気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

蜜入りりんご

2005-07-14 13:35:35 | つれづれ
もの思う妻いかにせんほのほのと微熱に兆す眼(まなこ)をいかに

普通の母でいいと子が言うふわふわと子の言う「普通」銀の響きよ

蛍光の明りに浮かび箸をとる一夫一妻の夕べは永し

くれないの蜜入りりんご頬張ればやたすく蜜に統べられてゆく

うっすらと菜の花の黄が残りいて視界は暗し家に入るとき

(佐伯裕子 あした、また 河出書房新社)

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佐伯裕子は昭和22年生まれ。
同年に小池光、香川ヒサ、永田和宏、河野裕子、道浦母都子。

普通であるって、なんだろう。普通の母って、なんだろう。
普通は銀ほどはよいものであるが、金や白金ではない。
普通の子、普通の夫というのも、存在しないし、いても面白くないだろう。
普通の人が暮らしている場所で、あたりさわりのないご挨拶をして暮らしていくのは、けっこうしんどい。いっそ遠くへ出かけたら、のびのび出来るのだが。

「お子さんは大きくなられましたでしょ」近所の人の言葉は痛し
(近藤かすみ)