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ヴァレンティナ・トネアット『神の銀行家』

2016-12-25 | トッド『家族システムの起源』

投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2016年12月25日(日)10時52分41秒

>筆綾丸さん
>修道院の金融活動
一応、知ってはいたのですが、これもずいぶん早くからなんですね。(p122以下)

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 「修道院の金融活動」というと驚かれるか、訝る向きが多いかもしれない。金融活動というからには利子の取得が前提であるが、そうした行為は聖書の教えにもあるように神学上禁止されていたのではなかったか、と。【中略】現実には利子取得付きの金貸しは、日常的に平凡な実践としておこなわれていたのである。
 六世紀の末に、トゥール司教グレゴリウスは一連の聖人伝を著したが、この作品の冒頭にあるコンダ修道院(ジュラ地方)院長ルピキヌスとロマノスの伝記は次のように始まる。「福音の教えがわれわれに命じているのは、主人の寛大な意向による金銭は、両替商のもとに預けられれば、主の思し召しにより正当で実りある果実として殖えるということであり、それゆえ深い井戸のなかに隠され腐蝕するがままにしてはならず、利に合った使用をし、利益が永遠の生の勝利のうちに殖えるようにすべきである」、として『マタイによる福音書』の一節を引用している。このことは、グレゴリウスの時代に利息付き金銭貸借という行為が、何ら批判の対象となることはなかったことを示している。同じ著者による『歴史十書』には、利息付きの金銭貸借の事例がいくつも挙げられており、常日頃ふつうにおこなわれていたのである。メロヴィング王朝期に成立したある書式には、利率が三〇パーセントを超えてはならない旨が記されている。
 古代末期から中世初期の教会人や修道士たちの思考に、経済的合理性や利息の観念がいかに深く埋め込まれていたかを詳細に解明したヴァレンティナ・トネアットの近著『神の銀行家』は、退蔵された富は悪しき財貨(貪欲 avaritia)であり、富はいかなる形であれ流通させることにより、善をもたらすのだという思想に染められていたという。そこでは利息付き金銭貸借は、金融活動の促進要因でありこそすれ、利率が合理的であるかぎり、何ら非難される行為とはみなされなかったのである。
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『神の銀行家』は参考文献を見ると原タイトルが Les banquiers du Seigneur で、佐藤氏は Seigneurを「神」と訳していますが、これは副題の「富を前にしての司教と修道士、4世紀から9世紀初頭まで」を考慮してのものなのでしょうね。
検索してみたら、なかなか美しい表紙の本ですね。

Les banquiers du Seigneur
Évêques et moines face à la richesse (IVe-début IXe siècle)
http://www.pur-editions.fr/detail.php?idOuv=2913

>御厨氏が陛下のことを「彼」と何度か呼んでいた
御厨氏は頭が少し軽くて薄い人なので、座長代理は適任ではないですね。

>石川氏は、お言葉(8月8日)を聴き、陛下は清宮の憲法書を読まれているのだなと思ったそうです。
まあ、我田引水でしょうね。
あるいは清宮神社の鰯を拝み過ぎて幻聴が聞こえてきたのか。

清宮神社の御神体
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/4bd5149f3636d185baa754dc37ae2e61

※筆綾丸さんの下記二投稿へのレスです。

ピエタ・・・国破れて質屋あり 2016/12/23(金) 18:38:52
小太郎さん
船長はコルンバヌスを holy passenger というより疫病神のように恐れたということなんですね。
コルンバヌスのヨーロッパ遍歴の一部は、空海や行基(や時頼)の廻国伝説と同じく、眉唾物と考えるべきなのでしょうね。

http://www.bbc.com/news/business-38412557
https://it.wikipedia.org/wiki/Banca_Monte_dei_Paschi_di_Siena
『贖罪のヨーロッパ』に修道院の金融活動の話がありますが、シエーナに本店を置くヨーロッパ最古の銀行モンテ・デイ・パスキ(1472~)への国家の緊急融資が決まりました。BBC の写真によれば、ラテン語で MONTIS PASCUORUM といい、男性が紋章を踏んづけているのは、EUを離脱する英国流の皮肉かもしれないですね。十字架の刻印が涙ぐましい。(ちなみに、むかし、本店の門前まで行ったことがあります)
この銀行の起源は un monte di pietà chiamato Monte Pio(慈悲の質屋)で、all'agricoltura e alla pastorizia とあるように、主に羊飼いの羊を質にして金を貸したことなどが始まりとされていますが、利息がマイナスのはずはなかろうから、要するに、低利の(つまり慈悲深い)質屋だった、ということなんでしょうね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%8A%E5%85%B1%E5%92%8C%E5%9B%BD
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%AE%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%AA
シエーナ共和国(1125~1555/1559)の滅亡は16世紀中葉だから、面白いことに、質屋は国より長生きしたことになるのですね。ダンテ(1265~1321)が生きていたら、国破れて質屋あり、と詠じたかもしれません。地獄篇、煉獄篇、天国篇の、どこに書き込んだか、甚だ難しい問題ですが。
現代では、保証のかぎりではないけれども、銀行より国家の方が長生きする、と考えていいのだろうな。


化天のうちを比ぶれば・・・ 2016/12/24(土) 23:25:26

http://www.bsfuji.tv/primenews/
プライムニュース(12月23日)に、石川健治・御厨貴の両氏が出演していました。
御厨氏が陛下のことを「彼」と何度か呼んでいたのですが、公共の場では初めて聞く呼称なので、ちょっと驚きました。

石川氏は、お言葉(8月8日)を聴き、陛下は清宮の憲法書を読まれているのだなと思ったそうです。理由は、お言葉で述べられている象徴の解釈が清宮の説くところによく似ているから、ということのようでした。清宮憲法学を知らないので、是非の判断はできません。

http://plaza.rakuten.co.jp/mickeycharo/diary/201612240002/
注目の一戦は藤井四段が勝ちましたが(110手)、老人の攻めは無謀すぎましたね。ただ、『3月のライオン』とは違って潔い散り方で、もう思い残すことはあるまい、という感じです。残念ながら、この将棋だけでは、藤井四段が強いのかどうか、よくわかりません。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E6%95%A6%E7%9B%9B
『平家物語』では、若者(平敦盛)が老人(熊谷直実)に頸を刎ねられるという不自然なことが起こりますが、将棋に限らず、ほとんどの分野では、老人が若者に勝てないのはごく自然なことですね。

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