雪香の星月夜日記

山口雪香の歌がたり、ささやき、ひとりごと

玲瓏88号

2014-11-14 17:52:33 | Weblog


 紫陽花の色づきゆけばその日ごと命ちぢみてゆくといふ母


 さ夜更けて窓辺に寄ればちんちんと闇にいづくよ鐘たたき鳴く

 
 あらはせぬ思ひの音かたんたんと母はベッドの柵を打ちつぐ    田中蒼治  「かねたたき」から



          
             ☆彡


 神變、風に伏す麥秋のきはみコーダのごとし 臆の人はや

 
 風鳴の余響の里に逝く秋のたましひの実はふかく睡れる


 カラマーゾフ響(とよ)もす広野へと姉、傲慢なる深野へと吾妹 人知れず   日高菊雄  「萌黄野」から



             ☆彡


 人知らじそめいよしのの下蔭に虚無青ざめて駆け抜けしこと


 時のはざま冷たき影のつたひきて我の余白に反歌を記せり


 少しずつ永遠になる夕べかなたましいひとつ夏に迷へる    千舘禮子  「翳り」から



             ☆彡

 
 あしひきの山桜花見上ぐれば身を亘りゆく山脈ありき

 
 空に匂ふ花なりし日は夢ならむ桜木の肌初夏に冷えゆく


 水無月の緑野に翳を奪はれてゆふべの豆腐ひたすら白し    沼澤聡子 「桜樹」から



             ☆彡



 それぞれの方におことわりしていないのだけれど、心に留まった歌を掲載させていただいた。






 

 
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