで読者の感想を見ると、高評価が多い中で、「重い」の一語で★3つという評価もありました。
 ただ、決して思弁的で難解な作品ではありません。この人たちの関係はこれからどう展開するのだろう、というドラマ的興味も喚起されたり、また「えっ、そういうことだったの!?」というオドロキも何ヵ所かあって、全然退屈することなく読み通せました。

 あの闘争の時代に、たとえば命を落とした青年、あるいは当時の若かった自分自身の心情が込められた、まさに「ガラス瓶に入れて流された手紙」のような小説です。
 この小説のタイトルにある、「どこかで私をよぶ電話・・・」も、そんな過去からの声なのかもしれません。

※ユン教授の語るクリストフについては、ウィキペディアの<クリストフォロス>の項目参照。

※この小説には、主人公たちが住んでいたり、歩いたりするソウルの地名がいろいろ出てきます。3月17日の記事で紹介したDAUMの中のロードビュー(←韓国版ナンチャッテStreetView)で町のようす等を見ることができますが、20年以上前と今とではかなり変わっているはず。

※主な登場人物(?)の中にネコのエミリー・ディキンソンも入るかもしれません。<ターキッシュアンゴラ>というこの猫は左右の目の色が違うことが多く、また「青い目のある側の耳は聞こえない(右目が青ければ、右耳が聞こえない)」とか。エミリー・ディキンスンは全然聞こえない。

※申京淑の他のいくつかの作品同様、「もしあの時自分が○○していれば××だったのに・・・」という悔恨、そして深い雪の場面は、この小説にもみられます。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「韓国籍の脱北女性3人処刑か」は真偽不明報道

2010-07-23 11:44:05 | 北朝鮮のもろもろ
 今月初め、<韓国籍の脱北女性3人処刑か=中国で拘束、送還-北朝鮮>というニュースが伝えられました。→<時事ドットコム>参照

 昨年9月に韓国に入国した韓国籍の脱北女性3人が今年春中国で北朝鮮の国家安全保衛部要員らに拘束され、北朝鮮に送還後の6月末、咸鏡北道で銃殺刑に処されたというものです。

 私ヌルボ、これはひどい事件だなあと思いました。映画「クロッシング」、あるいはそれ以上。
 とくに韓国籍となると、韓国政府もなんらかの対応があるのでは、と続くニュースに注目していました。
 ところが、ないのです。続くニュースが・・・。
 
 その理由を推測してみました。
①北韓ならやりそうなことだと考えて、そのままスルーしてしまっている。
②事実を確認中。または確認できない。もしくは虚報だった。

 ・・・こういう場合の定石で、ニュースソースを見てみると<自由北韓放送(자유북한방송)>とあります。
このサイトを見ると、直接ラジオを聴けたりして興味深いのですが、この事件についての詳報はわからず。

 さらに韓国のニュースサイトを探ると、インターネットTVのYTN7月5日の放送記事中に求めていた記事がみつかりました。

 見出しは「韓国国籍脱北者3人、北韓に拉致され銃殺
 「」がついているところがポイントです。
 記事の前半部分は日本の諸報道と同じで、自由北韓放送の発表をそのまま伝えています。

 そして後半部分。
 「他の対北短波ラジオである<開かれた北韓放送>は、6月末穏城で3人が銃殺されたが、彼らの国籍は韓国籍の脱北者ではない、単純な北韓住民だとし、2人は殺人罪、1人は北韓女性を中国に売った人身売買の積みで公開処刑されたと報じています。
 <開かれた北韓放送>は、韓国籍の脱北者を処刑すれば、それは一地方の小都市穏城保衛部で処理できないことだと説明しました。」


 ヌルボの見るところ、昨年脱北の3人の女性とかだったら韓国当局は身元等特定できるだろうし、その後の報道がないところをみると、どうも<開かれた北韓放送>の方が正しいと思われます。

 日本のメディアは上記のことを知らないで報道したとすると軽率だったということになるし、内容が不確実と思いつつ報道したとすると、注目されそうな内容だからあのような記事にした、ということなんでしょうか・・・。

 情報の送り手・受け手ともども、メディア・リテラシーについて心しなければならないことは、韓国・朝鮮にかぎらずいろいろあるようです。

付記:韓国籍じゃなく北朝鮮住民でも、公開処刑がいいはずはありません。もっとも、死刑確定後、刑執行までほとんど秘密裏に行われている日本の場合はもっと公開しないと・・・。日本国民は死刑に対してもっと当事者意識をもつべきでしょう。裁判員制度よりも執行員制度を作って、というのはいかがでしょうか?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

伊藤博文と韓国併合:/下 抵抗の根に多様なナショナリズム

2010-07-21 01:15:38 | 韓国・朝鮮と日本の間のいろいろ
 7月13・14日の「毎日新聞」夕刊で「伊藤博文と韓国併合」というタイトルの囲み記事が掲載されました。
 「併合に至る過程で伊藤が果たした役割をめぐってはさまざまな見方があり、歴史学界でも論争が交わされている。伊藤と韓国併合のかかわりをどう見るか、2人の研究者に論考を寄せてもらった」との前書きが付されていて、13日の<上>では伊藤之雄京大教授による「近代化による韓国独立保持を意図」、14日の<下>は月脚達彦東大准教授による「抵抗の根に多様なナショナリズム」と題された論稿が載せられました。

 私ヌルボは、なるほどな~とうなずきつつ読んだのですが、<上>については<毎日jp>のサイトにまもなく記事がupされたのに(→コチラです)、<下>の方は何日たっても現れません。何か事情でもあるのかなとずっと(今も)アタマの中に「?」は残ったまま、シビレがきたので、自分であえて公表することにしちゃいました! コメントは後で別記事にします。


