沈丁花に。
夏にまた一人芝居をすることにした。
シェリダン・レ・ファニュの「吸血鬼カーミラ」
これは映画化もされている名作だが、たぶん女優一人で演じられたことはないだろう。
長編原作の流麗な抒情、叙景をできるだけ生かしたいので、わたしが書き下ろした芝居も長くなる。
夏の夜の夢物語。ただおどろおどろしいのではなく、ファニュの作品にはどれも古典的なリリシズムが濃い。
他界からしのびよる幽霊や妖精たちに、人間である作者がplusの感情移入をしているので、恐怖の描写も柔らかい。
柔らかい、とはわたしがよく使う表現だが、そうとしか言いようがない。
ファニュは、勧善懲悪の定石通りに、吸血鬼カーミラを最後に葬り去ってしまうのだが、そのあたりの彼の筆致には彼女を惜しむような耽美が滲む。
正体のない、夕暮れのように繊細な、そして恐ろしくうるわしい、魅力的なカーミラを演じる。
貌も体もぴかぴかだった若いころ、こんな大胆な言葉は言えなかった。
きっと、青春という地平から遠く離れた年齢にもなり、ささやかながら痛い経験を重ねたので、開き直って言えるのだろう。
冴え冴えとした眼で「永遠の少女」なるものを見つめ、表現するつもりです。
夏にまた一人芝居をすることにした。
シェリダン・レ・ファニュの「吸血鬼カーミラ」
これは映画化もされている名作だが、たぶん女優一人で演じられたことはないだろう。
長編原作の流麗な抒情、叙景をできるだけ生かしたいので、わたしが書き下ろした芝居も長くなる。
夏の夜の夢物語。ただおどろおどろしいのではなく、ファニュの作品にはどれも古典的なリリシズムが濃い。
他界からしのびよる幽霊や妖精たちに、人間である作者がplusの感情移入をしているので、恐怖の描写も柔らかい。
柔らかい、とはわたしがよく使う表現だが、そうとしか言いようがない。
ファニュは、勧善懲悪の定石通りに、吸血鬼カーミラを最後に葬り去ってしまうのだが、そのあたりの彼の筆致には彼女を惜しむような耽美が滲む。
正体のない、夕暮れのように繊細な、そして恐ろしくうるわしい、魅力的なカーミラを演じる。
貌も体もぴかぴかだった若いころ、こんな大胆な言葉は言えなかった。
きっと、青春という地平から遠く離れた年齢にもなり、ささやかながら痛い経験を重ねたので、開き直って言えるのだろう。
冴え冴えとした眼で「永遠の少女」なるものを見つめ、表現するつもりです。