書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「博士の愛した数式」小川洋子

2006年11月05日 00時25分02秒 | 読書
「ぼくの記憶は80分しかもたない」
若いころの交通事故のために記憶の能力を失った数学者.
事故にあう前のことは覚えているが,事故以後は80分間の記憶しか残らない.
80分のエンドレスビデオテープで録画を続けているようなもので,80分経つと,新しい記憶は80分前の記憶に上書きされてしまうのです.
そんな博士の家に家政婦として通うことになった29歳の子持ちのヒロインとその10歳の息子ルート.
記憶障害のためのさまざまなトラブルを経験しながらも,博士の数学への愛と,ヒロインの息子をわが子のようにいとおしむ気持ちがヒロインの心に暖かい感情を醸成していきます.「ルート」とは,博士が彼女の息子につけた親愛の情あふれるあだ名です.頭が扁平なので,√記号に似ているからと言う理由です.
80分しか記憶がもたないことは,良く考えれば考えるほど,大きな苦しみをもたらすことがわかっていきます.
どんなにいいことがあっても,どんなに一生懸命博士に尽くしても,次の日に来た時には,博士にとっては初対面の家政婦さんに戻ってしまうという残酷さ.
逆にどんなにつらいできごとがあっても,次の日には記憶からきれいに消え去っているという諦観.
博士は朝目覚めたときに自分の病気を思い出すように,背広に「ぼくの記憶は80分しかもたない」というメモ用紙をクリップにて貼り付けています.
そして,「新しい家政婦さん...とその息子ルート」と言うメモが痛ましくも微笑ましい.
今までいろんな小説を読んできました.
小説が人間の気持ちを描くときはどうしても「喜び」か「怒り」,「哀しみ」か「快楽」等というわかりやすい描写になってしまいがちです.
でも,我々の人生には喜怒哀楽以外の様々な心の動きがあるということを,そして人生を一歩一歩進んでいくためには喜怒哀楽以上に大事な何かがあるということを教えてくれる小説でした.
この小説を読んで最初に連想したのは,「アルジャーノンに花束を」でした.
しかし,「アルジャーノン...」と決定的に違うのは,この小説ははるかに暖かい何かを感じさせてくれるということです.
苦悩の人生を送っている人に,「生きていること自体がすばらしいこと」なんだとということを教えてくれるような期待を感じます.
悩める理系人間にはぴったりの小説に違いないですし,「数式なんて見るのもいやっ!」という人も,博士が語る完全数や友愛数の不思議に,もしかしたら神秘を感じるかもしれません.
力むのでなく,押し付けるのではなく,心に火をつけることでもない,淡々とした人生の中に真の喜びがあるということ.
この本を読むまで,私ってこんなこと言う人間だったけなあ?
あと,読んでいる際に感じた不思議な感覚を一つ.
なぜか,読んでいる途中で何度も,この本って「翻訳もの」だと思ってしまうんです.
「阪神タイガースの江夏」とかいう言葉が出てくると,「あれ?なんで日本のことがでてるの?」と,一瞬不思議に思ってしまうんです.
そして,そうか,小川洋子さんの本だったと思い出すというしだい.
なぜだかわかりません.
この本は,机の上においておこう.何かあったらいつでも読み返せるようにね.

英語のノート

2006年11月03日 21時03分47秒 | 日記
今日,小学校4年の長女からこう聞かれました.
「ねえお父さん,英語のノートってある?」
そう聞こえたので,次のように答えました.
「あるよ.1行に線が4本入ってて,アルファベットが書きやすいやつだよ」
そう答えると,長女は変な顔してます.
「そうじゃなくて,エーゴのノート」
「え?」
「エーゴだよ.エーゴ.普通のはみんなB5なんだけど,A5のノートって売ってないんだよ.」
A5サイズのノートが欲しいんだそうです.
なぜかと問うと,お気に入りのブックカバーがA5サイズで,それをつけて使えるノートが欲しいんだとのこと.
とんだ勘違いでした.
それにしても,ブックカバーに合わせてノートを選びたいなんて,やっぱり女の子なんですね.