書く仕事

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「教授の異常な弁解 (文春文庫)」 土屋 賢二

2012年03月17日 20時32分23秒 | 読書
「教授の異常な弁解 (文春文庫)」土屋 賢二





お茶の水女子大の哲学の名誉教授である土屋賢二さんの奇想天外なエッセイ集.

哲学というより,論理のトリックを駆使した,爆笑ネタ付きニヒリズムのオンパレードです.

教育は「模倣」から始まるというネタでは,「結婚後、妻に従順になってほしいと思った私は、妻に従順さを模倣させようと自ら従順な行動を繰り返したところ、妻は平気で命令するようになった。(略)模倣による教育には限界がある」
と来る.

おそらく愚かな書評家は,ブラックユーモアの類書として評価するだろうが,そう読んでしまっては,この本とこの作者の価値の半分を見落とすことになる.

大事なことは,ものごとには必ず多面的な解釈がありうるにもかかわらず,公開されるのはその一面だけということだ.

悪意の裏には善意もあり,善意の影には悪意が潜んでいるということ.

その多面的な可能性を洞察し,予見してこそ未来が開けるのだ.

例えば,悲惨な失恋をしたとする.

その失恋を乗り越えて,新しい恋を獲得できれば,未来を切り開く能力を確信できるし,新しい恋を獲得できなければ,思い出に浸り続けることができる.

みたいな.

自分にとって,何が必要なのか.
あるいは本当は自分は何を求めているのか,再考し発見する手引書の役割を果たす可能性がある.

人生指南書でもある.

読んで損はない.

もし,この本で人生を学ぶことが出来れば,数百円は大変安い.
人生を学ぶことができなければ,書物を選ぶのには慎重さが必要であることを学べる.