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「70歳が老化の分かれ道」和田秀樹

2022年08月03日 11時57分57秒 | 読書
「70歳が老化の分かれ道」和田秀樹


著名な精神科医であり多くの著作を送り出している和田秀樹氏の新書.
刺激的なタイトルに見えるが,内容は極めて,実践的かつ説得力ある内容になっています.

この本全体を通じて感じることは高齢者に対する暖かい眼差しです.
歳をとるとこうなるんだから,高齢者はこうしなさいという書き方ではなくて,幸せな老後を生きるためにこうやろう,という内容・ノウハウ集になっています.
また,高齢者に対する誤った認識に基づく国の政策に対して,痛烈な批判を浴びせています.
特に印象に残ったのは,p.57 「運転免許は返納してはいけない」の章.
まず前提となるデータですが,警察庁交通局が発表する「平成30年度の交通事故状況」によると,人口10万人当たりの年代別事故件数をみると,最も事故を起こしているのは16~19歳で約1500件,ついで20~24歳で900件,70歳台は500件前後,80歳台は600件前後とむしろ,事故件数自体は若者の起こす事故がずっと多い.
確かに高齢者によりペダルの踏み違いによる事故は事実としてあったが,多くの若者が引き起こす悲惨な死亡事故こそ早く対策を打つべきという主張です.
別の調査では,免許を返納した高齢者群と免許を返納せず運転し続けた高齢者群とで,10年後の認知症の発症数が,運転をやめた人はそうでない人の2.1倍だったという.
車の運転という,一種の認知機能のトレーニング習慣が認知症の発症を遅らせるという疫学的なデータが得られているそうな.
つまり,運転免許の返納をする人が増えるほど,認知症による介護認定者が増えるという実に皮肉な結果を引き起こすのね.
本当に国のことを考えるなら,高齢者を家に閉じ込めてしまうのではなく世の中との関りを促進するような政策が必要なんじゃないか,という主張です.

コレステロール降下剤の安易な使用に対する痛烈な批判も興味深いので興味ある方は本書をお読みください.

私は,今年の秋に69歳になり,来年には古希を迎えますが,そんな私に元気をくれた一冊でした.