備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

ウチの『金継』

2007-11-03 01:41:32 | 陶芸
拙宅の子供に「ヤキツギのヤツ借して!」と言われる。
即座に「ヤキツギ」が『焼継』であるのに思いが至らなかった。

「焼継を知っているのか」と訊くと、ご本人はきちんと説明する。
「骨董趣味の人ぐらいしか知らんのとちゃうか」と思う言葉なのだが……。
感心していたら、どうも学校での環境問題に関する学習で習ったらしい。昔はそんな商売があったと。でも鋳掛屋さんは習わなかったとの事。

「ウチに焼継のものはないけど」と言うと、「ある」といって小皿を持ってくる。しかし『金継』と勘違いしていた。
言葉は知っていても実物は見なかったとの事。という訳で、家に実物があれば学校に持ち寄る次第。ヤキモノ屋んチが多い学校ならではのテーマ。

仔細は承諾した。
けれど、ウチの『金継』は金継ではない。正確に言うと金(きん)ではない。これは、かつて金継修理を依頼され、「本格的な修理は何万円もする」と答えた折に、依頼主が「何とかして」と言うので自前修理をした時の練習品。テストピースである。

第一、本当に大事で高価だからこそ『金継』をする訳で、こんな普段使いの小皿にはしない。しかも、つい最近これでギョーザを頂いたぞ。

要は、『もったいない精神』で『モノを大事にする心』が学習の狙いである。継いである事自体が重要なのだろう。小学校の教室で金継を見ることもないだろうから、詳しい説明は止めて「持ってけ」と言っておいた。本人は『金継』だと思っている。


本当は、『真鍮継』だ。 スマン。 m(_ _)m



※『焼継』
鉛が主成分の低融点の金属(白玉粉)をパーツの間に入れて、加熱して接着。ステンドグラスの枠のようになる。普段使いの食器などは、この方法で修理する。
あえて違う意匠や焼色を継いで、侘びた風情を演出する事もある

※『金継』
茶道具などで使われる修理方法。漆で接着後、金箔や蒔絵を描き、あえて修理した事に美しさを見出すもの。