   伊藤博文と韓国併合:/下 抵抗の根に多様なナショナリズム=月脚達彦  
◇帝国主義者の側面、否定できず
 100年前の1910年8月、日本は大韓帝国と「韓国併合に関する条約」を結び、朝鮮を植民地とした。この韓国併合に先立つ05年11月。日露戦争で勝利した日本は、特派大使伊藤博文をソウルに派遣して第二次日韓協約を締結し、大韓帝国を保護国として支配することになった。この協約に基づいてソウルに日本政府の代表として統監が置かれることとなったが、その統監に伊藤が就任したことはよく知られている。
 1909年6月に統監を辞任した伊藤は、同年10月にロシア財務相との会談のため訪れた中国東北地区のハルビンで、大韓帝国の独立運動家安重根に撃たれて死亡する。今日の韓国では安重根元凶とみなされていることも、よく知られていよう。しかし、近年、日本近代史研究者の間では統監伊藤は韓国併合推進者ではなかったとする評価が優勢になりつつあり、朝鮮近代史を専門とする筆者も、伊藤の保護国支配に対する大韓帝国側のさまざまな対応を見る中で、そうした評価を基本的には受け入れている。
 保護国化から韓国併合に至る時期に大韓帝国出繰り広げられた日本に対する抵抗運動には、都市の知識人を中心に言論や結社を通じた実力養成によって独立回復しようとする愛国啓蒙運動と、主に攘夷思想を持つ地方の儒者が指導して武器を持って戦う義兵運動があった。
 愛国啓蒙運動に携わった人々の多くは、時刻が保護国となった理由を自主的な近代化の失敗に求め、独立の回復に先立ち教育や産業の振興などによる国力の充実が必要だと考えた。一方で伊藤の対韓政策は、コストやリスクが大きい併合よりも、保護国支配の枠の下で大韓帝国を近代化させ、そのコストもなるべく大韓帝国側に負担させるというものである。そのため愛国啓蒙運動の一角には、日本の政府や軍、民間にある併合推進論を抑えるために、伊藤の政策に積極的に呼応して近代化に努めるという「協力」の論理が存在した(伊藤統監の下で大韓帝国の総理大臣となり、現在の韓国で売国奴とされる李完用の「協力」の論理も、そのようなものだったと考えられる)。
 ただし、これは単なる親日とは見ることができず、近代化に立ち遅れた現状では日本の保護を受けざるを得ないが、日本から学ぶべきことは学び、いずれは日本に追いつき追い越すという「克日型」のナショナリズムといえる。このほかにも、日本は日露戦争開戦まて゜、大韓帝国の独立を約束していたにもかかわらず、大韓帝国を保護国にした不義を批判する道義的な反日ナショナリズムや、伊藤の保護国支配が近代化の論理を伴って行われる以上、近代化に価値を見出さず、ひたすら「民族精神」の高揚を訴えることによって抗日の論理を徹底させようとするナショナリズムも現れるようになった。
 一方の義兵運動は、国や君主が日本によって辱められたことに対する義憤に基づく運動で、日本は侵略をやめて共に連帯して欧米の侵略に対抗せよという主張を伴うものだった(安重根の伊藤暗殺も、このような論理を背景にした行動である)。伊藤は義兵運動に対し、日本を誤解しているもので、自分が大韓民国を近代化すれば自ずと日本に心腹するになり、その運動は止むという楽観的な見通しを持っていた。しかし、伊藤の予想に反し、義兵運動は多くの民衆を引き込みながら熾烈さを増すことになり、やがて伊藤は悲観的になった。これが、伊藤が統監の職に意欲を失って辞任する理由の一つとなる。
 伊藤が統監を務めた時期は、今日の韓国に見られる日本認識の諸バリエーションの形成期に当たり、朝鮮のナショナリズムの形成史に占める意義は極めて大きい。もっとも、伊藤の保護国支配に対する大韓帝国側からの抵抗は、一部に屈折を見せながらも続けられたのであり、伊藤はまがいのない帝国主義者であったこともまた事実である。(つきあし・たつひこ=東京大准教授・朝鮮近代史)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[7月16日(金)~18日(日)]

2010-07-20 23:20:24 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 最近社会派映画ばかり連続して観ています。とくに観たい娯楽映画がなかったということで、結果的にそうなりました。「BOX袴田事件 命とは」、1966年(44年前!)の一家4人殺害・放火事件の犯人とされた袴田巖さんは1980年に死刑確定、今までずっと獄中生活です。裁判員100人いたとして、彼が犯人と思う人は1人もいないでしょう。(1961年の名張毒ぶどう酒事件の奥西死刑囚も半世紀近く無実を訴え続けています。) ドキュメンタリーの「ビルマVJ 消された革命」は2007年のビルマの僧侶や学生のデモの様子を隠しカメラで撮った迫真の映像で編集した映画。
 上記2作品は横浜・黄金町のシネマ・ベティで上映中。もし行かれたら置いてあるパンフ「冤罪関係資料集」(無料)をお持ち帰りください。(ほとんど確実に無実と思われるのに死刑にされた藤本事件という事例があるんですよ。)  ・・・あ、全然韓国と関係ない話ばかりになってしまいましたね。

   ★★★ Daumの人気順位(7月20日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①裸足の夢(韓国)  9.6(610)
②ゴッドファーザー  9.4(152)
③ヒックとドラゴン  9.4(664)
④聴説  9.3(163)
⑤詩(ポエトリー)(韓国)  9.1(465)
⑥特攻野郎Aチーム THE MOVIE  8.8(409)
⑦葉問2(イップ・マン2)  8.8(90)
⑧ナイト&デイ  8.5(592)
⑨A Single Man  8.2(50)
⑩The Back-up Plan  8.2(23)

