特掃現場では、何らかの探し物を依頼されることが多い。
私は片付屋・始末屋であっても探し屋ではないのだが、依頼者は他に頼める人がいないから私に頼んでくる。
「自分で探せばいいのに」と思うのは腐乱死体現場を知らない第三者。
故人の身内とはいえ、一般の人には腐乱現場での探し物などとてもできない。
視覚と嗅覚が瞬時やられてしまい、ほとんどの人はわずかな時間でも現場に滞まることはできない。
依頼品で多いのは預金通帳・印鑑・権利書・株券・保険証券・年金手帳・貴金属、やはり金目のモノである。
残された人は故人の死を想ってばかりはいられない。
死後の後始末をきれいに済ませる、社会的責任がある。
特に、腐乱現場・自殺現場の始末には重い責任がのしかかってくる。
それには、まずはお金が必要ということ。
たまに、変わった探し物を頼まれることがある。
遺骨もその一つ。
「骨を探してほしい」
中年女性からそんな依頼が入った。
孤独死・腐乱、亡くなったのは女性の母親らしい。
警察が遺体を持って行った後も、現場に小骨が残っていることはたまにある。
しかし、まだ骨が残っている可能性があることを素人の女性が知っていることが不思議だった。
「現場には行けないので、勝手に入っていい」とのこと。
電話口で思案していても仕方がない。
とにかく現場へ向かった。
現場はトイレ、床一面に腐敗粘土と腐敗液が広がり、厚い層を作っていた。
例によって「こりゃヒドイなぁ」と呟いた私。
乾燥しかかった腐敗粘土は、便器の中までたまっており、死後かなりの日数が経っていることが読み取れた。
「これで骨が探せるかなぁ」
「ヤバイ作業になりそうだなぁ」
汚物の量にいきなり自信喪失、腰が引けてきた。
現場を確認してから女性に電話。
トラブルを避けるため、依頼作業の成果は約束できないことを先に伝えた。
あと、作業が過酷を極めるであろうことも。
骨が残っている可能性があることは警察から聞いたらしい。
現場を見た私は納得できた。
「あれじゃぁ骨を拾い残しても仕方ないな」
逆に、「よく遺体を回収して行ったな」と警察に感心したくらい。
正直、この仕事はやりたくなかった。
しかし、女性と話しているうちに引き受ける方向に気持ちが動いていった。
女性に泣かれると弱い・・・。
つづく
トラックバック 2006-08-25 08:23:20投稿分より
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