気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

抒情装置 資延英樹歌集

2005-07-01 12:25:07 | つれづれ
世界からわたしを消すならそれはそれ世界のひとつのあり方である

いつだつてやられなくてもよかつたと思ふ側から犠牲者は出る

戻つては来ない舟だとわかつてて積まれなかつたロープがあつた

ムダにした時の重さがあるからにここまで歩いてきたとも言へる

ふらふらと入り来たりける裏道が表参道だつたりするから

(資延英樹 抒情装置 砂子屋書房)

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未来の資延英樹さんの第一歌集。某カルチャーセンターや題詠マラソンでご一緒しているご縁で、歌集を送っていただく。ありがとうございます。
ハトロン紙掛けフランス装で、函入りという豪華な体裁。帯には岡井隆の「あつといふまに現代短歌のコツをのみこんだ、最優秀の生徒である」との解説が載っている。

歌集は逆編年体を旨として作られている。2003年未来賞受賞作、題詠マラソン2004からの作品があり、私も同じ題で作ったことを思った。歌集の前半(最近作)の方が面白い。つまりどんどん成長してここまで到った人だと思う。旧かなで、文語から次第に口語に重心が移動してきている。ものの考え方のすっきり冷たいこと、言葉の扱いが自在なこと、なにより若さが魅力のひと。

「ムダにした時の重さ」「裏道が表参道」・・・おくれて短歌をはじめた人間には、身に沁みるフレーズ。ますますのご活躍を期待する。そして、みなさん、買って読んでください。

早熟がもて囃されるこの国で一周おくれの青春をする
(近藤かすみ)