 あまり変動なく、①~⑦は全く同じ。⑨と⑩が新登場。
 ⑨、1962年のロサンゼルスが舞台。同性の恋人の事故死を知らされた52歳のゲイの大学教授、失意に暮れて、かけ込んだ先は長年の友人のアル中女性の所・・・。最愛の人を失った男性の姿を通して、生きる意味を見出そうとする純粋な人間性を映し出す、・・・という映画だそうです。昨年東京国際映画祭で上映されましたが、一般公開は未定。
 ⑩、人工授精を実行した日に理想の男性と恋に落ちた女性のとまどいを描くロマコメ、・・・というあるサイトの紹介文の簡潔さに軽く口あんぐり。韓国題は「플랜 B(プランB)」。これも日本公開は未定。

【専門家による順位】

①白いリボン  8.8(5)
②ゴッドファーザー  8.6(6)
③詩(韓国)  8.5(10)
④ハハハ[夏夏夏](韓国)  7.7(10)
⑤ヒックとドラゴン  7.6(9)
⑥大いなる静寂  7.5(2)
⑦ゴーストライター  7.3(8)
⑧パンジャ(房子)伝(韓国)  7.0(7)
⑨裸足の夢(韓国)  6.7(5)
⑩下女[2010年版](韓国)  6.6(9)

 「下女[1960年版]」が①から消えて、「下女[2010年版]」が⑩に入った以外変動なし。

   ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[7月16日(金)~18日(日)] ★★★
         韓国映画「苔(こけ)」公開5日で100万人突破!

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・封切り日・・・週末観客動員数累計・・・・観客動員数・・・・上映館数

1・・苔(韓)・・・・・・・・・・・・・・・・・・07/15・・・・・・・・・857,130・・・・・・・・・・・・・・1,150,048・・・・・・・827
2・・エクリプス ・・・・・・・・・・・・・・07/07・・・・・・・・・401,460・・・・・・・・・・・・・・1,793,050・・・・・・・563
   トワイライト・サーガ
3・・シュレック・フォーエバー・・07/01・・・・・・・・・290,877・・・・・・・・・・・・・・1,894,831・・・・・・・453
4・・砲火の中へ(韓)・・・・・・・・・06/16・・・・・・・・・189,139・・・・・・・・・・・・・・3,240,853・・・・・・・350
5・・ナイト&デイ ・・・・・・・・・・・・・06/24・・・・・・・・・186,751・・・・・・・・・・・・・・2,165,720・・・・・・・351
6・・破壊された男(韓)・・・・・・・・07/01・・・・・・・・・・70,325・・・・・・・・・・・・・・・・993,172・・・・・・・313
7・・パンジャ(房子)伝(韓)・・・・・06/03・・・・・・・・・・13,343・・・・・・・・・・・・・・3,003,471・・・・・・・103
8・・裸足の夢(韓)・・・・・・・・・・・・06/24・・・・・・・・・・・8,768・・・・・・・・・・・・・・・・333,795・・・・・・・・53
9・・アーサーと魔王マルタザールの逆襲・・・07/07・・6,205・・・・・・・・・・・・・・・42,549・・・・・・・・82
10・・スプライス(Splice)・・・・・・・07/01・・・・・・・・・・・2,378・・・・・・・・・・・・・・・・160,202・・・・・・・・33

         
   【「苔」のポスター。ここの、この人たち、一体何なんだ?!

 4位「砲火の中へ」と7位「パンジャ伝」がそろって300万人突破。パチパチ。
 新登場は1位だけ。しかしこれが強力な韓国映画。原題は「이끼(イッキ)」、といってもイッキ飲みのイッキじゃなくて苔(コケ)。ユン・テホ(윤태호.尹太浩?)の漫画が原作。韓国に多い、インターネット上で人気をよんだ漫画で、2007年の大韓民国漫画大賞優秀賞受賞作です。ヌルボはまだ読んでませんが・・・。物語はというと、都市生活に嫌気を感じてきた青年が20年間断絶していた父の訃報に接し、田舍の村を訪ねるが、村人たちのようすが何か不自然・・・。ポスターも不気味な感じですねー。パク・ヘイルが青年役。不気味な映画や役柄が多いような気がします。「殺人の追憶」のイメージが強かったからか・・・。18禁らしいです。

        
      【「苔」の原作漫画「이끼(イッキ)」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

[韓国]兵役中のおもしろネタ漫画(&韓国語の勉強)

2010-07-18 23:06:44 | 韓国の漫画
 韓国の男性には周知のように兵役義務があります。これをめぐってはさまざまな問題もありますが、今回はそれはさておいて、パク・テイルが兵役中の笑えるネタを集めた漫画の中から1編を紹介しましょう。笑えるといっても、オチが韓国語がらみなので、ご承知おきを。また軍隊内イジメについても看過してはダメなんですけどね・・・。
★漫画内のハングルが小さくて読みづらいという方は→モトのサイトをご覧ください。



短く刈った自分の頭がはじめはおかしくて・・・
鏡に映った自分の姿がこわばっていく気分まで・・・ -「이등병의 편지(二等兵の手紙)」中から-

大韓民国の健康な
男なら、特に           「おまえは刈らないのか・・・?」
欠格事項がないかぎり、         「私は体重が48㎏ですよ・・・、ホホホ・・・」
どんな形であれ
軍という所に行ってきて・・・

誰もが一度くらいは           
あの歌を共感をもって          
歌ったのだ。



そうだ。
あの歌を歌ってまず最初に行く所がどこだったか・・・?
まさしく新兵教育隊ではなかったか・・・?
新兵教育隊であったという(真偽のほどはともかくとして)話をひもといてみる。

ご存じのように新兵教育隊とは軍の関門で、ヘンな奴が皆集まることになっている。



新教隊での助教の位置は神様とタイマンを張るほどだ。

助教様のお言葉は規範であり、
真理であり、生命でもあるので、       「なにか知りたい
助教様が死ねといえば              事項があったら    
死んだふりを当然しなければならない。    質問を受ける!!!」


そんな偉大な助教様が訓示を話されたというのだ!!!

