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「ヒア・カムズ・ザ・サン」有川浩

2018年10月04日 14時24分54秒 | 読書
「ヒア・カムズ・ザ・サン」有川浩



同じ着想に基づく二つの物語。

主人公は文芸誌の編集者、真也
彼には、物に触れると、その物に込められた想いや感情を感じとるという能力がある。

この能力のおかげで、彼は、人の気持ちに、そっと寄り添うことができる。

もちろん、その能力は悪用しようと思えば、人を傷つけることも可能だ。

また、人に寄り添うつもりでも、余計な深入りをすることで、不信感を買ったり、気持ち悪く思われることもありうる。

両刃の剣といえる。

しかし、編集者として、作家という難しい人種と付き合うために、その能力が大いに役立つこともある。
一方で,ガールフレンドのカオルとの付き合いにはできるだけこの能力を使わないように努力している.

以上が2つの小説に共通するバックグラウンドだ.

しかし,2つの小説は連作ではないし,スピンアウトものでもない.全く独立した別々の小説である.

ただ,2作に共通する「作者が言いたいこと」は,人がお互いに向き合って生きるということは,職場でも家庭でもなかなか難しいことだが,最後は「許すこと」であるということだろう.

相手のダメなところごと相手を許し,受け入れることで,真の愛情に気が付く,ということだろうと思う.

この小説を読み終えて,しみじみとそう思う.

ちなみに作者の有川浩は,「ありかわひろ」と読み,女性である.