本ブログで毎週火曜日に掲載している韓国映画観客動員数ランクの記事作成は、テマヒマはかかりますが、私ヌルボ自身も新しい情報を得ることができて、楽しい作業です。
そこで少し厄介なのが韓国映画のタイトルの訳し方。ひと目では意味のわからないもの、複数の意味にとれるもの、誤解のワナにかかりそうなもの等々いろいろあります。
ヌルボがいまだによくわからないのが
「男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW」の邦題で2011年日本でも公開された
「무적자」。最初
「無敵者」と思ったのですが、内容を考えると後から考えついた
「無籍者」の方が正しいようで、記事にはそちらを載せました。いつも関係サイトをいろいろ見たり、ネット検索して情報を集めるのですが、どちらの表記もありました。今調べなおしたら、「両方の意味を持たせている」と書かれているものもあります。(根拠は不明。)
で、本論。一昨日の記事の中で、10月公開の韓国映画中の
「강철대오:구국의 철가방」を紹介しました。
これは「ひと目では意味のわからないタイトル」です。もちろんわかる人もいらっしゃるでしょうが・・・。
最初の
「강철(カンチョル)」は
「鋼鉄」でほぼOK。
「구국(クグク)」はおそらく
「救国」。
「철가방(チョルカバン)」は、ヌルボはたまたま知っていましたが、直訳すれば
「鉄カバン」。
こういう場合は、「韓国映画」と「鋼鉄」をキーワードに日本語サイトを検索してみるのが安直な方法。すると、いくつもの韓国映画・娯楽・芸能サイトで
「鋼鉄デオ 救国の鉄カバン」「鋼鉄の隊伍:救国の鉄のボックス」等という日本語として意味不明なままの記事ばかり。あ、
「救国の鋼鉄隊列」などという「鉄カバン」をスルーしちゃってるのもたくさん。
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問題の1つは
「대오(デオ)」の訳し方です。これを漢字の熟語だとすると
「隊伍」。しかし、隊伍を組むといってもわからない日本人がたぶん増えているだろうから「隊列」にさらに手直ししたという感じですね。
たぶん、各サイトの担当者の皆さん、自動翻訳を利用して結果をそのまま使ったのでは?
google翻訳は
「鋼鉄の隊伍:救国の鉄のボックス」、エキサイト翻訳は
「鋼鉄隊列:救国のチョルカバン」ですからね。
ここで<DAUM映画>でこの作品の説明を見ると、主人公の青年の名が
강대오(カン・デオ.姜大午?)。なーんだ、コレじゃん。1980年代の民主化闘争がらみの内容なので、デモの隊列の意味もかけてあるかもしれませんが。(
「강(カン)」という姓も
「鋼」や
「強」と同音というのも意味ありげ。)
・・・ということで、タイトルの前半は
「鋼鉄デオ」と訳すのが自然でしょう。
次に、「철가방」が軒並み「鉄カバン」あるいは「鉄のボックス」となっているのはどういうわけでしょうか? 韓国人はもちろんそれが何を指すかわかっています。しかし直訳しても日本人にはわかりません。もし記事を書いた人が韓国語のわかる日本人で、しかも「철가방」が何かを知らない人なら「철가방」で画像検索してみれば一目瞭然です。結果は→
コチラ。
正解は
「岡持ち」。蕎麦屋等で出前の際に料理を入れて運ぶ、あの箱ですね。
映画の内容は、民主化闘争の最盛期だった1985年、
出前持ちの青年カン・デオが女子大生に一目惚れして・・・という物語。だから岡持ちなんですね。
で、タイトルの後半の正しい訳は
「救国の岡持ち」。映画のタイトルとしてはヘンですけど、まあ一応コメディだから・・・。
私ヌルボがこの「鉄カバン」の意味を知っていたのは、だいぶ以前に出前持ちの青年を描いた漫画を2つほど読んだからです。(1つはカン・モリム「風味堂」、もう1つは、・・・忘れた。)
話はそれますが、
韓国の出前はすごいみたいです。韓国の人たちは
野遊会つまり景色がいい所での飲食(+歌舞)が大好きなのですが、そんな場所にも配達してくれるのです。
以前
「彼とわたしの漂流日記(原題:キム氏漂流記)」という韓国映画(佳作!)を観たら、飛び込み自殺に失敗して漢江の中洲に落ち、そこで原始的生活をしている男の所に、チャジャンミョンが出前で届けられるシーンがありましたが、これは決して映画による誇張とは思えませんでした。
また、産経新聞ソウル支局長の黒田勝弘氏が
「韓民族はペダル民族」と題する随筆を書いています。(→
コチラ。)
錦江の上流の方に黒田氏が仲間たちと釣りに行った際、昼食時に、韓国人の仲間が朝途中の村の食堂で予約しておいた鶏の蒸しもの(ペクスク)が届けられて驚いたというエピソードを紹介しています。遠い距離を食堂の主人が車で出前してきたのだそうです。
感動した黒田氏がそれを称えると、韓国人の釣り仲間が即座に返した言葉が
「だからわれわれは“ペダル民族”だというんだよ!」。
ペダル(배달)」とは朝鮮の昔からの美称
「倍達」で、これと
「配達」の掛け言葉。
黒田氏は「このユーモアにはもっと感動した」と記してます。たしかに、おもしろい!