「저..저기…(チョ、チョギヨー.あ・・・あのう・・・)」   「カチーン!」

        ところで、
        たった今一般社会から
        入ってきて一般社会の水が
        抜けきっていない新兵ひとりがそんなやり方で手を挙げて
        尋ねたという。



神様のような助教様、当然お怒りになった。
    「こいつめ! 
    そこの<요(ヨ)>が何だ? 
    <요(ヨ)>が?
    ここは軍隊だ!」
               「伏せ! 前へ就寝!! 後ろへ 自動!」

模範ケースとして
その質問をした新兵はうっかり調子にのって
ひどい目にあったという。



そして、助教様は軍生活の第一歩を
教えてくださったという・・・

「よく聞いてほしい・・・
<요(ヨ)>で終わる言葉は
社会で使う言葉だ・・・
軍では文末に
<다(タ)>나(ナ←「や」)<까(カ)>だけを使う!
みんなわかったか!!!」

雰囲気が殺伐となっていった・・・

新兵たち・・・
助教様のお言葉を
いただいて、熱心に
覚え、熟知したという・・・
  「<다(タ)>나(ナ)<까(カ)>・・・
              다나까(タナカ)・・・다나까(タナカ)・・・」

新兵たち、熱心に応用もしているのだが・・・
前に述べたように・・・軍にはヘンな奴がみんな入っているというものだ・・・



「質問がイッスムニ(あります)・・・ これは何イムニッ?(ですか?)」
「食事はハショッスムニッ?(なさいましたか?)」
「・・・・・・」
「クロッスムニッ?(そうですか?) はい、クロッスムニ・・・」


新兵ひとりが・・・
何か大きな誤解をした・・・   「정말 그래도 되~?(チョンマル クレド トェナ~.ほんとにそれでもいいんだな?)」



助教様・・・ぶるぶる体を震わせるほかにすべはなかった。
                   ボカッ!
その新兵、戦闘靴で引っぱたいても、
初めからなんでふだれるのかわからないようだ・・・

なぐられても、ぽかんとしたような表情でいると、
助教様は軍ではずっと前からなくなっていたという殴打をしかたなく始められた・・・
しかしその新兵、最後まで理由がわからず叫んだという・・・


「왜 때리나?(ウェー テリナ? なぜ叩くんだ?)」
「왜 때리나?(ウェー テリナ? なぜ叩くんだ?)」
と言いながらだ・・・

        「ウェー テリナ?」
     「ウェー テリナ?」


「はっきりと「다(タ)」「나(ナ)」「까(カ)」を使用しろと하지 않았..?(ハジ アナンナ?)言わなかったか..?」   
>

 どうも、この話も3つ前の記事同様できすぎで、作り話っぽい臭いが漂ってますねー。この漫画家にしてからが最初の方で「真偽のほどはさだかではないが」などと逃げを打ってるし・・・。まあ勉強にもなったし、よしとしますか・・・。
 旧日本軍でも独特の軍隊用語があって、「ヌルボ二等兵です!」などと言おうものなら、「地方の言葉を使うな!」と怒られたとか。(「ヌルボ二等兵であります!」と言わないとダメ。)
 日本では一般社会のことを軍隊では<地方>と言ったのですが、韓国では社会(사회)というんですね。この漫画で初めて知りました。

☆調べた俗語等の意味(一部推定も含む。)
썰을 풀다=説を解き明かす。
맞짱 뜨다=チンピラなどが1対1で争うことを意味する隠語。
빠직=カチーン。「カチンときた」は빠직했다
조뺑이 치다=大変な苦労をする。
단최=단초에。最初に。
얼빵하다=考えや行動がふつうの人のレベルには及ばず、足りないという意味。
시전하다=始展하다。(さまざまな奇異で神秘な動作などを)くり広げてみせる。

☆最初のコマの「이등병의 편지(二等兵の手紙)」はよく知られたフォークソングで、歌手でもあるキム・ヒョンソン(김현성)の作詞・作曲ですが、とくにキムグァンソク(김광석)がリメイクして歌い、ヒットしました。一時「悲しすぎるという理由で禁止されたそうです。→YouTube中のキム・ヒョンソンの歌で聴いてみてください。(あら、映像は「JSA」でないの!)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国ドラマ「英雄時代」を読み解く[13] 流行歌「死の賛美」と尹心悳

2010-07-17 17:47:55 | 韓国の音楽
 この<「英雄時代」を読み解く>で、これまで「オッパセンガク」「愛国歌」「希望歌」と、12回中3回歌をとりあげてきました。今回が4度目。元来音楽が好きで、このドラマでも歌が出てくると既知・未知を問わず耳をそばだててしまいます。

 第18話で、テサンやテホを支援する金持ちのオルシン(大人)カン・ユングンの次女でテサンへの思いを断ち切れないヘヨンがレコードを聴いています。

ソヒ(姉)「またその歌?」
ヘヨン「いい歌じゃないの。お姉さんはきらい?」
ソヒ「自分で命を絶った女でしょ? 尹心悳とかいう歌手と恋人の金祐鎮・・・」


 ・・・あ、この歌は知ってるゾ! 「夕べとなれば美し・・・、ってイヴァノヴィチ作曲の「ドナウ川のさざなみ」だったな」と思って<도나우강의>(ドナウ川の)でググると、案の定「도나우강의 잔물결」がありましたが、YouTube中には器楽演奏のみ。

 DVDを再度見てみると、何のことはない、「死の賛美」という歌のタイトルまで台詞中にありました。
 YouTubeで検索しなおすと、ドラマで流れていた1926年吹き込みの歌がみつかりました。
 とりあえず、聴いてみてください。→尹心悳(歌)「死の賛美(사의 찬미)」
 しかし、どこのどなたか、こういう歌をYouTubeにのっけてくれる人がいるんですねー。

