書く仕事

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「コロナと潜水服」奥田英朗

2022年09月25日 11時55分05秒 | 読書
「コロナと潜水服」奥田英朗


ちょっと不思議で,大いにホッコリする大人のファンタジー5編.
奥田英朗さんの小説は,仕事や人間関係に頑張り過ぎちゃう人が,ちょっとした出来事から自分の欠点に気付いて,生き方を変えてみるという趣旨のお話が多いですが,その,「ちょっとした出来事」ってのが,この小説ではかなりオカルトチックです.
昔,心残りを抱いたまま不本意な理由で亡くなった人が,主人公に対して何らかの働きかけをして想いを遂げるという趣向のお話です.
ただ,その「想い」というのが,「恨みつらみ」じゃなくて,残された家族を心配する想いとか,生前にあと少しのところで果たせなかった夢とかの切なさに満ちた「想い」なわけですね.
その「想い」と,主人公が抱える現状の問題というか苦しみとを巧みにリンクさせ,ファンタジックにかつユーモラスにアレンジする手腕はさすが奥田さん,見事なものです.
5つの全く異なるお話からなる短編集です.
私的には,最後の「パンダに乗って」が一番よかった.最後はグッときました.