 また尹心悳(윤심덕.ユン・シムドク)という歌手について記されているサイトもいろいろありました。

 たとえば「東洋経済日報」の<関釜フェリーにて―玄界灘に消えた尹心眞(崔碩義)>という記事や「朝鮮新報」の<朝鮮近代史の中の苦闘する女性たち[](金学烈)>という記事。

 上記サイトから、彼女の生涯を略述すると以下の通りです。

 朝鮮最初のソプラノ歌手・尹心悳(1897~1926)は平壌生まれ。京城女高普を1914年卒業した後、1915年官費留学生として渡日し、青山学院をへて上野音楽学校声楽科に入学した。卒業公演で「人形の家」のノラ役を好演し、帝国劇場支配人からスカウトされたが、イタリア留学を夢見る彼女はこれを断った。 
 帰国した彼女は、オペラのアリアやシューベルトの歌曲を朝鮮で初めて披露した。美貌も幸いし、大変な人気を博した。
1921年夏。東京留学生たちの劇芸術協会による朝鮮での演劇巡演に参加した。趙明煕作・金祐鎮演出の「金英一の死」などと音楽、講演の組み合わせで朝鮮の25都市を回った。
観客の熱狂ぶりを「東亜日報」も報じている。しかし、劇中セリフの「10年前には自由があったが、今はない」が臨席警官の摘発となり、公演中止となってしまった。
 1926年尹心悳は「死の賛美」という歌をレコードに吹き込み、これが爆発的にヒットする。
ところが同年、あたかも「死の賛美」を実演するかのように、関釜連絡船の徳寿丸から玄界灘に投身、金裕鎮(劇作家で、妻帯者)とともに心中を遂げた。相手の金裕鎮は木浦の資産家の息子で、築地小劇場の運動に影響を受け、劇団を組織して朝鮮各地を巡演していた。


 この心中事件には、「松井須磨子が師の島村抱月の後を追って自殺したこと(1919)と、有島武郎の軽井沢での情死事件(1923)の影響が多分にあったようである」と崔碩義さんは記しています。

 上記「朝鮮新報」の記事はかなり詳しく書かれていますが、筆者の金学烈さんは7月12日の記事に記したように金素月の詩「山つつじ」も「痛恨の亡国の情と独立への願望のうた」と考える人なので、尹心悳の祖国愛・民族愛の強さについての記述も相当部分ご自身の願望が込められているのではと思ってしまいます。
   
   
            【尹心悳

 ドラマの時代は心中事件から19年も経った1945年。それでも人々の記憶に残るほどの印象的な事件だったということでしょうか。
 1991年には韓国でこの心中事件を描いた「死の賛美(사의 찬미)」という映画も作られています。

 ※<京城蒼月倶楽部>というサイトにもかなり詳しくこの歌について、歌詞とその翻訳つきで記されています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「無一文」を韓国語でいえば・・・

2010-07-16 23:52:48 | 韓国語あれこれ
 ついに申京淑「どこからか私を呼ぶ電話の音が鳴って」を読了したり、ドラマ「英雄時代」を3話分(18~20話)一気に観たり、韓国関係の注目すべき新聞記事をいくつか拾ったりと、困るほどネタが一杯ある中で、ごくごく小さなネタ。それも韓国語学習者の皆さんだけが想定読者です。

 「英雄時代」の音声を何となく聞きながら、字幕もなんとなく見ていると、たまに引っかかる言葉が出てきます。
 第20話で、金持ちのオルシン(大人)カン・ユングンが、窮地のテサンを救おうと、あくどい事業家カン・チョルグンと会って話します。「保証金が戻らないとテサンは無一文だ」という字幕。
日本の漢字語は大体そのまま韓国読みにすればOKなので、<無一文>は<ムイルムン>だろうと思いながら聴いていたら<ムイルプン>と言ってたようで、あれ?と思って聴き直すとやっぱり<ムイルプン>。<無一文>じゃなくて<無一分>なのかなと推測しつつ辞書を引くと、<무일푼>という綴りで、무=無ですが일푼は固有語。その原意までは調べていません。
 ふだんはドラマ中のわからない音もやりすごし、小説中もどんどん読み飛ばす私ヌルボですが、たまにこのように辞書を引いた甲斐があったなーということがあると少しうれしいです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

[韓国]これは笑える! 学院(塾)の宣伝文

2010-07-15 17:36:43 | 韓国の街ネタ、観光ポイント、店・施設等
 韓国のサイトをいろいろ漁っていたら、YAHOO!재미촌の中でオモシロイ写真をたまたまみつけましたので紹介します。학원(学院=塾)の窓に貼ってある宣伝文ですかねー。韓国語中級レベル以上の人ならきっと笑っちゃうのでは?

  
 
 わかる人相手に説明する必要はないし、韓国語を知らない人に説明してもおもしろくないでしょうから、説明抜きにしようかなとも思ったのですが、一応蛇足ながら・・・。

 믿음직힌は믿음직한(たのもしい)の間違いでしょう。
 안직한は韓国人ネチズンも「これは何だ?」との疑問が出ていた意味不明語。
・・・・ということで、「頼りになる塾 努力する教師 ?な教え方」といったところ。

  

 片方の窓がずれた結果・・・
 믿힌 →미친(狂った)という発音になる。
・・・「狂った塾 遊んでる教師 教えない」という意味に大変化。

 しかし、よくできすぎでホンマカイナ!?という感じもしますねー。誤字や不明語もあるし・・・。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

知らなかった韓国語2つ ①アウク ②トゥクチョンサ

2010-07-14 23:41:11 | 韓国語あれこれ
 申京淑の小説「어디선가 나를 찾는 전화벨이 울리고(どこかで私をよぶ電話の音が鳴って)」。この数日ずっと読みふけっています。たぶん明日読み終えます。

 この小説中の言葉で、知らなかった単語の中で2つだけ紹介します。
 1つめは<아욱>。食事の場面で出てきます。冷蔵庫から아욱を取りだして아욱국(粥)をこしらえるのですが、この아욱がわかりませんでした。辞書を引くと冬葵。これも知らなかったので、いろいろ見てみると、この野菜がきれいに写ってる写真と調理法が載っている<ウェルビン(wellbeing)ライフin Korea>というサイトが見つかりました。

 小説では、たまたまあった干しエビも入れています。アウクは「ちゃんとゆがかないとピリッとした辛みが残る」とありました。韓国のサイトでも見てみたところ、下の写真のようなもののようです。

     

 冬葵は日本ではどの程度知られているのでしょうか? 10人くらいに聞いてみたところ、知ってた人は1人でした。

 2つ目の言葉は<특전사>。아욱とは全然違う分野です。
 兵役に就いた青年が、「특전사に選ばれた」とあります。特別戦士あたりかな?と見当をつけて調べたら特戦司でした。大韓民国陸軍特殊戦司令部(특수전사령부)の준말(略語)なんですね。

 特戦司のHPを見ると、海中や雪上での訓練、パラシュート降下等々の映像、<忠誠・名誉・団結>という<部隊訓>、<絶対忠誠・絶対服従・百折不屈の闘志・魂を分かつ義理>という<特戦精神>等々が紹介され、また<世界最強特戦司>と称しています。
 小説から察するに、一般国民の認知度も高いようです。またその内部ではかつての日本軍にもあったような新兵に対するイジメがあるようです。この件についてはいずれ別記事にします。

 昨日の記事でアメリカの海兵隊の訓練の厳しさについて書きましたが、どうもアメリカだけのことではなさそうですね。

 日本のウィキペディアにも特殊戦司令部がありました。
 その説明文中、同様の性格をもった部隊として日本の陸自にも2007年中央即応集団が創設された、とあります。国民の皆さんはどれくらい知っているのですかねー。私ヌルボは知りませんでした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[7月9日(金)~11日(日)]

2010-07-13 22:31:38 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 先日<
マイナーなドキュメンタリー映画「ONE SHOT ONE KILL 兵士になるということ」を観ましたが、怖かったです・・・。アメリカ海兵隊の新兵たちが、12週間のブートキャンプでの訓練で立派な兵士になるまでを描いた映画ですが、私ヌルボが再認識したことは、、①ふつうの人でも強い正義感・使命感を持つと人を殺せるようになる。②デカい声を出し続けている時はアタマはカラッポになる。③100%厳しい規律の中での生活を強いられると、人は心身が鍛えられているという充実感を覚える。・・・こういう怖さです。

   ★★★ Daumの人気順位(7月13日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①裸足の夢(韓国)  9.6(583)
②ゴッドファーザー  9.4(150)
③ヒックとドラゴン  9.4(652)
④聴説  9.3(147)
⑤詩(ポエトリー)(韓国)  9.1(444)
⑥特攻野郎Aチーム THE MOVIE  8.9(362)
⑦葉問2(イップ・マン2)  8.8(87)
⑧StreetDance 3D  8.7(82)
⑨下女[1960年版](韓国)  8.7(26)
⑩ナイト&デイ  8.5(496)

 ⑧は6月16日韓国封切のイギリス映画で、ストリート・ダンスの話かと思ったらロイヤルバレエ団との対決だって?
 ⑨、ふつうの娯楽映画とは逆に、専門家より少し低い評点がついてます。

【専門家による順位】

①下女(韓国)  8.8(5)
①白いリボン  8.8(5)
③ゴッドファーザー  8.6(6)
④詩(韓国)  8.5(10)
⑤ハハハ[夏夏夏](韓国)  7.7(10)
⑥ヒックとドラゴン  7.6(9)\t
⑦大いなる静寂  7.5(2)
⑧ゴーストライター  7.3 (8)
⑨パンジャ(房子)伝(韓国)  7.0(7)
⑩裸足の夢(韓国)  6.7(5)

 先週とほとんど同じです。
 「白いリボン」については先週紹介しました。2009年カンヌ映画祭パルムドール賞は、韓国語では칸 황금종려상(カンヌ・黄金棕櫚賞)というんですね。7月6日付「朝鮮日報」の<ペク・ヨンオクの封切作ダイアリー>は、「こんな難解な映画をなぜ観るんだ?と問われたら」と題して次のように記してました。
 「映画館で楽しい経験をしようという人には適当ではない。・・・しかし、人間の本性の闇を<映画的>に体験したければ、今すぐにかけつけるべし。ご存じのように、こんな映画であるほど、さっさと上映を終了してしまうからだ。」

   ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[7月9日(金)~11日(日)] ★★★
         「トワイライト」シリーズ第3作が初登場1位

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・封切り日・・・週末観客動員数累計・・・・観客動員数・・・・上映館数

1・・エクリプス・・・・・・・・・・・・・・07/07・・・・・・・・・802,512・・・・・・・・・・・・・1,113,823・・・・・・・601
   トワイライト・サーガ
2・・シュレック・フォーエバー・・07/01・・・・・・・・・558,092・・・・・・・・・・・・・1,500,646・・・・・・・566
3・・砲火の中へ(韓)・・・・・・・・・06/16・・・・・・・・・317,967・・・・・・・・・・・・・2,951,223・・・・・・・468
4・・ナイト&デイ ・・・・・・・・・・・・・06/24・・・・・・・・・802,512・・・・・・・・・・・・・1,848,832・・・・・・・406
5・・破壊された男(韓) ・・・・・・・07/01・・・・・・・・・218,385・・・・・・・・・・・・・・・833,904・・・・・・・388
6・・パンジャ(房子)伝(韓) ・・・・06/03・・・・・・・・・・36,930 ・・・・・・・・・・・・・2,967,741・・・・・・・184
7・・アーサーと・・・・・・・・・・・・・・07/07・・・・・・・・・・29,946・・・・・・・・・・・・・・・・33,766・・・・・・・132
    魔王マルタザールの逆襲
8・・The Killer Inside Me・・・・・07/08・・・・・・・・・・26,939・・・・・・・・・・・・・・・・・38,589・・・・・・・144
9・・スプライス(Splice)・・・・・・・・07/01・・・・・・・・・・24,693・・・・・・・・・・・・・・・・146,493・・・・・・・157
10・・裸足の夢(韓)・・・・・・・・・・・06/24・・・・・・・・・・21,988・・・・・・・・・・・・・・・・316,479・・・・・・・114

 1・7・8位が新顔。3・6位の韓国作品は300万人の大台が目前です。
 初登場1位はトワイライト」シリーズ第3弾。日本公開は11月。
 4位は「Night & Day」じゃなくて「Knight & Day」なんですね。
 7位はリュック・ベッソン監督によるファンタジー・アクションで、日本では4月に公開されたのですが、あまり話題にならなかったような・・・。韓国題は「아더와 미니모이 2(アーサーとミニモイ2)」。アーサーは韓国語ではアド。
 8位は原作本があったはず、と思ってみてみると、2001年版「このミス」第1位でないの! 作者ジム・トンプスンは<安物雑貨店(タイムストア)のドストエフスキー>と称されているそうです。この作品は彼の代表作で、大分前に河出文庫から「内なる殺人者」のタイトルで刊行、今は扶桑社ミステリーで「おれの中の殺し屋」という表題で出ています。映画よりもまず本を読むのが正解、とみましたね。映画の方は日本公開未定だし・・・。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

えっ、金素月の「つつじの花」も抵抗詩!? <金素雲・藤間生大の論争>再考②

2010-07-12 23:50:00 | 韓国の小説・詩・エッセイ
 7月10日の記事で、日帝時代の朝鮮詩をめぐる<金素雲・藤間生大の論争>を紹介しました。
 私ヌルボとしては、藤間生大の唯物史観を念頭においた(?)思い込み的(独善的)解釈に半ば呆れたのですが、だからといってポイ捨てして終わりというテーマとも考えません。
 詩人がどんな詩を作り、訳者がそれをどう訳し、また人々がそれをどのように読むかは、その時代を如実に反映しています。この論争は、まさにその好例といえるでしょう。

 (うーむ。これから先、ヘタすると大学生のレポートみたいになってしまいそうで不安が心配になってきました・・・。)

 日帝時代の朝鮮詩の問題について、便宜上次の5つの時期に分けてみます。

①1920年代~40年頃 朝鮮の詩人が作品を書いた時期
②1940~43年頃 朝鮮詩集・乳色の雲」(1940)など、金素雲が訳述を行った時期
③1954~56年 岩波文庫版「朝鮮詩集」が刊行され、<金素雲・藤間生大の論争>が展開された時期
④1971年 梶井陟が「朝鮮文学」で<金素雲・藤間生大の論争>を紹介
 ⑤現代 

 まずの時期。そもそも、当の詩人が、どんな思いで詩を作ったか? 分類すると・・・
(A)植民地支配に対する抵抗の意志を持ち、その思いを明確に書いた抵抗詩。
(B)抵抗の意志はあったが、厳しい状況の中で、直接的な弾圧を避けるため、隠喩等を駆使して書いた作品。
 (C)自覚的な抵抗の意志はなく書かれた抒情詩等。

 むずかしいことは後回しにするという私ヌルボの処世法にしたがって、めんどうな(B)は次回以降にして、とりあえず(C)から。

 そもそも、金素雲は藤間生太が(C)を抵抗詩と誤解したり、「(自覚的な抵抗の意志はなくとも)日本帝国主義の圧政を自ずと表わしている」と曲解していると批判しています。

 藤間のこのような解釈は、上記の時期に主流となっていた唯物史観の影響といえるでしょう。
 ところが、そのような誤解・曲解は今もあるようです。
 (B)(C)の見分けはむずかしいですが、たとえば現在の韓国でも人気№1の詩人金素月の代表作「つつじの花(진달래꽃)」は、ふつうに考えて(C)に属する詩だと思うのですが・・・。

  진달래꽃              (金素雲訳) 岩つゝじ

 나 보기가 역겨워           どうで別れの
 가실 때에는               日が来たら
 말없이 고이 보내 드리우리다.    なんにもいはずと 送りましよ。

 寧邊에 藥山               寧邊薬山
 진달래꽃                岩つゝじ
 아름 따다 가실 길에 뿌리우리다. 摘んで お道に敷きませう。

 기시는 걸음걸음           歩み歩みに
 놓인 그 곷을              そのつゝじ
 사뿐히 즈려밟고 가시옵소서.   そつと踏まへて お行きなさい。

 나 보기가 역겨워           どうで別れの
 가실 때에는              日が来たら
 죽어도 아니 눈물 흘리우리다.  死んでも涙は見せませぬ。

  金素月の他の詩をみても、やるせない心情が、民謡風の(大正歌謡風の(?))七五調で詠われている、それが多くの人の心を捉えてきたのではないでしょうか?
  ところが、朝鮮総聯の機関紙「朝鮮新報」のサイト中の<文学散策>で、金学烈という朝鮮大学校・早稲田大学講師の方の書いている<失恋の歌か?それとも…>という一文を読んで驚きました。

  「1922年、金素月が20歳の時に作ったこの詩は、一見失恋歌の形をとっているが、実は3・1独立万歳事件(1919年)直後の、民衆への深い悲しみを暗にうたったレジスタンス(抵抗)のうたであるとういうのが通説である」とあります。えっ、<通説>だって!? 
  さらに「詩の結びに「死んでも涙は見せませぬ」とあるが、「死ぬともわが祖国を取り戻さん」という、死を決した強烈な思いが込められていると言えよう」とあります。・・・・。
  さらにさらに、ヌルボも感動した詩「招魂」についても、「表面上は失恋のうたとなっているが、うちに秘められた真意は、痛恨の亡国の情と独立への願望のうただといえる」と解説しています。(なんなんだ~!)

 他のサイトや、関連書籍を見てみたら、決して<通説>ではないようですが・・・。とくに朝鮮総聯の立場からはこのように解釈されるということなんでしょうか?

 ここまでいかなくても、金素月の詩に漂う哀しさの背景を、「祖国を失った者」という観点から理解するという分析もどこかで見ました。

  わりとわかりやすいと思われた金素月の詩の解釈からしてこんな感じですから、(B)に属する作品の場合はホントにややこしいです。

 ※上記の金素雲の訳について、林容澤は、「金素雲『朝鮮詩集』の世界」(中公新書)「原詩のアイロニーとパラドックスによる錯綜した「恨」の心理は、金素雲訳「岩つゝじ」からは読みとれない」と評し、自らの訳を別に載せています。ここらへんもビミョーですねー。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「文藝春秋」8月号 「韓流」ドラマ傑作30選など

2010-07-11 17:28:55 | 韓国ドラマ
 このところ「文藝春秋」の記事読破率(?)が高くなってきました。毎月購読はしていても、以前は読まずに終わる記事が半分近くはあったのですが、最近は8割以上は読んでいます。
 理由として考えられるのは、①読みごたえのある企画記事が多くなった。②私ヌルボの知的好奇心・向上心がさらに高まった。③年を取るとともに保守的になってきた。(ますますオジサンぽくなった。) ④ヒマになってきた。・・・2つは当たっていると思います。

 一昨日(7月9日)発売の8月号。特別企画「的中した予言50」もおもしろいですが、あらましを知りたい方は<文藝春秋>のサイトでご覧のほどを・・・。

 ・・・とはいいながらも、韓国・朝鮮に関わるものを拾っておくと、
・半藤一利選=勝海舟「日清戦争は大反対だ。だって兄弟喧嘩じゃねえか」
  ・・・・勝海舟は日清戦争当時の唯一の非戦論者。
・江川紹子選=S.リッター「アメリカがイラク攻撃をすれば、北朝鮮の核の脅威が増す」
  ・・・・この因果関係は読んでみないとわからない。
その他、
・山内昌之選=西郷隆盛「斃るるの精神無くば、外国交際は全かる可からず」
・福島香織選=孫文「日本が西洋覇道の鷹犬となるか、東洋の干城となるか」
・簔原俊洋選=ペリー提督 「日本は東洋で最も重要な国となる」
  ・・・これらも関係ないことはないかも・・・。

 ついでにもうひとつオマケ。今日の参院選挙に際して、ヌルボの昨今の思いを代弁してくれてると感じたのが次の言葉。
・水木楊選=芥川龍之介「輿論は常に私刑であり、私刑は又常に娯楽である」

 さて、(いつもの)長い序説はここまで。以下が本論です。
 「文藝春秋」8月号で、韓国オタク必読記事は、<韓国エンターテインメント・ナビゲーター>という長~い肩書の田代親世さんによる「夫婦円満のための「韓流」ドラマ傑作30選」です。

 女性(おばさん)ファンが主体の韓流ドラマを横目で見ていることの多かった夫たち(=「文藝春秋」の主力購読層であるおじさん)に、「今からでも間に合う「韓流ドラマ傑作三十本」を私がお教えいたしましょう。これさえ見ればあなたも「韓流通」です。」と、そりゃまあご親切に・・・、ってヌルボが感謝するってのもヘンですが・・・。

 それでリストアップされてるドラマが次の30。
[王様もの]イ・サン(2007.77話) ・朱蒙(2006.81話) ・太王四神記(2007.24話)
[実録]英雄時代(2004.70話) ・第5共和国(2005.41話) ・ソウル1945(2006.71話)
[義賊]イルジメ(2008.20話) ・快刀ホン・ギルドン(2008.24話) ・必殺! 最強チル(2008.20話)
[人物伝]ホジュン 宮廷医官への道(1999.64話) ・商道(2001.50話) ・海神(2004.51話)
[ミステリー]新・別巡検-最後の導き-(2008.20話) ・正祖暗殺ミステリー8日(2007.10話) ・風の絵師(2008.20話)
[異色]シークレット・ルーム(2007.10話) ・チェオクの剣(2003.14話) ・チュノ(2010.24話)
[サスペンス]復活(2005.24話) ・魔王(2007.25話) ・犬とオオカミの時間(2007.16話)
[男の生きざま]エデンの東(2008.56話) ・MY DREAM(2009.20話) ・オールイン(2003.24話)
[社会派]白い巨塔(2007.20話) ・香港エクスプレス(2005.16話)
[女優で]スターの恋人(2008.20話) ・夏の香り(2003.18話) ・ラブストーリー・イン・ハーバード(2004.18話)
[コメディ]恋するハイエナ(2006.16話)

 いかがですかねー? ヌルボの場合、韓国オタクと称しながらも、ドラマは数えるほどしか観ていなくて、上記30作品中でも部分的に観たのが若干ある程度。
 本ブログでタラタラと連載している「英雄時代」について田代さんは、「正統派系のものでは「英雄時代」がおすすめ。これは韓国を代表する二大財閥、サムスンと現代グループの創始者たちをモデルにした物語です。・・・韓国の経済発展がめざましい今こそ見直すべきものかもいれません」とコメント。
 1980年代の実録ドラマ「第5共和国」は(観てなくても)知っていましたが、「戦争を経て朝鮮半島が南北に引き裂かれる過程を、四人の若者に託して描いています」という「ソウル1945」は知りませんでした。「英雄時代」の次はこれにしようかな?・・・って、いつになることやら。「英雄時代」は全70話、ブログの記事<「英雄時代」を読み解く>はまだ20話にも達していないのに・・・。

 リスト中のその他のドラマについては、直接「文藝春秋」をお読みいただくなり、韓国ドラマ関係サイト等で情報を得るなりしてください。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする